(2477:東証マザーズ)手間いらず 社名変更 更なるブランド力向上図る

2017/12/13

temairazu

今回のポイント
・2017年10月1日付けで商号を「手間いらず株式会社(英文:Temairazu, Inc.)」に変更した。比較サイトの運営からスタートした同社だが、現在の収益の柱は、宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU(手間いらず)」シリーズの開発・提供。B2Bの事業のため我々が普段目にする事はないが、インターネットで宿泊予約する時、ほとんどの人がお世話になっている。「TEMAIRAZU」シリーズの更なる認知度・ブランド力の向上と効果的な事業展開を図るべく、サービス名の「手間いらず(TEMAIRAZU)」を社名とした。・18/6期1Q(7-9月)は前年同期比20.8%の増収、同36.1%の営業増益。「TEMAIRAZU(手間いらず)」シリーズの開発・提供を行うアプリケーションサービス事業が伸び、インターネットメディア事業も事業構造の見直し効果が顕在化してきた。上期及び通期の業績予想に変更はなく、通期で前期比14.8%の増収、同25.9%の営業増益。3期連続の営業最高益更新が見込まれる(経常利益、当期純利益は4期連続)。配当は10円の期末配当を予定している。

・ストックビジネスのため通期の業績に不安はなく、どれだけ上積みできるか、新バージョンの浸透と共に注目していきたい。もっとも、目先の売上高・利益よりも重要なのが、中長期的な成長の原動力となる、ユーザーの獲得とシステム連携である。2016年のインバウンド旅行者数は2,403万人だったが、日本政府は2020年に4,000万人に引き上げたい考えで、2030年には6,000万人を目指している。急増するインバウンド旅行者数に対応するために宿泊施設の整備が不可欠であり、宿泊施設では業務の効率化を避けて通れない。宿泊予約サイトコントローラーでトップクラスのシェアを有する同社が受ける恩恵は大きい。

会社概要

宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU(手間いらず)」シリーズの開発・提供を中心に、比較サイトの運営を行っている。宿泊予約サイトコントローラーとは、複数のオンライン予約サイトの在庫・料金等の情報を一括管理するシステム。宿泊施設の予約業務を効率化する事で、販売チャネルの拡大を可能にすると共に運用コストの低減を実現する。

【事業内容】

事業は、宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU」シリーズの開発・提供を行うアプリケーションサービス事業と、比較サイトの運営を通して広告収入を得るインターネットメディア事業に分かれ、17/6期はアプリケーションサービス事業が売上高全体の92.8%を占めた(連結調整前の営業利益ベースで96.2%)。

アプリケーションサービス事業

ホテルや旅館等の宿泊施設を顧客とし、宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU」シリーズの開発・提供を行っている。予約サイトコントローラーとは、複数のオンライン予約サイトの情報を一括管理するシステムで、販売チャネルの拡大による収益の向上と宿泊施設の予約業務の効率化(運用コストの削減)を図る事ができる。同社が提供する「TEMAIRAZU」シリーズは、複数の宿泊予約サイトを操作一つで簡単に管理でき、スピーディーかつ自動更新のためオーバーブッキングも回避できる。また、ASP型サービスのため、インターネットが接続できれば場所を選ばず、面倒な設定をする事なく利用が可能だ。

複数の宿泊予約サイトも操作一つで簡単管理

在庫や料金の管理を一括で行い、面倒な管理業務から解放。宿泊予約サイト管理の業務フローの統一化が管理コストの削減につながる。

スピーディー&自動更新でオーバーブッキング抑止

予約情報の取得間隔が短いため、素早い在庫調整が可能。急な予約が入った場合でも、一括で各宿泊予約サイトの部屋を手仕舞う事ができる。

インターネット接続できる環境があればOK!

インターネット経由での使用のため、施設・本部等場所を問わず管理可能。専用サーバでの情報管理のため、故障等による急なPCの買い替えでも同じアカウントで利用できる。
自社宿泊予約システム、海外宿泊予約サイト、ホールセラー(法人向け卸売)のシステム等の各種Webサービス、PMS(予約から客室管理、請求までを処理する宿泊施設の基幹システム)、リアルエージェント(店舗展開する旅行会社)の予約システム、更にはCRS(航空会社系のコンピュータ予約システム)等、多様なチャネルからの集客機能の強化を目的にシステム連携を積極的に進めており、インバウンドの集客にも有効なシステムとなっている。

2015年にブランドを「TEMAIRAZU」に改め、現在、「TEMAIRAZU」シリーズとして、インテリジェントな機能を搭載したシステムである「手間いらず.NET2」及び「TEMAIRAZU YIELD」をラインナップしている。「TEMAIRAZU YIELD」は、従来からの機能に加え、需要予測に基づく客室単価の値上・割引機能や販売先の制限等で収益の最大化に寄与するイールドマネジメント機能をフルに搭載しており、「手間いらず.NET2」は一部の最新機能を省く事で価格を抑えた。両システム共に、在庫・料金等の情報を一括管理する利便性だけでなく、稼働率と平均客室単価の向上が可能で、開発に当たって労働コストの削減もより意識された。月額の固定料金と利用件数に応じた従量制の料金体系をとっている。

インターネットメディア事業

比較サイト「比較.com」を中心とした広告媒体の運営を行っている。広告主のウェブサイトへユーザーを誘導し、成約件数に応じた手数料収入を得る「顧客誘導サービス」と保険や引越しの各種見積もり・資料請求等に応じた手数料収入を得る「情報配信サービス」のアフィリエイト広告を中心に、バナー、テキスト、記事コンテンツ等の広告業務を行っているが、広告に依存した事業構造から脱却するべく、抜本的な事業構造の見直しを進めている。

2003年08月、比較サイト「比較.com」の運営を目的に、資本金250万円をもって設立された(最低資本金規制特例制度を利用した会社設立)。2005年11月にはロボット型比較検索エンジンによる価格比較サービスを開始する等、順調に業容が拡大。2006年3月に最低資本金規制特例制度を利用した会社として初めて東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場した。

上場後は、新規事業の育成にも取り組み、2007年6月にインストール型宿泊予約サイトコントローラー「手間いらず!」の開発・販売を手掛けていた有限会社プラスアルファを子会社化(同年10月に株式会社に改組)。2008年4月には日本で初めてダイナミックパッケージを展開したオンライン旅行会社のグローバルトラベルオンライン株式会社(2014年4月、吸収合併)を住友商事株式会社から譲受した(ダイナミックパッケージとは、交通手段とホテル等の宿泊施設を所定の範囲内で自由に選択できる旅行商品)。ただ、リーマン・ショック後の景気悪化と株価下落による証券会社向けのサービスの落ち込みで07/6期から09/6期にかけて3期連続の営業・経常・当期損失を余儀なくされた。このため、事業が拡大していた宿泊予約サイトコントローラー(アプリケーションサービス事業)に経営資源の集中を図ると共に、グループの再編とサービスの集約を進めた。

2010年6月に予約サイトコントローラーをASP化した事で使い勝手が劇的に向上。2015年2月にブランドを「手間いらず」から「TEMAIRAZU」に変更し、2016年7月には豊富な新機能を搭載した「TEMAIRAZU YIELD」と搭載する新機能を絞り込む事で価格を抑えた「手間いらず.NET2」を発売。2017年10月、宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU」シリーズ」の更なる認知度・ブランド力の向上と効果的な事業展開を図るべく、手間いらず株式会社に商号を変更した。

2018年6月期第1四半期決算
前年同期比20.8%の増収、同36.1%の営業増益

売上高は前年同期比20.8%増の2億64百万円。前期までの契約の積み上げと新規のユーザー獲得でアプリケーションサービス事業の売上が2億48百万円と同22.2%増加した他、事業構造の見直しを進めているインターネットメディア事業の売上も同3.2%増加した。

営業利益は同36.1%増の1億63百万円。利益面では、エンジニアの増員による一時的な売上総利益率低下の影響を増収効果で吸収して売上総利益が同20.5%増加した。営業・サービス強化に向けて人件費が増加したものの、展示会等が少なかった事や業務の効率化など経費全般の節減で販管費が同2.7%減少。営業利益率が61.8%と6.9ポイント改善した。

アプリケーションサービス事業

売上高2億48百万円(前年同期比22.2%増)、セグメント利益1億80百万円(同27.0%増)、全社共通費配賦後利益1億57百万円(同32.6%増)。「手間いらず.NET2」及び「TEMAIRAZU YIELD」の認知度向上と販売強化に取り組み、多様なチャネルからの集客機能を強化するべく国内外の宿泊予約サイトとの連携を推進した。

新たな連携先は、世界最大手のコミュニティ主導型マーケットプレイス「Airbnb」、熊本の魅力を発信している宿泊予約サイト「おるとくまもと」、韓国ホールセラーであるHANATOUR JAPANの宿泊予約サイト「JAPANTOMARU」、民泊対応ホテルシステム「mister suite」、ホテル運営者向け民泊導入サービス「m2m Hotels」。「おるとくまもと」との連携では、熊本県内の宿泊施設の稼働率向上を通して熊本の復興を支援していく事になる。

また、九州・沖縄地区での営業活動の拠点として、福岡営業所を開設した。より地域に密着した営業を行い、新規契約及びバージョンアップの獲得につなげていく。

インターネットメディア事業

売上高16百万円(前年同期比3.2%増)、セグメント利益8百万円(同99.1%増)、全社共通費配賦後利益6百万円(前年同期は1百万円の利益)。比較サイト「比較.com」において、コンテンツの選択と集中を進めており、広告出稿の最適化やユーザーインターフェイスやサービスの統廃合等にも取り組んでいる。事業構造の見直し効果が徐々にではあるが成果が顕在化してきた事で利益率が改善した。

第1四半期末の総資産は前期末と同水準(18百万円増)の26億23百万円。現預金や純資産が増加する一方、未払法人税等が減少した。自己資本比率は95.0%(前期末94.1%)。

2018年6月期業績予想
前期比14.8%の増収、同25.6%の経常増益

売上高は前期比14.8%増の10億55百万円。「TEMAIRAZU」シリーズの新規契約やバージョンアップが増加するとみている。また、海外・国内のサイト接続の拡大と民泊市場への対応に力を入れる他、営業体制の強化と共にプロモーションを積極展開していく。一方、抜本的な事業構造の見直しを進めているインターネットメディア事業は引き続きサービスの統廃合やコンテンツの再構築に取り組んでいく。

営業利益は同25.9%増の6億円。開発体制や営業体制強化のための人材投資、組織管理体制の強化、更には教育体制の整備やリスク管理面でのコスト増等を織り込んだものの、営業費用はわずかな増加にとどまる見込み。

配当は1株当たり期末10円を予定している(予想配当性向17.5%)。

社長インタビュー“渡邉社長に聞く”

2017年10月、宿泊予約サイトコントローラー「TEMAIRAZU」シリーズ」の更なる認知度・ブランド力の向上と効果的な事業展開を図るべく、商号を「手間いらず株式会社(英文:Temairazu, Inc.)」に変更した。恵比寿の本社にお邪魔して、新しい商号に込めた渡邉社長の思いと今後の事業展開についてお話を伺った。

渡邉社長は1971年生まれの46歳。慶応義塾大学商学部を卒業後、CSKベンチャーキャピタル株式会社に入社。業務を通して多くの経営者と接する中で自らも起業を意識するようになり、2003年8月に最低資本金規制特例制度を利用して比較.com株式会社を設立。創業からわずか2年2カ月の2005年10月、東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場した。
【社名変更】

10月1日付けで社名を、「比較.com株式会社」から「手間いらず株式会社」に変更されました。社名変更の背景等を、お話しいただけますでしょうか。

渡邉社長: 主力事業がB2C(インターネットメディア)事業からB2B(アプリケーションサービス)事業に変わっていたのですが、B2B事業ですから社名の影響は少ないと考えていましたし、B2C事業の広告宣伝効果に期待しているところもありました。このため、社名変更の必要性を感じていませんでしたが、B2B(アプリケーションサービス)事業の売上拡大とB2C事業の売上減少で、B2C事業の売上構成比が6%程度にまで低下してしまいました。当社に対する投資家の理解の問題もありますし、求職者についても、比較サイトを希望される方が多い状況です。こうしたミスマッチを解消するためにも、正しい姿で表現すべきであろうと考えました。社名を変更したのは10月ですが、半年くらい前に決めていました。

なるほど。事業上の視点ではなく、投資家や求職者の立場に立って社名を考えると変更の必要があった、という事ですね。そして、社名を冠した主力事業をけん引役に更なる成長を目指そうと言う思いも込められているのでしょうね。

渡邉社長: そうですね、旅行予約サイトコントローラー「手間いらず」は基盤整備が進み、お客様に自信をもって進める事ができる水準に達したと考えています。お客様も順調に増えています。インバウンドの盛り上がりが期待できる2020年の東京オリンピックを控えて、いいタイミングではないかと考えました。
【足跡】

更なる飛躍に向け、事業環境も追い風になりますね。今後の展開に期待したいと思います。それでは、これまでの歩みについて、お話を伺いたいと思います。大学を卒業されてベンチャーキャピタルに入社されました。ベンチャー企業やスタートアップ企業、或いは、その経営者の方々と接する中で培われた経験が御社の経営にも活かされているのでしょうね。

渡邉社長: 大学卒業後に入社したベンチャーキャピタルはCSK(2011年に住商情報システムと合併)のグループ企業でした。大学卒業後間もない社員が企業経営者にアドバイスを行うと言うのは少し無理があったと思いますが、貴重な経験でした。インターネット・IT関連企業だけでなく、バイオや医療、製造業等のベンチャー企業をバランスよく見ることができ、その経験は会社経営に活かされていると思います。今でも、不要不急の出費は抑えていますし、リスクの高い話は慎重に対応しています。

御社のバランスシートをみると、その一端を伺う事ができますね。リーマン・ショック後に業績が厳しい時期もありましたが、きれいなバランスシートが維持されてきました。ところで、起業の経緯について、お話を伺えますでしょうか。「比較.com」と言うドメイン名ですから、インターネットでの比較ビジネスに興味をもたれていたのでしょうね。

渡邉社長: 「比較.com」と言うドメインを取得したのは、ベンチャーキャピタルの社員の頃で会社を立ち上げるかなり前です。当時は米国が先にインターネットビジネスで盛り上がりを見せており、雑誌やテレビでインターネット関連の新しいビジネスを数多く見聞きしていましたが、その後、ドメインについて検索していたところ、「比較.com」が空いていたので、とりあえずとっておこうと・・・。海外旅行の際に航空会社のマイレージサービスの比較を行った経験があり、インターネットでの比較サービスに興味を持っていました。ただ、当時は具体的に起業を考えていた訳ではありませんから、事業を立ち上げる事もなく、ドメインは、長い間、眠っていました。
ただ、ドメインの事は気になっていました。ドメインの維持費も払っていたので、「このままでは、もったいないな」と...。加えて、ITバブルがはじけて投資の市場が急速に縮小する中でも、体感的にインターネットを使ったビジネスは伸びていました。ですから、起業は自然な流れだったと思います。先ずマイレージの比較サイトを立ち上げました。比較サイトを作ること自体はとても簡単ですが、当時は作る人があまりいなかったので、作れば検索エンジン上位に掲載される状況でした。

事業が順調に立ち上がりましたが、「比較.com」はどのようにして収益をあげていたのでしょうか

渡邉社長: ITバブルの頃のインターネットは何をやるにも無料で、収入源と言えば、バナー広告程度でした。インターネット業界にお金が回っていなかった訳ですが、Googleやヤフーのリスティング広告開始を契機にお金が回るようになっていったと思います。リスティング広告とは検索結果の表示に合わせて関連する広告を表示するクリック課金型の広告です。ちょうど私が会社をつくった頃ですから、タイミングが良かったと思います。当時のリスティング広告の出稿料は今と比べると驚くほど安かったため、アフィリエイト広告で利ザヤを稼ぐ事ができました。リスティング広告でお客さんを「比較.com」に誘導し、「比較.com」から広告主のサイトに送客し口座開設等につなげました。広告主は、証券会社、FX、インターネットプロバイダー等が中心でした。広告主から受け取る手数料とリスティング広告の出稿料との差額が当社の利益になりました。

会社設立のタイミングの良さに加え、比較サイトと言う着眼点も良かった結果、設立から2年7カ月での記録的なスピード上場を実現した訳ですね。起業されて上場を果たし、更に業容を拡大させている経営者の方は、皆さんがそういった何かをお持ちですよね。上場後はM&Aも手掛け、2007年6月にインストール型宿泊予約サイトコントローラー「手間いらず!」の開発・販売を手掛けていた有限会社プラスアルファを子会社化しました。今では予約サイトコントローラーの開発・提供が主力事業になっています。その経緯について、お話を伺えますでしょうか。

渡邉社長: 2007年頃から2010年にかけて、ネット系のサービス、国内旅行予約サイト、海外旅行予約サイト等、5~6件の買収を行いました。上場後、現預金が20億円近くありましたが、その半分くらいを投じました。結局成功したのは、最初の案件で最も大きい案件だった「手間いらず!」だけでした。「手間いらず!」は競合らしい競合もなく、お客さんが徐々に積み上がっている事業でした。その他のネット系のサービス事業はお客さんが離れ始めていましたが、独自のソフトウェアを持っていましたから立て直しは可能だろうと考えていました。見通しが甘かったと言う事です。旅行予約サイトは国内と海外を統合して事業を進めましたが、赤字体質から抜け出す事ができませんでした。ただ、旅行予約サイトを知る事ができましたし、サイト運営も貴重な経験となりました。この経験が予約サイトコントローラーに活かされています。また、当社の立ち位置を確認する事にもなりました。当社にとって、予約サイトコントローラーが伸ばしていくべき事業であると。旅行予約サイト事業は予約サイトコントローラーの連携先と競合してしまいますから生態系を壊してしまいます。旅行予約サイトは競合企業も多いですし・・・。
【市場動向とポジショニング】

M&Aによってスタートしたアプリケーションサービス事業(予約サイトコントローラーの開発・提供)は着実に売上を増やし、先行投資を吸収しながら利益を出していました。そして、ASP化で成長速度が加速し、事業規模の拡大で利益率も大きく改善しました。ASP化がステップアップの契機になりましたね。

渡邉社長: パッケージの時はパソコンの性能によっては処理に時間がかかっていましたが、ASPはサーバで処理しますからストレスを感じる事なく使っていただけるようになりました。使用するパソコンや利用環境に合わせる必要がありませんから、初期設定も楽になりました。当社にとっては、ASP化に当たってエンジニアを集中投入する必要がありますが、作ってしまうとソフトウェアを流通させる必要がありませんから楽ですね。パッケージの時も売り切りではなく、基本料金と成約毎の手数料を頂いていましたから料金体系は今と変わりません。

旅行予約サイトを運営している楽天やリクルートのグループ会社も予約サイトコントローラーの提供を始めていると聞きました。予約サイトコントローラーの市場や御社の強み・ポジショニングについて、お話を伺えますでしょうか。

渡邉社長: 2社との違いで言えば、中立的な立場である事です。宿泊施設の課題は集客と利益の最大化です。どの予約サイトを使えばいいのか、どの程度の手数料を払えばいいのか等、様々な悩みを抱えています。同じグループ内に旅行予約サイトがあるとグループ会社を優先するのではないかと疑心暗鬼になってしまいますが、当社には、それがありません。必要に応じて、ユーザーの意向に沿った最適な旅行予約サイトや複数の旅行予約サイトの組み合わせをアドバイスしたり、利用事例等を紹介したり、しています。

中立的な立場である事に対する安心感ですね。必要に応じてアドバイス等もされているとの事ですが、そうしたアドバイスをコンサルとして収益化できれば付加価値も高まるのではないでしょうか。

渡邉社長: 当社はツールの会社ですから、コンサルを強化する考えはありません。労働集約型のビジネスになってしまいます。既に宿泊施設向けのコンサルを行う会社もありますから、競合するよりも、連携していく方が「手間いらず」にとってプラスだと考えています。それに当社のユーザーは全国に分散していて、生活圏から離れたところにある宿泊施設も多いですから、コンサルのために、常時、ユーザーと接する事が難しいという事情もあります。

ツールの会社としてブレないという事ですね。系列色のある競合先に対しての強みはわかりましたが、系列色のない新興企業等が参入してきた時は脅威になるのでしょうか。

渡邉社長: 当社はここに至るまでに15年を要しています。複数のプレーヤーがいる中で一気にここまで来る事は難しいと思います。1年で数千施設増えるような事はあり得ませんから。「手間いらず」は2002年に生まれました。それから15年が経ちましたが、この間、100近くの旅行予約サイトとの円滑な接続が保たれてきました。予約サイトの仕様が変更になった場合、すぐに対応させる必要がありますから、常時エンジニアを抱える必要があり、負担になります。予約サイトの中には、海外の企業も多数含まれております。こうした世界との接続を円滑に維持するために私たちは日々努力を続けております。また、過去15年間、旅行予約サイトにも、ユーザーの皆さんにも、ご迷惑をおかけする事無くサービスを提供してきました。この実績は大きいと思います。

なるほど。常時エンジニアを抱える負担に加え、相手先が大手であればあるほど、安定運用の実績は大切でしょうね。御社の売上が増加する要因は、ユーザー数の増加、単価(料率)の上昇、予約数(成約数)の増加、だと思います。御社はユーザーの開拓と共に旅行予約サイトなど他サイトとの連携に力を入れていますが、連携の強化は予約数の増加につながると共に参入障壁にもなる訳ですね。新規参入の場合、価格攻勢をかけてくると思いますが、現状では大きな脅威にならないようですね。

渡邉社長: 既に無料の宿泊予約サイトコントローラーはありますが、ユーザーの方はブレずに付いてきてくれています。基幹となるシステムですから、コスト以上にパフォーマンスがあがれば、ある程度のコストは受入れてくれます。重要なのは、宿泊施設の売上があがり、人の手間が減ることです。

安心感・信頼感で参入障壁を構築する事ができる訳ですね。ところで、重視している経営指標はありますでしょうか。

渡邉社長: お客様(ユーザー)の数ですね。

御社のビジネスはストック型のビジネスですから、期末のユーザー数が前期末に比べて、どれだけ伸びたかで次の期の売上の伸びが決まってくると思いますが。

渡邉社長: そうですね。それに加えて、新しいバージョンがリリースされていますから、乗り換えてくれると単価が上がります。乗り換えが、どれくらい行われたかも関係してきます。新規で契約されるお客様は新しいバージョンをお使いになります。旧バージョンをお使いユーザーの中には、旧バージョンに満足されている方もいらっしゃいますが、単価に大きな差がなければ、新機能を使いたいという方が少なくありません。新しいバージョンは、従来の業務効率の改善やコスト削減効果に加え、収益向上のための機能が強化されています。コストパフォーマンスの向上につながると思いますから、ご利用頂ければと考えています。潜在需要を顕在化させていくのはこれからです。

新バージョンに移行すると、どの程度、単価が上がるのでしょうか。

渡邉社長: 2割くらいでしょうか。料金は多少上がるけれども、それ以上に成果があがれば、上位バージョンを使う意義があります。

なるほど、既存ユーザーベースでも成長余地があるという事ですね。一般企業の場合ですと、ハードウェアの更新の際にソフトウェアのバージャンアップをされるケースが多いようです。既存ユーザーの場合、時間はかかるかもしれませんが、徐々に新バージョンへの更新が進んでいくのでしょうね。

【今後の事業展開】

今後の事業展開についてお聞きします。アプリケーションサービス事業では、海外・国内サイト接続強化、民泊市場への対応、営業体制強化、及びプロモーション強化の4点を挙げています。海外サイト・国内サイト共に接続が進んでおり、海外・国内サイト接続強化については順調ですね。

渡邉社長: そうですね。ただ、満足はしていません。例えば、中国です。「C Trip」というサイトと接続していますが、1つのサイトだけで広大な領土と世界最大の人口を持つ中国を十分にカバーしているとは言えません。

まだまだ伸びしろがあるという事ですね。民泊市場への対応についてお聞きします。6月に住宅宿泊事業法(民泊法)が成立し、御社も7月に「Airbnb(https://www.airbnb.jp/)」(Airbnb, Inc.:米国カリフォルニア州サンフランシスコ)とのシステム連携をスタートさせました。ただ、個人の不動産所有者の方が中心になりますから、予約サイトコントローラーが必要な事業規模の方は少ないのではないでしょうか。

渡邉社長: 個人についてはそうですね。ですから収益物件を数多く保有している不動産会社や個人から委託を受けて物件を管理している不動産会社等がターゲットになると思います。単価は安くなるかもしれませんが、スケールメリットがあります。民泊は母数となる物件の数が未知数ですが、日本最大級の不動産ポータルサイト「SUUMO」には、約200万件の賃貸物件が登録されているそうですから、その5%が民泊に利用されるだけでも10万件になります。国内の宿泊施設は約8万件ですが、予約サイト最大手の楽天トラベルでも登録件数は約3万件にとどまっているようです。また、社会問題化している空き家問題とも関係してきます。空き家を民泊等で有効活用・効率活用する際に「手間いらず」のような効率化ソフトが必要になってきます。

当面は東京オリンピックを控えたインバウンドの取り込みに注力し、長期的には民泊の取り込みにビジネスチャンスがある、という事ですね。営業体制強化は、いかがでしょうか。新たに福岡営業所を開設しました。

渡邉社長: 例えば、大分県に湯布院と言う温泉で有名な観光地がありますが、湯布院の宿泊施設では既に「手間いらず」が浸透しています。地元の旅館組合への提案が理にかなっていたことです。集客による地域活性化や人々の手間の削減は観光地の課題でもあります。地元の観光ポータルサイトに当社のWebサイトを接続し、集客をサポートすることで、ユーザーの獲得が進みました。基本的には、一軒一軒の地道な開拓が必要になりますが、営業成果には手応えを感じています。

これまでは、首都圏、近畿圏を中心にユーザーの開拓を進めてきましたが、今後は九州・沖縄を強化するという事ですね。東北や北海道も開拓余地が残っているのでしょうね。

渡邉社長: そうですね。先ず九州・沖縄に力を入れていきます。東北・北海道への展開も余地がありますが、営業効率の問題があります。営業社員は、旅行業に精通している事はもちろん、「手間いらず」のシステムの理解や提案力が必要になります。また、地方に赴き、一軒一軒、宿泊施設を回るような地道な営業活動をしなければなりませんから、その面での適性も必要です。温泉街等で宿泊施設を営んでいらっしゃる方は横のつながりが強いですから、信頼関係を築く事は何よりも重要です。

マンパワーの問題があるため一気にとはいかないものの、営業エリアの面でも伸びしろがあるという事ですね。プロモーションとしては、どのような事を実施しているのでしょうか。

渡邉社長: B2Bの事業ですから、プロモーションと言うよりも、セミナーや見本市・展示会等への出展ですね。宿泊予約サイトと販売促進のためのキャンペーンを行う事もあります。前期は、「agoda」(タイ)、「Booking.com」、「Expedia」とキャンペーンを行いました。ただ、広告宣伝費もそれほど使っていません。ピンポイントで行っています。

なるほど。この第1四半期は広告宣伝費が減少しましたが、展示会への出展の有無等で広告宣伝費が増減すると考えていい訳ですね。インターネットメディア事業は、いかがでしょうか。

渡邉社長: インターネットメディア事業では事業構造の見直しを進めています。インターネットメディア事業は大きくEコマースと旅行予約サイトの比較に分かれますが、Eコマースでは、百貨店方式でなく、専門店方式へ移行するべくコンテンツの選別・再構築を進めています。ユーザーインターフェイスやサービスの統廃合に加え、広告出稿の最適化による広告コストの削減も進んでいます。旅行予約サイトの比較については、事業そのものがこれからです。Eコマースの事業構造の見直しを終えてからになります。

第1四半期決算をみると、少しずつ成果が現れてきているようです。取り組みの成果に期待したいと思います。それでは、最後になりますが、長期的な展望、或いは、思い描いている夢のようなものがあれば、お話をお聞きしたいのですが。

渡邉社長: 社名が「手間いらず」になった訳ですから、省力化とか、人々の手間とか苦労をなくすようなサービスや商材を提供していきたいですね。時代背景もそうだと思いますが、仕事でも効率化が求められています。もちろん宿泊予約サイトコントローラーも、その一つですし、今は宿泊予約サイトコントローラーを伸ばしていく事が最優先です。

なるほど。先ずは「手間いらず」の潜在需要を掘り起こしていく事が第一。そして、そのノウハウや技術を活かして、第二、第三の省力化・効率化ビジネスを育てていく、と言う事ですね。

【投資家へのメッセージ】

最後に投資家の皆さんへメッセージをお願いします。

渡邉社長: 当面は配当性向20%を目途に株主還元を実施していきたいと思います。今は「手間いらず」を伸ばしていく事が第一ですが、将来的には、第二、第三の省力化につながる事業を立ち上げていきたいと考えています。現金比率は高いのですが、リスクを取ろうとした時に絶対額としては十分とは言えません。利益面でも、利益率は高いものの、規模的にはまだまだです。このため、更なる企業規模の拡大と企業価値の向上に努めていく必要があると考えています。こうした点にご理解を頂き、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

業容拡大に向け、厚みのある財務基盤が必要という事ですね。考えてみれば、祖業である比較サイトも、ユーザーが自らサイトを横断して比較する手間を省いた省力化・効率化ビジネス。ブレる事なく現在に至り、宿泊予約サイトコントローラーで大きく飛躍しましたが、これからも「省力化・効率化」をキーワードにブレる事なく事業の拡大に取り組んでいくお考えですね。
長時間にわたり、丁寧なご説明を頂き有難うございました。渡邉社長と手間いらず株式会社の益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。

今後の注目点
第1四半期は計画通り。同社の業績には季節性があるため、第2・第3四半期の売上高が第1四半期の売上高をわずかに下回る可能性があるが、契約の積み上げ効果で右肩上がりのトレンドが続く。ストックビジネスのため通期の業績に不安はなく、どれだけ上積みできるか、「手間いらず」の新バージョンの浸透と共に注目していきたい。もっとも、目先の売上高・利益よりも重要なのが、中長期的な成長の原動力となる、ユーザーの獲得とシステム連携である。2016年のインバウンド旅行者数は2,403万人だったが、日本政府は2020年に4,000万人に引き上げたい考えで、2030年には6,000万人を目指している。急増するインバウンド旅行者に対応するために宿泊施設の整備が不可欠であり、宿泊施設では業務の効率化を避けて通れない。4期連続の増収・増益、3期連続の売上高・利益過去最高更新が見込まれる同社だが、サクセスストリーは始まったばかりだ。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書        更新日:2017年09月29日

基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、企業価値を継続的に高めていくために不可欠な経営統治機能と位置づけており、コーポレート・ガバナンス体制の強化及び充実に努めております。また、迅速かつ適切なディスクロージャー(情報開示)の実施と、意思決定における透明性及び公平性を確保することがバランスのとれた経営判断につながり、コーポレート・ガバナンスを有効に機能させるうえで重要であると考えております。

当社におけるコーポレート・ガバナンスは、取締役会の適時適切な意思決定により、各取締役がその担当職務の執行を迅速に行える体制を整えております。また、当社は少人数小規模組織ではあるものの、社内規程や業務マニュアルを制定し、その規程等に従って業務活動を行っております。これらの経営上の意思決定や業務活動については、定期的な監査役監査および内部監査により内部統制を働かせております。

また、当社ではコーポレート・ガバナンスを経営統治機能と位置づけており、企業価値を継続的に高めていくための不可欠な機能であるとの認識に基づき、コーポレート・ガバナンス体制の強化および充実に努めております。また、株主に対する説明責任を果たすべく、迅速かつ適切な情報開示の実施と意思決定における透明性および公平性を確保した経営を行って参ります。さらに、健全な倫理観に基づくコンプライアンス体制を徹底し、株主、投資家および事業パートナーをはじめとするステークホルダー(利害関係者)の信頼を得て、事業展開を行って参ります。

<実施しない原則とその理由>

当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

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