(4583:東証マザーズ) カイオム・バイオサイエンス 前期にビジネスモデル大転換

2018/05/23

chiome

今回のポイント
・独自技術であるADLib(r)システム等の複数の抗体作製技術を駆使して最適な抗体を取得し、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬品の開発候補品創出に取り組むバイオベンチャー。

・バイオ医薬品およびその中心的な存在である抗体医薬品は、従来の医薬品と比較し少ない副作用と高い効果が期待される医薬品で、現在の医療用医薬品の年間売上高の上位半数を占めている。抗体関連の技術進歩が進み開発可能領域も依然大きく、アンメットニーズへの対応が期待されるとともに、今後も着実な市場拡大が続くと見られている。

・事業内容は、同社が保有する複数の抗体作製技術(技術ポートフォリオ)を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発する「創薬事業」および、抗体作製技術等を用いて製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援する「創薬支援事業」の2つ。創薬事業においてはパイプラインの拡充と早期の導出、創薬支援事業においては新規顧客の開拓に注力している。

・①技術ポートフォリオを統合的に運用して新規の創薬研究事業を展開、②抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験等の創薬基盤技術および創薬支援機能を保有、③外部ネットワークを通じたシーズ探索の3点から構成される抗体開発候補品創出能力が成長の源泉であると同社では考えている。

・小林社長は株主・投資家に対し、「創薬事業において2件の導出実現(うち1件はオプション契約中)に加え、パイプラインの拡充も着実に進捗しており、まだ雪の下ではあるが新たな芽が息吹きつつある。現在を『第二の創業期』と認識し、全社一丸となって皆様の期待に沿えるよう邁進していくので、是非引き続き応援していただきたい。」とのメッセージを伝えている。

・前期にビジネスモデルの大転換を行った同社だが、17年9月に導出契約、18年3月にはオプション契約獲得と相次いでビジネスを進展させた。ただ、この2品目が今後どこまで成長するかを現時点で予測するのは難しいことに加え、まだ導出に至っていない他のパイプラインについても導出の段階でどういうディール(収入の仕組)になるかは不明であることなどから、会社側にとっても数値面での明確な見通しを立てることは難しく、残念ながら投資判断を下すのも容易ではない。ただ、小林社長がインタビューで語っているように、「新たな芽が息吹きつつある」ことは確かなようであり、創薬支援事業で着実にキャッシュを獲得しつつ、創薬事業の本格離陸を目指す同社の変化を、パイプライン拡充の進捗を中心に注視していきたい。

会社概要
ミッションに「医療のアンメットニーズ(※)に創薬の光を」を掲げ、独自技術であるADLib®システム等の複数の抗体作製技術を駆使して最適な抗体を取得し、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬品の開発候補品創出に取り組むバイオベンチャー。高い抗体開発候補品創出能力などが強み。※アンメットニーズ現状では有効な治療法がなかったり、薬剤による治療満足度が低かったりする治療に対する未充足なニーズ
【1-1 沿革】
2005年2月、国立研究開発法人理化学研究所の太田邦史研究員(現:同社社外取締役)が率いる遺伝ダイナミクス研究ユニットと財団法人埼玉県中小企業振興公社(現:財団法人埼玉県産業振興公社)との共同研究により開発された抗体作製基盤技術ADLib®システム(アドリブシステム)の実用化を目的として設立された。2011年12月に東証マザーズに上場。設立当初よりADLib®システムの技術導出(ライセンス供与)を中心的なビジネスモデルと位置付けて活動してきたが、上場後6期連続で赤字を計上するなど、株主、投資家をはじめとするステークホルダーの期待に応えることができていない状況を踏まえ、2017年2月、代表取締役交代など経営陣の刷新に踏み切った。また、業績回復のためにはADLib®システムの技術導出に依存したビジネスモデルから、創薬開発を推進する経営へと軸足をシフトさせる必要があると判断し、経営ビジョン、経営方針、ビジネスモデルの変更も行った。現在を「第二の創業」と位置付け、早期の収益化、ステークホルダーからの信頼回復に取り組んでいる。
前述のように、抗体作製技術のライセンス供与から創薬開発を推進する経営へと軸足と移し、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」当てる研究開発に注力している。
【1-3 市場環境】
◎抗原抗体反応と抗体医薬品
同社の事業内容を理解するうえで知っておく必要のあるキーワードが「抗原抗体反応」、「抗体医薬品」などである。ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体を作って身体を守る防御システムが備わっており、これを「抗原抗体反応」と呼ぶ。
こうして産生された抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができる。この抗体の特徴を医薬品に活用したものが「抗体医薬品」である。従来の抗がん剤等の中には、正常な細胞にも作用して副作用を引き起こすものも多く、副作用を抑制するために本来の目的であるがん治療を進めることができないといったケースも見られるが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞に特異的に発現が認められる抗原をピンポイントで狙い打ちするため、高い治療効果と安全性が見込まれ、近年市場が拡大している医薬品である。
◎成長が続くバイオ医薬品市場
バイオ医薬品は、遺伝子組換え技術等のバイオテクノロジーにより創出された医薬品であり、1980年代から実用化が始まった。その後、抗体作製技術等の技術革新により、分子量が大きく、構造が複雑な抗体医薬品の創出が可能となり、新たな治療手段として、前記のような有用性の高さが臨床的に示されている。同社有価証券報告書における記述(出典:Evaluate Pharma®の「Evaluate World Preview 2017,Outlook to 2022」)によれば、2016年には約2,020億ドルまで拡大してきたバイオ医薬品の売上高は、2020年には約3,200億ドルに達し(年平均成長率約12%)、医薬品の総売上高に占める割合はほぼ30%に達すると予測されている。また、売上高上位100位以内の医薬品に占めるバイオ医薬品構成比は2016年 に40%を超えており、2020年には52%に達するとも予測されている。
こうした中、バイオ医薬品の牽引役である抗体医薬品においては、2017年に日本において新たに5品目が承認された。特に、オプジーボ(※)に代表される抗体の特徴を活かして創出された免疫チェックポイント阻害剤(※)と呼ばれる新しい免疫療法が、がん治療の分野で注目されている。さらに、抗体の創出・改変・修飾などに関する技術は多方面での発展が認められており、抗体に強力な抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体が進化したり、がん細胞などに発現する二種類の抗原に結合できるように改変されたバイスペシフィック抗体(※)が創出されたりするなど、抗体を基盤とした創薬の取り組みは一段と活性化が進んでいる。このように、バイオ医薬品およびその中心的な存在である抗体医薬品は、高い薬効、安全性という有用性により承認が増加していることに加え、開発可能領域も依然大きいと考えられており、アンメットニーズへの対応が期待されるとともに、今後も着実な市場拡大が続くと見られている。※オプジーボ一般名はニボルマブ。がん細胞が免疫システムを無効化する仕組みを阻止する働きを持つ免疫チェックポイント阻害剤の一つ。日本では、2014年7月に切除術による根治が期待できない悪性黒色腫の治療薬として承認され、同年9月から小野薬品工業が販売を開始した。その後、15年12月に非小細胞肺がん、16年9月に腎細胞がんにも適応が拡大された。※免疫チェックポイント阻害剤免疫療法の一種。これまでの免疫療法は免疫細胞の攻撃力を高める「アクセルを踏む働き」が中心であったのに対し、がん細胞によって免疫細胞にかけられたブレーキ(免疫チェックポイント)を外すことにより、免疫細胞の本来の力を発揮させ、がん細胞を攻撃できるように作用するもの。従来の治療法では効果が十分に見られなかった患者にも治療効果を上げることに成功している。※バイスペシフィック抗体通常、抗体は抗原を認識する部位を2つ持っており、それらは同じ抗原を認識する。それに対し、バイスペシフィック抗体は2つの抗原認識部位がそれぞれ別のターゲット(抗原)を認識する。
【1-4 事業内容】
◎ビジネスモデル
独自の抗体作製技術ADLib®システムや複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発し、これを導出するする「創薬事業」および、抗体作製技術を用いて製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援する「創薬支援事業」を展開している。
◎抗体作製技術について抗体医薬品を創り出すために不可欠な抗体作製技術には様々な種類が存在する。同社は創業の基盤となった独自技術ADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB Cell Cloning、17年2月に資本参加した株式会社Trans Chromosomicsのヒト抗体産生マウス・ラットを利用した作製法など、複数の抗体作製技術を保有している。ADLib®システムは、「従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得が可能」、「迅速な抗体取得」を始めとして下記のようなアドバンテージを有する技術ではあるが、これのみを利用するのではなく、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力の強化を進めている。
(1)創薬事業
◎ビジネスモデル
抗体医薬品の基礎・探索研究、前臨床段階を主な事業領域として、様々な抗体作製技術を駆使して、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発を行い、前臨床開発または初期臨床開発段階で開発した医薬候補品を製薬企業等に導出。契約一時金、マイルストーン収入、およびロイヤルティ収入等を獲得する。抗原や研究用抗体の取得についてはアカデミア(大学・研究機関)に対する積極的なアプローチにより連携を強化、有望なシーズについての事業化権を獲得する。
◎開発の基本戦略・方針
特にがん領域においては自社で開発候補抗体(ヒト化抗体、ヒト抗体)の非臨床データパッケージまで作製できる研究体制を構築し、前臨床段階での導出を基本戦略としているが、初期臨床試験まで自社で対応できる開発体制の構築も進めている。これは、同社が導出したいタイミングで必ずしも適切な導出先が見つかるかは明確ではないこと、ある程度開発を進めて付加価値を付けた後に導出したほうが事業として明らかに良好な場合もあることを想定しているためである。また、今後の展開については、以下2点を方針として掲げている。
パイプラインの中で現在最も開発が進んでいる「LIV-1205」は、正常な組織ではほとんど発現が見られず、がん細胞の細胞表面で発現が増強する「DLK-1」をターゲットとするもので、適応領域としては肝臓がん、小細胞肺がん、神経芽細胞腫など、多くの固形がんを標的としている。 2017年9 月にスイスのADC Therapeutics 社とLIV-1205のADC抗体(※)開発用途における全世界での独占的な開発、製造及び販売に関する第三者への実施許諾権付のライセンス契約を締結し、契約一時金を受領。「LIV-1205 ADC」は同社の導出品第一号となった。現在、ADCT社では開発番号ADCT-701として臨床試験に向けた開発を進めており、ヒトへの投与の安全性を確認するための動物での毒性試験を経て臨床試験申請を行う予定だ。2017年11月にはライセンス契約締結後、開発の進捗に応じて発生する最初のマイルストーンの達成が確認され、同社からマイルストーン料を受領した。
パイプラインの拡充に向けては、難治性がん・希少疾患・指定難病等の疾患領域における治療法開発に関するテーマを中心に公募を実施し、その他産学連携機関や大学・研究機関等の研究者に対し積極的にコンタクトを進めシーズの探索等を進めている。その結果、創薬研究段階のプロジェクト数は共同研究5件を含めた8件となっている。また、2017年12月には、同社が2017年2月に出資を行った株式会社Trans Chromosomicsと共同研究契約を締結した。今後は自社保有する技術に加えて、Trans Chromosomics社の完全ヒト抗体産生動物(マウス、ラット)を使用し、創薬活動をさらに加速していく考えだ。※ADC抗体抗体薬物複合体。悪性腫瘍や炎症性疾患等の目的の組織や細胞表面タンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に抗がん剤などの薬物を結合させることにより、薬剤を病変部位に選択的に到達させ、細胞内に放出させることでがん細胞等を死滅させることができる。※Naked抗体ADC抗体とは異なり、特別な修飾など加工をしていない(飾りつけていない)抗体。
(2)創薬支援事業
製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、受託ベースで同社が保有する複数の抗体作製技術を用いた抗体作製や、抗体創薬に関連するサービスを提供し、契約一時金、マイルストーン、ロイヤルティ、受託サービス料等の対価を受け取っている。
中外製薬株式会社および同社の海外子会社であるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.の「中外製薬グループ」からの委託研究開発、田辺三菱製薬株式会社およびTanabe Research Laboratories U.S.A., Inc.の「田辺三菱製薬グループ」からの抗体作製プロジェクトなどを手掛けている。中外製薬株式会社との共同研究開発契約は2017年12月31日に終了したが、委託研究契約に基づく取引は継続しており、中外製薬グループにおける創薬活動を引き続き支援していく。一方で中外製薬グループへの販売実績は2017年12月期で総売上高の67.4%、創薬支援事業の87.4%を占めており依存度が高いため、新規顧客先開拓を課題として取り組んでいるが、2018 年5月、新たに小野薬品工業株式会社との間で委受託基本契約を締結した。この契約により、カイオム・バイオサイエンスは同社の抗体作製技術であるADLib®システムやB cell cloning 法を用いて小野薬品工業が保有する標的に対するモノクローナル抗体の作製業務、および抗体、抗原等の組み換えタンパク質の調製業務などを提供し、小野薬品の研究開発支援を担うこととなる。また、この契約は上記業務に関わる包括的な契約であるため、今後、迅速な抗体作製等の実施や継続的な取引を行っていくことが可能である。
【1-5 特長と強み】
(1)高い抗体開発候補品創出能力
同社では以下の3点から構成される抗体開発候補品創出能力が成長の源泉であると考えている。①複数の抗体作製技術を統合的に運用して創薬事業を展開前述のように、同社は独自開発したADLib®システムや複数の抗体作製技術を有し、各技術の特性を活かした統合的運用によりベストクローン(抗体)の選定に取り組んでいる。複数の技術を統合的に運用することにより抗体取得の成功確率を上げることで、新規パイプラインの創出の可能性を高める狙いがある。②抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験等の創薬基盤技術および創薬支援機能を保有抗体を作製するには抗体作製技術のみではなく、抗原の準備、動物試験など多くの周辺技術が必要となるが、同社はこれらの技術を総合的に高いレベルで有している。また、一部の疾患領域では抗体医薬品の開発を進める上で必要な動物試験等で薬理・薬効を評価する機能も有しており、特にがん領域においては治療用の候補抗体の取得から動物での薬効評価試験に至るまで、自社でのワンストップでの研究開発機能を有している。③外部ネットワークを通じたシーズ探索力同社では創薬ターゲットである抗原を外部の大学や研究機関から獲得しているが、これを可能としているのが国内最高水準の研究開発体制を構成する専門性の高い人材のネットワークである。抗体作製に関しては長年にわたり進めてきた中外製薬と共同研究や受託研究を通じて得ることが出来たノウハウや知見は創薬基盤技術および創薬支援機能構築に大きく寄与し、目に見えない資産、競争優位性となっている。同社ではこの抗体作製技術とタンパク質調整等の抗体作製に関わる周辺技術を技術ポートフォリオとして整備し事業展開を行っており、抗体作製という領域では国内の抗体医薬品開発を手掛ける他社と比較しても遜色のない、伍して戦える水準にあると同社は考えている
(2)創薬ビジネスにおいて独自のポジションを確立へ
大手製薬会社などは、がん領域、中枢神経領域など、領域を絞り込んで抗体作製に取り組むのが一般的である。また、国内外のバイオベンチャー等が研究開発を進めてきた開発候補品を外部から導入するケースが増えている。他方では医療用医薬品開発においてはアンメットメディカルニーズが依然として多く存在しており、今後の治療薬の開発が待たれている。これに対し同社は、アンメットニーズで創薬の可能性のあるターゲットであれば領域を限定せず早期の段階から抗体作製に取り組み、複数の製薬会社を導出候補として医薬品のライセンスビジネスに取り組んでいる。アンメットニーズに対する新規プロジェクトを継続的に立ち上げ、技術ポートフォリオを統合的に活用し探索プロジェクトの回転を速くすることで、できるだけ多くの開発候補品を創出するという、独自のポジションを確立しようとしている。また、欧米では創薬のプロセスにおいてシーズを提供するアカデミアと製品化を目指すメガ・ファーマをつなぐ役割としてバイオベンチャーが重要な役割を果たしており、創薬のエコシステム(※)が機能しているが、日本では未成熟である。同社では、抗体開発候補品創出能力の高さを武器に日本の創薬エコシステムにおいてなくてはならないポジションを確保することで勝機を見出そうとも考えている。※エコシステム本来の意味である生態系に端を発し、複数の企業によって構築された、製品やサービスを取り巻く共通の収益環境。この場合、欧米においては創薬に関わる全企業に収益をもたらす環境が構築されていることを意味する。
2017年12月期決算概要
増収、営業損失は縮小売上高は前期比3.0%増の2億59百万円。創薬事業において2017年9月にADCT社とLIV-1205のADC開発用途におけるライセンス契約を締結し、契約一時金を受領。同年11月には最初のマイルストーン達成によるマイルストーン料を受領した。創薬支援事業においては中外製薬グループおよび田辺三菱製薬グループとの契約に基づく創薬研究支援受託サービス費を受領。前期比減収だったが、ほぼ期初予想(202百万円)通り。営業損失は同1億54百万円縮小の8億87百万円。研究開発費として臨床開発に向けた製剤委託費用を計上したが、販管費は前年を下回った。

自己資本比率は前期末とほぼ変わらず94.6%だった。

前期にあった有価証券の償還による収入が無くなり投資CFおよびフリーCFはマイナスに転じた。新株予約権の行使により約4億98百万円の収入があったが、前期よりも減少したため財務CFのプラス幅は縮小。キャッシュポジションは低下した。
(3)トピックス
◎経営諮問員会による報告書を受けての対応
新しい経営体制の下で今後の事業計画を立案し、それを推進するにあたっては、経営に対する客観的評価に基づく助言を社外の識者から得ることが必要であると判断し、2017年5月15日に第三者による経営諮問委員会を設置した。同委員会では今後の事業計画の立案・推進にあたって、その施策や技術評価等について客観的な立場からの提言を行うと同時に、過去の経営計画や経営判断の検証・評価に加え、過去の情報開示が適切であったかについても検証を実施した。その結果、17年12月14日に同委員会から受領した報告書において、過去の一部の開示の内容について、「有価証券上場規程に照らして開示内容は不適切であったと考える」との指摘を受けた。そこで、過去に投資家に誤解を生じさせるような開示があった点を反省し、今後は、以下のプロセスを実施し、有価証券上場規程に照らして正しく適切に情報が伝達されるよう努めることとした。
(4)2018年12月期の業績予想について
創薬事業における合理的な業績予想の算定が困難なため、2018年12月期の業績予想は創薬支援事業の売上高220百万円のみ開示している。
小林社長に聞く
経営体制の刷新に伴い2017年2月に代表取締役社長に就任した小林茂氏に今後の取り組み、投資家へのメッセージなどを伺った。Q:「ビジネスモデルの転換、経営陣の刷新により『第二の創業期』を迎えた現在のミッションやビジョンをお聞かせください。」A:「ビジネスモデル・ミッション・ビジョンを転換し、アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指していく。投資家の信頼を取り戻すことも重要なミッションだ。」当社は創業以来、独自の抗体作製技術であるADLib®システムの実用化、ライセンス供与をビジネスモデルとして事業展開を志向してきたが、残念ながら収益化は容易ではなかった。加えて、そもそも優れた技術であれば、それを利用した「成果物」を創り出すことによって技術の優秀さを証明することが王道であるとも考え、ビジネスモデルを転換し、新たにミッションとして「医療のアンメットニーズに創薬の光を」、ビジョンとして「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」を掲げることとした。加えて、これに伴い、「患者さんに良い薬をお届けして喜んで頂くためには使用する技術にこだわる必要はない」と考え、自社開発のADLib®システムのみでなく複数の抗体作製技術によって構成される技術ポートフォリオの充足による抗体開発候補品創出能力の強化に取り組んでいる。また、上場以来の連続赤字でステークホルダーの皆様のご期待にお応えできていないにとどまらず、過去の体制において、投資家に誤解を生じさせる可能性のある開示があった点についても強く反省している。投資家の信頼を取り戻すこと、そのための環境作りに注力することも社長である私の重要なミッションであると考えている。Q:「今後の取り組みについてお話しください。」A:「創薬事業においてはパイプラインの拡充と早期の導出、創薬支援事業においては新規顧客の開拓に注力する。」まず創薬事業についてはスピード感をもってパイプラインの拡充と前進に取り組んでいく。創薬は確率のビジネスであり、全てのパイプラインが必ずしも成功するものではない。そのため、パイプラインの数が少ないとパイプラインが一つでもドロップアウトすると収益に対して大きなインパクトをもたらすこととなってしまう。これを避けるためには抗体作製についての技術ポートフォリオを充足させるとともに、開発ポートフォリオもしっかりと組成することが必要で、新規のパイプラインを継続的に創出できるかがカギとなる。また先行するパイプラインについての早期の導出も重要だ。私はビジネスに臨むにあたっては「コスト」、「時間」、「クオリティ」の3点が重要だと考えている。それぞれ、「コスト=安く」、「時間=速く」、「クオリティ=高く」を満足させるべく仕事に取り組むようにと常々社員に言っている。パイプラインの拡充には、将来性のある面白いテーマをいかにして見つけてくることが出来るかがポイントとなる。そのためには研究員が多くの大学や研究機関とネットワークを構築し関係を強化する必要があるのだが、私のメッセージが幹部社員を皮切りに全社に浸透してきたことから、研究員の行動が今までよりもより積極的、自主的になってきた結果、この1年で「シーズ」の掘り起こしは大きく進展させることが出来たと感じている。世の中には手付かずのターゲット、まだ日の目を見ていないテーマがまだまだたくさんあると考えており、適切なリスクテイクの下、今後も積極的にシーズ探索に取り組んでいく考えだ。ただ、事業のスピードアップという点からは、全てをシーズから立ち上げるというわけにはいかず、有望なリード抗体(医薬品の候補となる抗体)を外部機関から取り入れて共同研究を行うことも必要だ。この取り組みにより現在走っている8つの創薬研究プロジェクトのうち5件が共同研究となっている。創薬支援事業については、事業の安定性という観点からも中外製薬グループへの1社依存のリスクは認識しており、他の大手製薬会社を中心に新規顧客開拓に取り組んでいるが、まず第一段として小野薬品工業と新規抗体作製および抗原・タンパク質調製等に関わる委受託基本契約を締結することができた。引き続き他の新規顧客開拓に注力する。Q:「では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします。」A:「現在を『第二の創業期』と認識し、全社一丸となって皆様の期待に沿えるよう邁進していくので、是非引き続き応援していただきたい。上場以来赤字が続き、加えて株価も低迷し、株主や投資家の皆様に多大なご迷惑をおかけしていることについては、大変申し訳ないと感じている。ただ、ビジネスモデルを転換し、経営陣を刷新した2017年は、創薬事業においては、「LIV-1205」について導出第1号を実現したことに加え、今年に入りBMAA(抗セマフォリン3A抗体)についてもオプション契約を獲得することが出来た。またパイプラインの拡充も着実に進捗しており、まだ雪の下ではあるが新たな芽が息吹きつつある。創薬支援事業においても収益拡大の土台構築が進んでいる。これまでは閉塞感が漂っていた当社だが、昨年を機に社員の意識もポジティブに変化し、着実に前に進む体制が出来てきた。現在を「第二の創業期」と認識し、全社一丸となって皆様の期待にお応えするべく邁進していくので、是非引き続き応援していただきたい。
今後の注目点
前期にビジネスモデルの大転換を行った同社だが、17年9月に導出、18年3月にはオプション契約締結と相次いでビジネスを進展させた。ただ、この2品目が今後どこまで成長するかを現時点で予測するのは難しいことに加え、まだ導出に至っていない他のパイプラインについても導出の段階でどういうディール(収入の仕組)になるかは不明であることなどから、会社側にとっても数値面での明確な見通しを立てることは難しく、残念ながら投資判断を下すのも容易ではない。ただ、小林社長がインタビューで語っているように、「新たな芽が息吹きつつある」ことは確かなようであり、創薬支援事業で着実にキャッシュを獲得しつつ、創薬事業の本格離陸を目指す同社の変化を、パイプライン拡充の進捗を中心に注視していきたい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2018年3月26日

<基本的な考え方>当社は、ライフサイエンスを通じて持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、株主、顧客をはじめ、取引先、研究パートナー、地域社会、従業員等の全てのステークホルダーに対してフェアな企業であることを目指しております。そのためには、コンプライアンスの徹底、経営活動の透明性の向上、責任の明確化に努めていくことを重要な課題と捉え、コーポレート・ガバナンスの継続的な充実に取り組んでまいります。<実施しない主な原則とその理由>当社はコーポレートガバナンス・コードの【基本原則】をすべて実施しております。
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