(6498:東証1部) キッツ 中期計画の前倒しでの達成目指す

2017/05/31

KITZ

今回のポイント
・17/3期は前期比2.7%の減収、同23.2%の営業増益。バルブ事業の収益性が改善した事に加え、伸銅品事業が黒字転換。利益率の改善でROEも向上した。・期末配当は7円を予定しており、上期末配当と合わせて年13円となる予定。また、上期(2,298.5千株、11億96百万円)と期末から18/3期期初にかけて(4,548千株、34億94百万円)の2度、自己株式の取得を実施した。この結果、連結配当性向は25.3%、自己株式の取得と合わせた総還元性向は92.5%。

・18/3期予想は前期比2.5%の増収、12.0%の営業増益。中期経営計画の営業利益計画の1年前倒しでの達成を目指す。配当は上期末7円、期末9円の年16円を予定しており3円の増配(連結配当性向25.4%)。引き続き、自己株式の取得にも積極的に取り組んでいく考え。

会社概要

バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入る。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社32社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。

【企業理念  -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】

「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。

キッツ宣言
キッツは、
創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ’ Statement of Corporate Mission
To contribute to the global prosperity,
KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value
by offering originality and quality
in all products and services.
行動指針(Action Guide)
Do it KITZ Way
・ Do it True(誠実・真実)
・ Do it Now(スピード・タイムリー)
・ Do it New(創造力・チャレンジ)
Do it True
人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。
Do it Now
情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。
Do it New
変化に対応するために従来の発想から抜出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
【事業セグメントの概要】

事業は、バルブ事業、伸銅品事業及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、17/3期の売上構成比は、それぞれ80%、17%、3%。

バルブ事業

バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は、鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブと言った主力商品で高い国内シェアを有する。
販売では、国内において、主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外においては、インド、U.A.E.に駐在員事務所を置く他、中国、韓国、シンガポール、タイ、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内9拠点の他、海外に12拠点(中国、台湾、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジル)を展開し、グローバルコスト及び最適地生産の実現に向けた生産ネットワークを構築している。

伸銅品事業

伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。
キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。

その他

子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。

*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

一時的な要因でROEが高くなった15/3期を除くと、14/3期以降、継続的にROEが改善している。会社資料によると、18/3期は8.5%に上昇する見込み。
尚、15/3期はフィットネス事業を手掛ける(株)キッツウェルネスの株式売却益21億56百万円を特別利益に計上した事で当期純利益が前期比93.1%増加したため、一時的にROEが高くなった。

2017年3月期決算
前期比2.7%の減収、同23.2%の営業増益

売上高は前期比2.7%減の1,141億01百万円。原材料相場の下落に伴う販売価格の低下及び販売量の減少で伸銅品事業の売上が同6.0%減少したものの、主力のバルブ事業は、原油価格低迷による設備投資の抑制や円高の影響等による海外市場向けの減少を国内市場向けの増加でカバーして前期並みの売上(同1.9%の減収)を確保した。

利益面では、原価低減等によるバルブ事業の収益性改善と銅相場の安定等による伸銅品事業の損益改善で、営業利益が89億29百万円と同23.2%増加。為替差損の19百万円の計上(前期は差益82百万円を計上)等はあったものの、経常利益も同20.5%増加した。
特別損益については、コーポレートガバナンス・コード重視の観点から保有上場株式の一部を売却し、投資有価証券売却益20億97百万円を計上したものの、財務内容の健全化を目的として本社不動産(簿価約47億円)に信託受益権を設定し、その譲渡を行った事等による減損損失37億56百万円を計上した。
尚、14/3期に計上した移転価格税制に基づく調査による更正額7億16百万円について、日米相互協議の終了を受け、6億22百万円の還付を受け、過年度法人税等として計上した。

バルブ事業
国内(市場別)

前期比12億24百万円(同2.1%)増の586億49百万円。建築設備向けが比較的堅調に推移したが、工業用バルブ市場は市場環境に大きな変化は見られず、下期は停滞気味。水市場向けは、自治体の予算執行遅れの他、季節要因により4Qは減少。半導体製造装置向けは、装置メーカーの設備投資が好調を維持し、計画比で大きく上振れした。

海外(エリア別)

前期比30億37百万円(8.4%)減の331億17百万円(減収額30億37百万円のうち25億83百万円は為替の影響によるもの)。アセアンは、主力のタイ・インドネシアが停滞。韓国は半導体製造装置向けが引き続き好調。中国は工業用バルブが低迷したが、データセンター向け等で汎用バルブが好調。アジア合計では24億円の減収となった。北米は、原油安の影響で引き続き低調。ブラジルMGAを含めた米州全体でも7億円の減収。

営業利益

売上高がわずかに減少した事もあり、数量・構成差等の減益要因が発生した他、人件費等の費用増もあったが、原価低減効果が大きかった事に加え、原材料価格が比較的低位で推移した他、円高で海外子会社の外貨建て経費も目減りした。

伸銅品事業

17/3期の国内黄銅棒市場は前期比5.2%増の15,765トン/月。同社においては、売価に影響を与える銅相場が対前期比で下落したことに加え、販売重量が前年同期比0.9%減少したため、売上高が193億33百万円と前期比12億24百万円(6.0%)減少した。利益面では、銅相場が安定して推移し一定の利幅を確保できた事に加え、生産性の向上もあり、8億31百万円の営業利益を確保した(前期は16百万円の損失)。

上記の他、改修工事に伴うホテル紅やの一部フロアの稼働日数の減少や夏季の天候不順等による集客不振等から、その他の売上高・営業利益が減少した。

借方では、本社不動産の譲渡で有形固定資産が、投資有価証券の一部売却で投資その他が、それぞれ減少する一方、IT投資で無形固定資産が増加。貸方では、自己株式の取得や為替換算調整勘定の減少で純資産が減少した。自己資本比率61.9%(前期末62.9%)、投下資本利益率も前期の5.2%から7.2%に改善した。

税金等調整前当期純利益、減価償却費の他、たな卸資産の減少等で前期を上回る営業CFを確保する一方、有形固定資産の売却による収入の増加と前期に実施したM&Aによる子会社株式の取得がなくなったこともあり、前期は1億71百万円のマイナスだったフリーCFが108億38百万円の黒字に転じた。

2018年3月期業績予想
前期比2.5%の増収、同12.0%の営業増益予想

売上高は前期比2.5%増の1,170億円。国内を中心にアジア・米州で増収を見込む。バルブ事業の売上が同2.4%増加する他、銅価格の上昇で伸銅品事業の売上も同3.5%増加する見込み。
営業利益は同12.0%増の100億円。減価償却費や労務費の増加で伸銅品事業の利益が同51.9%減少するものの、原価低減と価格改定(後述)効果等でバルブ事業の利益が同13.6%増加する見込み。

バルブ事業

国内は、価格改定後の新価格の浸透に注力する(4月に発表し、5月出荷分から新価格)。市場別では、建築設備市場向けで東京オリンピック・パラリンピック関連の需要が、下期以降、本格化してくる見込み。19/3期から20/3期にかけてピークを迎えるとみており、需要の着実な刈り取りを図る。工業弁市場向けは、引き続き既設プラントの保守・更新需要が中心となるが、大型の投資案件の増加が見込まれる。半導体市場は当面好調が続くとみているが、下期については減速リスク懸念があり、慎重にみているようだ。
海外は、北米に明るい兆しがあり、年後半からエネルギー関連市場で動きが出てくるとみている。一方、アセアンは、企業の設備投資に目立った動きがなく、厳しい状況が続く見込み。売上拡大に向け、営業拠点の拡大や技術拠点の開設等で体制強化を図る。中国は、工業弁で厳しい状況が続くものの、汎用品を使う建築設備分野は好調が続くとみており、現地法人を活用して拡販を図る。韓国は、半導体市場向けの好調が続く見込み。EPC(エンジニアリング会社案件)の取り込みを図るべく営業を強化する。欧州は設備投資の低迷が続いており、現状では工業弁に需要回復には至らないとの見通し。

利益面では、原材料市況が減益要因となる他、労務費等の費用増も見込まれるが、引き続き原価低減効果が見込める上、売価政策(5月出荷分から新価格)や数量・構成差等が増益要因となる。

伸銅品事業

銅価格の前提は68万円/トン(電気銅建値。前期平均:60.4万円/トン)。黄銅棒の国内需要は前年度比減少を見込んでおり、シェアの維持に注力する。減価償却費や労務費の増加が負担となり減益が予想されるが、減益幅の縮小に向け、生産性向上と高付加価値品の拡販に取り組む。

その他

ホテル事業は客室(10階、11階)リニューアル効果が期待できる中、Web予約の強化、訪日外国人旅行客誘致、及びキャンペーンによる観光客の取り込み等で売上・利益計画の達成を図る。

(3)トピックス
・国内販売価格改定(値上げ)

2017年4月4日に国内販売価格の改定を発表した。5月1日出荷分より新価格が適用される。価格改定の理由として、「需要構造の変化に伴う販売数量の減少と市場価格の下落に加え、17/3期下期からの原材料価格の高騰により、生産性の向上や合理化による企業努力のみでの価格維持が困難な状況になったため」としている。改定の内容(値上げ率)は、青黄銅バルブ10%、鋳鉄バルブ7%、ダクタイル鋳鉄バルブ7%、ステンレスバルブ10~15%、鋳鋼バルブ10%。

・上海開滋国際貿易有限公司常熟分公司の運用開始

中国国内での更なる拡販のために必要な機能(新製品開発、生産、品質保証、技術サービス、物流サービス等)を拡充するため、上海の北西に位置する江蘇省常熟市に複合機能拠点として分公司を設立した。今後、ISO9001や消防認定等、必要な認証を随時取得していく。

・塗装ロボットの導入

伊那工場では、生産性向上と原価低減を目的にライン改造に取り組んでいる。手始めとして取り組んだ組立工程での省人化が進んだ事で、次工程となる塗装工程の改善に取り組んでおり、この一環として2ラインに塗装ロボットを導入した。

中期経営計画

2020年度(21/3期)を最終年度とする長期経営計画「KITZ Global Vision 2020」(11/3期~)の達成に向けて、3ヵ年の中期経営計画が進行中である。中期経営計画は、第1期(11/3期~13/3期)及び第2期(14/3期~16/3期)が終了し、現在は第3期(17/3期~19/3期)が進行中である。

【第3期中期経営計画】
(1)基本方針

・19/3期に営業利益100億円越え、21/3期に最高益更新(営業利益125億円)
・利益とキャッシュ・フロー重視を徹底し、ROE8%以上を目指す
・強みが生かせる重点市場分野に経営資源を集中する
・株主還元の充実

バルブ事業

・重点市場分野を「建築設備」、「石油化学・一般化学」、「クリーンエネルギー(水素、LNG)」に、重点地域を日本+3極2拠点(3極:欧州・米州・アセアン、2拠点:中国・インド。特にアセアン、米州を重視)に、それぞれ絞り込み、特化した新製品投入と複合機能化の推進により、シェアの拡大を目指す。
・縦(機能別組織)と横(全社横断組織)のマトリックス体制により、「組織」のマネジメントと「製品」のマネジメントの両輪を強化し、事業戦略を推進する。
・既存のリソースを無駄なく徹底的に活用し、グローバルで戦えるコストを実現することでさらなる売上利益拡大につなげる。

伸銅品事業

生産性向上による利益の最大化と事業再構築による付加価値の拡大を図る。前者では、ライン再編による加工費低減及び原材料の最適配合による材料費削減を進め、後者では、切削品及び鍛造品のグループ内生産統合・統合効果の実現による事業拡大を図る。

水事業

キッツスマート養殖と水処理技術を活かした事業の育成に取り組む。キッツスマート養殖は世界的な水産市場の需要高まりと天然資源の不足を踏まえた新規事業。一方、水処理技術を活かした事業は、キッツ、東洋バルヴ、清水合金製作所、キッツマイクロフィルター等が連携して、世界的な水需要と環境意識の高まりに応えていく。

【長期経営計画「KITZ Global Vision 2020」】
(1)定性的目標

「真のグローバル企業への進化」をスローガンとして掲げ、企業価値の最大化と強くて良い会社の実現を目指す。

今後の注目点
中期経営計画では、19/3期の計画として売上高1,200億円、営業利益100億円を掲げていたが、営業利益については、1年前倒しで18/3期の達成を狙う。売上高については、Oil&Gas市場における設備投資の減少や中国及び新興国経済の減速等の影響で1,200億円には届かないが、18/3期の目標としていた1,150億円はクリアする。主力の国内バルブ市場では、18/3期下期以降、価格改定効果が本格化してくる事に加え、東京オリンピック・パラリンピックに向けた需要が徐々に顕在化してくる見込み。海外では北米のエネルギー市場に明るい兆しがあり、下期以降の回復が期待されている。また、中国では、工業用バルブ市場が縮小する中で需要を開拓してきた汎用バルブが伸びている。当初は遠い目標のように感じられた21/3期の売上高1,350億円、営業利益125億円が、現実的な数値目標になってきた。
<参考 コーポレートガバナンスについて>

同社はコーポレートガバナンスの強化を重要課題の一つと位置付け、健全で透明性の高い経営を推進していく考え。17/3期は「報酬委員会」や「指名委員会」の設置等、下記4項目の取り組みを実施した。

<17/3期の取り組み>

・取締役(社外取締役を除く)及び執行役員に対する株式報酬制度を導入

・取締役及び監査役を対象として、取締役会の実効性に関するアンケート調査を実施

・調査結果を踏まえて取締役会の実効性向上のための課題について議論

・過半数が社外取締役で構成され、役員報酬に関する方針及びその内容についての審議を行う「報酬委員会」を設置
・過半数が社外取締役で構成され、多角的な観点から取締役、監査役及び執行役員の候補者を選定する「指名委員会」を設置
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