(6638:東証1部) ミマキエンジニアリング 需要の掘り起こしで販売台数伸び

2017/07/12

mimaki

今回のポイント
・17/3期は円高の影響を受けた結果、前期比1.0%の増収、同35.8%の営業減益。ただ、国内外で好調な販売が続き、為替の影響を除くと同8.8%の増収、同22.1%の営業増益。市場別では(為替の影響を除く)、競争激化と上期の中国での苦戦が響いたSG市場向けが同1.5%減とわずかに減少したものの、IP市場向けが同19.8%増、TA市場向けが同13.8%増と共に高い伸びを示した。5円の期末配当を予定しており、上期末配当と合わせて年10円となる見込み。・18/3期は前期比3.6%の増収、同9.7%の営業減益。為替(期中平均)の前提は、USドルが前期比1.3%円高の107.00円(前期108.41円)、ユーロが5.7%円高の112.00円(同118.83円)。為替の影響を除くと、同6.5%の増収、同23.1%の営業増益。IP市場を弱含みで見る反面、M&A効果が期待できるTA市場を同34.5%増と強気で見ている。SG市場もプリント&カットによる差別化で同3.7%増加する見込み。配当は上期末5円、期末5円の年10円を予定している(配当性向28.8%)。

・独自の地域密着営業の展開とインクへのこだわりによる需要の掘り起こしで国内外を問わず販売台数を伸ばしている。また、インクの現地生産の動きが活発化している事も昨今の同社の特徴だ。ただ、北米、インド、中国等の巨大市場での販売体制の整備とマーケットの深耕は緒に就いたばかり。合弁会社を設立した事からもわかるように、欧州のTA市場の深耕はこれから。SG市場やIP市場において得意とする領域にフォーカスして事業展開する3Dプリンタ事業と共に今後の展開に期待したい。

会社概要

開発型企業を標榜し、広告・看板等の製作、工業製品・部品等の加飾、布生地へのプリント等に使われる業務用インクジェットプリンタ及びインクを中心に、カッティングプロッタ等の開発・製造・販売・保守サービスを手掛けている。連結子会社17社とグループを形成しており、主な製造拠点を日本と中国に置き(この他インクは中国・台湾・リトアニアで製造)、販売は、日本、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開。海外での売上が売上全体の約74%を占める。

【経営ビジョン】
1. 独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。
2. 顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。
3. 市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。
4. 各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。

同社は「新しさと違い」の提供を経営ビジョンの一つに掲げ、独自のインクジェットプリント技術とカッティング技術を駆使して革新的な製品を開発し、業務用インクジェットプリンタ市場を創造開拓してきた。今後も、顧客志向の開発型企業としてイノベーター精神を継承しつつ、デジタル・オンデマンド印刷の新たな市場を創造する真のグローバル企業を目指していく考え。

【事業内容】

事業は、業務用インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、インク等の開発・製造・販売事業。主な製造拠点を日本と中国に置き、販売は日本の他、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開。販売方法は、ディーラーや代理店経由が中心だが、地域密着・顧客密着の方針の下でエンドユーザとの接点を重視している。売上の中心は海外で、17/3期の海外売上比率は73.7%。エリア別売上構成比は、日本26.3%、北米14.5%、欧州29.7%、アジア・オセアニア18.8%、その他10.7%。

ビジネスフィールドと製品

同社の製品は、広告看板(サイングラフィックス:SG)、工業製品(インダストリアルプロダクツ:IP)、衣料品(テキスタイル・アパレル:TA)の3つの市場で使われている。
SG市場は、塩ビシート、バナーシート、ウィンドウフイルム等を主なプリント素材とし、広告看板、ウィンドウグラフィックス、カーラッピング、ソフトサイン等のプリントに使われる。IP市場は、プラスチック、アクリル、ガラス、金属、木材等を主なプリント素材とし、UV硬化インクの特性を活かし、工業製品の加飾の他、ギフトやノベルティ等でのプリントに使われている。TA市場は、ポリエステル、レーヨン、綿、絹等を主なプリント素材とし、縫製前の生地(テキスタイル)やTシャツ等の既製服(アパレル)など布地にもプリントできる。

様々な素材に印刷可能な特殊なインクの開発と美しくプリントするためのヘッドコントロール技術

業務用インクジェットプリンタの場合、プリント対象となる素材が特殊(樹脂、金属、木材、布等)なため、搭載するインクも素材に応じた多種多様なインクが必要になる。また、屋外でも色あせない、水に流れ落ちない、こすっても落ちない等、プリント対象物の用途に応じた機能性も求められ、同社は、こうした機能性インクの開発をインクメーカーの協力を得ながら進めている。素材や用途に応じた多種多様なインクを開発するケミカル技術の蓄積が同社の財産であり、この特殊な機能性インクを安定的に吐出する技術や美しくプリントするためのヘッドコントロール技術等と共に同社の強みとなっている。

グローバル展開

新たな成長ステージに向けた経営スローガンである「M1000 真のグローバル企業を目指す」の下、製造は日本と中国を中心としつつM&Aによりインクも含めてグローバル化を進めており、販売はトップシェアを誇る日本の他、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開している。密度の高い顧客情報をリアルタイムで入手し、その多様なニーズを素早く製品開発へ反映するべく、地域密着の販売・保守サービス網の構築(ディーラーや代理店とのパートナーシップの強化)に取り組んでいる。

例えば、マーケットの深耕が不十分だった米国では16/3期から販売チャネル改革に着手した。多くのメーカー製品を扱う大手販売代理店から地域密着で小回りの利く販売店への切り替えを進めており、徐々に成果が出てきた。また、インドでは、2016年5月に現地企業との合弁解消が合意に達し、営業活動が可能になった(合弁先との係争からインドでの営業活動ができなかった)。インドはテキスタイル・アパレルで世界屈指の市場であり、過去数年間、同社は大きなハンデを負っていた事になる。
欧州では、2016年10月にハイエンドモデル(高速・高額)を中心としたテキスタイル捺染インクジェットプリンタの有力メーカー 伊ラ・メカニカ社(現 ミマキ・ラ・メカニカ)を100%子会社化し、2017年3月には事業譲受により、リトアニアに溶剤インクの製造拠点を開設(現ミマキ・リトアニア)。同年6月には、TA分野の地域販売網とサービス体制の再構築に向け、イタリアの有力販売代理店で同社グループと永年の取引関係を有するBOMPAN社と合弁会社Mimaki Bompan Textile S.r.lを設立した。大規模生産に適した高速機種に強いミマキ・ラ・メカニカは、TA市場において、生産地で求められる大規模生産における製品ラインナップの整備に寄与。ファッション情報の発信地であり、市場規模も大きい欧州(イタリア)に開発拠点を確保した意義も大きい。ミマキ・リトアニアは、同社グループで最大の売上金額を占めるユーロの為替変動リスクを緩和する効果に加え、欧州・中東・アフリカへのインク供給のリードタイムを短縮し、物流コストや廃棄ロスの削減にも寄与。この他、オランダの子会社が水性インクとUVインクを製造するインク工場を建設し、18/3期から生産を開始する。また、合弁会社はTA市場に特化した戦略子会社であり、プリントの前処理から後処理を含めたトータルソリューションを提供し、TA市場のデジタル化を推進していく。

【ポジショニングと市場拡大要因】
ポジショニング   特殊素材に印刷できるプリンタで売上世界第1位

同社の資料によると(調査会社調べ)、大判インクジェットプリンタの世界市場(大判=A1サイズ以上。CAD、屋内ポスター等の水性IJPを含む)は2014年で302千台、1,945億円。同社は、台数ベースで、ヒューレット・パッカード、キヤノン、セイコーエプソン、ローランドDG、武藤工業に次ぐ第6位だが、金額ベースでは、ヒューレット・パッカード、キヤノン、セイコーエプソンに次ぐ第4位。ただ、上位3社は紙に印刷するプリンタがほとんどで、特殊素材に印刷できるプリンタでは同社が売上世界第1位と推測される。同社はイノベーターとして、SG、IP、TA市場に向けて業務用プリンタをいち早く開発・販売し、つねに市場をリードしてきた。

市場拡大要因   オンデマンド生産や少量多品種生産の流れが追い風

既にデジタルプリントが普及しているSG市場に加え、近年では、IP・TA市場でも版を使用した従来のアナログ印刷からデジタルプリントへと移行が進んでいる。デジタルプリントのメリットは、企画から商品化までの時間を大幅に短縮できる上、在庫を抱える事なく受注動向を確認しながらプリントするオンデマンド生産が可能な事。また、デジタルプリントの普及が進むにつれ、従来からの生産コストの安い地域でのアナログ印刷による大量生産から、商品を短納期で提供でき、かつ輸送費を抑える事ができる消費者の近くでのデジタルプリントによる少量多品種生産へのシフトもあり、デジタルプリントによる生産拠点はグローバルに拡大しつつある。

*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

17/3期は為替の影響(18億49百万円の影響減益要因)で営業利益が前期比35.8%減少し営業利益率が4.2%と2.5ポイント低下したことが響き売上高当期純利益率が低下した。総資産回転率の低下とレバレッジの拡大は、海外での拠点開設や工場建設、更にはM&A等の先行投資による前向きな要因。今後、為替変動の影響緩和やTA市場の開拓等の効果が期待できる。

2017年3月期決算
前期比1.0%の増収、同35.8%の営業減益

為替(期中平均)が対USドルで9.8%(120.14円→108.41円)、対ユーロで10.4%(132.57円→118.83円)、それぞれ円高になった影響を受けた。ただ、各エリアで好調な販売が続き、為替の影響を除くと、欧州での売上が同13.3%増と伸びる等、全エリアで売上が増加し、連結ベースで同8.8%の増収。市場別では(為替の影響を除く)、競争激化と上期の中国での苦戦が響いたSG市場向けが同1.5%減とわずかに減少したものの、IP市場向けが同19.8%増、TA市場向けが同13.8%増と共に高い伸びを示した。

前期との比較で営業利益が11億45百万円減少したものの、円高が18億49百万円の減益要因となった事を考えると、実質的には7億円強の営業増益(同22.1%の営業増益)。販売自体は好調だったため、為替の影響を除く増収効果が19億93百万円あった。

尚、1円の変動による影響は、対USドルが売上高で92百万円、営業利益で54百万円。ユーロが売上高で1億32百万円、営業利益で90百万円。円高で37億27百万円の減収要因が発生する一方、売上原価が10億35百万円、販管費が8億42百万円減少したため、営業利益への影響額は差し引き18億49百万円(の減益要因)。18億49百万円の内訳は、ドル6億40百万円、ユーロ12億59百万円、一方、その他通貨(ブラジルレアル、中国元等)が50百万円の増益要因となった。

SG市場向けは前期比8.4%の減収ながら、為替の影響を除くとほぼ前期並みの売上を確保した(1.5%の減収)。減収の要因は、オフィス用インクジェットプリンタ大手の参入による主力機種(1.3~1.6m幅)の競争激化だが、「CJV150シリーズ」や「CJV300シリーズ」といったプリント&カット機種の販売促進で下期は前年同期比増収に転じた(上期:前年同期比16.3%の減収、下期:同0.7%の増収)。

IP市場向けは円高の影響を吸収して同11.0%の増収(為替の影響を除くと、同19.8%の増収)。スマホやノベルティ向けの小型フラットベッドタイプ(2016年10月発売の「UJF-3042MkII」及び「UJF-6042MkII」)の好調に加え、フラットベッドタイプの大型モデル「UJF-7151 plus」も、工業印刷、建材、家具等の開拓が進んだ。

TA市場向けも円高の影響を吸収して同5.2%の増収(為替の影響を除くと、同13.8%の増収)。酸性染料、反応染料、捺染染料、分散染料と言った捺染用途の各種デジタルインクのラインナップの拡充が進み、エントリーモデルであるTx300P-1800B等の販売が増加した。

トップシェアを誇る国内は前期比4.7%の増収。四半期でのべ300~400回開催する「ミニ展」による需要の掘り起こしが成果をあげた。一方、北米は同7.8%の減収だが、為替の影響を除くと、同2.1%の増収。第2四半期以降、販売チャネル改革の効果が出てきた(これまでは多くのメーカー製品を扱う大手販売代理店に依存していたが、中小規模の地域密着型販売店への切り替えを進めている)。欧州は円高の影響を吸収して同1.6%の増収(為替の影響を除くと、同13.3%の増収)。ドイツや英国等の経済規模の大きい国で売上が増加した。上期に苦戦したSG市場向けも、下期はプリント&カット機種の販促効果で売上が増加した。アジア・オセアニアは同5.6%の減収だが、為替の影響を除くと同6.7%の増収。中国は前々期が好調だった反動で減収となったが、期中に底打ち感が出てきた。韓国、タイ、インド等、その他の国は総じて堅調に推移した。

期末の資産は前期末に比べて30億74百万円増の492億07百万円。業容の拡大で売上債権・仕入債務が増加した他、オランダのインク工場建設等で有形固定資産が、ミマキ・ラ・メカニカとミマキ・リトアニアの取得で無形固定資産(のれん14億70百万円増)が、それぞれ増加。資金需要に対応するべく長短借入金を積み増した事で有利子負債が、利益剰余金を中心に純資産が、それぞれ増加した。自己資本比率32.6%(前期末33.9%)。尚、のれんは10年で償却する。

運転資金が増加したものの、21億63百万円の営業CFを確保した。一方、投資CFは、M&A、欧州でのインク工場建設、基幹システムの更新、デモ機投資等で32億48百万円のマイナスとなった。

尚、17/3期の設備投資は27億95百万円(16/3期27億32百万円)、減価償却費15億45百万円(同15億40百万円)。

2018年3月期業績予想
前期比3.6%の増収、同9.7%の営業減益

為替の影響を除くと、同6.5%の増収、同23.1%の営業増益。IP市場が伸び悩むものの、M&A効果でTA市場が同34.5%増と伸びる他、SG市場もプリント&カットによる差別化で同3.7%増加する見込み。

生産システム改革の効果や売上構成比の良化に加え、インクの新製品への切り替え効果もあり、売上総利益率が1.1ポイント改善するものの、販管費の増加を吸収できず営業利益が18億50百万円と同9.7%減少する見込み。

為替(期中平均)の前提は、USドルが前期比1.3%円高の107.00円(前期108.41円)、ユーロが5.7%円高の112.00円(同118.83円)。14億37百万円の減収要因が発生する一方、売上原価が4億71百万円、販管費が2億93百万円減少するため、営業利益への影響額は6億72百万円(の減益要因)。内訳は、ドルで77百万円、ユーロで6億30百万円の営業減益要因が発生する一方、ブラジルレアルや中国元等のその他の通貨で35百万円の増益要因が発生する。

設備投資は、基幹システム(3億37百万円)、生産用設備(3億10百万円)、デモ機(2億24百万円)、金型(2億11百万円)等で26億66百万円を計画しており、減価償却費は19億31百万円を織り込んだ。

配当は上期末5円、期末5円の年10円を予定している。

「長期ビジョン:M1000 2.0」の進捗状況
【売上高1,000億円を目指して、IP・TAをSGに並ぶ第2、第3の柱へ】

IP及びTAといったモノづくり分野においては、これまで大量生産が主流だったが、多品種化や商品サイクルの短期化で多品種・少量生産のニーズが高まっている。デジタル技術に基づくインクジェットプリンタは多品種・少量生産に適しているが、現在、モノづくり分野におけるインクジェットプリンタの普及率は数%にとどまり、伸びしろが大きい。
同社は、IoT技術や3D技術を取り込みつつ、IP及びTAの事業をSGに次ぐ第2、第3の柱へと育成していく考え。「長期ビジョン:M1000 2.0」では、7~10年後を目処に売上高1,000億円の達成を目指しているが、IP市場向け(17/3期比約2倍の売上高350億円)、TA市場向け(同4.5倍の売上高250億円)と共に高い伸びを見込んでいる(この他、SG市場向けで300億円、その他で100億円の計1,000億円)。

【既存領域でトップを取り、成長領域で先駆者となる】

同社はカッティング技術とインクジェット技術で売上高500億円規模に業容を拡大させたが(既存領域)、売上高1,000億円に向けては、既存領域の成長と共に、IoTによるモノづくりの革新と3Dプリンタによるフルカラーの立体造形に取り組んでいく。

IoTでは、SG市場においてラミネート等の後工程や物流等との連動によるユーザの生産性向上に取り組み、IP市場においては、プリンタと量産ラインとの連動、ロボットとの連動、更には生産管理システムとの連動等を実現する事で、ユーザの生産性向上、自動化・無人化、及び業務効率化ニーズに応えていく。また、TA市場では、生産地と消費地をつなぐ事による情報共有(売れ筋のデザインへの即時反映、異なる生産地で同じ品質のプリント等)や、インターネットを介して一般消費者からの注文とダイレクトに同社製品がつながる事による一品一様のオンデマンド生産の実現を目指している。

3Dプリンタでは、SG市場で立体看板やマネキン看板、IP市場で建築模型、フィギュア、ルアー、TA市場でボタンやアクセサリー等、既存領域のユーザニーズを反映できる分野で事業展開していく。3Dプリンタは、既にモックアップ(外観デザインの試作・検討レベルで用いられる模型)やフィギュア、部品の製造、医療、航空・宇宙分野等で幅広く使われているが、フルカラー造形が可能な3Dプリンタは粉末石膏造形方式が主流のため、乏しい色表現にとどまっている。これに対して、同社が開発中の3Dプリンタは、インクジェットプリンタ技術を活かしたフルカラーUV硬化インクジェット方式を採用し(4色のUV硬化インクを搭載)、世界で初めて約1,000万色の高精細フルカラー造形を実現する。

池田和明社長は3Dプリンタについて次のように語っている

3Dプリンタ事業では特別な事をするのではなく、既にある市場やニーズの中で3Dプリンタを活かしていく事を考えています。3月にJapan Shop2017(東京ビッグサイト)、4月にISA International Sign Expo 2017 (米国ラスベガス)、更に5月にFESPA(ドイツ・ハンブルク)、と関連する展示会に3Dプリンタを参考出品し、当社の特徴であるフルカラーのサイングラフィックスやインダストリアルプロダクツについての提案を行いましたが、国内外の皆様から高い評価を頂き、手応えを感じています。
当社の3Dプリンタは、紫外線で固めながら積層していく手法を採用しており、大きい造形物のプリントが可能な事に加え、繊細でフルカラーである事が特徴です。一般的な粉末石膏造形方式は、軽石のようなものに色を付けていく事になるため、色がぼけてしまいます。熊本城の造形(前項)では内部の畳一枚一枚を再現しています。また、マンション等の模型の場合、地図情報と組み合わせて高低差も含めた立体模型を作成する事ができます。
国内では、東京オリンピック・パラリンピックに向け、店舗等での立体看板の需要が期待できます。立体絵画等のデザイン性に溢れ、記憶に残る空間演出の提案と共に力を入れていきたいと考えています。3Dプリンタはサイングラフィックスやインダストリアルプロダクツを伸ばしていくための技術として重視しており、期待もしています。

【市場別の見通しと基本戦略】

SG市場向けは平均3~5%の売上成長を見込んでいる。17/3期は大手の参入でボリュームゾーンの製品の価格が低下した影響を受けたが、同社はドラフティングプロッタから広告・看板(SG)市場向けカッティングプロッタへ展開する中で培ってきたプリント&カットの技術で差別化を図り、台数ベースで販売を伸ばした。今後はエコソルベントやラテックス等のプリント用途に合わせたインクのラインナップの拡充等でグラフィックを強化しつつ、3Dや多層印刷(下の画像)等の付加価値提案に力を入れていく。

IP市場向けは平均10%程度の売上成長を見込んでいる。クリアインクを重ねる事により質感や肌触りを演出する「サーフェスイメージング」に力を入れていく(クリアインクとはカラーインクの上にプリントする「ニス」のような役割のインク)。

TA市場向けは平均20%程度の売上成長を見込んでいる。前期にミマキ・ラ・メカニカを買収した事でエントリーモデルからハイエンドモデルまで、消費地と生産地の双方に対応できる製品群のフルラインナップ化が進んだ。消費地では、都市圏でのアパレルのフル・カスタマイズ印刷やファストファッション業界等の多品種少量印刷を対象に、無水染色の昇華転写インクジェットプリンタ(先ず転写紙に印刷して熱を加えてポリエステルに転写する)や顔料用インクジェットプリンタの拡販を図る。生産地では、コットン、ポリエステル等のアナログ印刷が盛んな、中国、インド、イタリア等で、ダイレクト捺染の高速プリントモデル(ミマキ・ラ・メカニカのPro series)の拡販を図っていく。低コスト・大量生産を特徴とする生産地では大型機にニーズがあるが、大型機を販売するためには大型機を扱うエージェント網が必要なため、その整備に取り組んでいる。
TA市場でのデジタル化率は未だ5%以下にとどまり、SG市場やIP市場に比べて極端に低い。同社は、アナログ印刷からデジタル印刷への移行を主導していきたい考え。

【エリア別戦略】

欧州・中東・アフリカは中長期で平均10%程度の成長を見込んでいる。エリア体制とし、それぞれの地域特性に応じた戦略・対策を実施していく考え。また、これまでは、日本や中国からインクを輸出していたため、使用期限の制約から年間数億円のインク廃棄損を計上していたが、オランダとリトアニアで生産を開始したため、18/3期以降はリードタイムの縮小でインク廃棄損を大幅に縮小できる見込み。

アジア・オセアニアも中長期で平均10%程度の成長を見込んでいる。最優先で取り組むのは、潜在力の大きいインド市場の販売網の構築と中国における販売体制の再構築。インドでは7年ほど前に合弁会社を設立したが、合弁先との係争から営業ができなかった。このため出遅れたが、事業拡大余地は大きい。一方、中国は、これまで受け身の営業だったが、経済成長が鈍化してきたため、積極的に需要を掘り起こしていく営業活動が必要になってきた。このため、売りに行く体制を整えるべく、販売網の再構築に取り組んでいく。

北中南米は中長期で平均15%程度の成長を見込んでいる。北米では販売チャネル改革により、代理店契約の約半分を入れ替えた。新たに契約した代理店はいずれも地域に密着した営業を特徴とし、ミマキに対するロイヤリティが高い。国内と同じようにミニ展戦略の徹底で需要を掘り起こしていく考え。業務用プリンタの販売は事前に実機の利用機会を提供する事が不可欠。このため、同社は小規模な施設に5社程度の業者を招待して、「ミニ展」と呼ばれる実機のデモを行っている。

5割程度のトップシェアを確保する国内は中長期で平均3~5%程度の成長を見込んでいる。ミニ展戦略の徹底を図ると共に、業務用インクジェットプロバイダとしてメディア(印刷対象物)を含めて提案営業を強化していく。

【生産方式改革】

UPS(Unit Production System/ユニット別生産システム)とOWPICⅡ(One Week Production/Inventory Cycle/一週間単位需要変動追従型生産システム)による生産方式改革に取り組む。

これまでは、オーダーに応じて部品を調達し、プリンタを組み立てていたが、UPSでは、需要変動に柔軟に対応できるようプリンタをいくつかのユニットに分け、それぞれを生産し在庫しておく。そして、販売した分だけユニット生産を行う。また、従来はプリンタを完成させてから出荷前の性能検査を行っていたため、不具合があった場合の原因特定が難しかったが、UPSではユニット生産の段階でも性能検査できるため不具合の発生を抑える事はもちろん、完成品に不具合があった場合でも原因を特定しやすい。また、製品在庫を減らす事ができる事もUPSの大きなメリットだ。

一方、OWPICⅡでは、生産計画を一週間毎に見直し、需要に応じた細やかな生産計画の調整が可能だ。

今後の注目点
独自の地域密着営業の展開とインクへのこだわりによる需要の掘り起こしで国内外を問わず販売台数を伸ばしている。また、インクの現地生産の動きが活発化している事も昨今の同社の特徴だ。ただ、北米、インド、中国等の巨大市場での販売体制の整備とマーケットの深耕は緒に就いたばかり。イタリアに合弁会社を設立した事からもわかるように、欧州のTA市場の深耕はこれから。
これら全てが同社の課題であり、課題が多い事は伸びしろでもある。17/3期はSG市場でオフィス用プリンタメーカー大手が参入した影響を受けたが、下期はプリント&カットで巻き返した。業務用インクジェットプリンタは、SG、IP、TAに分かれるだけでなく、ハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドと多様なニーズがあり、個々の市場は必ずしも大きくない。このため、一部競合する市場があったとしても、同社が1,000億円を目指す上で、オフィス用プリンタメーカーは大きな脅威にならないと思われる。
成長領域で先駆者となるべく取り組んでいる3Dプリンタ事業も競争は激しいが、SG市場やIP市場において得意とする領域にフォーカスして事業展開している事が同社の特徴であり、それだけに期待が持てる。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書         2017年6月28日更新
<実施しない各原則とその理由>
補充原則1-2-4.議決権電子行使プラットフォームの利用、株主総会招集通知の英訳

平成29年3月末基準で、当社の株主構成に占める機関投資家の株式保有比率は10.4%、海外投資家の株式保有比率は7.3%であり、相対的に低い水準にあると考えております。今後、機関投資家または海外投資家の株式保有比率が20%を超える状況となった場合を目安に、議決権電子行使プラットフォームの利用や株主総会招集通知の英訳等について、検討を進めてまいります。なお、海外投資家に当社概況をご理解いただくべく、英文の事業報告書(Business Report)を毎年2回(6月と12月)発行し、自社ウェブサイトに掲載しております。

補充原則4-1-2.中期経営計画へのコミットメント

当社では、毎年3月の取締役会において事業単年度の計画(経営戦略、数値計画等)に加え、3ヶ年計画についても決議することとしております。ただし、事業単年度の必達計画は業績予想として数値を公表しておりますが、3ヶ年計画につきましては数値を公表しておりません。これは、当社グループが「新しさと違い」を提供するイノベーターとして新たな市場と顧客を創出する業態であり、1年ごとのローリングにより3ヶ年計画を策定しているため、株主や投資家の皆様に対してコミットメントできる中期的な数値計画の見通しを公表することが困難なためであります。このことを踏まえ、株主や投資家の皆様に当社グループの中長期的な成長展望をご理解いただくための情報開示のあり方として、数値予測を伴った中期経営計画の公表は差し控え、経営戦略やビジョン等の定性情報のみを随時公表することとしております。

<開示している主な原則>
原則1-4.上場株式の政策保有

当社は、投資先企業との事業上の関係を総合的に勘案のうえ、当該株式を保有することが中長期的な観点より当社グループの企業価値向上に資すると取締役会が判断した場合に限り、上場株式を政策保有することとしております。政策保有株式につきましては、必要に応じて継続保有の是非について取締役会に付議することとしております。また議決権行使につきましては、その議案が当社の保有方針に適合するかどうか、投資先企業の企業価値向上につながるかどうか等を総合的に勘案して行っております。

原則1-7.関連当事者間の取引

当社は、関連会社(子会社、持分法適用会社等)との事業取引を除き、関連当事者間の取引を行わないことを原則としております。
(例外的に関連当事者間の取引が発生する場合の手続きを示すと共に、明らかに必要性・合理性が認識でき、会社の利益を害する恐れのない場合は、代表取締役社長の決裁後に取締役会で報告する、また、関連当事者に該当する取締役に対し、毎年、経理部が関連当事者間の取引報告を求め、その有無の確認を行っている、としている)。

株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

コラム&レポート Pick Up