(6094:東証マザーズ) フリークアウトHD 短期的には粗利率の動向を、中長期的には海外事業に注目

2018/01/31

freakout

今回のポイント
・最適な消費者に最適なタイミングで最適なメッセージを伝えたいという広告主の課題を、AI(人工知能)を用いた先端テクノロジーで解決するマーケティング・テクノロジー・カンパニー。広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム「DSP(デマンドサイド・プラットフォーム)」の運営やOEM提供を行う「DSP事業」が事業の中心。「最大級のデータ保有量」、「良質な広告掲載面の確保」、「優れたアルゴリズム構築のための積極的な投資」などが大きな強み・特長。広告に留まらず様々な分野でテクノロジーによって「人に人らしい仕事を」提供し、創造的な社会づくりに貢献する事を経営理念としている。

・17年9月期の売上高は前期比107.5%増の120億19百万円。両事業とも好調だった。売上の大幅な増加に伴い変動費(広告枠の仕入高、外注費)も大きく増加したため粗利率は8.2%低下したが、粗利額は同58.7%大幅に増加。エンジニアの採用、新規事業への投資を進めたため販管費も増加したがこれを吸収し、営業利益も同67.8%増の6億1百万円と大幅増益となった。投資家に対し統一的な指標による説明と一時的な影響を除外した恒常的な収益力を測定する観点から、会計基準の影響を受けない国際的な指標であり、営業キャッシュ・フロー獲得能力を表す指標である「EBITDA」を業績指標として採用した。(EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額+持分法投資利益)。EBITDAは倍増の14億28百万円だった。期初計画を売上、利益ともほぼ達成した。

・2018年9月期は、既存事業を堅調に伸ばしていく中で、2019年および2020年の計画値に向けた積極的な投資を実行する1年と位置づけている。売上高は前期比34.0%増の161億円。両事業とも引き続き好調。営業利益は同95.0%減の7億20百万円。新規事業領域での先行投資を行うため一時的な減益を予定している。セグメント別には両事業ともEBITDAで増益。地域別では海外事業がEBITDAベースで黒字化を見込んでいる。領域別では広告事業が引き続き好調。

・両事業とも好調で大幅な増収増益となった。今期は投資フェーズということで利益は減少するがいよいよ海外事業も黒字化する見込みでさらに成長に弾みがつくベースが出来つつあるようだ。一方、佐藤社長が課題と認識している原価率の高さについては残念ながらまだ改善の方向は見られない。短期的には毎四半期ごとの粗利率の動向を、中長期的な視点としては海外事業の拡大スピードをウォッチしたい。一方、「バーティカルクラウド」としての広告以外の他分野への展開は、同社の技術力の高さという競争優位性を活かした成長が期待できる大変興味深い動きだ。まずは「HR Tech」分野での進捗を注目したい。

会社概要

最適な消費者に最適なタイミングで最適なメッセージを伝えたいという広告主の課題を、AI(人工知能)を用いた先端テクノロジーで解決するマーケティング・テクノロジー・カンパニー。
広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム「DSP(デマンドサイド・プラットフォーム)」の運営やOEM提供を行う「DSP事業」が事業の中心。
「最大級のデータ保有量」、「良質な広告掲載面の確保」、「優れたアルゴリズム構築のための積極的な投資」などが大きな強み・特長。
広告に留まらず様々な分野でテクノロジーによって「人に人らしい仕事を」提供し、創造的な社会づくりに貢献する事を経営理念としている。

【1-1 沿革】

日本よりも1年ほど先行して米国でRTB(Real-Time Bidding)という、インターネット広告の表示回数ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法が一般化していたころ、日本でもこの手法を導入して広告分野におけるGame Changeを起こすことを目指してエンジニアでありヤフー株式会社で広告ビジネスに携わった経歴を持つ代表取締役Global CEO本田兼氏が2010年10月、同社を設立。グーグル株式会社で同じくエンジニアとして広告製品を担当していた代表取締役社長 佐藤 裕介氏も創業に参画し、2011年1月、日本国内で初めてRTB技術の商用化を実現した。
新しいプロダクトに対する感度が高いという広告業界の特性もあり、リリース直後から利用する企業は多数に上ると同時に顧客の満足度も高く、売上、利益は順調に拡大。2014年6月、設立から4年弱で東証マザーズに上場した。
2017年1月には意思決定のスピードアップやよりダイナミックな事業展開を目指し持株会社体制に移行した。

【1-2 経営理念など】

『Give People Work That Requires A Person.』、『人に人らしい仕事を』を経営理念として掲げている。

沿革にあるように、インターネット広告のリアルタイム取引を日本で初めて事業化し、広告取引を人間の手作業からコンピュータ間の取引に変えていくことを目指したのが創業の経緯。

テクノロジーによって、広告主は消費者一人ひとりとコミュニケーションを取ることが可能になり、従来のマス広告では不可能だった真の 1to1 マーケティングに近づく。
また同時に、広告業に従事する「人」たちは、取引に関する雑務から解放され、より人間らしいコミュニケーションのプランニングや、共感を起こすメッセージの作成など、クリエイティブな仕事に集中できるようになる。

同社は、「コンピュータにできることはコンピュータに任せることで、余剰労働力(人が創造的な仕事と向き合う時間)をつくること。」が使命であると考えている。
広告分野に留まらずあらゆる分野において、自社の高度なテクノロジーによって、人に人らしい仕事を提供し、より創造的な社会作りに貢献する事が同社の目指す姿である。

【1-3 インターネット広告市場概要】

同社の事業内容を理解するためには、広告主やメディアのニーズと広告市場の変化、テクノロジー、メインプレーヤーといった「インターネット広告」運営を取り巻く環境、構成要素等について一定の知識を有していることが欠かせない。以下、主要ポイントについて概要を説明する。

≪広告市場の変化≫

従来の広告市場、特にテレビや新聞といったマスメディアを利用した広告ビジネスにおいては、サプライサイドであるメディアや広告代理店にとっては在庫の独占性や排他性が事業展開するうえで最も重要な要素であった。
大手広告代理店は限りのあるTVのスポット枠をほぼ完全に押さえることで広告主に対する価格リーダーシップを握り、メディアとともに大きな利益を生み出してきた。
ところがTVや新聞によるマス広告は、右肩上がりの経済成長の終焉と、従来のメディアと比較した際のコストの安さや双方向性を大きな特徴とするインターネット広告の登場によりその需要は縮小する傾向にある。

下のグラフが示す通り、日本の総広告費用が過去10年間でほぼ横ばいの中、2005年には3,777億円であったインターネット広告費は年平均成長率12%で拡大を続け、2016年には1兆3,100億円となった。
2005年には、地上波テレビの2割弱、新聞の4割弱であったが、2016年には地上波テレビの7割、新聞の2.4倍の規模となっている。(「電通 日本の広告市場 2016」より)

一方で、より効果的な広告を求める広告主のニーズはますます増大しており、いかにして「最適な消費者に」、「最適なタイミングで」、「最適なメッセージ」を届けるかが大きな課題となっている。

こうした中、「アドエクスチェンジ」と呼ばれる、広告枠のオープンなマーケットプレイスが登場してきた。
これは、広告主、メディア、広告代理店などが広告枠を自由に売買することができるまさに「市場」であり、広告主にとっては、より高い広告パフォーマンスを求めて最適な広告枠を買うことが極めて重要になってくるわけだが、それを実現するためのカギとなるテクノロジーの一つが、同社が日本国内で初めて商用化を実現した「RTB」である。

≪RTBによる広告枠のリアルタイム取引≫

RTB(Real-Time Bidding:リアルタイムビッディング)とは、インプレッション(広告の表示回数)ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法。

RTBが登場するまで一般的であった「純広告取引」は、ディスプレイ広告(ウェブサイトに表示される画像やFlash、動画などを用いた広告)の枠を、メディアや広告代理店がインプレッション保証や期間保証を付けてパッケージ販売するいわばコースメニュー。
これに対してRTBは、ディスプレイ広告を1インプレッションごとにアクセスしてきたユーザーの属性を解析し、「特定の属性を持ったユーザーへの広告」として1インプレッションごとに入札方式で売買を行なうシステムである。

RTB技術の活用により、広告主は従来の特定サイトの広告枠を予め決定された価格で購入する純広告や、検索キーワードに関連した検索連動型広告では難しかった潜在的な消費者層の開拓や、興味・関心をもってもらうための効果的な広告配信による認知施策が可能となる。

「RTB」には広告枠の需要サイドのシステムである「DSP」と、供給サイドのシステムである「SSP」が主要プレーヤーとして登場する。

(DSP「Demand Side Platform:デマンドサイド・プラットフォーム」とは?)

広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム。

具体的には、広告主や広告代理店が、RTB技術を活用し独自のアルゴリズムにより、アドエクスチェンジやSSP、あるいはアドネットワークなどに対して、ユーザーの広告1インプレッションごとに最適な自動入札取引・広告配信を行うプラットフォームである。
広告主はあらかじめDSPを通じて広告を見て欲しい対象者の属性、入札の上限額を決めておき、広告主の要望にマッチするユーザーが見つかった場合は瞬時(およそ0.05秒程度)に入札が行われ、最も高い価格を提示した広告が媒体に配信される。

RTBが登場するまでは、広告主は、ターゲットであるユーザーが閲覧すると思われるサイトを想定して、特定の広告枠を予め決められた価格で買い付けていたが、DSPを用いることにより、広告主は広告を配信したいユーザーをリアルタイムで判断し、入札による適切な価格で広告を配信することができるため、広告主は広告の費用対効果を高めることが可能である。

同社は自社開発のDSPである「Red」や「FreakOut」の販売やOEM供給を行う「DSP事業」をメインビジネスとしている。
常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことで「より賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。(詳細は【1-6 特長と強み】を参照)

(SSP「Supply Side Platform:サプライサイド・プラットフォーム」とは?)

メディア側から見た広告効果の最大化を支援するシステム。メディアが広告枠を管理及び販売する際に使用するプラットフォームであり、DSPのリアルタイムな入札に対応する技術を有している。

このように、RTB技術をベースにして従来の純広告では困難であった最適化を自動かつ瞬時に行う費用対効果に優れた広告は「運用型広告」と呼ばれ、インターネット広告全体を上回るスピードで成長を続けている。
2016年には日本のインターネット広告の約6割が運用型広告となっている。

(※)運用型広告:膨大なデータを処理するプラットフォームにより広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法の事。検索連動型広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、新しく登場してきたDSP、アドエクスチェンジ、SSPなどが典型例。枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは運用型広告に含まれない。

また、同社が日本国内で商用化したRTBは、市場規模は米国の10分の1以下であるが、急成長を遂げている。

このように、他の媒体と比べて高い伸びを見せるインターネット広告の中でも特に伸長著しいRTB技術をベースとした「運用型広告」が同社のフィールドであり、旺盛な需要を確実に取り込んで業容を拡大させている。

【1-4 事業内容】

1.事業セグメント
事業セグメントは、「DSP事業」、「DMP事業」、「その他事業」の3つ。

① DSP事業
◎ビジネスモデル

SSP・アドエクスチェンジおよびメディアを通じて広告枠を仕入れ、広告主・広告代理店に対してインターネット広告枠を提供。一部広告代理店に対してはDSPプラットフォームのOEM提供を行っている。

◎サービス形態

以下のような2形態でサービスを提供している。

サービス開始当初は、重要なデータを大量に収集するため、またユーザーの声を直接吸い上げるために広告主への直接販売を中心としていたが、現在は売上拡大のスピードアップを図るため広告代理店へのOEMを含めた販売が中心となっている。
OEM提供先の広告代理店にとっては、サーバコストや開発難易度の点から独自でDSPを開発し、新規参入することは難しいが、同社グループのDSP基本機能とインフラの利用により、早期の新規参入が可能となっている。

◎主要プロダクト、サービス

広告主の自社サイトのアクセスデータ、広告配信データ、会員データ、購買データなどのビッグデータを同社が開発した解析ソフトウェアにより分析するプライベートDMP「MOTHER」を用いて、DSP「Red」、「FreakOut」による広告配信効果の最大化を追求している。

「Red」、「FreakOut」は広告主にとって有望な見込顧客にターゲティングするために、多様な配信手法を備えている。
具体的には、「知らない人(潜在層)」には知ってもらうための「オーディエンス拡張」等の配信手法を用いた潜在層ターゲティング、「既に知っている人(興味層)」には欲しいと思ってもらうための「キーワードマッチ」等の配信手法を用いた興味関心層ターゲティング、「欲しいと思った人(顕在層)」にはコンバージョン(購入、資料請求、会員登録など実際の行動)してもらうための「リターゲティング」等の配信手法を用いた顕在層ターゲティングを行い、消費者の行動プロセスに応じてターゲティングした広告配信を実施している。

② DMP事業

DMPとは「Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)」の略で、広告主がもつ自社サイトへのアクセスデータ、広告配信データ、会員データなどのデータを管理及び解析し、メール配信や分析調査などの様々なデータ活用チャネルと連携して利用可能にする、データ統合管理ツールのこと。

クライント企業や広告代理店のデータマーケティングの最適化を実現するため、メディア企業や調査会社などデータプロバイダーから多様かつ膨大なデータを集め、DMPで蓄積・解析を行い、独自性の高い膨大なパブリックデータDMPの提供、大規模ポータルサイトのDMP構築支援、最適なマーケティングチャネルでの自社データの活用のコンサルティングサービス等を提供している。

③ その他の事業

持株会社体制への移行に伴い17年9月期より新設されたセグメント。国内外のグループにおける新規事業、及び経営管理が含まれる。

【1-5 グループ企業】

持株会社である株式会社フリークアウト・ホールディングスの下、2017年6月末現在、以下のような事業会社によりグループを形成している。

海外事業においてはFreakOut Pte.Ltd. (本社:シンガポール)をヘッドクォーターとして、ネイティブ広告プラットフォーム事業を中軸とするグローバル展開を推進してきた。
2015年に、東南アジア初のネイティブ広告プラットフォームをリリース以降、各国上位のメディアを中心に提携先を拡大し、現在では海外で700社を超える広告主に利用されている。
2017年7月には香港市場に参入したほか、シンガポール、タイ、インドネシアに続く東南アジアの新拠点として、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インド、イランに現地法人を設立した。各国のプレミアムメディアと提携し、ネイティブ広告プラットフォームをアジア、中東で提供する。

【1-6 特長と強み】

前述のように、常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことでより「賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。加えて、良質な広告掲載面を有している点も大きな強みとなっている。

① 最大級のデータ保有量
RTB技術を日本国内で初めて商用化したこともあり、データ保有量は国内最大規模となっている。
どんなに優れたAIを開発したとしても、大量のデータを使って機械学習を繰り返し行わないと実用的で効果の高いAIには成長しない。
全国6,000万人のモバイルユーザーのうち、5%、300万人の正確なデータがあれば、残り5,700万人の年齢や性別による思考、行動はほぼ正確に類推することが可能ということで、広告主に対し高い顧客満足度を提供している。

② 良質な広告掲載面を確保
一方、RTBの登場によってオープンな環境でのプラットフォームの「賢さ」が優位性である時期がある程度続くと、技術の格差・優劣が相対的に縮小し、特にモバイルの世界でどれだけ良質な掲載面を確保しているかという「掲載面の品質とその独占性」が再び有力な競争条件となってきた。
そうした中、同社の関連会社 M.T.Burn株式会社はLINE株式会社が50.4%、同社が49.5%を保有する合弁会社であることから、同社はLINEアプリの広告枠を独占的に確保することができており、広告主に高いパフォーマンスを提供している。

③ 優れたアルゴリズム構築に向けた積極的な投資
ターゲティング広告においては入札金額が高ければ落札はできる。売上規模拡大を目指す同社としては、できるだけ多くの広告枠を買いたいが、パフォーマンスが悪ければ広告主から評価されず、継続的な取引も難しくなってしまう。
そこで、高く買ったとしても結果としてはリーズナブルであったと判断してもらえるような結果を生むことが極めて重要である。
この課題に対し同社では「クリック率予測モデル」、「コンバージョン率予測モデル」を開発し、広告主に対する提案力を高めており、加えてこれらモデルの正確性を一段と向上させるために常に投資を行っている。
同社のデータ・サイエンスチームは日本の、特に中堅企業クラスではトップレベルの能力を有しているとのことで、積極的な投資の蓄積が継続的かつ高いパフォーマンスの提供に結び付いている。

17年9月期は3要素それぞれが寄与しROEは大きく上昇した。

2017年9月期決算概要
両事業とも好調で大幅な増収増益

売上高は前期比107.5%増の120億19百万円。両事業とも好調だった。
売上の大幅な増加に伴い変動費(広告枠の仕入高、外注費)も大きく増加したため粗利率は8.2%低下したが、粗利額は同58.7%大幅に増加。エンジニアの採用、新規事業への投資を進めたため販管費も増加したがこれを吸収し、営業利益も同67.8%増の6億1百万円と大幅増益となった。
投資家に対し統一的な指標による説明と一時的な影響を除外した恒常的な収益力を測定する観点から、会計基準の影響を受けない国際的な指標であり、営業キャッシュ・フロー獲得能力を表す指標である「EBITDA」を業績指標として採用した。(EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額+持分法投資利益)
EBITDAは倍増の14億28百万円だった。
期初計画を売上、利益ともほぼ達成した。

また下記のように、2期連続で大幅な増収増益となっている。

(DSP事業)
DSPプラットフォーム「Red」・「FreakOut」、ネイティブアドプラットフォーム及びトレーディングデスクの提供を行い、また、新プロダクト「Red for Publishers」を開発・リリース。広告主の広告効果最大化及び媒体社の収益最大化に取り組んだ。
特にスマートフォン広告市場の拡大により、モバイル向けDSPプラットフォーム「Red」が引続き業績を牽引した。海外子会社も堅調だった。

(DMP事業)
データを活用したデータマーケティングにおける認知度向上及び導入社数の増加を背景に、大幅な増収増益となった。

(その他事業)
HR Tech領域などの投資を実施した。

売上債権の増加で流動資産は前期末比9億63百万円増加。のれん、投資有価証券の増加で固定資産は同33億27百万円増加し、資産合計は同42億91百万円増加の99億92百万円となった。
短期借入金の増加で負債合計は同31億74百万円増加の56億77百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同11億17百万円増加し43億14百万円となった。
この結果自己資本比率は前期末の54.7%から13.9%低下し、40.8%となった。

利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得の支出が増加し、投資CFのマイナス幅は拡大し、フリーCFも同様にマイナス幅は拡大した。
短期借入金の増加などで財務CFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションはほぼ変わらずだった。

(4)トピックス
◎資金調達について

2017年10月、新株式第三者割当により5.0億円、転換社債第三者割当により45億円、TIP(行使許可条項付ターゲット・イッシュー・プログラム)により41.5億円の合計91.5億円の資金調達計画を発表した。
このうち新株式第三者割当5.0億円、転換社債第三者割当45億円の合計50億円は即時の資金調達であり、使途は以下の通り。

「バーティカルクラウド」構想実現のための新領域における事業拡大と新規参入のためのシステム投資など事業拡充資金(30億円)
DSP事業の体制拡充のための人件費・システム投資(4.8億円)
金融機関からの借入金の返済(41.4億円)

TIPによる41.5億円は将来の資金調達部分。使用使途は、M&Aや資本業務提携などにかかる費用としている。
成長のために資金を確保すると同時に、希薄化のインパクトを可能な限り小さなものとするスキームである。

2018年9月期業績予想
大幅な増収も、先行投資により減益を計画

2018年9月期は、既存事業を堅調に伸ばしていく中で、2019年および2020年の計画値に向けた、積極的な投資を実行する1年と位置づけている。
売上高は前期比34.0%増の161億円。両事業とも引き続き好調。
営業利益は同95.0%減の7億20百万円。新規事業領域での先行投資を行うため一時的な減益を予定している。
セグメント別には両事業ともEBITDAで増益。地域別では海外事業がEBITDAベースで黒字化を見込んでいる。領域別では広告事業が引き続き好調。

今後の重点領域と中期計画
①今後の重点領域
≪海外事業≫

売上が大幅に拡大し、EBITDAも黒字化を見込んでいる海外事業の状況は以下のとおりである。
1.拠点の新規進出
FreakOut Pte.Ltd.を海外事業のヘッドクォーターとしてネイティブ広告プラットフォーム事業を中軸とする広告配信事業を東南アジア全域で展開している。
2017年9月期は、イラン、インド、ベトナム、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシアで8社を設立またはM&Aした。

2.グローバルなパートナーを獲得
17年9月、台湾のadGeek社を子会社化した。
adGeek社は台湾でトレーディングデスク事業及びメディアマネタイズ支援事業を展開しており、元Yahoo台湾代表、元Yahoo APAC Partnership VPの陳建銘によって2014年に創業され、台湾国内で1000名を超える業界イベントを主催するなど、台湾国内のデジタルマーケティング業界でも影響力の高い存在として知られており、広告代理店、媒体社向けのソリューションを展開し、創業以来急成長を続けている。
adGeek社の展開するソリューションを共同で東南アジア地域へ展開していく。2018年9月期より業績貢献を予定している。

3.投資から収益化フェーズへ
海外事業は2016年に海外ネイティブ事業開始以降継続して成長を続けている。今期は先行して設立した4拠点(タイ、トルコ、インドネシア、台湾)を中心に収益化が開始する見込みで、新設の66拠点に対しては引き続き投資を継続する。
また、M&Aも機会があれば積極展開し、事業・販売チャネルを拡大する。

≪「Red for Publishers」をリリース≫

大規模なトラフィックを有する媒体や広告主を対象として、販売支援、オペレーション支援、開発支援、プロジェクト管理面から独自の広告プラットフォーム立ち上げを支援する技術および、それに付帯するサービスパッケージ「Red for Publishers」を2017年9月にリリースした。
媒体社は広告配信による収益最大化を「Red for Publishers」に委ね、本来リソースを注ぐべきコンテンツの充実や集客に専念することが可能となる。
広告主も、優良な媒体社の広告枠へDSP「Red」が優先的に接続されることによって、従来からの「Red」の目的であった広告価値の最大化のさらなる追求が可能となる。
リリース初月でDSP売上の構成比17%まで成長しており、好スタートを切った。更なる拡大に注力する。

≪ノーショー保証サービスの立上げ≫

2017年10月、100パーセント子会社であるGardia株式会社が展開するサービス事業者向けの「No-Show保証サービス」を飲食店舗向けに最適化し、「favy ノーショー保証サービス」として食マーケティング専門企業の株式会社favyに対して、提供を開始した。

(「favy ノーショー保証サービス」概要)
飲食店舗において予約当日の無断キャンセル(いわゆる「ノーショー」)被害が発生した場合、飲食店舗が予約者から被害額相当額のキャンセル料を支払ってもらえない場合に、その被害額をGardiaが全額保証する日本初のサービス。
飲食店舗の予約ユーザーが、個人でも法人でも本保証の対象となる為、飲食店舗は無断キャンセルのリスクにさらされること無く、店舗運営や顧客サービスの強化に専念することができる。
保証上限は、1回のノーショー当たり50万円としており、上限金額の範囲内において被害を全額保証する。
保証加入後、1年間ノーショーが発生しなかった場合、保証料相当額のfavy記事広告を株式会社favyよりプレゼントすることになっているため、保証料がムダになることはない。

フリークアウトHDは極めて大規模なスマホユーザーデータを保有する企業であり、得意とする深層学習技術を通じて、Gardiaではスマホ時代における信用情報機関を目指していきたいと考えている。
また、Gardiaのリスク保証によって生まれる事業機会を、グループとしても新たな広告事業やFintech事業を通じて獲得していく。

②中期計画

2020年9月期「売上高330億円、EBITDA30億円」を目指している。今後3年で2017年9月期実績に対して、売上高で2.8倍、EBITDAで2.1倍という成長を追求する。
国内広告が着実に伸びるのと同時に、海外広告がその成長ドライバーになると考えている。

佐藤社長に聞く

佐藤 裕介社長に、同社の競争優位性、今後の取り組み、課題と対応、投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「社長が考える自社の強みは何でしょうか?」
A:「優秀な機械学習エンジンとそれを更に磨き上げる大量のデータを保有していることだ。」

機械学習エンジンはそのアルゴリズムがいくら優れていても大量のデータを使って実績を積み重ねていかないと「賢いエンジン」に成長しない。
当社は2011年にRTB技術を日本で初めて商用化したが、単なるファーストムーバーであるということだけではなく、そのポジションを活かして大量のデータを保有することができたという点が、競争優位性の確立につながった。
今後もエンジンのブラッシュアップとデータの蓄積を進め、優位性を更に強化していく。
ただ、テクノロジーで優位に立つ一方で、良質な掲載面を独占的に確保しておくことも広告主や代理店にとって大きな魅力となる。その意味でLINE株式会社との合弁会社M.T.Burn(株)は近年のモバイル環境への急速なシフトの中で当社の収益拡大に大きく寄与している。

Q:「今後の取り組みについてお話しください。」
A:「広告業界にとどまらず多くの産業で当社の技術資産を活用するバーティカルクラウドベンダーを目指す。」

テクノロジーによるインターネット広告取引の自動化からスタートした当社だが、広告ビジネスの拡大を進めるのは当然だが、決して広告業にとどまっているつもりはない。
経営理念である「人に人らしい仕事を提供する」ために、データとテクノロジーを活用する余地がある分野に活躍の場を広げていく。

その一つが「HR Tech」と呼ばれる、企業の採用活動に関するフィールドだ。
今年3月にリリースしたように、クラウド型採用管理システムを展開する株式会社タレンティオを100%子会社化した。
株式会社タレンティオは、「アジアNo.1のHR Techカンパニー」を中長期的な事業目標としており、採用活動に関わる業務負担を軽減し、採用に関する情報を蓄積することで採用活動を自動で見える化する機能を備えたクラウド型採用管理システム「Talentio」を運営している。
当社は、「働き方改革」が叫ばれる中で、煩雑な採用オペレーションから人事担当者や経営者を開放するための取り組みを進める株式会社タレンティオと共にHR Techを浸透させることで、Human Resource産業においても当社のビジョンである「人に人らしい仕事を」を実現していく考えだ。
例えば、その人のスキルが記載された職務経歴書データから、どういう企業に採用されやすいのか? 入社後のパフォーマンスが高いか? についての解を導き出すことによって採用プロセスの自動化を進め、不要な面接を省くなど効率化とコスト削減に結び付けることができる。

このように、持株会社体制の下、当社グループの技術資産であるデータ解析基盤、機械学習エンジンをベースとしたプロダクトを広告業界にとどまらず各産業へ提供することにより、当社のビジョンである「人に人らしい仕事を」の実現に向け複数の産業を対象とした「バーティカルクラウドベンダー」へと進化させていくことを今後の事業戦略としている。

Q:「一方で現在の課題とその対応はいかがでしょうか?」
A:「粗利率の改善に向け、アルゴリズムの見直しやデータ量の増大に粛々と取り組んでいく。」

ここ数年高止まりしている原価率の改善が課題であると認識している。

ただこれは、営業をどうするかということではなく純粋にプロダクト投資の問題だ。
当社の粗利を引き上げても広告主のパフォーマンスが変わらないという状況を、アルゴリズムの見直しやデータ量の増大でいかにして実現するかということであり、粛々と進めていく。

また、足元ではLINE向け広告が大きく伸びているのは大変喜ばしいことではあるが、一方で業績変動の大きさにつながる可能性もあるので、他の広告枠確保も進めて依存度を低下させる取り組みも必要だと考えている。

Q:「最後に投資家・株主へのメッセージをお願いします。」
A:「当社は「AI」、「機械学習」を中心事業として取り組み利益を生み出している数少ない企業。人に人らしい仕事を提供し、より創造的な社会づくりに貢献する当社を是非中長期の視点で応援していただきたい。」

当社は東証マザーズに上場しているが、マザーズ上場企業で「AI」、「機械学習」を中心事業として取り組んでいる数少ない企業の一つだ。
また、中長期の投資テーマとなるであろう「AI」や「機械学習」という分野で独自の技術をベースに、売上を伸ばし、利益をしっかりと出しているのも当社を含めそう多くない。

加えて、当社は、現在は広告を事業ドメインとしているが、広告セクターの会社であるとは思っていない。
あくまでも広告は事業領域の1つであり、当社の優れたテクノロジー基盤を活用し、人材採用関連事業を始めとしてフィールドを限りなく広げる余地が極めて大きいこともぜひ理解していただきたい。

人に人らしい仕事を提供し、より創造的な社会づくりに貢献する当社を是非中長期の視点で応援していただきたい。

今後の注目点

両事業とも好調で大幅な増収増益となった。今期は投資フェーズということで利益は減少するがいよいよ海外事業も黒字化する見込みでさらに成長に弾みがつくベースが出来つつあるようだ。一方、佐藤社長が課題と認識している原価率の高さについては残念ながらまだ改善の方向は見られない。短期的には毎四半期ごとの粗利率の動向を、中長期的な視点としては海外事業の拡大スピードをウォッチしたい。一方、「バーティカルクラウド」としての広告以外の他分野への展開は、同社の技術力の高さという競争優位性を活かした成長が期待できる大変興味深い動きだ。まずは「HR Tech」分野での進捗を注目したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書

最終更新日:2017年1月11日

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記述している。

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