ミスミのVONA事業とは-生産間接材全体におけるプロセス革新を狙う

2016/01/07

株式会社ミスミグループ本社 専務取締役 池口徳也 × Longine IR部

株式会社ミスミグループ本社(証券コード:9962。以下、ミスミ)専務取締役 池口徳也氏に、流通事業であるVONA事業をミスミが取り組む狙いとその将来性についてお伺いしました。

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

流通事業であるVONA事業は、製造業顧客の生産間接材の購買活動を抜本的に効率化するユニークな事業。
製造業の現場を知り尽くしたミスミだからこそ、顧客にメリットが出るようなメーカー事業と流通事業(VONA事業)のワンストップソリューションが提供できる。
メーカー事業×流通事業(VONA事業)で、他に類を見ないグローバルな生産材のプラットフォームにしていきたい。

VONA事業とは

Longine IR部(以下、Longine):これまで2回にわたりお話しをお伺いしてきました。第1回では事業の全体像やビジネスモデルについて、第2回では現在の主力事業であるFA(ファクトリーオートメーション)事業のグローバル展開について詳しいお話をいただいてきました。そこで今回は成長著しいVONA事業について教えてください。

株式会社ミスミグループ本社専務取締役 池口徳也(以下、池口): VONA事業とは、新たな事業としてミスミが取り組んでいる流通事業のことです。業界最高水準のEC基盤を活用して、ミスミブランド以外の他社商品も含め既存顧客層及び新規顧客層に販売するというビジネスです。ちなみに、VONAというのはVariation & One-stop by New Allianceの略称であり、幅広い品揃えをワンストップで提供するという意味を込めています。

Longine:どのような商材を取り扱っているのですか。

池口:生産間接材と呼ばれる領域の商品です。生産設備関連部品、製造副資材、MRO(消耗品)など多岐にわたります。FAの機構部品に加え、センサ・スイッチ、ねじ・ボルト、キャスタ、コネクタ、ケーブル、エンドミル、ペンチ、ワイヤー線、台車、作業用手袋、パーツクリーナーといった製造業の現場で必要とされる幅広い商品をイメージして下さい。

Longine:取扱点数はどれくらいですか。

池口:VONA事業を含めた会社全体で1,200万点 で、取扱メーカー数は国内外合わせて2,300社を超えています。現在もまだ増え続けています。

図表1:VONA事業の取扱商品の内訳
misumi-1

 
なぜいまVONA事業なのかー生産間接材を含めたものづくりの購買改革という新しいステージ

Longine:ミスミはもともと商社からスタートし、後に製造機能を取り込んで成功したという歴史がありますが、いまなぜ流通事業を強化するのでしょうか。

池口:世界のものづくり革新が第1ステージから第2ステージに入ってきたという認識のもと、これを我々のビジネスチャンスだと考えているからです。

Longine:第1ステージの改革とは何ですか。

池口:製造現場における標準化の動きです。これまでミスミがメーカー事業を伸ばすことができたのは、製造現場のエンジニアがそれまで一品一品その都度作りこんでいた特注品を、カタログやウェブサイトを用いて標準化し、高品質・低コスト・確実短納期で顧客にお届けし(ミスミQCTモデルと呼びます)、生産効率化に大きく貢献してきたからです。

Longine:では第2ステージの改革とは何ですか。

池口:これはより広範な生産活動全体にかかわる改革の動きを指しています。その中でも間接材に費やされているコストは、製造業の売上の約3割を占めるとも言われていますが、この分野を含めた設計から試作・生産・保全購買にわたる総合的なプロセス合理化の動きが強まっています。

Longine:生産間接材の市場にはどのような点で効率化の余地があるのですか。

池口:生産間接材を供給するサプライヤーサイドと生産間接材を購買する製造現場サイドという購買プロセスの両サイドに、大きな効率化の余地があると考えられます。

Longine:購買プロセスの両サイドはどのような状況になっているのですか。

池口:サプライヤーサイドをみると、多くのサプライヤーが供給する非常に多品種の商品が、多段階の卸業者によって流通されています。流通コストと価格の透明性に多くの改善の余地があります。製造現場サイドをみると、大きな企業では、各事業単位ごとに都度発注をしています。商品の選択をする人や発注・決済・検品をする人が多岐に分かれ管理が複雑化しています。ここにメスを入れて効率化を図る動きが製造業で強まっています。

Longine:VONAが狙う市場規模はどれくらいですか。

池口:生産間接材市場は、日本で5.6兆円あると言われています。しかしながら、そのほとんどは旧態依然とした多段階流通網によって占められているためEC化率が極めて低く、我々にとって大きなチャンスがあると見ています。欧米でも、アメリカの7兆円をはじめとして大きなマーケットが存在しており、今後はアジアでも市場規模が大きく拡大することが予想されています。

図表2:国内生産間接材市場とVONA事業の狙うドメイン
misumi-2

Longine:ミスミがVONA事業を手掛け始めたのはいつですか。

池口:今から約5年前に準備を始めました。まずは充分な参画メーカー数を確保することで品揃えの強化に努め、2014度からその急拡大に向けた取り組みを強化しています。
 
急速に立ち上がるVONA事業―顧客における購買プロセス管理の可視化と情報格差の解消

Longine:2015年度上期におけるVONA事業売上高は約286億円で前年同期比約+28%の増収になっています。この伸びについていかがお考えですか。

池口:おかげさまで顧客にしっかり支持されており、顧客数は順調に拡大し、売上高も高い成長率を示しています。しかしながら、先ほど述べたように市場規模が極めて大きいため、まだまだ成長させる余地は大きく存在していると考えています。

図表3:VONA事業売上高の推移(単位:億円)
misumi-3

Longine:顧客に受け入れられている要因は何でしょうか。

池口:顧客層を2つにわけて説明したいと思います。まずは、自動車や電機といったグローバルにサプライチェーンが構築された大手製造業を中心とする層です。企業の長い歴史のなかですでに個社ごとに組織購買のプロセスができあがっており、ECの活用という点では効率化が進んでいませんでした。しかしながら、購買プロセスにミスミのVONA事業を組み込むことによって、商品の検索や価格の確認、発注、決済などを組織購買の特性をふまえてEC上で全て行うことができるようになります。これを法人購買管理の可視化と呼んでいますが、これによって、購買先の集中や購買プロセスの集中化が可能になり、管理コストを大きく下げる事が可能になります。海外で製造された商品も含めてグローバルな調達が可能になりますから、全社レベルで最適な商品の選択ができるようになります。こうしたコスト削減の実績が上がるにつれ、顧客の裾野拡大と深掘りが進んでいます。

Longine:大手製造業といえば、既にミスミのFA事業や金型部品事業の顧客であることが多いのですか。

池口:そうですね。すでにミスミのECプラットフォームの良さを理解していただいていますので、VONA事業の長所をしっかり訴求しVONA事業の利用につなげています。

Longine:もう1つの顧客層とはどういった層を指していますか。

池口:比較的規模の小さな工場や、最近では個人事業に近い形でメーカー業を営む人も増えてきました。こうした層は、極めて裾野が広いものの従来は商品を納入する卸業者に商品情報の収集を依存せざるを得ない立場にありました。言わば情報弱者であったとも言えます。しかし、VONA事業を利用することで、世界中の生産材情報にアクセスできると同時に、価格の透明性を享受し発注プロセスの合理化が図ることができます。そこでこうした層への訴求を高めていくために、検索エンジン対策やウェブ広告といったマスに近い取り組みもしっかりと行い、VONA事業の認知を高めてきました。ミスミにとって新しい顧客となる方も多いのですが、こうした新規顧客の開拓にも手ごたえを感じています。
 
VONA事業に参画するサプライヤーのメリット

Longine:サプライヤーも順調に増加していますが、どんな反応でしょう。

池口:積極的に参画を頂いているという印象です。もちろん、他のサプライヤーとの競争が生じてくるという面もありますが、販路の拡大が見込めるというのは大きなメリットです。販路は、国内のみならずグローバルへと大きく拡がり、ミスミの充実した顧客網へのアクセスが可能になります。また、多段階流通網を通さずに顧客にダイレクトにアクセスできますから、商品のエンドユーザーの動向がつぶさにわかるようになり、より効果的な商品開発やマーケティングが可能になることも魅力的に感じるはずです。
 
メーカー事業×流通事業(VONA事業)―ワンストップ化を実現するミスミの優位性

Longine:流通事業(VONA事業)とメーカー事業との間にはどのような相乗効果があるのですか。

池口:大きく分けて2つあると考えています。ひとつは購買のワンストップ化によって顧客あたりの売上を引き上げるという点です。

Longine:具体的にはどういうことですか。

池口:生産設備を作るシーンを考えてみましょう。一般に、部品点数ベースで60%が特注品、40%が標準品に分類されると言われています。前者の特注品とは、以前は一品一品図面をひいてその都度特別に発注するというプロセスが必要でしたが、ミスミはここに標準化というコンセプトを持ちこんで多くの顧客に支持されてきました。とはいえ、ミスミのメーカー事業がその全てをカバーしているというわけではありませんでした。一方で後者の標準品と呼ばれるものは、ミスミのメーカー事業ではカバーしきれず、またその購買プロセスには様々な非効率な面があることを説明してきました。VONA事業を開始して以降、顧客はミスミの単一のプラットフォームにおいて、VONA事業取扱商品も含めて非常に多くの部品をワンストップで購買可能になりました。それに伴って購買プロセスにかかる管理コストが大きく低下しますので、顧客には大きなメリットが生まれることになります。これが我々の商機をますます拡大させていくことに繋がります。

Longine:もうひとつの相乗効果とは何ですか。

池口:全く違った商品でありながら、事業インフラの共通化を図ることができるという点です。例えば、物流を例にとると、メーカー事業の商品もVONA事業の商品も共通の物流プラットフォームに乗せることが可能になるため、そこにはコストを始めとした様々なメリットが生まれます。これは、個々の事業を個別に推進した場合との大きな違いです。

Longine:ECを活用した流通事業という捉え方をすると、B2C向けにECを展開するプレイヤーのような従来とは異なる競争相手が増えていきそうに思います。今後の競争環境についていかがお考えでしょうか。

池口:ミスミには、他に真似できない特長ある競争力があると考えています。ミスミは製造業の顧客に特化して最適なプラットフォームを提供するという能力を持っています。この領域でわれわれは、いわばオンリーワンの存在であると自負しています。

Longine:個人消費者をターゲットにしている B2C型のEC企業との違いはどういった点にあるのでしょうか。

池口:B2Bの分野で成功するには、どうしても顧客ごとの個別プロセスに合わせたカスタム対応力が求められます。そのためには、個々の顧客を熟知していなければなりません。ミスミは長年にわたるメーカー事業での経験を通じて、ものづくり現場の特徴を知り尽くしています。エンジニアや設計者といった製造現場がどのようなサポートを必要としているのか、顧客1社ごとにどのようなカスタマイズが必要なのかといったことを常に工夫し続ける柔軟性も備えています。
 
VONA事業の収益性を考える

Longine:VONA事業の成長性やミスミが提供することの意義は理解できました。しかし足元の収益をみると、売上高の急成長に比して利益面では足踏みしているようにも見受けられます。

池口:生産間接材市場という極めて大きな市場でEC化が着々と進展しているという意味において、マーケットは成長の真っ只中にあります。そこでは、他に先んじて存在感を拡大させていくことが極めて重要な戦略となるため、先行投資的な経費投入が必要な局面であるとご理解下さい。

Longine:利益率はいずれ改善するのですか。

池口:はい。ある一定の規模に達した時点からそういった段階に入っていくと考えています。利益率が改善していくためには、主に3つのポイントがあります。ひとつは、VONA事業における商品取扱量が増加するに従って、スケールメリットが働き調達コストが下がっていくことです。もうひとつは、事業が拡大していくにつれ事業インフラを維持していくための固定費の負担が軽減していくということです。最後にECの根幹は情報流通です。情報の限界コストは限りなくゼロに近く、よってVONAの利用者が増えることで、従来の流通マーケティングコストは逓減していきます。しかしながら、VONA事業では今後グローバル展開を進めていくこともあり、EC基盤や物流基盤、更には顧客拡大のためのマーケティングプロモーションといった分野でまだまだ投資が必要な時期が続くと考えています。これはミスミにとって大きなビジネスチャンスですので、継続的な投資につき投資家のみなさまにご理解をお願いしている点です。
 
メーカー事業×VONA事業で描くミスミの将来戦略

Longine:ミスミのプラットフォームでメーカー事業と流通事業を同時に提供し、顧客にワンストップ購買のメリットを活かしてもらうという事業の方向性をよく理解できました。ではその先の事業展開についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

池口:現在、グローバルで製造業のプロセス革新が潮流になっています。ドイツのインダストリー4.0や米国のIoT、中国製造2025といった動きがその代表的なものですが、その本質は時間戦略です。そこでは、製造プロセスの更なるスピードアップやサプライチェーンの同期化といったことが加速すると考えています。

そこに向けてわれわれは、プラットフォームの使い勝手や競争力を不断に高めていかなければなりません。それに加えて、今後は顧客の業務システムとわれわれのプラットフォームを同期化していく必要があります。もともとわれわれのプラットフォームは、単品発注・低価格・短納期を実現するという思想で作られてきました。従って、現在の世界的な潮流にはまさにぴったりのプラットフォームだということが言えます。

misumi-4
株式会社ミスミグループ本社 専務取締役 池口徳也

 
「日本発のビジネスモデルをグローバル化する」強い思い

Longine:池口さんは約10年前にミスミにご入社されたそうですね。他社のビジネスを経験された後にミスミでビジネスに携わっていらっしゃるわけですが、いまミスミにどんな手ごたえを感じていますか。

池口:私は以前は、総合商社でIT関連の事業に携わっていましたが、主な仕事は海外のものを日本に導入するという事業でした。ミスミにおいては、オペレーション系から始まり、金型部品事業やFA事業という様々な事業の責任者を務めてきましたが、ミスミにおいて日本発のビジネスモデルをグローバルに展開するということに大きな魅力を感じています。

Longine:グローバル展開に関していうと、ミスミにおいて史上初となる地域組織に全権を持つ地域事業組織が設けられたそうですね。

池口:はい。中国・アジア・欧州・米州という各地域に地域企業体を設置しました。これによってわれわれのプラットフォームを地域ごとにさらに最適化し、世界中のものづくりに不可欠な存在になろうと考えています。いわば日本発のビジネスモデルをグローバルスタンダードにすることを目指すということです。

Longine:楽しみにしています。今日はお忙しいところありがとうございました。

池口:こちらこそありがとうございました。
 
 

株式会社ナビゲータープラットフォーム
Longine企業IRレポート   株式会社ナビゲータープラットフォーム
産業・企業に精通した証券アナリストが集うLongineが、上場企業を株式投資家の目線で分析します。Longine企業IRレポートは、対象企業の依頼に基づき、対象企業の特徴を周知すること、読者に情報を提供することのみを目的として作成しています。掲載ページ(Longine:https://www.longine.jp、株1(カブワン):http://www.kabu-1.jp
企業IR記事に関する重要事項(ディスクレーマー)
  1. 本記事は、株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、「当社」)または執筆業務委託先が、対象企業の依頼に基づき、対象企業から対価を受け取って作成しています。対象企業の特徴を周知すること、読者に情報を提供することのみを目的として作成したものであり、投資に関する意見や判断を提供するものではなく、証券その他の金融商品の売買その他の取引の勧誘を目的としたものでもありません。
  2. 本記事は、当社または執筆業務委託先が、対象企業への取材で得た情報をはじめ、信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。
  3. 本記事で提供される見解や予測は、記事発表時点における当社または執筆業務委託先の判断であり、予告なしに変更されることがあります。
  4. 当社は、記事における誤字脱字等、記事の大意、結論に影響が無いと当社が判断する修正に関しては、読者に特段の通知をすることなく、行うことがあります。
  5. 本記事で提供される如何なる情報等および調査・分析記事に、またはそれらの正確性、完全性もしくは適時性等に、読者が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害またはその他の損害について、当社および当社に記事を提供する執筆業務委託先は責任を負うものではありません。
  6. 本記事に掲載される株式等の有価証券および金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢など様々な影響により、その価値を増大または減少することもあり、また、価値を失う場合もあります。投資をする場合における当該投資に関する最終決定は、必ず読者ご自身の判断と責任で行ってください。
  7. 当社および執筆業務委託先は、記事の内容に関する読者からのご質問への対応など、個別相対性のある追加サービスは行いません。但し、記事内容につき不適切な内容があり、当該内容について確認、修正、削除依頼をいただく場合はこの限りではありません。
  8. 本記事に掲載されている内容の著作権は、原則として当社または執筆業務委託先に帰属します。本記事で提供される情報は、個人目的の使用に限り、配布また頒布が認められますが、原則として、読者は当社の承認を得ずに当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行う権利を有しません。
  9. 本重要事項(ディスクレーマー)は随時アップデートされることがあります。最新の内容をご確認ください。
企業IR記事に関する当社および執筆者による表明
  1. 対象企業から対価を受け取って企業IR記事を執筆する場合、当該契約期間中、当社および執筆業務委託先がLongine(ロンジン)において、対象企業に対する投資に関する意見や判断に言及する記事を執筆することはありません(契約開始以前の記事は掲載を継続し、また、契約終了後は投資に関する意見や判断に言及する記事の掲載を行うことがあります)。但し、特定のテーマに関する関連銘柄として複数企業を紹介する場合において、対象企業がその内の一社であるようなケースでは、関連銘柄の一例として紹介することがあります。
  2. 当社及び本IR記事の執筆に関与した執筆業務委託先と対象企業との間に重大な取引関係、利益相反関係はなく、また、当者及び本IR記事の執筆に関与した執筆業務委託先は対象企業の株式(転換社債を含む)を保有していません。例外的に株式保有や重大な取引関係がある場合は、IR記事の末尾にその事実を明記致します。

コラム&レポート Pick Up