ミスミはインダストリー4.0で新たな事業プラットフォームを確立する

2016/09/12

株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長 CEO 大野龍隆 × Longine IR部

株式会社ミスミグループ本社(証券コード:9962。以下、ミスミ)代表取締役社長CEO大野龍隆氏にインダストリー4.0などによる経営環境の変化が同社にどのような影響があるのか、またその中での同社の事業戦略や株主還元方針についてお伺いしました。
 

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

●5期連続で過去最高の売上高と利益を更新。注力のVONA事業の商流拡大が収益に貢献。国内・中国での売上も堅調に推移している。
●「インダストリー4.0」で電子データによる受発注が主流になると見込まれる中、その体制構築はグローバルでも他社を先行。
●2016年度のIT投資は生産、物流投資を超える金額を予定。ITを駆使して国内外での事業拡大を狙う。成長投資の一方で増配にはこだわり。利益成長を継続し、業績で株主に還元する考え。
 

5期連続で過去最高の売上高と利益を更新している背景

Longine IR部(以下、Longine):2016年3月期(2015年度)を含めて5期連続で過去最高の売上高と利益をともに更新しました。また、2017年3月期第1四半期も増収増益の着地となり、特に営業利益は対前年同期比+21%増と堅調なスタートとなりました。好調な業績の背景について教えてください。

株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長CEO 大野龍隆(以下:大野):2017年3月期第1四半期の業績を事業別で見た場合、特に足元で業績拡大をけん引しているのはVONA事業です。VONA事業は当社商品および他社流通品を取り扱う事業ですが、顧客数も2016年3月時点で前年比+37%増と順調に拡大しています。商流の拡大とともに収益に貢献してきているといえます。また地域別に見た場合、特に堅調なのは国内と中国です。国内は2016年4月に発生した熊本地震の影響が若干見られるもののプラス成長を継続しています。その一方で、円高などの影響もあり米国での売上高が少し弱く見えています。このように地域ごとの強弱感は見られるものの、現時点で期初の業績の見通しは変えていません。
 

ミスミはインダストリー4.0をどのように利益成長のエンジンとするのか

Longine:最近は「インダストリー4.0」や「IoT」といった製造業を取り巻く環境変化により、製造業の在り方が今後大きく変わってくるのではないかという見方が台頭しています。ミスミが定義するインダストリー4.0について教えてください。

大野:一言でいえばITを駆使した新たなモノづくりです。サプライチェーン全体をネットワークでつなぐことで、これまでサプライチェーンの一部や工程で抱えていた課題や問題を全体で解決できるようになることがこれまでにない変化といえます。

Longine:日本では製造業における自動化はかなり進んでいたかと思いますが、インダストリー4.0はこれまでの生産ラインの自動化とは異なる考え方なのでしょうか。

大野:おっしゃるように日本でも工場における生産の自動化は進んできました。一方でこれまでの自動化は人間がやらなくてもよいことは機械に任せ、付加価値の高い領域は人間が担うという発想で生産ラインを設計してきました。結果として生産ラインの一部には人間が判断する領域が残りました。インダストリー4.0はそうした人間が判断してきた領域もITを駆使することで、より最適化や効率化を図ろうとするものです。

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株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長 CEO 大野龍隆

 
Longine:そうした環境の中でミスミはどのような役割を果たしていくのでしょうか。

大野:インダストリー4.0で提唱されているような製造環境になれば、生産ラインやサプライチェーン全体がネットワークでつながり、デジタルデータが行き来する環境となります。そうなれば製造業である当社のお客様はデジタルデータを媒介とした「e調達」をこれまで以上に積極的に行うことになるでしょう。当社にとっては生産に関わる受注および発注がどのように行われるかが重要になってきます。当社はお客様のデジタルデータを受け取り、注文通りに商品を発送する必要があります。一からこの体制を作るのは大変ですが、当社は国内注文のうち既に8割以上を電子的に受注しています。したがって、お客様が仮にインダストリー4.0のコンセプトに応じた生産ラインを構築されるにしても、迅速に対応することが可能です。意外に思われるかもしれませんが、生産間接材の受注環境において当社のような態勢を確立している企業はグローバルで見てもそれほど多くはありません。

Longine:既にデジタルデータをやり取りできる環境が構築できていること以外にミスミの競争優位はどこにあるのでしょうか。

大野:これまで当社はビジネスモデルの中で電子受注を積極的に進めてきておりますので、今後「e調達」が進んでいった場合に、そのサポートがスムーズにできることが強みです。一方、ご注文に従って短納期で確実に商品を発送できなければなりません。せっかくご注文をいただいたのに在庫がありませんでは、お客様に無駄な工数を増やしてしまうことになります。

この点でも、当社のグローバル拠点-日本、中国、アジアに加え2012年に買収し北米や欧州で事業基盤を確立したDayton Lamina社(以下、DL社)-を活用すれば世界に工場を持つお客様に安定した品質の商品を短納期で発送することが可能となります。たとえば、お客様の本社のある国では生産に必要な部品や材料を安定的に調達することが可能だと思いますが、海外の生産拠点となると自国のような調達環境を整えることは難しく、お客様が本社で一括調達し海外に展開されるようなケースもあると考えられます。今後は当社にデジタルデータでご注文をいただき最適地から発送するような体制もさらに整えていきます。当社のそうした可能性はお客様から見ても魅力的に見えると思います。

Longine:具体的な取り組みは進んでいるのでしょうか。

大野:当社の事業機会が格段に増えていくことが見込まれるなか、商品領域の拡大に取り組んでいます。今まで提供してきた商品はあくまでも当社規格品の中での話でしたが、それをお客様のご要望にお応えすべく準標準品や特注品にまで拡大していくことで、領域の大幅な拡大を図っています。また、RAPiD Designのように設備設計全体を支援するツール群を提供することによって、新たな顧客接点の強化に取り組んでいます。その中で、2016年6月に、設計、発注から納品までの業務を効率化する次世代ものづくりプラットフォーム「meviy(メヴィー)」を始動させました。「meviy」では3D-CADデータから即見積・受注・加工までをご提供します。これまで当社のメーカー事業では、当社規格品を提供するだけだったのが、お客様のデータに応じた商品をご提供できるようになります。こうしたことが実現できるようになったのには、CADや通信インフラの環境整備といったテクノロジーの変化も大きく寄与しています。(図表1参照)。

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生産間接材の取り扱いから生産材プラットフォームへの発展

Longine:ミスミにはFA事業や金型部品事業を抱える「メーカー事業」とVONA事業をコアとした「流通事業」がありますが、サプライチェーン全体がネットワークにつながりデジタルデータがやり取りされるような環境になればこれらの事業はどのように進化していくのでしょうか。

大野:当社はこれまで生産間接材の取り扱いを中心に事業を展開する中で、既に約22万社というお客様のとの接点があります。こうした当社の顧客基盤を活かしながら製造業に関係する様々なステークホルダーの方々とITを仲立ちとして協業することで新しい提案をすることは可能です。

たとえば、インダストリー4.0にも予知保全という考え方がありますが、生産に必要な工具が事前に要交換と判断されれば、当社のようにデジタルデータで受注し発送できるような体制が求められてきます。お客様には、段取り替えやそれに伴う工程時間のロスを削減したいという大きなニーズがあります。また、データが蓄積されてくれば生産に最も効率的な生産材は何かというような提案もすることが可能です。将来にかけては、これまで使用してきた生産材が最適かどうかという判断が変わるかもしれません。データを分析することで生産材を見直せばお客様の生産性が劇的に改善することも十分にあり得ます。

Longine:これまでのお話からすると、ミスミの事業の拡張性を担保するためにはITへの取り組みが非常に重要だと思いますが、今後の対応について教えてください。

大野:お客様が生産材を「探す」「選ぶ」というプロセスで、当社が最適なサービスを提供するためには、生産材のデータベースを持つ必要があります。そうした情報基盤が確立すれば、これまでの当社の強みである商取引基盤や生産物流基盤に対して、一気通貫でお客様にサービスを提供することができるようになります

Longine:情報基盤には積極的に投資をされるということでしょうか。

大野:当社は2013年度から2015年度までの過去3年間でIT領域に70億円以上を投資していますが、2016年度のIT投資も生産、物流投資を超える金額を予定しています。今後の当社の競争優位性を一層高めるために、ITには積極的に投資を行っていきたいと考えています。これが更なる参入障壁の構築にも繋がるものと考えています。

 
ミスミグループ本社の株主還元策について

Longine:最後になりましたが、株主還元策の考え方について教えてください。

大野:ここまでお話をしてきましたように、インダストリー4.0をきっかけとして産業構造が今後大きく変わろうとしています。そうした環境の変化の中、当社が得意とする「e調達」は国内に限らず海外でも大きく事業を拡大する好機と見ています。まずはそうした事業機会をきっちりと業績として示し、株主の皆様にも変わらぬご支援を頂きたいと思っています。

Longine:業績拡大による株価上昇がまずは株主還元の核というところでしょうか。配当に関してはいかがでしょうか。

大野:配当に関しては配当性向を25%としています。一株当たり配当金は2015年度まで5期連続の増配となりました。2016年度も、業績計画が達成されれば引き続き増配が継続することとなります(2016年7月時点)。

Longine:配当と投資のバランスのとり方について教えてください。

大野:当社としては、将来の成長にとって必要となる投資を着実に行いながらも、増配には可能な限りこだわっていきたいと思います。足元は円高による業績への影響はあるものの、利益成長は継続していきたいと考えています。

Longine:本日は長時間ありがとうございました。

大野:こちらこそありがとうございました。

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