(4634:東証1部) 東洋インキSCHD 売上 利益ともに増加するもやや進捗率に遅れ

2017/12/06

toyoink

今回のポイント
・17/12期第2四半期の売上高は前年同期比1.9%増の1,355億円。色材・機能材関連、ポリマー・途加工関連が堅調。売上総利益は同3.3%増の329億円で粗利率も0.4pt改善した。営業利益は同7.6%増の95億円。前年同期にあった為替差損12億円が無くなったため経常利益は同27.0%増の99億円。固定資産売却益2億円を計上したことに加え、投資有価証券評価損がなくなり、四半期純利益は同41.5%増の74億円となった。予定通り8円/株の中間配当を実施した。・通期業績予想に変更は無い。売上高は前期比2.7%増の2,350億円の予想。全てのセグメントで増収を見込んでいる。営業利益は同5.0%増の163億円。利益についても全セグメントで増益となる。配当は前期と同水準16.00円/株を予定。予想配当性向は46.7%。為替は1USD=100円、1EURO=115円、1RMB=16円の前提。中期経営計画「SCC-Ⅲ」の総仕上げと行うとともに、次期中期経営計画に向けた準備期間として次のステップアップにチャレンジする年と位置付けている。

・旺盛な半導体需要を受けて色材・機能材関連、ポリマー・塗加工関連が好調で、増収増益となり、利益率も上昇した。ただ、決算期変更のため単純な比較はできないものの、進捗率は売上、利益ともにやや遅れているようにも見える。短期的には今期着地に向けどれだけ上積みを行えるかに注目しつつ、次の長期構想「SIC27の詳細に期待したい。

会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外67社の連結子会社、10社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界24か国で事業を展開している。「中期経営計画SCC-III」において「スペシャリティケミカルメーカーからサイエンスカンパニーへの変革」を標榜。新製品の開発と海外展開の加速による成長を目指している。

【沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。
当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。
印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。

【経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。
2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。

この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。

【市場環境】
◎概要
(市場動向)

日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2016年までのCAGR(年平均成長率)は+2.4%と堅調に拡大している。

一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。

(印刷会社と印刷インキ会社)

経済産業省「平成26年工業統計表・産業編」によれば、2014年の印刷・同関連業の事業所数は全国で25,843だが、うち98.5%にあたる25,446事業所は従業員数100人未満の中小企業である。

同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約26,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。

◎同業他社

インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている。(2位は欧州企業)
(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。

【事業内容】
◎「印刷インキ」について

同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

◎事業セグメント

「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルタ材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。
印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

◎海外展開

大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2017年3月末現在、約50の海外連結対象子会社、51ヶ所の工場を有し、世界23か国で事業を展開している。

マージンがやや改善したものの、総資産回転率が低下し、ROEは前期とほぼ変わらずであった。一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するために一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

【特徴と強み】
①高い技術力

前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

②優れた課題解決能力

同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

③環境に対する取り組み

同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

④経営戦略の独自性

M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

2017年12月期第2四半期決算概要
増収増益

売上高は前年同期比1.9%増の1,355億円。色材・機能材関連、ポリマー・途加工関連が堅調。売上総利益は同3.3%増の329億円で粗利率も0.4pt改善した。
営業利益は同7.6%増の95億円。前年同期にあった為替差損12億円が無くなったため経常利益は同27.0%増の99億円。固定資産売却益2億円を計上したことに加え、投資有価証券評価損がなくなり、四半期純利益は同41.5%増の74億円となった。
予定通り8円/株の中間配当を実施した。

☆色材・機能材関連事業

増収増益。
高機能顔料や液晶ディスプレイカラーフィルター用材料は、最終商品である高品位大型テレビの需要が堅調に推移。スマートフォンの需要も回復し、中国や台湾での販売実績も積み上がってきた。
汎用顔料は、国内ではオフセットインキ用を中心に低調に推移したが、中国などで塗料やプラスチック用などの拡販が進んだ。
プラスチック用着色剤は、国内では飲料キャップやトイレタリー容器用などが堅調に推移し、中国や東南アジアでの事務機器向けも回復したが、欧米の自動車向けは予想外に低調に推移した。

☆ポリマー・塗加工関連事業

増収増益。
塗工材料では、電磁波シールドフィルムが低調だったが、高品質のスマートフォン向け導電接着シートの拡販が進んだ。また、エレクトロニクス関連の粘着フィルムの拡販が進み、2016年7月に業務を開始した貼付型医薬品事業も堅調に推移した。接着剤は、食品などの包装用が、国内、韓国、東南アジアなどで好調に推移した。
粘着剤は、国内や韓国でエレクトロニクス用の拡販が進んだが、ラベル用が伸び悩んだことに加え、原材料価格の上昇により利益が下押しされた。
缶用塗料(フィニッシェス)は、コーヒー缶用の低調が続いたことに加え、ビール缶用も夏場の天候不順で伸び悩んだ。

☆パッケージ関連事業

売上横這い減益。
国内のグラビアインキは、出版用の需要減少が続いたが、主力の包装用がプライベートブランドやコンビニエンスストア向けを中心に堅調に推移。建装材用も伸長した。
海外では、北米や中南米、インドなどでの拡販が進んだが、東南アジアや中国での販売が低調で、原材料価格の上昇により利益も減少した。
グラビアのシリンダー製版事業は、包装用の一般製版が伸び悩んだが、特殊精密製版の拡販が進んだ。

☆印刷・情報関連事業

減収減益。
デジタル化に伴い情報系印刷市場が縮小傾にあるなか、国内では製品別にビジネス規模の最適化や絞り込みを進める一方、海外ではグローバルな拠点拡充による売上拡大を進めた。
また、最先端技術を活用した高感度UVインキや、オンデマンド印刷対応のインクジェット用インキなどの開発や拡販を進めた。
一方、国内におけるチラシなどの商業印刷や新聞、雑誌などの既存の情報出版向けのインキや、関連材料の需要は想定以上に低調に推移したほか、中国や東南アジアにおいても、景気の減速や環境規制に伴う印刷会社の稼働率低下により売上が低迷した。

売上債権、たな卸資産増などで流動資産は前期末に比べ43億円増加。固定資産は投資その他の資産が増加し同38億円増加。資産合計は同81億円増加の3,733億円となった。
長期借入金が増加した一方短期借入金が減少した結果、負債合計は同7億円減少の1,447億円。
純資産は利益剰余金が増加しで同88億円増加の2,285億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の58.4%から1.0ポイント上昇し、59.4%となった。

税金等調整前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。
有形固定資産の取得による支出の減少などで投資CFのマイナス幅は縮小。この結果フリーCFのプラス幅は拡大した。
長期借入金の返済による支出増加で財務CFのマイナス幅は拡大した。キャッシュポジションは上昇した。

(4)トピックス
◎「SNAMサステナブル運用」の投資対象銘柄に選定

損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社(SNAM)が運用する「SNAMサステナブル運用」の投資対象銘柄(インデックス構成銘柄)に選定された。

SNAMが2012年8月より運用を開始した「SNAMサステナブル運用」は、ESG(環境、社会、ガバナンス)の評価が高い企業に幅広く投資する、年金基金・機関投資家向けの責任投資プロダクト。
ファンドマネージャーの判断が投資銘柄の選定を左右する一般的なアクティブ運用とは異なり、調査会社によるESG評価を重視して投資銘柄を選定した上で、独自のアクティブ・インデックス「SNAMサステナビリティ・インデックス」に基づいて保有ウェイトを決定するバイ・アンド・ホールド型の運用手法で、財務諸表に表れない経営のクオリティや隠れたリスクを顕在化し、長期的な観点から企業価値を評価することを通じて、長期投資家の資産形成に寄与することを目的としている。
ESGへの取り組みが評価され、昨年度から継続してインデックス構成銘柄に選定された。

2017年12月期業績見通し
増収・増益

業績予想に変更は無い。売上高は前期比2.7%増の2,350億円の予想。全てのセグメントで増収を見込んでいる。
営業利益は同5.0%増の163億円。利益についても全セグメントで増益となる。
配当は前期と同水準16.00円/株を予定。予想配当性向は46.7%。
為替は1USD=100円、1EURO=115円、1RMB=16円の前提。

中期経営計画「SCC-III」の総仕上げと行うとともに、次期中期経営計画に向けた準備期間として次のステップアップにチャレンジする年と位置付けている。

今後の注目点

旺盛な半導体需要を受けて色材・機能材関連、ポリマー・塗加工関連が好調で、増収増益となり、利益率も上昇した。
ただ、決算期変更のため単純な比較はできないものの、進捗率は売上、利益ともにやや遅れているようにも見える。
短期的には今期着地に向けどれだけ上積みを行えるかに注目しつつ、次の長期構想「SIC27の詳細に期待したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2017年7月4日に更新している。

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