(3031:東証1部) ラクーン 3事業共に増収 スーパーデリバリーが再び成長ベースに

2017/12/21

raccoon

今回のポイント
・18/4期第2四半期の売上高は前年同期比8.2%増加の12億39百万円。3事業共に増収だった。営業利益は同6.1%増の2億12百万円。引き続きSD export、Paid、URIHOへの広告投資、営業力強化やシステム開発などサービスの利便性向上のための人員増強などを進めたため販管費も増加したが増収効果で吸収した。・18/4期通期業績予想に変更は無い。前期方針を継続し、「SD export」、「Paid」に「URIHO」を加えた成長分野への集中投資を行う。売上高は前期比8.1%増の25億50百万円の予想。EC事業では海外流通額の拡大、国内流通額の更なる回復を見込む。Paid事業、保証事業は引き続き順調に拡大の予想。営業利益は同16.4%増の4億90百万円。広告宣伝費やシステム開発費等を集中的に投下する方針だが、2桁増益を見込んでいる。配当は現時点では未定。

・スーパーデリバリーの第2四半期(8-10月)流通額合計は26.07億円と、2014年第1四半期以降の最高額となった。詳細は開示されていないが、低迷が続いていた小売業の流通額が客単価向上によりプラス成長したということであり、ここのところ会社側が課題と認識していたスーパーデリバリーが再び成長ベースに回復しつつあるようだ。ただ、本格的回復には依然として低水準にとどまっているトータルの客単価回復も不可欠だろう。一方、PaidにおけるAIの導入は与信審査及び売掛債権保証で豊富な実績を有するトラスト&グロースをグループに有する同社ならではのサービスであり、導入企業数および取引額拡大による同事業の更なる成長につながる事となろう。

会社概要

中小企業間の取引を便利でスムーズに行うためのサービスを提供する企業として、インターネット上でBtoB(企業間電子商取引)市場である「スーパーデリバリー」というWebサイトを運営している。
「スーパーデリバリー」は、アパレル、雑貨を中心にメーカー、インポーター等の出展企業の取扱う商品を、全国の中小規模小売店に販売している。
2010年11月に売掛債権保証事業を行っている(株)トラスト&グロースを子会社化。これによって中小企業間決済事業を新たな事業ドメインと位置づけし、本格的に取組を開始し、更に2011年10月から、企業間取引を安心かつスムーズにする後払い決済サービス「Paid(ペイド)」の提供を開始している。2014年3月からは、第4番目のサービスとして、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツール「COREC(コレック)」の提供を開始した。
また、「スーパーデリバリー」の越境EC版となる輸出販売サービス「SD export」を2015年8月より、ネット完結型売掛保証サービス「URIHO」を2016年8月よりスタートさせた。

【経営理念】

経営理念を「企業活動を効率化し便利にする」に刷新した。企業間取引に関し、これまで培ってきた情報と決済に関するノウハウを活かし、企業活動を効率化し便利にする仕組みを今後も提案していくというビジョンを表している。

小方社長は創業後、企業としての方向性をしっかり定め、経営者としてやっていく決意を固めるまでは安易に人を増やすべきではないという考えから従業員を一人も雇用せず、自分一人で同社を運営してきたが、方向性と決意が定まった2000年に初めて正社員30名を採用した。
当時の日本のEC業界は、米国に先例がある訳でもなく、自らがゼロから作り上げていかなければならない黎明期であったが、この最初のメンバーが中心となって、日本のBtoB ECを作り上げてきた。
同社においては、EC専門家の彼らが最大の経営資源であると小方社長は考えている。
今後、新しいビジネスモデルを創造していくにあたり、企業領域を明確にしていく必要性があると考え、経営理念を刷新することとした。

重要なポイントは以下の2点。

①事業領域の明確化の必要性

既存事業とのシナジーは特に意識しないが、同社のコア・コンピタンスであるノウハウを活用しながら、「中小企業向けBtoBインフラ」であること、「ECと決済の専門知識」を活かすものであること、に事業領域を絞りこむ。

②企業間取引のインフラサービス企業としての総合サービス化への転換

存在して当たり前のインフラとなるべく、今回の新サービス「COREC」に続き、第5、第6、第7と制限を設けず、新サービスを提供し続け、これまで以上に、よりインフラサービス業へと進化していく。

【事業内容】

「EC事業」、「Paid事業」、「保証事業」の3セグメントで構成されている。

(1)「EC事業」

「スーパーデリバリー」はファッション・雑貨業界のメーカーと小売店が出会い、継続して取引を行うことができるB to B(企業間取引)サイトである。サイトを利用することで、これまで取引のできなかったメーカーと小売店に新たな取引機会が生まれ、さらに新商品の紹介や受発注のやりとりも効率化される。また、代金はスーパーデリバリーが小売店から回収し、メーカーへまとめて支払うことから、未回収リスクのない取引の実現が可能となる。

スーパーデリバリーに参加するためには、同社の審査をパスする必要がある。
この点、同業他社の中には「数=取引量の拡大」を最優先とし、ネット小売店を中心に緩い審査基準で加盟店を数多く集める事に注力しているところもあるが、同社の場合は、「質」と「数」のバランスを重視するため小売店に関しては、ネット小売店ではなく、実際に店舗を運営している小売店であるか?などを中心に審査を行っている。
また、サプライヤーに関しても、質の高さを重視している。スーパーデリバリーの立ち上げ当初は質の高い、ブランドを確立したサプライヤーは、他のそうでないサプライヤーと共に並べられるのを嫌がり、参加を拒むケースもあったが、現在では他のサプライヤーの質も高い事が理解され、そうしたことは無くなっている。小売店にとっても、質の高いサプライヤーと取引出来る点が大きなメリットとなっている。
B to C取引と異なり、B to B取引は、取引量を拡大させるためには、リピート取引を如何にして拡大させるかがカギとなるため、マーケットのクオリティ向上が最も重要であると同社は考えており、この点が同業他社との大きな違いの一つとなっている。

また、同社はEC企業ではあるが、他社が、ECのマーケットプレイスを開設・運営するシステム会社という側面が極めて強いのに対し、同社はただ単にそれにとどまらず、アパレル・雑貨を中心とした商品知識、業界知識がきわめて豊富な点も、他社との違いとなっている。
「スーパーデリバリー」の収益は、出展企業から得る出展基本料(月額4万円)、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)、出展企業からのシステム利用料(会員小売店に卸した商品代金の10%)の3つから成っている。

商品は出展企業が会員小売店に直接配送するが、代金に関しては同社が出展企業の代わりに会員小売店から代金を回収し、出展企業に支払うため、売上高として商品代金を計上し、システム利用料を控除した額を売上原価として計上する総額計上を行っていたが、2015年4月期第1四半期より、売上表示を従来の総額表示から純額表示に変更した。純額表示における売上高は、出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。
サービスの種類も増加しておりインフラサービス提供企業としてのポジショニングを明確にすることが目的。またマーケットプレイス事業を手掛ける同業他社との比較も容易になり投資家のメリットも大きいと判断した。

2017年10月末での各種経営指標は、会員小売店数81,800店舗(前期末比11,280店舗増)、出展企業数1,201社(同12社増)、商材掲載数673,200点(同35,548点増)となっている。

2014年3月には、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツールサービス「COREC(コレック)」を同事業内でスタートさせた。2017年10月末のユーザー数は13,750社となっている。
また、2015年8月には「スーパーデリバリー」の越境EC版となる輸出販売サービス「SD export」をスタートさせた。

(2)Paid事業

「Paid」は企業間取引の非効率な管理プロセスや内在する信用リスクを解消する決済サービス。
Paidを利用することで、バイヤーはすべての加盟企業と締め支払いで取引が可能となり、効率的にかつ運転資金にゆとりを持った取引が実現できる。サプライヤーは登録するバイヤーと代金未回収のリスクや請求督促の手間なく決済ができ、効率的かつ安全で顧客に喜ばれる取引が可能となる。
加盟企業数は2017年10月末には2,500社を超えた。18年4月期第2四半期の取扱高は、前年同期比20.0%増加の91億62百万円(うち、グループ内取引高 34億12百万円)となった。

(3)「保証事業」

11年4月期第3四半期から子会社化した(株)トラスト&グロースにおいて行っている事業である。「T&G売掛保証サービス」は、取引先が倒産した場合に、あらかじめ保証を掛けておけば、保証の枠の中で同社が損害分を代わって支払いするサービス。審査に際して、取引先に対する直接的なヒアリングや取引先からの申し込みなどは一切必要がない。独自の与信判断により90%以上の高い承認率を実現し、審査依頼から2営業日程度で回答も得られる。更に、顧客の商習慣に合わせた保証内容のカスタマイズが可能と利便性も高い。
加えて、2016年8月からは、中小企業向けネット完結型の売掛保証サービス「URIHO」をスタートした。
2017年10月末の保証残高は前期末比27.2%増の144億34百万円(うち、グループ内保証残高 14億52百万円)となっている。

「目標とする経営指標」にROEを掲げてはいないものの、ROEを意識した経営を行っている。
Paidの収益化、「COREC」の立ち上がり、またその後の新サービスなど、ITを駆使したサービス拡大の過程でROEはさらに上昇する余地が大きいと会社側は考えている。

2018年4月期第2四半期決算概要
3事業とも増収増益。

売上高は前年同期比8.2%増加の12億39百万円。3事業共に増収だった。
営業利益は同6.1%増の2億12百万円。引き続きSD export、Paid、URIHOへの広告投資、営業力強化やシステム開発などサービスの利便性向上のための人員増強などを進めたため販管費も増加したが増収効果で吸収した。

◎EC事業

増収増益。
引き続き質の高い会員小売店及び出展企業を獲得した上で、客単価や稼働率の向上を図り、両者の継続した取引拡大による流通額増加に取り組んでいる。
低迷していた小売業の流通額が客単価向上によりプラス成長となったことに加え、引き続き小売業以外の事業者の流通増加が増加したため国内流通額は前年同期比3.9%増加。国内流通額は再び成長ベースに回復しつつあると会社側は見ている。
海外流通額(SD exportと日本語版サイトでの海外向け流通額の合算)は同74.6%増。
この結果、「スーパーデリバリー」全体の流通額は第2四半期累計で前年同期比8.7%増の51億47百万円となった。
第2四半期(8-10月)では同10.3%と2桁の増加となった。
「COREC(コレック)」のユーザー数(サプライヤーとバイヤーの合計)は13,750社となった。
サービス向上のためのシステム開発投資やUI・UXの改善・向上を目的とした人材強化などにより販管費は増加したが、増収で吸収した。

◎Paid事業

増収・大幅増益。
引き続き、加盟企業の獲得増加と獲得した加盟企業の稼働率の向上に取り組んでいる。
今期は、前期の投資による成長を軌道に乗せながら、さらなる成長投資を行っている。17年8月、株式会社LIXILビバと業務提携し「売掛カード」発行によるホームセンター店頭での掛けでの支払い(後払い)が可能となる決済スキームの運用を開始した。
2017年10月末の加盟企業数は2,500社を超え、トータルの取扱高は同20.0%増の91億62百万円となった。外部取扱高、外部売上高はそれぞれ同33.4%増の57億50百万円、同31.3%増の1億45百万円と順調に拡大している。

◎保証事業

増収・増益
引き続き営業力強化に取り組むことで保証残高の拡大を図っている。今期は、16年8月より開始した「URIHO」のターゲットとなる中小企業に対し、効果的なマーケティング活動を行うことでクライアントを増加させることに取り組んでおり、広告宣伝費が増加している。
すべてのサービスの保証残高が増加し、保証残高は前期末比27.2%増の14億,43百万円となった。

現預金の増加などで資産合計は前期末に比べ1億円増加の56億66百万円となった。
負債合計はほぼ変わらず。
利益剰余金の増加で純資産は同70百万円増加の19億78百万円。
この結果自己資本比率は前期末の34.2%から0.7ポイント上昇し34.9%となった。

利益の増加、売上債権の減少などで営業CFのプラス幅は拡大。投資CFはほぼ変わらず、フリーCFのプラス幅も拡大した。財務CFはほぼ変わらず。キャッシュポジションは上昇した。

2018年4月期業績予想
業績予想に変更無し。引き続き成長分野への集中投資を実施も、増収・2桁増益。

業績予想に変更は無い。前期方針を継続し、「SD export」、「Paid」に「URIHO」を加えた成長分野への集中投資を行う。
売上高は前期比8.1%増の25億50百万円の予想。EC事業では海外流通額の拡大、国内流通額の更なる回復を見込む。Paid事業、保証事業は引き続き順調に拡大の予想。
営業利益は同16.4%増の4億90百万円。広告宣伝費やシステム開発費等を集中的に投下する方針だが、2桁増益を見込んでいる。
配当は現時点では未定。

(2)各事業への取り組み&トピックス
①EC事業

<海外バイヤーの利便性を広げ流通額を拡大>
参考価格情報として日本円のみの表示から国ごとにローカル通貨(全4通貨)で表示する機能をリリースした。反応は良好だ。
またモバイル端末からのアクセスに対するUIを向上させたところ会員登録率が上昇した。

<小売業以外の事業者の流通額拡大>
流通額が伸びている業種へのアプローチを強化する。
具体的には、利用率の高い媒体とのアライアンス、入会後の個別フォロー強化、実際に家具などを配置したシーンを見せることで購買意欲に訴求するホームステージングの撮影代行サービス開始などに取り組んでいる。
住宅設備、業務用家具、介護用品など小売以外の事業者向け商材の獲得を強化している。

②Paid事業

<LIXILビバとの業務提携>
2017年8月、ホームセンター「ビバホーム」、「スーパービバホーム」を展開する株式会社LIXILビバと業務提携契約を締結した。

LIXILビバは、建築事業者などプロ客に対応する資材や関連商材を豊富に揃えており、一般客だけでなく事業者も多く利用している。
今回の提携によりLIXILビバは「Paid」導入と同時に「売掛カード」を発行し、ホームセンター店頭で掛けでの支払い(後払い)が可能となる決済スキームの運用を開始した。LIXILビバのホームセンターを利用する事業者の利便性は大きく向上する。
まずスーパービバホーム三郷店(埼玉県三郷市)で運用を開始し、ビバホーム全店舗導入を視野に順次運用を拡大していく予定。

<コンビニ払いへの対応>
導入企業数の増加に伴ってその取引先の業種は年々多様化しているが、飲食店等を運営する導入企業の取引先から、「銀行の営業外時間でも代金を支払えるようにしてほしい。」との要望が寄せられるようになった。
支払方法の多様化による利便性の向上が顧客満足度の向上に繋がると同社では考えており、2017年9月、コンビニ支払いへの対応を開始した。
これにより導入企業の取引先は24時間いつでもコンビニで代金の支払いが可能となる。また、導入企業は「Paid」を導入するだけで3つの支払い方法(銀行振込、口座振替、コンビニ払い)を取引先に提供できるようになる。

<自社開発AIによる与信審査を導入>
2017年11月、ディープラーニング(深層学習)を活用した自社開発 AI(人工知能)による与信審査を、年明けを目途に開始すると発表した。

現在「Paid」は導入企業の取引先が初回審査を通過すると、基本的に一律の利用限度額を付与しているが、与信審査に AI を導入することで取引先企業ごとの詳細な与信判定が瞬時に可能となるのと同時に審査精度は飛躍的に向上する。
同社では深層学習を行うにあたりこれまで蓄積してきた20万社以上に上る大量な独自の企業データを利用することで、極めて有用性の高いAIを開発・導入することができたと考えている。
具体的には以下のようなAI導入効果が期待される。

審査を手動で行った場合に必要な人員数は1日3人に対し、自動審査にかかる時間はわずか1件につき1秒で大幅な効率化を図ることができる。
リスクのきめ細かい分析・管理により初回付与の与信額は平均2.4倍以上に増額。
テスト段階では従来比3倍以上の与信枠が付与される企業も存在。
AI による自動付与の当面の目標額は1件につき最高1,000万円としている。

与信システム運用環境への本格実装は年明けを計画している。
運用開始後、データがさらに蓄積されAIの学習が進むことで、これまで発見できなかったリスク傾向を見つけ出すことができ、判定精度は向上していくと同社では考えている。

③保証事業

「URIHO」についてはターゲット企業に対する効果的なマーケティング活動を実施し、クライアント数を増加させるための投資を行っている。
具体的には、リスティング広告やディスプレイ、SNSを始めとしたインターネット広告を中心とした集客に取り組んでいるほか、サービス内容を分かりやすくしたり、動画を掲載したりしてサイトリニューアルを進めている。

今後の注目点
スーパーデリバリーの第2四半期(8-10月)流通額合計は26.07億円と、2014年第1四半期以降の最高額となった。詳細は開示されていないが、低迷が続いていた小売業の流通額が客単価向上によりプラス成長したということであり、ここのところ会社側が課題と認識していたスーパーデリバリーが再び成長ベースに回復しつつあるようだ。
ただ、本格的回復には依然として低水準にとどまっているトータルの客単価回復も不可欠だろう。
一方、PaidにおけるAIの導入は与信審査及び売掛債権保証で豊富な実績を有するトラスト&グロースをグループに有する同社ならではのサービスであり、導入企業数および取引額拡大による同事業の更なる成長につながる事となろう。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2017年7月24日

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