シェアリングエコノミー本丸のホームシェアをネクスト井上高志が読み解く

2016/01/27

 
株式会社 ネクスト 代表取締役社長 井上高志 × Longine IR部

株式会社 ネクスト(証券コード2120。以下、ネクスト)代表取締役社長 井上高志氏に、民泊(ホームシェア)の規制緩和があった場合の国内不動産市場の読み筋や同社の事業戦略の可能性についてお伺いしました。
 

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

●ネクストは、HOME’Sで約600万件の空き家・空室情報を持っており、Airbnbと同様の立場で民泊のマッチングサービス・プラットフォームを作ることは可能。
●民泊のマッチングサイトを運営するとなっても、HOME’Sを持っていることは強みになるであろうし、物件情報だけではなく、その物件情報を保有する1万7000店舗の不動産業者とのネットワークもあり、様々な事業領域に挑戦可能。
●地方創生に必要なのは、プロデューサー、受け入れキャパシティ、資金調達の3つ。
 

シェアリングエコノミーの本丸である民泊の市場規模

Longine IR部(以下、Longine):シェアリングエコノミーという言葉も少しずつ目にするようになりました。その中でもAirbnb(エアー・ビー・アンド・ビー)のような民泊サービスやUBER(ウーバー)のような自家用車のシェア(ライドシェア)サービスも海外で大きく注目されています。ネクストは賃貸や新築分譲などの住居を扱っている観点から、シェアリングエコノミーという新しい潮流をどのように捉えているのでしょうか。

株式会社 ネクスト 代表取締役社長 井上高志(以下、井上):シェアリングエコノミーと一口に言っても様々なものがあります。UBERのサービスをはじめとした「乗り物のシェア」、Airbnbのサービスのような「空間のシェア」、オークションやフリーマーケットのサービスを活用した「モノのシェア」、クラウドファンディングの仕組みを利用する「お金のシェア」、また空き時間や人手のシェアなどもあげることができます。その中でも、現在は規制があり機動的にサービスを開始することができませんが、規制緩和で経済に対して影響が大きいのがホームシェアとライドシェアではないでしょうか。新経済連盟の試算では、ホームシェアによる経済効果は、ゲストによる消費等(約3.8兆円)、ホストによる投資等(約1兆円)、インバウンド消費(約7.5兆円)の合計で10兆円にものぼると見られています。

Longine:日本の現在のGDPが500兆円程度であることを考えると、規制緩和で期待できる経済効果が10兆円という水準は決して無視できない規模ですね。

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株式会社 ネクスト 代表取締役社長 井上高志
空き家問題へのソリューションはホームシェア

井上:私がホームシェアに注目したのは経済効果があるからだけではありません。それ以前の問題として、国内の空き家が今後ますます増加することに危機意識を持っています。人口減少により国内の空き家の数は今後もさらに増えることでしょう。

Longine:空き家問題に対して、何か打ち手はあるのでしょうか。

井上:空き家問題に関して危機意識があると申し上げましたが、一方で外部環境の変化はそうした問題を解決することに対して追い風とも言える状況となっています。これを活用しない手はないと言えます。

Longine:外部環境の変化とはどのようなものでしょうか。

井上:円安により外国人旅行客が日本に旅行しやすくなったことや日本の観光資源が改めて見直されていることなどから、外国人観光客の流入が増えています。こうしたインバウンド需要を取り込むことは1つの解決策となるでしょうね。

 
ネクストはAirbnbを作れるのか

Longine:国内は民泊に関しては規制がありますが、世界では既にAirbnbのようなサービスもあります。仮に国内での民泊に関する規制緩和があり、ネクストが民泊のマッチングサイトを作ろうとした際には、それは可能なのでしょうか。

井上:当社は、HOME’Sで約600万件の空き家・空室情報を持っています。ですから、Airbnbと同様の立場で、民泊のマッチングサービス・プラットフォームを作ることは可能です。

Longine:仮に規制緩和があった場合、ネクストとしては短期間に対応可能なのでしょうか。

井上:はい、当社での技術を活用すれば、短期間でサイトを立ち上げることは可能です。

Longine:マッチングサイトは短期間に立ち上げることが可能かもしれませんが、インバウンドの場合であれば、外国人向けの言語対応なども必要になるのではないでしょうか。短期間での対応は可能なのでしょうか。

井上:HOME’Sは現在、米国の大手不動産情報サイトに売買物件情報を掲載しており、そのサイトを経由して、海外の方からの問い合わせが頻繁にあります。問い合わせには弊社のコールセンターにて一時対応を行い、クライアントに送客するフローをとっていますので、そうした現在のサービス基盤を活用することが可能です。

Longine:国内での民泊の規制緩和が行われれば、Airbnbなど既に世界でサービスを行っている企業だけではなく、様々な国内企業が民泊のマッチングサービスに参入してくるのではないでしょうか。そうした場合のネクストの競争優位について教えてください。

井上:おそらく同業他社や賃貸管理会社などは民泊事業に興味を持っているでしょうが、当社は日本全国600万件の物件データベースを自社メディアとして持っていることが強みになると思います。また、物件情報だけではなく、その物件情報を保有する1万7000店舗の不動産事業者とのネットワークもありますので、仮に民泊のマッチングサイトを運営するとなっても、様々な事業領域に挑戦することができます。
 

ホームシェアによる空き家活用の可能性とは

Longine:民泊の規制緩和をはじめとするホームシェア活用の可能性はどれくらいあるのでしょうか。

井上:インバウンド需要に対応させるといういわゆる民泊は、空き家の用途開発の1つですが、空き家の活用方法はそれだけには限りません。私は民泊の規制緩和を進める以外にも、ホームシェアには様々な可能性があると考えています。

Longine:さらに具体的に教えてください。

井上:たとえば、高齢化が進んだ地区では空き家を高齢者に対する通いのデイケアセンターにしてもいのです。また、大都市部では待機児童問題があります。現在の認可保育園は土地も建物もすべて自前で保有しなければなりませんが、東京の都心に保育園を積極的に開設したいという方は少ないでしょう。それであれば、認証保育所として空き家を利用するという選択肢も十分考えうるわけです。

Longine:ホームシェアは都心部にのみメリットがある話でしょうか。地方での空き家利用はいかがでしょうか。

井上:私は個人的には、日本の地方は計り知れないポテンシャルを持っていると思います。たとえば、地方の海に近い町であれば、サーファーが集まるシェアハウスを作ってもよいでしょう。また、日本の田園風景だって、外国人旅行客にとっては自国では体験できない神秘的な景色であることも多いです。田植えの時期の青々とした風景や稲刈りで黄金色に輝く時期などは最高ですよ。
 

地方が輝きを取り戻すために必要な3つのポイント

Longine:確かに各地方でそれぞれ観光資源があるというのは理解できるのですが、地方と地方の格差が生まれてしまうような気もしますが、いかがでしょうか。

井上:決してそうは思いません。ただし、地方のプロデュースとその内容を発信するためのメディアは必要になると思います。話は少し変わりますが、先日も当社の役員合宿で林業の有名な岡山県西粟倉村に行きました。その狙いは、当社の役員にもどのようにすれば地方を活性化することができるかを考えてほしかったからです。そこでは天然ウナギやスズメバチの幼虫、狩りをしたイノシシやシカなどを食べさせてもらいましたが、これがまた今まで食べたことがないくらいおいしかったです。景色は良いですし、食べ物もおいしい。また、人情も厚く、これほど素晴らしい場所はないと思いました。今必要なのは、こうした観光資源を見出しプロデュースすること、またそれを発信することだと思います。

Longine:そうしたアイデアで地方の活性化も図ることができるような気がしますが、ボトルネックはないのでしょうか。

井上:3つあります。1つはプロデューサーです。プロデューサーを確保するためには、地方で活躍したい人材を紹介する仕組みが必要でしょう。次いで必要なのが受け入れ側のキャパシティです。地方のキャパシティについては、現状では一度に多数の観光客を受け入れるキャパシティがないケースが多いです。そこは空き家を活用すればそのキャパシティも増やすことは可能です。最後のポイントは資金調達です。たとえば、ホームシェアを明日から始めましょう!といっても、実際明日から他人に家を貸すことができる準備ができている人はそれほど多くないでしょう。貸し出すためには、空き家のリノベーションやリフォームが必要になるはずです。ただ、今家を持っていても、リノベーション費用に数百万円かかりますよといわれたら、手持ち資金のない方もいるでしょうし、費用をかけても空室が埋まらないというリスクを考え、大金を投資してまで始めたいという人は多くはないのではないでしょうか。当社はメディアを持っているので、いずれの問題についてもマッチングをすることで対応する準備ができるはずです。
 

ホームシェアを普及させるために必要な資金調達

Longine:確かに初期投資を考えれば、ホームシェア事業というのは誰にとっても身近な存在というわけではないですね。ホームシェアのすそ野を広げるにはどのようなアイデアがあるのでしょうか。

井上:初期投資については、クラウドファンディングを活用すればよいと考えています。たとえば、一口50万円といった小額投資で、民泊で計上した収益の一部を出資額に応じて還元するというモデルはどうでしょうか。こうすれば、空き家は立派な投資対象にもなりますし、空き家を活用したカフェやレストランなどの商業施設であれば、そこから計上される収益は投資家に還元されるモデルとして魅力的ではないでしょうか。

Longine:電子募集取扱業務に含まれる投資型クラウドファンディングについての規制緩和の話ですね。

井上:今回の規制緩和では、発行価額の総額1億円未満かつ1人あたりの払込額50万円以下という少額の要件を満たせばクラウドファンディングが可能となりました。

Longine:1億円あれば、大規模かつ相当程度広範なリノベーションが可能ですね。

井上:そうですね(笑)。初期投資の資金調達が外部から可能となれば、古民家ビジネスなどはこれまで以上に盛り上がると思います。たとえば、築100年を超えた古民家を改装し宿泊所にして貸したいという人も、もっとたくさん出てくると思います。
 
不動産市場は株式市場よりも巨大

Longine:クラウドファンディングの投資対象の可能性は日本だけでしょうか。

井上:いいえ、そうとは限りません。グローバルに展開することも可能です。ただし、各国で不動産の業法規制は異なりますし、税制も異なるので、国ごとの法律に準拠した準備が必要になります。一方で、米国や英国といった先進国であれば、法制度などが整備されているので取り組み易いともいえます。株式市場の時価総額は全世界で7,000から8,000兆円程度(Longine IR部注:そのうち日本は600兆円程度。2015年11月末時点)あると思いますが、私の試算ですと、不動産市場は5~6京円と株式市場よりさらに大きいので、不動産へのクラウドファンディングの取り組みが実現すれば非常に大きな事業機会と言えます。

Longine:ここまで今後の規制緩和や空き家をきっかけとした様々なマッチングサービス、クラウドファンディングの未来予想図のお話がありましたが、今後ネクストにとっての業績への影響はどのように考えればよいでしょうか。

井上:ここまでお話しした内容は、今後の規制緩和や市場動向などを基にした私の仮説です。現時点で当社がどのように取り組むのか、またどの程度業績に影響があるのかは未知数です。しかし、私は経営者として規制や業界が変わるという前提に立った時に、当社に何ができるのかを常に考えています。冒頭にお話しさせていただいたように、ホームシェアの概念を日本に導入することができれば消費や投資が大きく刺激されるわけですから、そうした状況で当社が民泊やリノベーション・リフォーム、クラウドファンディングなど各領域で顧客と接点を持つことができていれば、現在まだ見えていない事業が大きくなっている可能性はあります。

Longine:本日は長時間ありがとうございました。

井上:こちらこそありがとうございました。
 

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