(6250:東証1部) やまびこ 収益性改善に向けた取り組みに注目

2017/06/21

yamabiko

今回のポイント
・17年3月期の売上高は前期比1.2%減の1,119億円。国内は農機の各種拡販策が奏功して好調。産機も増収。海外は、小型屋外作業機械が北米の景気拡大や拡販策の奏功、西欧の新製品効果や中国の販路開拓などにより販売数量を伸ばしたが、円高の影響により減収となった。営業利益は同13.2%増の76億円。実質増収効果に加え、生産量の拡大による粗利率の改善、未実現利益の減少が寄与した。経常利益は同13.8%増の72億円。為替差損は拡大したが増益を確保。営業利益、経常利益共に過去最高を更新した。リコール発生による製品保証引当金繰入額と、厚生年金基金解散に伴う損失引当金繰入額を特別損失に計上したことなどから、当期純利益は同49.5%減の23億円となった。・決算期変更により17年12月期は9カ月決算となるため前期実績との比較は参考情報。売上高は前期比5.1%増の1,030億円の予想。国内は引き続き堅調。北米は小型屋外作業機械に加え、一般産業用機械の販売拡大を見込んでいる。欧州もプロモーション強化により増収を計画している。営業利益は同21.0%減少の63億円。増収効果、円安効果はあるものの、変則決算に伴う一時的費用や販社統合費用など販管費増を吸収できず減益を予想。9ヶ月決算ながら配当は前期より5円増配の30円/株を予定。予想配当性向は28.2%。

・「中期経営計画2019」では、新たに「2つのビジョン」を掲げて中期的なありたい姿を明確にするとともに、製品競争力の強化、販売・サービス力の強化など重点施策に取り組み、前中計期間で実行した積極投資の効果を具現化。2019年12月期 売上高1,250億円、営業利益88億円(営業利益率7%)を目指す。

・残念ながら17年3月期実績は前中計で掲げた売上、利益目標に対しては未達で終わったが、小型屋外作業機械の米国での伸長など、十分な手応えのあった3か年であったと言えよう。これを受けた新中計では、米国市場の深耕、ロボット芝刈機の本格離陸などによるトップラインの伸びももちろんだが、営業利益率7%という収益性改善に向けた取り組みにも注目したい。

会社概要

小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。

【1-1 沿革】

同社は、国内で農業機械、グローバルで小型屋外作業機械を扱っていた株式会社共立(東・名・阪一部上場)と、グローバルで小型屋外作業機械及び一般産業用機械を扱っていた新ダイワ工業株式会社(東証2部上場)の2社が2008年12月に設立した共同持株会社「株式会社やまびこ」が、2009年10月に両社を吸収合併して事業会社化した会社である。

株式会社共立は、1947年、東京で創立された株式会社共立農機を前身とし、農業機械事業において「国産初のスピードスプレーヤ(農薬散布機)」、小型屋外作業機械事業において「国内初の背負動力刈払機」、「世界初の手持ち式パワーブロワ」を開発するなど、両事業におけるリーディング企業であった。また、創業時より小型屋外作業機械のエンジン自社開発に注力し、合併前の2008年のエンジン累計生産台数は4,000万台に上っていた。

一方、新ダイワ工業株式会社は1952年、広島で創業した浅本精機製作所が前身。小型屋外作業機械事業において「国産初の電動チェンソー」を開発したほか、一般産業用機械事業においてエンジン発電機、エンジン溶接機などを製造販売。また、世界初の混合燃料使用の4サイクルエンジンを開発するなど、高い技術開発力を特長としていた。

1990年代後半に入り温室効果ガスを要因とする地球温暖化問題への関心が高まるとともに、欧米、特にアメリカでエンジンの排出ガス規制が強化され、新基準をクリアするための研究開発費が増大。これに対応できない中堅・小型企業を対象として小型屋外作業機械市場において2000年代に入りグローバル規模での業界再編が急速に進行した。加えて、新興国企業による安値攻勢や顧客ニーズの多様化などにより、事業環境は一段と不透明なものとなっていた。
そうした中、激化する競争を勝ち抜くためには一段と企業体力を強化する必要があるとの判断から、両社は将来的な経営統合を前提として2007年5月に業務・資本提携契約を締結。
開発、生産、物流、販売、管理を始めとした全ての事業における効率化と拡充を目指して2008年12月共同持株会社、株式会社やまびこを設立し、2009年10月、株式会社やまびこが両社を吸収合併し事業会社化した。

社名「やまびこ」は、山の神「山彦」を由来としており、「人と自然と未来をつなぐ」を経営理念とし、自然と環境の育成・整備への貢献を掲げる同社の姿勢を表している。

【1-2 経営理念など】

やまびこグループの理念は「エッセンス」、「存在意義」、「行動指針」という3つの要素で構成されている。
「エッセンス」は、「存在意義」と「行動指針」を凝縮した、やまびこグループとして目指すべき企業の姿・企業活動の本質を表現したもの。
「存在意義」は、やまびこグループが社会の中で担うべき役割と責任を宣言し、約束するもの。
「行動指針」は、やまびこグループの社員一人ひとりが業務に臨むべき姿勢をまとめたもの。

これに加えて、行動指針を補完し、具体的な対応方法を示した14項目からなる行動指針細目を制定し、企業理念に則った事業活動が行われるように努めている。
永尾社長はこれら「エッセンス」、「存在意義」、「行動指針」を念頭に置いたメッセージを日頃から様々な機会を捉えて発信している。また各部門・部署ごとに実際の行動に結び付けるよう日々取り組んでいる。

≪永尾 慶昭社長プロフィール≫

永尾 慶昭社長は1953年2月生まれの64歳。子供の頃からプラモデルなど「モノ作り」が大好きだった永尾社長は、中学に入ると所謂「アメ車」を始めとした自動車に大きな関心を持ち始め、大学院ではエンジンを研究する「燃焼工学」を専攻。1978年4月に(株)共立に入社した。
入社後は研究部に配属。自ら関心のある課題を見つけて自由に取組むという社風もあり、チェンソーを中心に
様々なエンジンの研究、開発に携わった。また、研究室内で研究に没頭するのではなく、山へ出かけユーザーである樵(きこり)の方々からの製品評価や要望などをきめ細かく汲み取る事にも力を注いだという。

ほぼ技術畑を一貫して歩んできた後、2006年2月に米国の子会社エコー・インコーポレイテッドの代表取締役に就任。米国における排出ガス規制の状況とその対応、そうした中でユーザーの満足度をどうすれば高められるかに注力。また共立、新ダイワ工業の合併時には現地販売ルートの整理をスピーディーかつドラスティックに進めるなど、ご自身でも「仕事の幅が広がる重要なステップであった。」と振り返る。
やまびこ設立後、取締役兼執行役員産業機械本部長として、新ダイワ工業の本社所在地である広島で統合後のスムーズな一体化にも注力。2011年6月、(株)やまびこの代表取締役社長に就任した。

【1-3 市場環境】

小型屋外作業機械市場についての明確な統計は存在していないが、米国を始めとする北米市場が最大市場とされ、ついで欧州地域が続いており、日本は100万台という統計がある。
同社の収益動向に影響を与える関連指標としては、海外市場においては「住宅着工件数」、「穀物価格」、「原油価格」等、国内市場においては「米価」等が挙げられる。

小型屋外作業機械でグローバルに展開するメーカーとしては、欧州(ドイツ・スウェーデン)に2社存在すると会社側では認識している。

【1-4 事業内容】
1.セグメント

小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業の3事業を展開している。
報告セグメントは、「小型屋外作業機械・農業用管理機械」、「一般産業用機械」、「その他」の3セグメント。
(売上高については、小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業、その他の4つを開示している。)

2017年12月期より下記の様に事業セグメントの変更を行うこととした。

従来「その他」には、3事業で供給している機械のアクセサリーや部品を含めていたが、関連する製品と同じ事業セグメントに振り分ける。
従来、「農業用管理機械事業」に含めていたロボット芝刈機を「小型屋外作業機械」に変更する。
今期より「その他」は、3事業に含まれない商品などとなる。
『小型屋外作業機械事業』

「手で持つ」または「背負って」使用する小型エンジンを搭載した山林・緑地管理用などの機械の製造・販売を行っている。
主要製品は、チェンソー、刈払機、パワーブロワ、ヘッジトリマーなど。

長年をかけて蓄積してきたノウハウや顧客ニーズにきめ細かく対応する高い開発力をベースに、高性能・高耐久・高品質エンジンを産み出し続けている。

(ガソリンエンジンの仕組み)

小型屋外作業機械のチェンソーや刈払機などの動力には主に2ストロークガソリンエンジンが用いられている。
後述するように、同社のエンジン開発能力の高さは最も重要な特長・強みの1つとなっている。
ガソリンエンジンの仕組みおよびエンジンの種類による特長を知っておくことは同社事業を理解する上でも有用なので以下簡単に解説する。

ガソリンエンジンとは、基本的に以下の4つのステップを経てガソリンが燃焼する力でピストンを押し下げて動力を発生させるもの。

ピストンの往復運動は、クランクシャフトと呼ばれる部品によって回転運動に変換され、自動車の車軸やチェンソーの回転軸を回転させる。

この4つのステップ「1周期」をピストンの往復運動何回で完結するかによって、ガソリンエンジンは2ストローク・エンジンと4ストローク・エンジンの2つに概ね大別される。

「2ストローク・エンジン」

2つのストロークで1周期を完結させる。すなわち、「ピストン1往復、クランクシャフト1回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「吸入」と「圧縮」を行う。
2回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「膨張」によりピストンが下降し、その後半で「排気」を行う。

「4ストローク・エンジン」

4つのストロークで1周期を完結させる。「ピストン2往復、クランクシャフト2回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「吸入」を行う。
2回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「圧縮」を行う。
3回目のストローク(ピストンの下降):「膨張」によりピストンが急速に押し下げられる。
4回目のストローク(ピストンの上昇):燃焼済のガスが「排気」される。

4ストローク・エンジンは、吸気と排気をコントロールしやすいといったメリットがある反面、吸・排気バルブをシリンダーヘッド部に設置するため、シリンダーの胴体に設置されるポートから吸・排気を行う2ストロークに比べ構造が複雑になる。また、そのため重量も重くなる。

これに対し、2ストローク・エンジンは、混合気の吹き抜けやピストン運動を円滑にするために用いられるエンジンオイルが燃料と一緒に燃焼する割合が4ストローク・エンジンに比べると多いため、排気ガス中に有害物質が多くなるといった面があるものの、構造がシンプルで部品数も少ないため小型・軽量化が可能で、同じ理由からオーバーホールも容易といったメリットがあり、小型屋外作業機械には2ストローク・エンジンが最適である。

『農業用管理機械事業』

国内向けに農薬散布のための機械である防除機械、北米向け農作物収穫機械などの製造・販売を行っている。
主要製品は、防除機(スピードスプレーヤ、乗用管理機、動力噴霧機)、畦草刈機、大豆収穫機など。
2014年11月に、業務用ロボット芝刈機を開発、製造、販売するベルギーのベンチャー企業「ベルロボティクス社」を買収した。(2017年1月、欧州における販売強化を目的としてベルロボティクス社は「やまびこヨーロッパ」へ商号変更。)

共立が長年にわたって蓄積してきた送風技術、噴霧技術、ポンプ技術、機器の軽量化や小型化等が同事業における技術的な強みである。

『一般産業用機械事業』

建設・土木・鉄工用機械の製造・販売を行っている。
主要製品は発電機、溶接機、投光機、切断機、高圧洗浄機など。

新ダイワ工業が創業時から蓄積してきたAC(交流)モータ開発技術を進化、発展させた発電体設計技術や、電子制御技術、防音技術などが同事業における技術的な強みである。

(アクセサリーや部品)

各種機械用のアクセサリーやアフターサービス用部品の製造・販売も行っている。高収益性が特長。

2.ブランド

2社の統合によって設立された同社だが、両社製品は長年にわたり日本およびグローバルで認知されているため、ブランド名はそのまま、KIORITZ、Shindaiwa、ECHOの3ブランドを展開している。
更なるブランド価値の向上を目指し、積極的なマーケティング投資、新しい販売ルートの開拓を進めている。

3.開発体制
各事業では以下のような重点課題を設定し、開発に取り組んでいる。

排出ガス規制は今後もさらに厳しくなることが予想されるため、最重点課題である。
この他、電子制御分野において制御技術の研究を進めている。

4.生産体制

国内3事業所(横須賀、盛岡、広島)と4社の生産関連子会社を、海外では、アメリカ、ベルギー、中国、ベトナムに合計7社の生産関連子会社を有している。

5.販売ルート&販売方法

世界90か国以上、約2万8千店舗に同社製品は供給されている。
全売上高の6割以上が海外売上となっている。

<国内市場>

7社の販売子会社が販売代理店、全農(全国農業協同組合連合会)、ホームセンター、建設機械レンタル会社等に販売し、エンドユーザーである農林業家、建設・土木・鉄工業者、緑地管理業者などに供給される。

販売店や代理店と協力しながら展示会を各地で実施し、実演や試乗などを通じて販売に繋げている。
また、販売店と同行してエンドユーザーを訪問。ユーザーのニーズを汲み取ったうえで製品開発に活かしている。

<北米市場>

子会社エコー・インコーポレイテッドグループがホームデポ(※)や代理店に販売し、エンドユーザーである緑地管理業者、ホームオーナー、農林業家、建設・土木業者などに供給される。

※ホームデポ(The Home Depot)
世界最大の住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン。1978年設立。2015年の売上高885億ドル(約9.7兆円)、純利益70億ドル(約7,700億円)。米国、カナダ、メキシコに2,274店舗を有する。NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場。(同社WEBSITEより抜粋)

ホームデポでは、GOOD、BETTER、BESTの区分で品質ごとに分類されており、高品質なBESTとして製品を供給しているのは同社のみである。これが、同社製品が北米市場で高く評価されている証左の一つとなっている。

中南米市場においては子会社エコー・インコーポレイテッドが各国代理店に販売し、その後販売店を通じてエンドユーザーに供給される。
欧州・アジア・その他地域では、やまびこが各国代理店に販売している。

海外の販売店では、ブランド別に製品を展示しており、エンドユーザーのニーズを聞きながら販売員が対面販売を行っている。
またホームセンターでは、各機種群別・価格別に製品が展示されており、エンドユーザーはニーズや予算、CM等で得たイメージを基に購入する。

【1-5 特長と強み】
①独自の生産技術力・一貫生産能力

同社最大の特長・強みは「独自の生産技術力・一貫生産能力」である。
中心事業である小型屋外作業機械に搭載される2ストローク・エンジンに関しては、開発、材料となるアルミの調達、鋳造、部品製造、加工、組立てまで全て自社で一貫して生産する体制をとっているが、世界的に見ても他に例がないという。なお、農業用管理機械事業と一般産業用機械事業の製品も動力源はエンジンであるが、主に外部調達をしている。

また、様々な課題を鉄めっき、放電加工などの自社独自技術で解決し、製品の品質向上や生産能力向上に結び付けている。
具体的には下記のような技術を確立している。

<具体例①:鉄めっき>

めっきとは金属などの材料の表面に金属の薄膜を被覆した表面処理のこと。エンジン製造においては、ピストンとの摩擦による摩耗防止のためシリンダー内部にめっきを施す必要がある。
従来は耐久性やコストからクロムめっきが一般的であったが、環境への悪影響、生産効率の低さといった問題点から、他の材料によるめっき加工が求められてきた。

同社では、環境負荷低減の観点などから1978年より「鉄めっき」に取り組んでいる。
当初日産能力は数百個であったが生産性向上、めっき精度の向上、環境負荷削減などを進めた結果、現在では仕上げ加工が不要で環境負荷を大幅に削減した鉄めっき技術を確立することが出来、日産能力も数千個と大幅に拡大させることができた。
現在鉄めっき関連特許を保有している。

<具体例②:放電加工>

前述の様に、2ストローク・エンジンは、部品数が少なく構造も4ストローク・エンジンに比べシンプルであるため、「手で持つ」、「背負う」小型屋外作業機械には最適であるが、混合ガスの一部が排気されるという側面があり、世界的に強化が進む排出ガス規制に対応するためには、混合ガスの流れをコントロールして効率よく燃焼させることが課題であった。
そのためには、シリンダー内面形状を変更(混合ガス通路とシリンダー内面の間に壁を設ける)する必要があり、生産方法の検討が必要となった。

ダイカスト鋳造(※)により「壁」を形成する事は可能だったが、その壁に混合ガスを燃焼室に導くための横穴を開ける必要があり、ダイカスト鋳造では横穴を開ける事は出来ず、また狭い箇所であるため切削加工も困難であった。

そこで同社では、ダイカスト鋳造の特長を活かしながら切削加工できない形状を加工するために「放電加工(※)」を採用することとした。
放電加工は複雑な形状も加工が可能である一方、加工時間が長く電極消耗が多いなどコスト面での課題があった。
同社は量産化に向け加工条件の研究、特殊電極形状の設計などに取り組み、加工時間の短縮、省人化、電極の低コスト化、能率向上など量産化に成功した。
放電加工関連特許保有件数は3件であり、他社には真似のできない同社独自技術を確立した。

(※)ダイカスト鋳造
金型鋳造法のひとつで、金型に溶融した金属を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間に大量に生産する鋳造方式のことで、薄肉化、低コストを可能にする。(※)放電加工
電極と非加工物との間に短い周期で繰り返される放電によって、非加工物表面の一部を除去する機械加工の方法。極めて硬い鋼鉄などに複雑な輪郭を切り出すことができる。

同社はこれらの技術を始めとした「高度なモノ作り力」によって、排出ガス規制対応以外にも、軽量化、高耐久性、更なるコスト削減など様々なニーズに対応し、「排出ガス規制対応・軽量化・高耐久性2ストローク・エンジン」の開発・量産に成功している。
これらの課題に対応できず市場から退出を余儀なくされた企業も世界的に多数ある中で、同社はトップクラスのメーカーとして更なる成長を続けている。

②各事業固有の研究・開発力

環境問題の対応力は高く、同社エンジンに対する米国EPA(Environmental Protection Agency、環境保護庁)によるエンジン認証数は世界でもトップクラスとなっている。
また、小型屋外作業機械に限らず、農業用管理機械、一般産業用機械においても固有の研究開発力を有している。
共立、新ダイワ工業それぞれが長い年月を経て培った技術力をベースに、更に磨きをかけている。

③豊富なラインアップ・販売ネットワークの拡大

様々な顧客ニーズに対応し、3事業それぞれにおいて豊富なラインアップを有している。
また、現在世界90カ国以上、約2万8千店舗に同社製品が供給されている。
2社の合併によって、ラインアップおよび販売ネットワークは更に拡充された。

④充実したテクニカルサポート体制

製品に対する信頼性を高め、代理店や販売店との関係をより強固なものとするためにテクニカルサポート体制の充実にも注力している。
2015年4月から2017年3月の2年間に、15か国で115回に及ぶサービススクールを実施した。

⑤高い製品シェア

上記①から④の特長・強みを総合的に発揮してグローバルで高い競争力を実現しており、小型屋外作業機械事業では最大市場の北米で上位、日本においては30%以上のシェアを持つNo.1企業である。

ROEは大きく低下したが、これは、製品リコールに伴う製品保証引当金繰入額5億円および厚生年金基金の解散に伴う損失引当金繰入額33億円を特別損失に計上したため。
中期経営計画では2019年12月期 10%以上のROEを目標としている。

2017年3月期決算概要
減収・営業増益

売上高は前期比1.2%減の1,119億円。国内は農機の各種拡販策が奏功して好調。産機も増収。海外は、小型屋外作業機械が北米の景気拡大や拡販策の奏功、西欧の新製品効果や中国の販路開拓などにより販売数量を伸ばしたが、円高の影響により減収となった。
営業利益は同13.2%増の76億円。実質増収効果に加え、生産量の拡大による粗利率の改善、未実現利益の減少が寄与した。経常利益は同13.8%増の72億円。為替差損は拡大したが増益を確保。営業利益、経常利益共に過去最高を更新した。
リコール発生による製品保証引当金繰入額5億円と、厚生年金基金解散に伴う損失引当金繰入額33億円を特別損失に計上したことなどから、当期純利益は同49.5%減の23億円となった。

◎小型屋外作業機械

売上高は前期比2.1%減の640億円。
(国内)
主力の刈払機はホームセンタールートの開拓が奏功して好調に推移したものの、チェンソーが市況の伸び悩みの影響を受けて減少したことなどから前期並み。

(米州)
円高により円換算後の売上高は減収となったが、中南米は依然低迷したものの、主力の北米市場が期間限定の価格政策や積極的な広告宣伝などに加え、販路拡大にも取り組んだことなどにより販売数量を伸ばすことができた。

(米州以外の海外)
欧州は、代理店に対する積極的なプロモーションの展開に加え、チェンソーや刈払機の新製品投入により大きく伸長した。中国市場における販路開拓の成果などもあり、円高にもかかわらず増収となった。

◎農業用管理機械

売上高は前期比1.3%減の182億円。
(国内)
前期の排出ガス規制特需の反動を受けたスピードスプレーヤが落ち込んだものの、近年、需要が拡大している畦草刈機やモアが伸長したことに加え、高所作業機やチッパーシュレッダーなども果樹農家を中心に好調に推移して増収となった。

(海外)
長引く穀物価格低迷の影響により引き続き主力の大型収穫機の販売が減少したことに加え、円高により大幅な減収となった。

◎一般産業用機械

売上高は前期比0.9%増の100億円。
(国内)
溶接機が減少したものの、主力の発電機は国が推進するインフラ整備事業や建機レンタルルートで伸ばし、前期低迷した投光機も回復して増収となった。

(海外)
資源価格低迷の影響などにより北米や豪州が振るわずに減収となった。

◎その他

売上高は前期比0.5%増の196億円。
(国内)
各種アクセサリー拡販策を積極的に展開して増収となった。

(海外)
主力の北米や欧州が順調な天候を背景に販売数量を伸ばしたものの、為替の影響により減収となった。

売上債権の増加等で流動資産は前期末比16億58百万円増加。投資その他の資産の増加で、固定資産は同22億46百万円増加し、資産合計は同39億3百万円増加の953億43百万円となった。
仕入債務の増加、短期借入金の減少で流動負債はほぼ変わらず。厚生年金基金解散損失引当金28億円を計上したため固定負債は同23億89百万円増加し、負債合計は同25億2百万円増加の478億59百万円となった。
利益剰余金が増加し純資産は同14億2百万円増加し474億84百万円となった。この結果自己資本比率は前期末より0.5%低下し49.8%となった。
長短借入金残高は同 30億61百万円減少し183億53百万円となった。

税金等調整前四半期純利益の減少、売上債権の増加などで営業CFのプラス幅は縮小。
有形および無形固定資産の取得による支出の減少で投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFのプラス幅は縮小した。
財務CFはほぼ変わらず。
キャッシュポジションは低下した。

(4)トピックス
◎中国に関連会社を設立

2017年5月、中国(江蘇省蘇州)に関連会社を設立すると発表した。
中国国内向け農業用管理機械の生産拠点および小型屋外作業機械の中国国内販売の物流拠点。やまびこの100%子会社である愛可機械が100%出資する。
設立、稼働開始はそれぞれ2017年7月1日、2017年9月1日を予定している。

2017年12月期業績予想
実質増収・最終増益

今期より12月決算となるため、前期実績との比較はあくまで参考情報となる。
売上高は前期比5.1%増の1,030億円。
国内は引き続き堅調。北米は小型屋外作業機械に加え、販路の拡大やシェールガス関連でやや回復の兆しが見られることなどから一般産業用機械の販売拡大を見込んでいる。欧州もプロモーション強化により増収を計画している。
営業利益は同21.0%減少の63億円。
増収効果、円安効果はあるものの、変則決算に伴う一時的費用増や販社統合費用など販管費増を吸収できず減益を予想している。前期計上の特別損失が無くなり、最終利益は大幅増益の見込。
為替の前提は、同社1USD=110円(前期調整後実績は107円)、米国子会社111円(同109円)、1ユーロ=120円(同119円)。
9ヶ月決算ながら配当は前期より5円増配の30円/株を予定。予想配当性向は28.2%。

「中期経営計画2019」について

2017年3月期を最終年度とする「中期経営計画2017」の終了に伴い、新たに2019年12月期を最終年度とする「中期経営計画2019」を策定した。

(1)中期経営計画2017の振り返り

前中期経営計画期間(2015年3月期~2017年3月期)を「攻めの3ヶ年」と位置付け、基本3事業の拡大、強固な経営基盤の構築を目指し、具体的には主として下記の施策を実行した。

積極的なマーケティング・開発投資
設備投資の着実な実行
ロボット事業の買収
やまびこヨーロッパ、やまびこジャパンの設立

その結果、主に原油安や穀物価格の下落など、予想外の経済環境悪化の影響により、ロシア市場や北米農業用管理機械、一般産業用機械事業が落ち込んだものの、主力の小型屋外作業機械事業が北米・西欧におけるマーケティング戦略が奏功して、販売数量が拡大。国内売上も販路拡大などで堅調に推移した。
損益面では、生産量増加に伴う生産性の向上などにより営業利益は4期連続で過去最高を達成することができた。
このように、基本戦略は正しかったが市場環境の大きな変化に対応しきれなかったことで計画を達成することができなかったと会社側は総括している。

(2)「中期経営計画2019」概要
①基本方針・ビジョン

中長期的にどのような会社を目指していくべきか、より具体的なイメージを共有するために2つのビジョンを掲げた。

また、「中期経営計画2019」を前中期経営計画期間で実行した積極投資の効果を具現化する期間と位置付けている。

②重点施策

上記、基本方針に掲げたビジョンの実現に向けて、以下の項目を重点施策として取り組んでいく。

(北米)
引き続きMLB(Major League Baseball)や、MLS(Major League Soccer)のスタジアムなどにおける看板広告によるホームオーナー向け市場の深耕とともに、新たなイメージCMを製作・放映し、プロ向けプロモーションも展開する。
また収益性の高いアクセサリーの拡販、販売ネットワークの活用にも取組む。

(欧州)
2017年1月に販売機能強化に合わせて商号変更を行った「やまびこヨーロッパ」を本格稼働させる。
主な施策は、主要代理店の成長戦略の実現、ロボット芝刈機の拡販、デジタルマーケティングの強化。
ロボット芝刈機に関しては、より進化した新型芝刈機の販売を開始する。
ロボット芝刈機市場(出荷台数)は年平均成長率20%の拡大が予想される成長市場。現在はほぼ欧州のみという状況だが、同社では米国でもビジネスチャンスは大きいと見ており、積極的な市場開拓を進める。

中国を始めとしたアジアで大幅な伸長を目指す。

米国を中心に海外売上の拡大を図る。

設備投資、研究開発投資共に継続的、積極的に実行する。17/12期の設備投資には、米国子会社の本社増改築費用約12億円を含んでいる。

⑤株主還元について

引き続き安定的に配当を継続することに加え、連結財政状態が改善していることから前中計では「25%を目安に」としていた連結配当性向目標を、今中計より「25%以上」へ変更することとした。

永尾社長に聞く

永尾社長に前中計の振り返り、新中計のポイント、投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「中期経営計画2017を振り返り、出来た事、課題として残った事は何であったとお考えでしょうか?」
A:「売上、利益共に当初計画を下回ってしまったことについては、「不甲斐無い」限りだが、各施策については次期に繋がる手を着実に打つことができた。」

中計策定時には想定していなかったロシア問題や原油価格急落など外部要因に加え、米国の新販路開拓が進まなかった事、新製品投入の遅れなど内部要因もあり、売上、利益共に当初計画を下回ってしまったことについては、「不甲斐無い」というのが正直な気持ちだ。

ただ、主力の小型屋外作業機械事業は、米国市場や西欧市場ではマーケティング戦略の効果なども現れ、外貨ベースでは増収を確保することができたし、国内も堅調に推移した。
ヨーロッパの拠点設立、国内販社の統合など販売力強化のための施策に加え、自動化投資、生産ラインの短縮化など、増産、製品競争力強化、生産効率化のための高水準の投資も計画通り行うことができた。
またPDCAサイクルをしっかりと回す仕組みも出来上がり、経営基盤の強化も着実に進めることができた。

各施策については次期に繋がる手を着実に打つことができたと考えている。

Q:「新中期経営計画2019では2つのビジョンを掲げています。その背景やビジョンに込めた想いをお聞かせください。」
A:「数字も重要だが、「会社としてどういう姿でありたいか」を打ち出すことがより重要と考えた。持続的な成長を実現するための変革と多様性の意義を強調したいと考えた。」

今回の新中計では、従来には無かった「2つのビジョン」を掲げることとした。

これまでの中計は、右肩上がりの環境の中でどちらかと言うと数字重視の中計だったが、経営陣の議論の中で、目標数字も重要だが、多くのステークホルダーとの信頼関係の下で持続的な成長を目指す事が求められる時代に、数字の前にそもそも「会社としてどういう姿でありたいか、あるべきか」を打ち出すことが必要ではないかという結論に至った。

当社は以前から品質重視を掲げ、お客様の期待を裏切らないことを第一義として活動してきた。正直さを尊び、もちろん不正は行わない。こうした点を改めて確認・自覚するための一つ目のビジョンが、「やまびこサスティナビリティ」だ。

しかし、実際に適切な企業成長を持続することができなければ、全てのステークホルダーに満足して頂くことはできない。ではどうやって持続的な成長を遂げるのか?

そこで2つ目に掲げたのが「やまびこイノベーション&ダイバーシティ」だ。
これまで当社は国内、米国でもシェア向上の実績を積み上げ、比較的安定的な成長を遂げてきたが、その成功体験に安住し、明日も今日までの延長線上という認識で生きているようでは、未来は無い。
製品開発における革新性を求めるだけではなく、社員各自の仕事のやり方一つにしてもこれまでとは異なったアプローチを追求することが重要であり、イノベーションは私が最も強調したいキーワードだ。
また、ごく限られた人やグループの発想に縛られるのではなく、多様な価値観を尊重・重視すること、ダイバーシティも持続的成長には欠かせない。
そうした意味では、コーポレートガバナンスの側面において社外取締役の視点、意見が刺激となって経営陣のガバナンスに対する意識が高まっていることなどはダイバーシティの好事例といえるだろう。

こうしたビジョンは、ただ掲げるだけではなく、会社の隅々まで浸透させることが重要だ。
そのために、経営からは機会があるたびに繰り返しメッセージを発信することに加え、社員間でも自分たちのあるべき姿やありたい姿について議論する場を設け、2つのビジョンの具体的なイメージの共有、真の理解に繋げていく。

Q:「では新中計の重点施策の中から特に注力する部分などをお聞かせください。」
A:「これまでに行ってきた投資を確実に結実させる3年間だ。米国市場の更なる深耕、ロボット芝刈機の本格離陸、開発力の強化などに注力する。」

これまでの3年間で行ってきた投資を確実に結実させる3年間と考えている。

まず米国市場における好調な小型屋外作業機械事業だが、これまではホームオーナーを対象に当社の認知度およびブランド価値向上のための広告宣伝活動を中心に展開してきた。これが奏功し、代理店ルート、ホームデポルート共に売上高は着実に拡大している。
今後もホームオーナー市場の深耕を進めるが、同時にプロ向け市場の販売を強化する。
米国市場で当社製品がシェアを拡大することができた大きな要因としては、我々の競争優位性の一つである品質の高さがある。新たなイメージCMなどにより、当社の高い品質をプロ向けにもさらに強調して訴求していく。
また、米国市場では収益性の高いアクセサリや部品を更に拡販するため、新商品の投入など取組みを強化する。

前中計で行った投資を結実させるという点では、最も注力する分野の一つが「ロボット芝刈機」の本格離陸だ。
現在既に第一世代を販売し、ある程度の売上が立っているが、グローバル市場を対象に本格的に普及させるためには各国によって異なる規制をクリアするなどの課題も残っている。
これらの課題を一つずつ解決し、次世代型ロボット芝刈機をできる限り早期にリリースする。
エンジンに対する環境規制が厳しいヨーロッパ市場はもちろんだが、フットボールや野球のスタジアムを多数有する米国は現時点ではロボット芝刈機はほとんど普及しておらず、潜在的な巨大市場として極めて魅力的だ。

加えて、当社の生命線である製品開発力のブラッシュアップにも積極的に取組む。
特にエンジンについては、環境問題から自動車業界に見られるようなエンジン駆動から電動化への移行、といった大きな流れについては注視しているが、当社が開発している小型のエンジン搭載製品は、世界的に見れば各国のお客様が望んでいる製品をタイムリーにリリースできればまだまだ伸ばすことができる余地は大きい。
3Dプリンタの活用、先進的なCADや解析技術の導入、適切な人材の採用・投入などによるリードタイム短縮を通じ、いかにしてスピード感を持って製品開発を推進するかは、この中期計画で最も強調すべきポイントの一つであると考えている。

Q:「最後に株主や投資家の皆さんにメッセージをお願いします。」
A:「全てのステークホルダーにとって魅力ある会社を目指す。中長期の視点で応援していただきたい。」

当社は2つのビジョンに掲げたように、信頼される会社を目指し、その実現に向けて一層のイノベーションに注力する。
皆様のご期待にお応えすべく、持続的で着実な売上成長と収益性の改善を通じて、全てのステークホルダーにとって魅力ある会社を目指す所存であり、中長期の視点で是非応援していただきたい。

今後の注目点
残念ながら17年3月期実績は前中計で掲げた売上、利益目標に対しては未達で終わったが、小型屋外作業機械の米国での伸長など、十分な手応えのあった3か年であったと言えよう。
これを受けた新中計では、米国市場の深耕、ロボット芝刈機の本格離陸などによるトップラインの伸びももちろんだが、営業利益率7%という収益性改善に向けた取り組みにも注目したい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>

2017年6月29日開催予定の第9回定時株主総会において、社外取締役を1名増員する議案を提出している。

◎コーポレートガバナンス報告書

同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年6月30日に提出している。

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