(4634:東証1部) 東洋インキSCホールディングス 「挑戦を繰り返す。」テーマに成長の礎を創る

2018/03/28

toyoink

今回のポイント
・17年12月期の売上高は前期比4.3%増の2,801億円。メディア材料、接着剤などが好調だった。営業利益は同6.8%増の205億円。ナフサや酸化チタンなど原料価格の高騰があったが高機能製品の拡販で吸収した。・18年12月期の売上高は前期比7.1%増の3,000億円の予想。全てのセグメントで増収を見込んでいる。営業利益は同4.9%増の215億円。引き続きナフサなど原料価格高騰の影響を受けるが、販売数量の増加、高機能製品の拡販で吸収し、印刷・情報関連以外は増益の予想。配当は前期から1円増配の17.00円/株を予定。予想配当性向は36.8%。

・長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、持続的な成長を実現する2027年に向けた第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」が今期スタートした。「挑戦を繰り返す。」をテーマに、更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打ち、2020年12月期、売上高3,500億円、営業利益280億円、ROE7.2%を目指す。

・インタビューにもあるように、北川社長は東洋インキグループ全社挙げて2027年に向けて邁進する決意を表明している。まずは、長期構想実現に向けた第1歩である「SIC-Ⅰ」の事業進捗を注目したい。一方、過去5年の株価パフォーマンスを見ると、残念ながら同社株はTOPIXを始め主要競合企業を下回っている。直近1年では最大手DICを上回るものの、TOPIX並みのパフォーマンスである。足元の業績は決して悪くないことから、5%近辺のROEの向上も投資家としては期待したいところであり、高機能性製品の拡販や継続的なコストダウンを通じた利益率の改善スピードにも注目したい。

会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルタ材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外66社の連結子会社、9社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界22か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開。(2017年12月末)
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。

【沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。
当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。
印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。

【経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。
2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。

この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。

【市場環境】
◎概要
(市場動向)

日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2016年までのCAGR(年平均成長率)は+2.4%と堅調に拡大している。

一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。

(印刷会社と印刷インキ会社)

経済産業省「平成26年工業統計表・産業編」によれば、2014年の印刷・同関連業の事業所数は全国で25,843だが、うち98.5%にあたる25,446事業所は従業員数100人未満の中小企業である。

同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約26,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。

◎同業他社

インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている。(2位は欧州企業)
(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。

【事業内容】
◎「印刷インキ」について

同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

◎事業セグメント

「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルタ材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。
印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

◎海外展開

大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2017年12月末現在、約50の海外連結対象子会社、50ヶ所の生産拠点を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。

3要素とも低下しROEは5%を割り込んだ。一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するために一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

【特徴と強み】
①高い技術力

前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

②優れた課題解決能力

同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

③環境に対する取り組み

同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

④経営戦略の独自性

M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

2017年12月期決算概要
増収増益

売上高は前期比4.3%増の2,801億円。メディア材料、接着剤などが好調だった。営業利益は同6.8%増の205億円。ナフサや酸化チタンなど原料価格の高騰があったが高機能製品の拡販で吸収した。

☆色材・機能材関連事業

増収増益。
(化成品)
減収増益
顔料は印刷分野向けが低調に推移したが、塗料・プラスチック用途は販売が伸長した。
自動車塗料向け高透明分散体の拡販が進んだ。

(表示材料)
増収増益
大型テレビ需要増の追い風を受けて国内外ともに好調だった。
新規グリーンの採用、中国パネルメーカーへの採用が進んだ。

(着色剤)
増収増益
国内は容器用マスターバッチが牽引し好調。海外は東南アジアでの家電OA向けコンパウンドが好調に転じたものの、米国での自動車市場低迷や原料価格高騰の影響を受けた。
新規意匠性着色剤の実績が出始め、グローバルネットワーク活用による新規開拓が順調に進捗した。

☆ポリマー・塗加工関連事業

増収増益。
(塗工材料)
増収増益
スマートフォン向け導電接着シート、エレクトロニクス関連の機能性フィルムの拡販が進んだ。

(接着剤)
増収減益
エレクトロニクス向けの粘着剤、包装用のラミネート接着剤が国内外で伸長したが、原料価格高騰の影響を受けた。

(塗料樹脂)
減収減益
缶用塗料は国内コーヒー缶の低調が続き伸び悩んだ一方、欧米市場で環境対応製品の採用が決まるなど海外での拡販が進んだが、原料価格高騰の影響を受けた。
樹脂は高付加価値製品の拡販が進んだが、原料価格高騰の影響を受けた。

☆パッケージ関連事業

売上横這い減益。
(軟包装材)
増収減益
評価設備投資を積極的に進め、国内では、高性能表刷りグラビアインキ、高性能バイオマス製品群を市場投入し、拡販が進んだ。海外では、中国では環境規制強化、国内消費低迷の影響を受けたが、他エリアでの新製品拡販が進み、台湾、韓国でも水性製品群の拡販が進んだ。

(建材)
増収減益
壁紙、家具用途向け製品群が国内外とも好調に推移したが、原料価格高騰の影響を受けた。

(段ボール)
減収減益
段ボール需要は堅調だったが、印刷面積減少の影響を大きく受けた。

☆印刷・情報関連事業

減収減益。
(オフセットインキ)
減収減益
国内では、新製品投入、コストダウンを進めたが、市場低迷をカバーするには至らなかった。
海外では、インド、ブラジル、トルコで拡販が進んだが、欧米市場は縮小した。

(機能材インキ)
増収増益
省電力UVインキが新製品拡販、需要増により、国内、欧州で好調に推移した。
金属インキはアジア、インクジェットインキは中国、欧州での拡販が進んだ。

現預金、売上債権増などで流動資産は前期末に比べ145億円増加。固定資産はほぼ変わらず。資産合計は同144億円増加の3,796億円となった。短期借入金が減少した一方長期借入金が増加した結果、負債合計は同30億円増加の1,486億円。利益剰余金の増加などで純資産は同113億円増加の2,310億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の58.4%から0.6ポイント上昇し、59.0%となった。

9カ月決算ではあるものの、17年12月期も前期同水準のフリーCFを獲得した。

(4)トピックス

◎第27回地球環境大賞の環境大臣賞を受賞
同社は、第27回地球環境大賞(主催:フジサンケイグループ、後援:経済産業省、環境省など)の環境大臣賞を受賞した。
地球環境大賞は1992年、「産業の発展と地球環境との共生」をめざし、産業界を対象とする顕彰制度として、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンの特別協力を得て創設された。地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与する新技術・新製品の開発、環境保全活動・事業の促進や、21世紀の社会システムの探求、地球環境に対する保全意識の一段の向上を目的としている。
審査基準は、「経済の発展と地球環境との共生に寄与している」、「持続可能な社会の実現に向けて高い環境理念や行動計画を有している」、「独創性、先導性がある」、「技術・製品開発で顕著な環境改善効果が期待できる」など7項目。

同社は、バイオマス製品群の開発によるサスティナブル社会実現への貢献を評価され受賞した。
(授賞理由)
「情報出版や包装の分野で、再生可能な生物由来の有機資源であるバイオマス製品を積極的に開発している。オフセットインキ、グラビアインキ、ラミネート接着剤などのバイオマス製品を業界に先駆けてラインアップし、印刷物や包装材料を通じたサスティナブル社会の実現に貢献している。
業界トップ企業としての社会的責任を果たすため、同社が提供するすべての植物由来原料使用インキは日本有機資源協会認定のバイオマスマークを取得済み。植物由来の原料使用により情報出版印刷物や包装材料からのCO2排出量の削減効果が期待できるほか、脱石化材料の推進によって資源枯渇の問題にも貢献する。」
(地球環境大賞Websiteより)

東洋インキ株式会社としての第21回地球環境大賞 経済産業大臣賞受賞に次ぎ2度目の受賞となる。

2018年12月期業績見通し
増収・増益

売上高は前期比7.1%増の3,000億円の予想。全てのセグメントで増収を見込んでいる。
営業利益は同4.9%増の215億円。引き続きナフサなど原料価格高騰の影響を受けるが、販売数量の増加、高機能製品の拡販で吸収し、印刷・情報関連以外は増益の予想。
配当は前期から1円増配の17.00円/株を予定。予想配当性向は36.8%。
為替は1USD=110円(前期平均112.0円)、1EURO=130円(同127.2円)、1RMB=17.円(同16.6円)の前提。

18年12月期の各セグメントにおける主要課題は以下の通り。

中期経営計画「SIC-I」(2018年度‐2020年度)

持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-I(2018-2020年度)」を今期スタートさせた。

<基本方針>

テーマは「挑戦を繰り返す。」
更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打つ。
① 成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
② 持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
③ 経営基盤の刷新

◎投資計画
重点ドメイン拡大や新規事業創出のために振り向ける投資枠として、戦略的投資枠を従来の設備投資枠とは別に設定し、計画達成に向けた積極的な投資を行う。

戦略的投資枠とは、後述する重点ドメイン拡大や新規事業創出のための変革に向けた投資枠で、計画達成に向けた、人材・技術投資など各種取組みをこの枠内で実行していく。

<主要施策>
①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦

【1-1既存事業の変革】
■グローバル展開
海外市場での成長力を高めるため、これまでに進出した拠点の複合化・製品の拡充を進め、多彩なビジネスを展開していく。
インクジェットインキ・インキ用顔料分散体では、環境対応製品の生産を中国(珠海)で着手するほか、日米仏で品目を拡充する。
ラミネート接着剤では、食品パッケージ市場に対して、リキッドインキビジネスを展開するグローバル拠点と連携して拡販を図る。
2017年度比で530億円の増収を目指す。

■新製品の拡大
顔料・樹脂を核に新規素材の開発を進め、コア技術である合成・分散・成膜技術と組み合わせることで新しい価値を創造し、新市場・新規エリアでの拡大をはかる。
中でも、ポリマー・途加工関連事業においてエレクトロニクス関連材料やメディカルヘルスケアに注力する。
2017年度比で160億円の増収を目指す。

【1-2新事業への挑戦】
SIC-Iで注力する6つの重点ドメインを設定した。持続的成長に向け、単なる製品の提供にとどまらないソリューション提案を中心とした新しいビジネスモデルの開発に挑戦し、「SIC-II」、「SIC-III」に繋げていく。

以下、4つのビジネスに注力する。

[センサー関連ビジネス]

ドメインは、モビリティ、メディカルヘルスケア、IoT。
成長著しいIoT市場において、急速に増加する「センサー」に着目。ケミカルを軸とした「モノづくり」に加え、新しいテクノロジーを取り入れて「情報・システム」までを提供するセンサー関連ビジネスの開発に挑戦する。
(主要製品・サービス)
イメージセンサー材料、センサーデバイスなど。「SIC-II」、「SIC-III」ではセンシングデータに基づくデータビジネスの展開も視野に入れている。

[生活余熱関連ビジネス]

ドメインは、モビリティ、IoT、エネルギー。
生活周辺で未利用となっている「生活余熱」に着目し、これを高効率で無駄なく再生・利用する技術開発を進め、エネルギーの循環利用ソリューションを提供するビジネスに取り組む。
(主要製品・サービス)
耐熱接着シート、超耐熱絶縁・熱伝導シート、高耐熱マネジメント部材群など。

[ヘルスケア関連ビジネス]

ドメインは、メディカルヘルスケア。
貼付型医薬品事業プラットフォームをベースに、医薬事業基盤を着実に拡大し、周辺のヘルスケア関連材料の開発・拡販も強化していく。
(主要製品・サービス)
血糖値検査チップ用テープ、医療用粘着剤、生体適合ポリマー、次世貼付型医薬品など。

[天然素材関連ビジネス]

ドメインは、天然素材。
可食色素や笹関連製品の事業プラットフォームを活かした新たな機能性天然素材のビジネス化や、バイオマス製品の拡充を進め、低炭素社会への一層の貢献を目指す。
(主要製品・サービス)
可食色素製品、クマザサ関連製品、バイオマスインキ、機能性食品素材など。

②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進

同社ではこれまで、積極的な海外拠点拡大によるモノづくりネットワーク構築、環境に配慮した安心・安全なモノづくりの構築、グローバルでの化学物質管理・貿易管理体制の整備に取り組んできた。
SIC-Iでは、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献するため、自らの持続的成長も見据えたモノづくり革新に取り組み、持続可能性への貢献と収益確保の両立を目指す。
(取り組み例)

パートナーとの共存共栄によるグローバル・サプライチェーンの構築
デジタル技術融合による生産プロセス革新
地球環境と共生するモノづくり(省エネ、CO2排出量削減等)の推進
③経営基盤の刷新

既存事業の変革、新規事業の創出、モノづくりの変革に向け、業務システムのグローバル統合推進や、変革に向けた人材採用、制度改革(確定拠出年金制度への完全移行、65歳定年制開始)などの経営基盤強化を進めるとともに、経営と一体となったCSR活動を推進し、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していく。
イノベーションを立て続けに創出するための基盤を強化する。
(取組み例)

グローバルでのERP統合推進、AI活用による業務効率化推進
変革に必要な人材の積極採用、イノベーションを促す人事制度への刷新
東洋インキグループの重要課題(マテリアリティ)の達成に向けた積極的なCSR活動の推進
北川社長に聞く

北川克己社長に同社の特徴、競争力の源泉、長期構想「Scientific Innovation Chain 2027」の概要、投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「社長は東洋インキグループの特徴および競争力の源泉は何だとお考えですか?」
A:「事業領域をインキにとどまることなく更に拡大し成長を続けているのが東洋インキグループだ。競争力の源泉である技術力を更に磨き上げるために産・官・学の連携に注力している。」

当社はその社名から印刷インキの会社とのイメージが強い。しかしここ20年をかけてインキの原料である顔料や樹脂など長い歳月をかけて培ってきたコア技術を応用、拡大して「スペシャリティケミカル・メーカー」を目指して事業ドメインを広げてきた。
その結果、売上ではインキ系52%、ケミカル系48%とほぼ半分をケミカル稼ぎ出し、利益ベースではインキ系35%、ケミカル系65%とケミカルが収益源となっている。
今後は長期構想「SIC27」の下、事業ドメインを「ケミカル」領域からさらに「サイエンス」領域に拡大させ、SIC-IIIで掲げる「2027年 売上高 約5,000億円、営業利益約500億円」達成を目指してゆく。
まず投資家、特に個人投資家の皆様には東洋インキグループが事業領域をインキにとどまることなく拡大して成長を続けてきたこと、そしてこれからも活躍の舞台をさらに広げて飛躍的な成長を追求している会社であるということを是非知っていただきたい。

持続的成長を実現するには当社競争力の源泉である技術力を更に磨き上げる必要がある。
インキに端を発する有機化学系のコア技術に加えて、今後は電子、バイオテクノロジーといった非有機化学分野の技術力を向上させなければならない。
そのためには当社単独での取り組みには限りもあるため、以前より産・官・学の連携に力を入れている。
1980年代より今後10年、20年の技術トレンドを設定したうえで、国内外の有力大学に人材を派遣している。
これまで国内外合わせて約50の大学と連携して新しい技術の開発や応用などに積極的に取り組んできており、当社の技術基盤はますます強固なものとなっている。

Q:「長期構想『Scientific Innovation Chain 2027』の概要を教えて下さい、」
A:「社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとし、2027年の持続可能な企業体質の構築を目指す長期構想だ。3年ごとの中期経営計画により課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していく。」

<長期構想とは?>
我々は経営哲学、経営理念、行動方針から成る「経営理念体系」を時代を超えた不変の柱と位置付けているが、これを時代に応じて読み替え、ビジョンとして掲げ全社員で自らのこととして共有するために策定しているのが10年ごとの長期構想だ。
これまでの20年で「TAKE OFF2007」、「SCC2017」という長期構想を掲げてきたが、10年先を見通して全員で共有することで短期的な出来事に振り回されず、大きな外的要因を乗り越えて成長することが出来たと考えている。
今回の長期構想「SIC27」においても全社員が自らに与えられた役割を着実に実行し、積み重ねていくことで会社全体が構想実現に向けて歩んでいくことになる。
当社のアイデンティティとして定着している長期構想の仕組みは2096年の創業200周年、さらにその先の持続的な成長を実現する大きな力となるはずだ。

<Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)概要>
「SIC27」は、社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとし、2027年の持続可能な企業体質の構築を目指す長期構想だ。

では事業をどのように成長させていくのか?
キーワードは、「幅広いドメイン」と「競争力のあるテクノロジープラットフォーム」だ。

(幅広いドメイン)
健やかな暮らし、心の豊かさ、持続可能な社会の実現のためにモビリティ(自動車、航空宇宙、自動運転関連など)、メディカルヘルスケア(製剤、医療機器材料、サニタリー材料など)、IoT(センサーデバイスなど)、エネルギー(エネルギーハーベスティング、電池関連材料など)を始めとした11のドメインを設定、戦略的にビジネスを展開して一部の市場変化を全体で吸収する強靭な事業展開を目指す。

(競争力のあるテクノロジープラットフォーム)
先程申し上げたように、当社競争力の源泉は多様な技術力だ。11のドメインへの事業展開を可能にする最重要基盤であるテクノロジープラットフォーム構築のために、軸となるケミカルに加え、バイオ、アグリ、データサイエンスなど当社にとっては新領域となるサイエンスを積極的に取り込み、各種技術をより一層、深く、広く、新しく、洗練させていく。 2027年に向けた具体的な歩みを表したものが3年ごとの中期経営計画だ。課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していく。
今期スタートした「SIC-I」は変革の始まりとなる3か年だ。「挑戦を繰り返す」をテーマに、10年間で変革すべき要素のうち、そのほとんどをこの時期にトライする。イノベーティブな挑戦を積み重ね、失敗も学びに変えて多様なメソッドを身に付ける。
続く、「SIC-II」はSIC‐Iで繰り返した挑戦を成果に繋げ、「SIC‐III」で変革を成し遂げ、持続可能な企業体質を作り上げる。「SIC‐III」では2037年に向けた更なる成長を見据えた準備もスタートさせる。

SIC27は経営トップだけで完成させたのではなく、2年にわたり19ヵ国の若手社員から経営層までまさに全社を挙げて多くのテーマについて議論を重ねた結果に創り上げたものであり、皆の熱い想いが詰まった力強い長期構想とすることが出来たことを大変嬉しく思っている。すべての社員に感謝したい。

私は常々社員には「変化を恐れるな!」、「リスクを取れ!1回や2回の失敗は追及しない。チャレンジせよ!」と言っている。
10年という長い道のりの中ではこれまでに経験したことのない困難もあるだろうが、全社一丸となって挑戦を続け、持続可能な企業体質への変革を成し遂げる決意だ。

Q:「では最後に投資家へのメッセージをお願いいたします。」
A:「全社一丸となって挑戦を続け、持続可能な企業体質への変革を成し遂げる当社を是非中長期の視点で応援していただきたい。」

当社は経営理念にあるように「生活文化創造企業」を目指しており、顧客志向以上に生活者志向に軸足を置く会社であり、社会の満足に繋がる生活者の満足に応える独創的な製品やサービスを次々に提供し、世の中に貢献していくことをミッションとしている。
また、先程述べたように社名に「インキ」と入っているが、収益の中心は非インキであり、長期構想「SIC27」実現の過程でそうした収益構造は益々明確なものとなっていく。
投資家、中でも生活者である個人投資家の皆様には、そうした当社の姿や想いを是非知っていただきたいと願っている。

株主還元については、成長のための投資や内部留保も勘案しながら目標配当性向を30~40%として、安定的かつ永続的な配当を実施する考えだ。
また重要な経営指標であるROEについては10%以上を目標としている。残念ながら現在の水準は5~6%程度だが、財務レバレッジを活用するのではなく、収益性向上によって投資家の皆様のご期待に応えるROEを実現したい。

全社一丸となって挑戦を続け、持続可能な企業体質への変革を成し遂げる当社を是非中長期の視点で応援していただきたい。

今後の注目点

北川社長はSIC27をまとめた社内冊子の巻末言『「Chain」に込めた想い』中で、「SIC27の本質は、一人ひとりが意識を変え、行動を変えていくことです。100年後の仲間が当社の歴史を振り返った時、「飛躍的に成長した10年であった」と言われることを夢見て、目の前の一歩を踏み出しましょう。」と締め括っており、インタビューにもあるように、東洋インキグループ全社挙げて2027年に向けて邁進する決意を表明している。まずは、長期構想実現に向けた第1歩である「SIC-I」の事業進捗を注目したい。
一方、過去5年の株価パフォーマンスを見ると、残念ながら同社株はTOPIXを始め主要競合企業を下回っている。
直近1年では最大手DICを上回るものの、TOPIX並みのパフォーマンスである。
足元の業績は決して悪くないことから、5~6%近辺のROEの向上も投資家としては期待したいところであり、高機能性製品の拡販や継続的なコストダウンを通じた利益率の改善スピードにも注目したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2017年7月4日に更新している。

株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

コラム&レポート Pick Up