(6090:東証マザーズ)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ メタボローム解析事業の堅実さと着実な拡大に注目

2017/06/28

HMT

今回のポイント
・17/3期の売上高は前期比17.1%増の914百万円。メタボローム解析事業は堅調。人材派遣事業廃止分の落ち込みをカバーして増収となった。営業損失は43百万円。メタボローム解析事業は安定的に利益を出しているが、うつ病バイオマーカー事業化への投資が拡大している。受注は国内外共に堅調。メタボローム解析事業の受注高は前期比30%増となった。

・18/3期の売上高は前期比7.2%増の9億80百万円の予想。メタボローム解析事業は引き続き堅調に推移。両事業における積極的な投資により損失幅は拡大する。特にバイオマーカー事業においては今期中のPEA測定研究用試薬の販売を目指した製品開発を含め3億15百万円を投資する。

・2017年3月期は菅野社長が言うように、バイオマーカー事業の早期事業化に向けて極めて大きな一歩を踏み出すことができた1年だった。これを受け株価も、上場来高値にはまだまだ及ばないものの底入れ、戻り歩調となっている。本格的かつ持続的な回復トレンドに入るか、今期の施策の進捗状況を注目していきたい。一方でメタボローム解析事業の堅実さと着実な拡大にも目を向けておきたい。2013年12月の上場後、前期で4回の決算を迎えた同社だが、4期間の営業CF合計はプラスの82百万円。決して大きな額ではないが、毎期億円近い赤字が続くバイオベンチャーと比べると、しっかりと利益を出しているメタボローム解析事業を持つ同社の優位性を見ることができよう。

会社概要

研究機関や製薬企業等のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を中心事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業。バイオマーカーを探索する基盤技術であるメタボローム解析技術で世界的に高い評価を受けている。メタボローム解析事業により着実に利益を生み出すと同時に、将来性豊かなバイオマーカー事業への投資および研究開発を進めるというビジネスモデルにより、安定した収益基盤の下で成長を目指している。

2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、CE-MS法と呼ばれる生体内の低分子代謝物質(メタボローム)の測定方法を開発した。このメタボローム測定法は、それ以前の測定方法が多くの測定条件を用いるため、代謝物質全体を網羅的かつ効率的に測定することが困難だったのに対し、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術であった。

以前よりメタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬品開発、疾病バイオマーカー開発等に用いられており、その社会的ニーズの拡大が見込まれていたため、このCE-MS法確立を契機に、事業化を目指して、曽我教授や同大学の冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に同社を設立。慶應義塾大学のアントレプレナー支援資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となった。

2008年には、ライフ・サイエンス分野で用いられる化学分析機器や電気・電子計測機器の開発・製造・販売・サポートを行う世界的企業Agilent Technologiesの日本法人で、以前より同社及び慶應義塾大学と取引のあった、アジレント・テクノロジー株式会社の代表取締役副社長の菅野 隆二(かんの りゅうじ)氏が社長に就任。
菅野社長は就任後、同社のコア技術に関する研究開発を進めつつ、より具体的な事業化の道やビジネスモデルの整備・構築に着手すると同時に、認知度向上と研究開発資金の調達による成長スピードの加速を目指して株式上場の準備を開始。2013年12月、創立10年目に東証マザーズに上場した。

【企業理念】

同社は自社の存在意義を以下の様に定めている。
「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術を用いた研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」

また、以下の5つの「共有の価値観」を掲げている。

【同社を見るポイント】

同社の事業内容は、重要なキーワードである「メタボローム解析」「バイオマーカー」の説明と共に、以下に記しているが、多数の専門的な用語も出てくるため、そこから読み始めると同社に対する理解が進みにくい場合があると思われる。
そこで、まず同社を見る際の3つのポイントについて簡単に触れておく。

①社会的存在意義の大きさ

バイオマーカーとは、特定の病気に関する現在の状態を測定する際に指標として使われる生体内の物質で、糖尿病の「血糖」、肝機能障害の「γ-GTP」、痛風の「尿酸」などが代表的。
同社は現在大きな社会問題となっている「大うつ病性障害」のバイオマーカーを発見し、その数値を簡便に測定する診断薬を開発している。
うつ病の患者数が年々増加傾向にあるのに対し、現在の病状を客観的に測定する方法が普及していないため、正しい治療を行えば治癒するはずの患者が治らないなど、薬漬けになるなど大きな問題が指摘されている。
同社のバイオマーカーを活用した診断薬が普及すれば、うつ病によるこれらの課題を解決し、社会的損失を減少させることが出来る。
この社会的な存在意義の大きさは同社を見る際に欠かすことはできない。

②高い技術力

複雑な人間の体の仕組みを調べ、バイオマーカーを発見するための技術が「メタボローム解析技術」であり、同社はこの技術で世界的に高く評価されている。
現在話題になっているうつ病バイオマーカーは、あくまでも一例にすぎず、メタボローム解析技術により今後も、様々な新しいバイオマーカーを発見・開発することが期待される。

③安定したビジネスモデル

現時点での主力事業は売上の大部分を占める「メタボローム解析事業」。研究機関や製薬会社等の研究開発を支援する事業であり、前2017年3月期で売上913百万円(前期比+29.8%)、営業利益501百万円(同+66.8%)と、着実に利益を上げている。
一方、中長期的に大きな成長が期待される「バイオマーカー事業」はまだ規模も小さく、損失の状況だが、メタボローム解析事業で生み出した利益を、バイオマーカー事業の成長のための投資に回すという、バランスのとれたビジネスモデルが既に構築されている点は、収益化に苦労している企業が多いバイオベンチャーの中でも大いに注目される。

【うつ病について】

同社の今後の成長ドライバーである「バイオマーカー事業」において、現在の代表的な対象疾病がうつ病である。うつ病および大うつ病性障害について、概要や日本における現状などをまとめてみた。

◎うつ病とは

気分障害の一種で、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまう。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きる。
中でも、「大うつ病性障害」は、ストレス源が除去された後もその状態が持続する状態を指し、その点で適応障害や一部の不安障害とは区別され、単純なストレス応答ではなく、脳機能の障害によると考えられている。
(ちなみに、大うつ病性障害とは、英語の「major depressive disorder」の和訳で、majorは「主たるもの」という意味合いであり、重篤なうつという意味ではない。)

◎世界および日本におけるうつ病患者数

2012年、世界保健機関(WHO)は、世界で少なくとも3億5千万人が精神疾患であるうつ病の患者とみられるとの統計を発表した。毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者の占める割合は半数を超えるとみられている。

一方我が国では、厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、1996年には43万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、2011年には95万人と15年間で2.2倍に増加した。
「患者調査」は、医療機関にかかっている患者数の統計データだが、うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されると、と同省は記している。

うつ病になる事は本人や家族にとっても不幸なことであるが、その属する会社等組織における生産性の低下や、自殺による社会的影響などを考慮すると、解決すべき大きな社会問題である。
日本では、うつ病や自殺による経済損失額が、年間約3兆円に上ると推計されている。さらに、こうした損失がなければ、国内総生産(GDP)を約2兆円引き上げられと試算されている(2010年厚生労働省推計)。
全世界での経済損失額は、2002年で約62兆円に上ると試算されており(Screening for Depression in Adults: A Summary of the Evidence. Ann Intern Med. 2002.)、現在では100兆円を超えていると推計されている。

◎うつ病の治療

うつ病と診断されれば、一般的には「抗うつ薬」による治療が行われる。
抗うつ薬には、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)といったものから三環系抗うつ薬などいくつかのグループがあり、他に、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われる。
薬物治療では、主治医による処方された薬の効果と副作用についての説明の下、処方された量と回数を必ず守ることが重要と言われている。しかしうつ病患者には、症状がそれほど重くないと感じる、副作用が心配、などの理由から自分で量や回数を勝手に減らすケースが多く見られ、主治医は十分な効果が得られないと判断して薬の量を増す、もしくは別の薬に変えるなどの対応を取ることとなってしまい、信頼関係が構築できず治癒が遅れる、過剰な薬の投与という結果に結び付いてしまう事も多い。
このため、うつ病であることまたは治癒されたことを示す客観的な評価基準が不可欠であり、同社が発見・開発中のうつ病バイオマーカーおよび診断薬は治療を迅速かつ適切に行うために極めて重要なものである。

【メタボローム解析とバイオマーカー】

同社の事業内容の概要を理解するには、「メタボローム解析」「バイオマーカー」という2つのキーワードについて一定程度の理解をしておく必要がある。

<メタボローム解析とは?>

人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立つが、こうした器官はアミノ酸や脂質、核酸などの「代謝物質(メタボライト)」を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っている。

代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費される。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていく。
このような化学反応のことを「代謝(メタボリズム)」と呼ぶ。体温を調節したり、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、食べ物を消化・吸収したり、古い細胞を新しい細胞に生まれ変わらせたりするのも、全て代謝の働きによるもの。
この新しい物質への作り変え「物質変換」は代謝経路という一定の規則により成り立っている。

人間の体の仕組みを探るための手法として有名なものが、遺伝子の解析を行う「ゲノミクス」である。
現在、生物の遺伝子情報(DNAの塩基配列)は自動的な解読およびコンピュータによる解析が可能になり、ヒトゲノムに関しては、ほぼ全ての情報の解読が終了したが、遺伝子の役割と病気との関係は解明できていない部分がまだまだ沢山ある。
そこで、人間の身体と病気との関係を解明するには、ゲノム解析による遺伝子に伴う情報のみでなく、代謝物質までを調査する事が必要であると考えられるようになり、全ての代謝物質を対象として解析を行う「メタボロミクス(メタボローム解析)」の研究、利用が盛んになっている。

メタボローム解析は主として以下のような分野で活用されている。

<バイオマーカーとは?>

人間の身体には、様々な機能を精緻に制御して、内的又は外的な影響を最小限にして、身体の状態を一定に保つ仕組みである「恒常性」が備わっている。
例えば、体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻るという事などが「恒常性」の一例である。

しかし、病気に罹ってこの恒常性に異常が生じると、代謝物質等にも影響が及び、健康の時とは異なる状況が生まれる。この代謝物質等をバイオマーカーと呼び、バイオマーカーを測定することにより、特定の疾患に対する現在の状況を客観的に評価することができる。
バイオマーカーとして広く知られているものとしては、膵臓の機能指標となる血糖や肝機能の指標となるγ-GPT、腫瘍マーカーとして前立腺がんのバイオマーカーPSAや膵臓がんのバイオマーカーCA19-9などがある。
バイオマーカーは、病気に罹った状況をモニターすることを目的に古くから研究されてきたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法が生み出され、様々な新しいバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されている。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがある。

【事業内容とビジネスモデル】

同社の代表的事業は「メタボローム解析事業」「バイオマーカー事業」の2つ。
基盤技術であるCE-MS法の優秀性を研究機関や製薬会社等に普及させながらメタボローム研究関連市場の拡大を図り、メタボローム解析事業を国内外へ展開し、収益基盤を確保している。

一方、従来は現在の主力事業である「メタボローム解析事業」で得られた利益を、将来の成長事業である「バイオマーカー事業」の研究開発に投資し、ここで得られた知的財産を、医薬品開発や疾病診断分野で実用化することによる、中長期的な成長を目指してきたが、2017年3月期以降は、将来のより大きな飛躍を図るために外部からの各種資金調達によってバイオマーカー事業への投資を加速させることとした。

それぞれの事業の収益構造や顧客は以下の通り。

①メタボローム解析事業
「2017年3月期 売上高 913百万円、営業利益 501百万円」

製薬会社や食品会社等の民間企業、および大学や公的研究機関などを顧客とし、メタボローム解析試験を受託している。
顧客は、解析する試料を同社へ送付。同社は試料から代謝物質の抽出、CE-MS法によるメタボローム解析等を行った後、試験結果を報告書として顧客に納品する。
メタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発の進展に貢献している。近年では、医療、食品のみでなく健康志向市場関連企業の関心も急速に高まっている。創業以来2016年度までの総試験数は4,031件と他に類を見ない豊富な実績を誇っていることに加え、品質の面でも顧客から高い評価を得ている。

◎海外市場への展開

メタボローム解析受託サービスをアジアで展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と韓国内におけるメタボローム解析サービス等の独占的販売権供与契約を締結した。また、選任の担当者を採用し、シンガポール、香港等、韓国以外のアジア地域の開拓にも注力している。アジア地域以外への取り組みとしては、北米市場への展開のため、2012年10月に、医学研究の集積地である米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社Human Metabolome Technologies America, Inc.(HMT-A)を設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開している。
また、海外展開を一層加速させるため、2017年5月には、HMT-Aを通じて、欧州(オランダ)に現地法人(孫会社)「Human Metabolome Technologies Europe B.V.」を設立した。

◎がん研究向け解析サービス「C-SCOPE」

2012年8月、がん研究向け解析サービスである「C-SCOPE」を発表した。
C-SCOPEは、がん細胞内で変化している特定の代謝物質を、より高感度、より精密に測定するというニーズに対応したもの。独自に開発したがん細胞からの効率的な代謝物質抽出法および高感度分析法を技術基盤としている。

がんは1981年以降国内死因の第1位であり近年総死因の約3割を占めている。厚生労働省によると、がん研究費は年々増加の一途をたどり2012年には357億円が費やされ、有効な新規抗がん剤の開発は多くの製薬企業にとっても急務となっている。
がん細胞が正常細胞に比べて数倍から数十倍のブドウ糖を消費する「ワーバーグ効果」と呼ばれる現象は、80年以上も前に提唱されたが、当時は代謝物質の網羅的測定法が無かったことから研究が滞っていた。
メタボローム解析技術の劇的な進歩に伴い、近年がんの代謝を阻害する抗がん剤の開発が行われている。
同社のCE-MS法によるメタボローム解析は、がん生物学的な基礎研究から抗がん剤開発における臨床応用まで、それぞれの段階で活用できる有効な解析手法の一つと考えられている。

②バイオマーカー事業
「2017年3月期 売上高 0百万円、営業損失 -198百万円」

同社は、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングする際に重要な役割を果たすバイオマーカーに関する事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や製薬、診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いた新たなバイオマーカー探索や臨床検査薬の研究開発を進めている。
自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾病の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品や診断機器の製造販売を行う。また、開発過程において、共同研究先である製薬企業から研究開発協力金やマイルストン収入、上市後の製品売上ロイヤリティ等が同事業の売上となる。

◎知的財産に関する方針

知的財産権・契約担当者が、同社及び共同研究機関の指定特許事務所の弁理士と密接に連携し、すべてのプロジェクトの特許出願、審査請求業務を遂行する他、共同研究における契約の交渉及び契約書類の作成も担当している。発見された疾病バイオマーカーの特許化については、最大限の権利を行使できるよう努めている。
疾病バイオマーカーにより権利範囲が異なるため、発見された疾病バイオマーカーの化学構造を始めとして、診断や創薬での利用法、検出法と測定機器などを広く網羅するように特許出願書類を作成している。
また、各国の臨床検査薬と検査機器企業、製薬企業に関する情報に基づいてライセンス契約先及び市場を想定し、特許協力条約に基づく国際出願を行うことを原則としている。
2017年6月現在、うつ病のバイオマーカーの測定法等に関する「基本特許」は日本・米国・中国で登録済み(欧州は出願済み)、エタノールアミンリン酸(PEA)の測定方法に関する特許は、日・米・中・欧4局すべてで登録済みとなっている。

◎バイオマーカー事業の例:うつ病バイオマーカー

同社では、特にうつ病など客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)や、肝炎、糖尿病などを含んだメタボリックシンドローム等社会問題化している疾患とその関連疾患に焦点を当てて研究開発を進めているが、現在の代表的なものが、「うつ病」のバイオマーカーである。
大うつ病性障害の診断は、米国精神医学会の診断基準や世界保健機構(WHO)の基準に基づいて診断されるが、どちらの手法も医師や患者の主観が反映されているケースが多く、他の病気と異なり客観的な指標に基づく診断法が普及していない。そこで、同社は、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により、大うつ病性障害の血液バイオマーカーを発見した。
患者と健康者約30名ずつの血液を収集し、CE-MS法を用いたメタボローム解析により成分の比較を行った結果、血漿中のPEA濃度が、大うつ病性障害患者で固有に低下していることが分かった。
その後の解析により、PEAが精神疾患の中でも大うつ病性障害に特異的なバイオマーカーであることに加え、大うつ病性障害が治癒すると健康基準値まで戻ることも分かった。

このように、同社はPEAとうつ病の関係を探索・研究してメカニズムを解析する一方、機器分析法測定方法を開発したことで、測定精度を向上させるとともに、治療効果や病状の研究を可能にした。
続いて、従来の酵素法では検出できなかった極めて低濃度の血中PEAを測定できる技術を開発した。
この技術に基づいて2016年に開発されたのが「酵素法によるPEA測定試薬キット」(β版)である。

同社にとって「うつ病バイオマーカー測定試薬キット」の開発に成功したことの意義は極めて大きい。
「安価で大量処理可能な検査方法の実現」と「全世界に試薬キットを供給できる技術的基盤の確立」によって、全世界3.5億人のうつ病患者にPEA検査を供給することが可能となり、同社の社会的存在意義は一段と大きくなった。
加えて、具体的な市場、製品仕様、販路構築、事業規模等を考える新たな事業開発フェーズに移行することができるようになった。

◎疾病バイオマーカーの発掘

バイオマーカーの発見において以下の3つのコネクションや制度を活用し、バイオマーカー開発パイプラインの拡充に努めている。

<受託解析もしくは共同開発顧客とのコネクション>

大学や企業から、バイオマーカー探索関連試験を受託している。また、試験実施の前後で共同開発の提案を受けることもある。
現在、糖尿病性腎症バイオマーカーの共同開発を進めている。

<研究者や医師への直接提案>

同社の研究員が、疾病バイオマーカー開発の研究計画を直接研究者や医師に提案し、医師の承諾及び所属機関と共同研究契約を締結の上、試験を実施している。対象となる疾病は患者数、同社解析技術の特長、社会貢献度、バイオマーカーの必要性等から選択している。大うつ病性障害のほか、非アルコール性脂肪性肝炎、繊維筋痛症のバイオマーカー開発を行っている。

<メタボロミクス先導研究助成制度>

同社ではメタボローム解析の有用性を広く社会に利用してもらうとともに、若手研究者の育成のために、大学院学生へのメタボローム解析助成制度(HMTメタボロミクス先導研究助成制度)を2009年より実施している。世界各国の大学院生から募集した研究テーマから、優れた提案に対し、無償でメタボローム解析結果を提供して研究を支援している。この研究成果には、バイオマーカー発見につながる研究も含まれ、感染症関連脳症バイオマーカーのように、同社と共同研究に発展した例もある。

2017年3月、次世代バイオマーカー探索に関わる技術特許を取得したと発表した。
現在同社で開発を進めている肝疾患バイオマーカーであるγ-グルタミルジペプチドは生体内に微量に存在するため、従来のCE-MSメタボローム解析技術では検出困難だったが、今回の特許技術を用いることで、γ-グルタミルジペプチド類を網羅的に検出することが可能となった。
この特許技術により、物質によっては50倍以上の高感度検出を実現できることから、同社のCE-MSメタボローム解析技術を飛躍的に向上させることが可能となり、新たな革新的バイオマーカー発見の可能性を高めることも期待される。

2017年3月期決算概要
成長に向けた投資増で損失続く

売上高は前期比17.1%増の914百万円。メタボローム解析事業は堅調。人材派遣事業廃止分の落ち込みをカバーして増収となった。
営業損失は43百万円。メタボローム解析事業は安定的に利益を出しているが、うつ病バイオマーカー事業化への投資が拡大している。
受注は国内外共に堅調。メタボローム解析事業の受注高は前期比30%増となった。

売上高は前期比29.8%増の9億13百万円。機能性表示制度の施行により好調に推移した食品業界向けを中心に大幅な増収となった。4割増収となった食品企業向けと並び、製薬企業向けも同7割増と大幅に増加した。
増収効果と生産性の向上により営業利益は同66.8%増の5億1百万円となった。
受注額は、同30.9%増の922百万円。米国法人の受注(現地通貨建て)も同72%増と好調だった。

2016年11月、「うつ病バイオマーカー測定試薬キット(研究用)」の開発に成功した。
その後、フィールドテストを外部3施設で実施し、一般的な検査室で測定可能な十分な品質であることを検証することができた。
今後は研究用試薬キットの材料・資材の調達を開始するとともに、2018年3月期下期の発売に向けた生産体制の構築にも着手していく。

現預金の増加等で流動資産は前期末に比べ3億92百円増加。固定資産はほぼ横這いで、資産合計は同3億72百万円増加の20億22百万円。長短借入金の減少等で、負債合計は同36百万円減少し1億62百万円。利益剰余金のマイナス幅は拡大したが資本金、資本剰余金の増加で純資産は同3億36百万円増加し18億59百万円となった。この結果、自己資本比率は前期末の92.3%から91.4%に低下した。

仕入債務の増加、たな卸資産の減少等から営業CFはプラスに転じた。
投資有価証券の取得による支出が無くなり、投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFはプラスに転じた。
新株予約権の行使に伴う株式の発行による収入が増加し財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

(4)トピックス
◎弘前大学COIプログラムに参画

国立大学法人弘前大学(青森県)が2013年に文部科学省・科学技術振興機構(略称JST)から採択されて実施している、革新的イノベーション創出プログラム「COI(センター・オブ・イノベーション)STREAM」に参画することとなった。

弘前大学では、青森県の平均寿命が国内最下位レベルのいわゆる短命県であることから、健康長寿社会実現のための研究に早期から取り組んでいる。
2013年には国のCOI全国12拠点の一つに採択され、産学官民連携による様々な取り組みを実施しており、2015年までの3年間の取り組みについて、国の実施機関による中間評価では医療健康分野において最高ランクの「S」を獲得した。
弘前大学COIでは超高齢化社会を迎えた我が国が抱える課題である、「医療費の削減」、「高齢者の健康増進」、「QOLの向上」、「高齢者の健康寿命延伸」の解決に向け、600 項目に及ぶ膨大な青森県民の健康ビッグデータを用いた解析により、認知症や生活習慣病の発症を予測する予兆発見アルゴリズムを開発するとともに、このアルゴリズムをソフトウェアパッケージ化及びシステム化し、地方自治体や医療関連機関等が住民に対して早期予兆発見と早期介入を行うことを可能とするような画期的な予兆発見・予防法の創出を目指している。

同社は、生体内のイオン性代謝物質を、一斉に、かつ、網羅的に測定する画期的技術(CE-MS法)をコア・テクノロジーとして、大学などの公的研究機関や製薬企業・食品企業などへメタボローム解析サービスを提供するとともに、数十年といった長期間にわたり、特定の地域や集団に属する人々を対象に、その健康状態と生活習慣・生活環境など様々な要因との関係を調査するコホート研究への取り組みを強化している。

今回のプログラムに参画するにあたり、同社は、弘前大学が青森県弘前市岩木地区で行っている大規模住民健康調査(岩木健康増進プロジェクト)により収集した膨大な健康ビッグデータと、血液等の検体をメタボローム解析することにより得られたデータを、照合・分析することにより、健康度の評価が可能となるような指標の確立など健康評価法の開発を共同して推進していく。
また、同社が従来より取組んでいるメタボローム解析を用いた疾患バイオマーカーの探索にも注力する。

同社のこのような取り組みは、健康障害から疾患にかかりやすい集団を抽出・分類することを容易にし、その集団に最も適した予防医療を提供するいわゆる「プレシジョン・メディスン(精密医療)」への対応の一歩。
同社では、引き続きこうしたコホート研究への取り組み強化を通じて、メタボローム解析技術の認知度・評価の向上を図り、その普及促進に努めるとともに、これから医療改革の一つとして注目されているプレシジョン・メディスンに積極的に取り組んで行く考えだ。

◎欧州に現地法人を設立

100%子会社「Human Metabolome Technologies America, Inc.(HMT-A)」を通じて、欧州(オランダ)に現地法人(孫会社)を設立した。2017年7月の事業開始を予定している。

(設立の背景)

同社グループは2012年10月に販売会社HMT-Aを設立以降、北米市場においてメタボローム解析事業の開拓に注力してきたが、受注件数も着実に増加するとともに、2016年10月には、アメリカ国立衛生研究所傘下のアメリカ国立老化研究所との間で、アルツハイマー病の仕組みについての調査・研究、バイオマーカー探索を共同で行う契約を締結するなど、北米市場での事業基盤整備が着実に進展している。

そうした中、メタボローム解析事業の海外展開を更に加速させるために現地法人を設立し欧州市場の開拓を進めることとした。

欧州市場開拓にあたってのポイントは以下の通り。

ある調査によれば、メタボロミクスに関する市場規模(2016年)は米国の5.1億USDに次ぎ、欧州3.7億USDと世界第2位の市場で、2021年までの年平均成長率は13%と高成長が見込まれている。
医薬品事業や発酵関連の食品事業等が盛んな欧州では、バイオ技術が産業に浸透している。
高品質が評価される市場
主要市場は、UK、ドイツ、スイス、ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)、北欧など。

オランダ・ライデンにある「ライデン・バイオサイエンス・パーク」には11の研究施設及び100社のライフサイエンス系企業が存在するほか、オランダにおけるメタボロミクス研究の中心であるNetherlands Metabolomics Centreもライデンに位置する。
加えてオランダは欧州の中央に位置し、他国へのアクセスが容易である点も、大きなアドバンテージであると考えている。

同社では、HMT-A立ち上げの過程で得られたノウハウやリソースを有効活用し、欧米一体となって活動することにより、メタボローム解析事業の海外展開を更に加速させることを目指している。

◎監査等委員会設置会社へ移行

2017年6月24日開催予定の第14回定時株主総会の承認を条件として、取締役会の監督機能の強化によるコーポレート・ガバナンスの充実の観点から、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行することとした。

3名の社外取締役・監査等委員のうち2名は現・社外監査役。
もう1名の新任社外取締役である長江敏男氏は、ペプチドリーム株式会社、サノフィ株式会社等、医薬品業界において経営者として豊富な経験と幅広い見識を有しており、その経験・見識を活かした適切な提言を期待している。

2018年3月期業績予想
メタボローム解析事業は引き続き堅調で増収。バイオマーカー事業の先行投資拡大で損失幅は拡大

売上高は前期比7.2%増の9億80百万円の予想。メタボローム解析事業は引き続き堅調に推移。両事業における積極的な投資により損失幅は拡大する。特にバイオマーカー事業においては今期中のPEA測定研究用試薬の販売を目指した製品開発を含め3億15百万円を投資する。

(2)今期の取り組み
◎メタボローム解析事業

同事業を取り巻く環境には大きな変化が生まれている。
特に、メタボロミクスが従来の大学や研究室などアカデミア向けの技術から、産業界の技術に進展している。
またそうした中で、機能性食品などの新しい健康食品や、スポーツ、食品、睡眠、ストレス等をキーワードとする健康志向市場が人間の健康状態を把握するメタボロミクスの有用性に関心を向けており、新しいマーケットが創出されつつある。
また、医薬品開発の現場においても、腸内細菌の研究、認知症やアルツハイマー病などの精神神経疾患に対する早期発見や診断および治療法開発、難治性疾患に対する医薬品を含めた医療技術の実用化などに関しても、メタボロミクスの利用が有効視され始めている。

そうしたフォローの風の中、今期は以下の様な施策を推進し、着実な拡大を見込んでいる。

欧州に現地法人を設立するほか、新サービス準備に係る設備投資など、ニッチにとどまらず世界を舞台に勝負するための投資ステージであるため、今期は増収ながらも減益を計画している。

◎バイオマーカー事業

前回のレポートでも紹介したように、2016年11月の「酵素法によるPEA測定試薬キット」(β版)の開発により、同社は全世界3.5億人のうつ病患者に、PEA検査を供給することが可能となった。
2017年3月期にこの大きな一歩を踏み出した同社は今期、製品開発、臨床開発、薬事、事業開発の各分野において以下のような取り組みを進め、事業化へ向け更に力強い一歩を踏み出す考えだ。

◎製品開発

PEAの測定には「測定試薬キットと汎用自動生化学検査機器を用いた大規模病院や臨床検査センターにおける測定」と、「測定試薬カートリッジとPOCT測定機器を用いた一般内科やメンタルクリニックにおける測定」の2つを想定している。前者においては、自動化機器に対応が可能な測定試薬キットの開発が、後者においては、より多くの共同研究先が臨床的に測定を行うために不可欠なPOCT測定機器および測定試薬カートリッジの開発が必要である。
自動化機器へ対応できる測定試薬キットの開発は診断よりもはるかに巨大な健診市場への参入に繋がる。
POCT測定機器については今期中にプロトタイプ(量産前の試作品)を開発する。

(※)POCT(Point Of Care Testing:臨床現場即時検査)
小型分析器や迅速診断キットを用いて医療現場で行うリアルタイム検査。病院の検査室あるいは外注センター以外の場所で実施されるすべての臨床検査を包含する。そのため実施場所や活用法においては、広域かつ多様なケースが想定される。
被検者の傍らで医療従事者が行うため検査時間の短縮および被検者が検査を身近に感じるという利点を活かし、迅速かつ適切な診療・看護、疾患の予防、健康増進等に寄与し、被験者のQOL(Quality of life)向上に資すると言われている。
◎臨床開発

今後の薬事申請のためには、十分な量のデータの取得、分析が欠かせない。
そのため、現在同社が関与していない、言わば第三者的な医師や病院による臨床データの取得が必要であり、多くの施設や医師にPEA測定試験の実施を働きかけ、同社が立てている仮説とのギャップや、医師による判断のバラつきを明確にしていく。
こうした多くの施設や医師によるフィジビリティ試験(実用化のための試験)を通じて、「全てのうつ病を測定する。」という事ではなく、「血中PEA濃度の低下によるうつ病に限定した測定試薬」といった条件を設定するなど、現実的に薬事申請が通り易いケースを判断することが、早期の本格的な事業化には不可欠と考えている。
また、臨床研究の裏付け強化のためには学術研究の実施も重要と考えており、モデル動物を使ったPEA低下メカニズムの解明、抗うつ薬投与の影響検証を国内大学と共同研究で実施するほか、今後のグローバル展開を見据え、生化学的手法を用いた脳内でのPEA生成メカニズムの解明を米国立研究所と共同で実施する。

◎薬事

2017年2月に体外診断用医薬品の製造販売業の認可を取得した。これにより、体外診断用医薬品の製造を「体外診断用医薬品製造業許可」を持つ企業へ委託することや委託先で製造した体外診断用医薬品を販売すること等が可能となった。これは日本国内において、同社のバイオマーカーが体外診断用医薬品として薬機法上の承認を得るために必須となるもの。

また、次いで5月には「医薬品卸売販売業」の許可を取得した。これにより同社のバイオマーカーが体外診断用医薬品として薬機法上の承認を得られた場合には、この体外診断用医薬品を使用した検査を希望する病院、クリニック、臨床検査センター等の幅広い医療機関へ、同社より直接提供することが可能となる。

このように、今後の事業化に向けた薬事上の重要な基盤整備を進めることができた。今期は独立行政法人医薬品医療機器総合機構への薬事申請事前相談を開始し、具体的な出口戦略の検討を始める。

◎事業開発

PEA測定試薬キット(研究用)の生産を進めると共に、下期より主に研究機関向けに国内での販売を開始する。
PEA酵素法の基本特許は欧州のみ出願済みなものの未だ登録されていないが、間もなく登録されると見ている。

製品開発、臨床開発のほか、事業化に向けた基盤整備などで、3億15百万円の投資を計画している。

菅野社長に聞く

菅野社長に、両事業の現状と今後の展望、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「2017年3月期を総括してください。」
A:「両事業とも大きな進展を見せた1年だった。」

メタボローム解析事業は、更なる市場拡大が明確になり、バイオマーカー事業は早期の事業化を見据えた基盤整備、「下ごしらえ」が着実に進むなど、両事業共に大きな進展を見せた1年であり、今期以降の更なる飛躍につながる重要なステップを踏むことができた。」

Q:「まずメタボローム解析事業の現状及び今後の展望をお聞かせください。」
A:「市場拡大を追い風に、新サービスにも注力し、さらに成長に弾みを付けたい。」

この市場では大きな変化が起きている。
まず一つは市場拡大の流れ。
これまでは、大学や研究室などいわゆるアカデミア向けが中心の技術だったものが、ここ数年で民間企業へと利用対象が拡大している。それも医薬品、食品にとどまらず、スポーツ、睡眠、ストレスといった「健康」に関連する様々な企業からの問い合わせやアプローチが増大しており、私自身も驚いている。
「健康産業」におけるメタボローム解析の利用価値が明確になってきたということであり、一段の市場拡大が期待できる。

二つめはリピートオーダーの増加に伴う契約金額の大型化だ。
同事業のメイン顧客は医薬品関連や食品関連の企業や研究機関だが、従来は例えば食品そのものの成分の解析が中心だったが、最近は臨床的な解析ニーズが高まっており、実際に動物に投与するとどういう効果や影響があるのかといった解析を行うケースが増えている。
またこれまでの網羅解析に加え、特定のあるマーカーがどんな働きをするかを調べるターゲット的な解析依頼も増加している。
こうした解析に対するニーズの多様化に伴い、日本を代表する食品、化粧品メーカー等からのリピートオーダー件数が増加し、1社当たり契約金額の大型化も進んでいる。
利用企業の広がり、リピートオーダーの増加、いずれも当社のメタボローム解析技術の品質の高さをご評価いただいたものと誇らしく思っている。

当社は創業以来累計で4,000件を超える解析を実施してきた。すなわち4,000件の報告書を作成してきたわけで、これだけの実績を有する企業は国内にはなく、世界的にもトップクラスだ。
4,000件の報告書に記されたバラエティに富んだサンプルは極めて貴重な「ビッグ・データ」であり、単なる解析結果の積み重ねではなく、数多くのサンプルやパターンを組み合わせることで解析結果についての「解釈」を提供することもできる。
実際に、自社や外部機関(同業他社)で行った解析結果についての解釈を当社にお尋ねになるケースも増えている。
こうした「ソリューション提供」を新たな収入源とするために前期は「メタボロームデータ解析サポート」を事業としてリリースした。ステディな成長に寄与する事に加え、当社ならではの強力な差別化要因となるだろう。

またバイオマーカー探索に関しても大きな進展があった。
今回取得した技術特許は当社のメタボローム解析技術を飛躍的に向上させるだろう。ガンも含めた新たなバイオマーカーの発見にも注力していく。

市場拡大を追い風に、新サービスにも注力し、さらに成長に弾みを付けたい。

Q:「バイオマーカー事業はいかがですか?」
A:「極めて大きな一歩を踏み出すことができた1年だった。これを受け、早期事業化に向け邁進していく」

研究用測定試薬キットの開発によって全世界3.5億人のうつ病患者にPEA検査を提供できる扉を開いたことは大きな進展だが、それにとどまらず、製品開発においてはPOCT機器の開発、臨床開発においては実施体制の構築、薬事においては製造販売業認可取得、事業開発においてはPEA測定法が米国・中国・欧州で特許登録と、極めて大きな一歩を踏み出すことができた1年だった。
製品開発、臨床開発、薬事、事業開発の各分野が同時並行的に順調に進んでおり、今期もそれぞれの施策・計画を着実に進展させることで、早期事業化の可能性が更に高まることとなろう。

よりスピーディーな事業化のためには世界規模で機器および試薬の生産・販売を行っている大手企業とアライアンスを組むことも必要と考えている。
ただ、当社が十分なイニシアティブを握るためには、試薬キットおよびカートリッジ、POCT機器の開発を着実に進め、具体的に目に見えるものとすることが不可欠なので、やるべきことを着実に進めながらタイミングを計っていく。

上場して資金を調達し、優秀な人材を採用。ベースを作りながら開発を着実に進めてきた。
次のステージでは本格的な事業化に向けて臨床開発や機器開発も本格化し投資も必要となるため今期、来期は損失となるがその後は、試薬販売による売上が見込めると同時に、研究ステージから事業開発ステージに移行し、コストも低減していくので黒字化も見えてくる。
そのためにも、今期は大変重要な1年だ。早期事業化に向け邁進していく。

Q:「最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします。」
A:「これから一気に花咲くステージに入っていく。是非期待していただきたい。」

2013年の上場から3年、その成果が前期から明確に出始めた。次の3年は一気に花咲くステージに入っていく。
是非当社の現在をご理解いただくとともに、未来に期待していただきたい。

今後の注目点
2017年3月期は菅野社長が言うように、バイオマーカー事業の早期事業化に向けて極めて大きな一歩を踏み出ことができた1年だった。
これを受け株価も、上場来高値にはまだまだ及ばないものの底入れ、戻り歩調となっている。
本格的かつ持続的な回復トレンドに入るか、今期の施策の進捗状況を注目していきたい。
一方でメタボローム解析事業の堅実さと着実な拡大にも目を向けておきたい。
2013年12月の上場後、前期で4回の決算を迎えた同社だが、4期間の営業CF合計はプラスの82百万円。決して大きな額ではないが、毎期億円近い赤字が続くバイオベンチャーと比べると、しっかりと利益を出しているメタボローム解析事業を持つ同社の優位性を見ることができる。
<参考:うつ病バイオマーカー測定キットに関する事業展望(前回レポートより)>

うつ病の研究者もしくは医療従事者、医師にアンケートを実施したところ、多数の専門医がうつ病バイオマーカーの有用性を認めており、また、診断補助や治療方法の選択など、臨床現場で直面している問題の解決方法としても期待されていることがわかっている。

研究用の測定キットおよび測定試薬カートリッジ、POCT測定機器を開発した同社では、2通りの使われ方を想定している。

測定試薬キット、測定試薬カートリッジは今後、臨床試験を重ね体外診断用医薬品としての申請及び保険適用を目指していく。
同社にとって「うつ病バイオマーカー測定試薬キット」(β版)の開発に成功したことは、全世界3.5億人の患者にPEA検査を供給できる扉を開いたという事であり、その意義は極めて大きい。

全世界3.5億人のうつ病患者が、一人につき初回診断および4回の治療経過観察を受ける場合、試薬単価600円(同社売価目標)、2029年の検査浸透率10%と前提を置くと、2029年度における同社の想定する市場規模は以下となる。

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