新たな価値創出による成長と、重点戦略地域を中心とした海外事業拡大-パナソニックES社

2015/12/02

パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 吉岡民夫社長 × Longine IR部
 
パナソニック株式会社(証券コード6752。以下、パナソニック)代表取締役専務 エコソリューションズ(以下、ES)社 吉岡民夫社長にES社の2018年度へ向けての成長戦略について、国内の住宅及び非住宅関連事業、海外事業の戦略をお伺いしました。
 
Longine IRから投資家に伝えたい3つのポイント

●国内の新築住宅着工戸数が減少する中でも、ES社は新たな価値創出により成長してきたが、今後は住宅関連事業で、リフォーム、エネルギーマネジメント(エネマネ)、エイジフリーの3つの注力分野における新たな価値創造で成長していく。
●パナソニックグループは、家そのもの(パッシブ)から、HEMSに対応できる電気設備や家電(アクティブ)を商材として持っている、世界的にも類を見ないユニークな企業。
●海外事業は、アジア各国を始めとして、2007年にインドのアンカー社、2014年にはトルコのヴィコ社を買収し、中近東、CIS諸国、アフリカへと事業展開をしている。
 
国内市場が縮小でも成長させる住宅関連事業のビジネスモデル

Longine:ES社の住宅市場向け事業は国内比率が高いですが、新設住宅着工は以前ほど多くなく、国内の人口動態なども考えると2018年度にかけても今後大きく改善する見通しは持ちにくいと思います。パナソニックの住宅関連事業はどのように事業展開をしていくのでしょうか。

パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 吉岡民夫社長(以下、吉岡):新設住宅着工戸数については長期的には減少していくのは避けられないという前提で経営をしています。しかし、当社がマクロ環境に影響され、過去において売上高が減少したかといえばそうではありません。当社調べでは、旧松下電工時代の15年前の国内売上高とES社の2014年度国内売上高実績を比較すると、事業再編の影響は除いて、実質的には国内売上高は+20%増えていると算出できます。その間、新設住宅着工戸数の▲25%減など国内市場が減少していることを考慮すれば、当社の売上高の伸びがいかに堅調であったかを理解することができると思います。

Longine:なぜ新築住宅着工の減少により影響を受けなかったのでしょうか。

吉岡:理由は当社が「新たな価値の創出」に注力してきたからと言えます。具体的には3つあります。ひとつは新しいビジネスを創ってきたからです。たとえば、「エイジフリー」という介護ビジネスや木造住宅の工法/部材を提供する「テクノストラクチャー」、ホームエレベーター事業などはこの間に創ってきた事業です。次いで、既存製品を当社の新製品が着実に置き換えて拡大してきているということがあります。「アラウーノ」は、一般的には陶器の便器に対して樹脂の便器を提案することで売上を拡大していますし、当社の住宅用分電盤の国内シェアは高いのですが、エネルギーマネジメント向けにHEMS機能を搭載した住宅用分電盤を投入するなどし、既設商品を置き換えながら売上を伸ばしています。最後の理由は、機能やデザインを改善させながら販売単価を上げることができているからです。単なるコスト転嫁や値上げではなく、お客様にとって本当に価値を感じていただけるものを提供できた結果です。このように住宅市場が減少したとしても、事業を新たに生み出したり、収益性を向上させるビジネスモデルを強化することができれば、マクロ環境が仮に厳しい状況であっても2018年度にかけても十分に成長できると見ています。

 Longin1

  パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 吉岡民夫社長

住宅事業の3つの注力分野-リフォーム、エネマネ、エイジフリー

Longine:住宅事業の注力分野として3分野をあげています-ひとつはリフォーム、次いでエネルギーマネジメント、最後にエイジフリー。パナソニックはどのように事業展開をしていくのかひとつずつ教えてください。

吉岡:まずはリフォームですが、着実に需要は伸びていくと思いますし、当社のリフォーム向け商材の売上高も着実に増加しています。

Longine:リフォーム事業でのパナソニックの強みは何でしょうか。

吉岡:そもそもの前提として、当社は住宅関連の商材をたくさん持っています。しかし、それだけではリフォーム事業での強みにはなりません。当社の強みは、お客様がアクセスする接点がたくさんあることです。大きなリフォームから言うと、住宅メーカーであるパナホームの子会社である「パナフォームリフォーム㈱」が、大規模リフォーム(リノベーション)を強みとしています。また、ES社の販売ルートでは、「リファインショップ」や「わが家 見直し隊」と称して工務店を組織化しています。さらに、最近、数万円程度の修理やリフォームを行う「プロイエ」という事業を実験的に始めました。そして街の家電店であるパナショップも当社にとって重要なお客様との接点です。「スーパーパナソニックショップ」と呼ばれる店舗は、地域のお客様と多くの接点を持っています。特に高齢の方は家電量販店に行かずに近くのパナショップに依頼することも多いです。パナショップでもリフォーム関連売上高が全体の20から30%近くになっている店舗も出てきています。

Longine:顧客との接点はこれまでにもあったかと思いますが、今後はその接点をどのように活用していくのでしょうか。

吉岡:たくさんの接点を活用して、お客様がリフォームをするときにどこに相談すればよいのかをはっきりさせてきたいと考えています。リフォームをしたいという漠然とした思いはあるのですが、イメージを具体化し、意思決定をするきっかけが必要です。当社では「Panasonicリフォーム」というコンセプトを掲げています。全国にショウルームが63か所ありますが、2018年までに70か所にまで拡大します。ショウルームでは、最新のテクノロジーを活用し、リフォームのイメージをより具体的に持っていただけるような体制を整えています。そこでリフォームを行いたいということであれば、当社が責任を持って提携施工店を紹介したり、場合によってはパナソニックグループのリフォーム店(例えば「パナホームリフォーム㈱」)で一括して対応することもできます。当社のショウルームで相談することでリフォームのイメージを具体化し、施工業者までコーディネートできるので効率的ですし、お客様も安心していただけると思います。
 
HEMS対応機器を活用したアクティブ型エネルギーマネジメント

Longine:パナソニックのエネルギーマネジメント(エネマネ)事業はどのような特徴があるのでしょうか。

吉岡:エネマネには2つのアプローチがあると考えています。ひとつは、パッシブ型、もう一方はアクティブ型エネマネです。パッシプ型エネマネは、家そのもの、つまり躯体で遮熱や断熱をしたり、風通しを良くして省エネにする考え方です。一方アクティブ型エネマネはHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)やBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)を通じて使用する電力をコントロールしていくものです。パナソニックグループは、家そのもの(パッシブ)から、HEMSに対応できる電気設備や家電(アクティブ)を商材として持っている、世界的にも類を見ないユニークな企業です。2016年に電力小売りの自由化が始まりますが、住宅に限って言えば、2017から18年にもなれば、HEMSを通じて電力の売買をスマートに行うような状況になっていると思います。

Longine:HEMSは既にありますが、今後はどのように変わっていくのでしょうか。

吉岡:現状のHEMSは、使用電力や発電電力の見える化ができるだけでコントロール機能が殆どありません。また、そもそも電力小売りの自由化が行われていないなど、環境が整っていないということもあり、普及は限定的でした。当社は住宅向け分電盤国内市場シェアが金額ベースで60%程度ありますが、まずはその市場向けに先進的なHEMSに対応できる分電盤を投入することにしました。

Longine:先進的なHEMSとはどのような機能なのでしょうか。

吉岡:今後HEMSの役割はインフラや制度などの変化とともに変わっていくと思いますが、そうした環境の変化にHEMSも対応しないといけません。今回はそうした変化に応じて機能を追加できるような分電盤となっています。たとえば、将来HEMSをクラウドに接続してデータを解析できる機能や、スマートメーターを介してどの電力が一番安いかを判断して購入したりすることができる機能を追加できるようにしています。また、この新しい分電盤をこれまでの分電盤と同じ価格で販売しています。国内の分電盤市場で大きな市場シェアを持つ当社が、環境変化に対応可能な分電盤を積極的に普及させる仕掛けをすることで、日本のHEMSを一気に変えたいという狙いもあります。

Longine:今後のエネルギーマネジメントはどのように変わっていくのでしょうか。

吉岡:電力の調達コストや発電コストを考慮し、経済合理的に電力を売買することは当然としても、今後さらに広がっていくのは地産地消型エネルギーのあり方だと思います。太陽光発電といった再生可能エネルギーの発電コストが下がることで、グリッドパリティも実現できる時代が来ることでしょう。その際には、先ほどのパッシブ型エネマネとともにHEMSを介したアクティブ型エネマネにより、エネルギーを自給自足するという考え方がさらに広がっていると思います。
 
パナソニックがエイジフリー事業を行う理由

Longine:エイジフリー事業はなぜパナソニックで行わなければならない事業なのでしょうか。

吉岡:旧松下電工時代の1998年に事業参入をしました。なぜ当社で行っているかといえば、この事業が高齢者向けの住空間を取り扱っているからです。現在、物販のみでなく、サービス事業も行っています。サービス事業というのは高齢者の方が終身で住まわれる有料老人ホームや在宅におられる方が通いで利用されるデイサービスなどになります。今後、数日間宿泊(ショートステイ)することができる施設も増やしていきます。そうした施設は当社製品を使用することで上品で使いやすい空間を提供し、運営することで利用者が増えています。

Longine:有料老人ホームやデイサービス、ショートステイなどは、日本が高齢化社会を迎える環境の中で、「街づくり」には欠かせないポイントになるのでしょうか。

吉岡:当社はサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を積極的に展開していますが、一拠点の規模は20室程度の住居です。基本は3階建てで、2・3階部分が高齢者向け住宅、1階はデイサービスなどを行う小規模多機能型居宅介護を併設した施設になっています。看護師が24時間体制でサポートする拠点もあります。小規模多機能型居宅介護の施設は行政からの制限もあり、高齢者の行動できる範囲に合わせて、中学校区に1カ所を目安に、地域コミュニティ単位で介護サービスが展開されることになります。

高齢者は現在住んでいる場所から離れた遠くの高齢者住宅には入りたくない傾向があります。現在CCRC(継続介護付きリタイアメントコミュニティ)という高齢者向けコミュニティという発想がありますが、個人的には、高齢者にとっては学校に通うような年齢の子供も一緒に暮らせる街の方が良いのではないかと考えています。

Longin2

パナソニック エイジフリー登戸(神奈川県川崎市)

出所:会社資料

Longine:エイジフリー事業でのパナソニックの強みは何でしょうか。

吉岡:介護にとって重要なことは、いかに安心感をお客様に提供できるかだと思います。私にも高齢の親がいますが、高齢者向けの施設に入居させたりすることを考えますと、やはり安心感が欲しいと思います。パナソニックが介護をサポートする、「よりそう、ささえる」というのはお客様にとって重要なメッセージになると思います。また、当社の事業を俯瞰してみますと、当社保有のセンシング技術などを活用して、介護される方の体調管理などをすることもできますし、ロボット技術を導入するなどして、介護する方の負担を軽減することもできるはずです。これは他社にはない強みと言えます。

Longine:エイジフリー事業は将来にどの程度の事業規模を目指しているのでしょうか。

吉岡:2025年に2,000億円の事業規模にしたいと考えています。2020年には要介護者が750万人程度にはなっているでしょうから、その10%を何らかの形で当社がサポートできていればと考えています。
 
東京オリンピック後も非住宅事業の需要は見えつつある

Longine:ここまで住宅関連事業についてお伺いしてきましたが、非住宅向け事業の見通しについてはいかがでしょうか。

吉岡:首都圏を中心として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの需要を始めとして、それらに関連するホテルや店舗、インフラの需要を含めて考えると、2018から2019年にかけて需要は堅調であると見ています。その後は、需要が大きく落ち込むのではないかという懸念もこれまではありましたが、最近になってオリンピック後の需要も見えだしてきています。したがって、大きく落ち込む可能性は低くなったのではないかと見ています。

Longine:非住宅向け事業でこれから期待できる商品があれば教えてください。

吉岡:一番成長率が高いのがLED照明です。これは、国内外同じことが言えます。国内は出荷ベースですでに80%がLEDです。LED照明が出始めたころはLEDチップを調達できる会社が数多く参入しましたが、現在ではLEDでどれだけ明かりの質を出せるのかという競争領域にシフトしています。この領域は当社が得意とするもので、光のスペクトルを制御する独自技術などがあり、国内で負けるつもりはありません。海外でも国内同様にLED化の波が広がっていますので、積極的に展開していきます。
 
海外事業

Longine:ここまで国内事業の事業戦略をお伺いしてきましたが、海外展開についてはいかがでしょうか。

吉岡:ES社の海外事業は、ASEAN(アセアン)、China(中国)、Turkey(トルコ)、India(インド)を重点戦略地域としており、これらの地域に注力(ON)していこう、ということで、それぞれの頭文字をとって「ACTION(アクション)」と呼んでいます。これらの人口増加が見込まれる地域で積極的に事業を展開しています。人口が増え、1人当たりのGDPが上昇してくると、爆発的に住宅が増えます。住宅が建てば配線器具を使うので、まずはそこを狙って参入し、住宅及び非住宅事業向けの電材商材を展開しています。配線器具に関しては、アジアでの当社シェアは約25%になります。アジア9か国では市場シェアが首位であり、台湾では70%、タイは50%程度の市場シェアがあります。

Longine:海外展開する場合にはM&Aも積極的に行われていますね。どのような基準でM&Aを行うのでしょうか。

吉岡:2007年にインドのアンカー社を買収し、2014年にはトルコのヴィコ社を買収しました。そうした拠点から中近東、CIS諸国、アフリカへと事業展開をしています。北アフリカはトルコのネットワークが活用できますし、南アフリカは印僑の世界です。これまでの買収は配線器具の販売ルートを手中に収めていくという考え方です。そのルート上に照明器具や換気扇、分電盤などの商材を乗せて販売していけると考えています。

Longine:アンカー社とヴィコ社の買収とグローバル市場の攻略アプローチがイメージできましたが、まだES社として強化したい地域はありますでしょうか。

吉岡:なんといってもアフリカです。住宅がすごい勢いで発展しています。配線器具などの電材商材は、フランスの電機メーカーの存在感が大きな市場で、当社と事業領域が重なりますが、当社の商材の強さをもってすれば十分に勝算はあると思います。アフリカでM&Aで取り込むような電材系の現地企業は今のところありません。したがって、現地でパートナーを見つけて一緒に市場を作って販売するということになると考えています。

Longine:本日は長時間ありがとうございました。

吉岡:ありがとうございました。頑張ってまいります。

 

株式会社ナビゲータープラットフォーム
Longine企業IRレポート   株式会社ナビゲータープラットフォーム
産業・企業に精通した証券アナリストが集うLongineが、上場企業を株式投資家の目線で分析します。Longine企業IRレポートは、対象企業の依頼に基づき、対象企業の特徴を周知すること、読者に情報を提供することのみを目的として作成しています。掲載ページ(Longine:https://www.longine.jp、株1(カブワン):http://www.kabu-1.jp
企業IR記事に関する重要事項(ディスクレーマー)
  1. 本記事は、株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、「当社」)または執筆業務委託先が、対象企業の依頼に基づき、対象企業から対価を受け取って作成しています。対象企業の特徴を周知すること、読者に情報を提供することのみを目的として作成したものであり、投資に関する意見や判断を提供するものではなく、証券その他の金融商品の売買その他の取引の勧誘を目的としたものでもありません。
  2. 本記事は、当社または執筆業務委託先が、対象企業への取材で得た情報をはじめ、信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。
  3. 本記事で提供される見解や予測は、記事発表時点における当社または執筆業務委託先の判断であり、予告なしに変更されることがあります。
  4. 当社は、記事における誤字脱字等、記事の大意、結論に影響が無いと当社が判断する修正に関しては、読者に特段の通知をすることなく、行うことがあります。
  5. 本記事で提供される如何なる情報等および調査・分析記事に、またはそれらの正確性、完全性もしくは適時性等に、読者が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害またはその他の損害について、当社および当社に記事を提供する執筆業務委託先は責任を負うものではありません。
  6. 本記事に掲載される株式等の有価証券および金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢など様々な影響により、その価値を増大または減少することもあり、また、価値を失う場合もあります。投資をする場合における当該投資に関する最終決定は、必ず読者ご自身の判断と責任で行ってください。
  7. 当社および執筆業務委託先は、記事の内容に関する読者からのご質問への対応など、個別相対性のある追加サービスは行いません。但し、記事内容につき不適切な内容があり、当該内容について確認、修正、削除依頼をいただく場合はこの限りではありません。
  8. 本記事に掲載されている内容の著作権は、原則として当社または執筆業務委託先に帰属します。本記事で提供される情報は、個人目的の使用に限り、配布また頒布が認められますが、原則として、読者は当社の承認を得ずに当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行う権利を有しません。
  9. 本重要事項(ディスクレーマー)は随時アップデートされることがあります。最新の内容をご確認ください。
企業IR記事に関する当社および執筆者による表明
  1. 対象企業から対価を受け取って企業IR記事を執筆する場合、当該契約期間中、当社および執筆業務委託先がLongine(ロンジン)において、対象企業に対する投資に関する意見や判断に言及する記事を執筆することはありません(契約開始以前の記事は掲載を継続し、また、契約終了後は投資に関する意見や判断に言及する記事の掲載を行うことがあります)。但し、特定のテーマに関する関連銘柄として複数企業を紹介する場合において、対象企業がその内の一社であるようなケースでは、関連銘柄の一例として紹介することがあります。
  2. 当社及び本IR記事の執筆に関与した執筆業務委託先と対象企業との間に重大な取引関係、利益相反関係はなく、また、当者及び本IR記事の執筆に関与した執筆業務委託先は対象企業の株式(転換社債を含む)を保有していません。例外的に株式保有や重大な取引関係がある場合は、IR記事の末尾にその事実を明記致します。