(4955:東証1部) アグロ カネショウ 研究開発投資により減益見通し バリュー株として期待度が高まる

2017/04/12

AGRO

今回のポイント
・農薬専業メーカー。果樹、野菜向けを中心に約90種類の農薬を国内および海外で販売。最終ユーザーである農家との関係を重視し、農家密着型営業で強固な顧客基盤を構築している。主力薬剤の一つであるダニ剤:カネマイトフロアブルは日本だけでなく世界約30か国で農薬登録を取得し販売されている。国内は本社のほか、2事業所、2工場、5支店、10営業所で、海外は2子会社、1支店で構成されている。従業員は連結で242名(いずれも2016年12月月末)。

・2016年12月期の売上高は前期比1.9%減収の143億円。海外売上高が同12.8%減の37億円と振るわなかった。粗利率は0.4%改善したものの、粗利額は減少。一方で研究開発費中心に販管費が同7.4%増加したため、営業利益は同14.8%減の20億円となった。前期にあった為替差益および受取ロイヤリティーが無くなったことなどから経常利益は同20.5%減の21億円。受取補償金が特別利益に計上され、当期純利益は同11.6%減少の12億円となった。計画に対しては、減収だったものの、研究開発費が約1.6億円未消化であったため利益は超過した。

・2017年12月期については小幅増収ながらも、引き続き研究開発投資を積極的に進めるため減益を予想している。前期にあった受取補償金が無くなるため当期純利益は2割の減益となる。配当は中間10円/株、期末12円/株の合計22円/株の予定。予想配当性向は27.6%

・前期に続き、今期も減益となる見通しであるものの、長い期間1倍割れで推移していたPBRは1倍を超し、PERも東証1部平均16.44倍(2017年3月31日)を上回ってきた。株主優待制度の開始も一つの材料だろうが、安定した財務基盤、一般的に日本企業に期待されていると言われている8%を上回るROEなど、バリュー株としての魅力を投資家が見直したという事が言えるだろう。今後は、長期事業計画で掲げる「2025年売上高300億円」に向けた各種施策の進捗状況を注目したい。

会社概要

農薬専業メーカー。果樹、野菜向けを中心に約90種類の農薬を国内および海外で販売。
最終ユーザーの農家との関係を重視し、農家密着型営業で強固な顧客基盤を構築している点が大きな特徴。
また海外展開にも積極的で、主力薬剤の一つであるダニ剤:カネマイトフロアブルは日本だけでなく世界約30か国で農薬登録を取得し販売されている。
国内は本社のほか、2事業所、2工場、5支店、10営業所で、海外は2子会社、1支店で構成されている。従業員は連結で242名(いずれも2016年12月月末)。

同社はこの経営理念「わが信条」を掲げ、全てのステークホルダーに対し、この理念をベースに営業、研修、社会貢献、IR活動など各種活動を行っている。

創業者、櫛引大吉氏は、常々「企業経営は目先の利益だけにとらわれていてはいけない、哲学を持たない会社は繁栄しない。」と唱えてきた。
現在の様に、企業の社会的責任が世の中の注目を集めるよりも以前の1989年1月に、企業の社会的責任そのものを表すとも言える「我が信条」を経営基本理念として採択した。
そして、1993年3月31日の株式公開に伴い、「社会の公器」となったことを契機に、現社長、櫛引博敬が「我が信条」を基本理念はそのままに、よりわかりやすく現在の形に改定した。

【市場環境】
◎市場規模および今後の見通し

日本の農薬の市場規模は2016年度で3,310億円(農薬出荷金額)。
ここ5年を見ると、水稲用、果樹用、野菜・畑作用ともにほぼ横這で推移している。

一方、世界の農薬市場は2015年で約5兆円と国内市場の10倍以上の規模。
2015年は各地域とも前年を下回ったが、アジア、北・中南米を中心に成長を続けている。

国連は、世界の人口は2015年の73億人から2050年には93億人まで急増すると予測している。今後、食糧需要が急拡大する一方で、供給面においては、問題が山積している。
国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、世界の耕地面積は2000年の15.2億haから、2011年には13.9億haへと減少している。水資源不足により灌漑耕地を増やすことが出来ないことがその背景と言われている。
また、バイオ燃料の需要拡大に伴い、本来は食料用耕地であった農地でバイオ燃料用のトウモロコシや大豆が生産されるという競合状況も生まれている。
加えて、地球温暖化が一因ともいわれる干ばつ、高温、冷害等による減収や、本来的に農業に常に付きまとう病害虫や雑草害による減収も深刻な問題となっている。

農薬については様々なメディアなどで、環境や人体に対する影響を懸念する報道がなされるが、一方でその重要性が正しく理解されているとは言い難いのが現状だ。
日本植物防疫協会の調査結果を見ると、農薬を使わずに農作物を生産しようとすると、多くの果樹、野菜で大幅な減収を余儀なくされることがわかる。

このように、世界が食糧危機という事態に着実に近づいている現在、安定した食料生産のための農薬の重要性は益々大きくなっている。
もちろん、人体や環境に対しての安全性は重要な問題であるが、現在の日本の安全基準は極めて高く、適切な方法に従った農薬の使用は、食料の安定生産という観点から不可欠なものと言えよう。

◎再編進む農薬業界

世界の農薬市場は「BIG 6」と呼ばれる大企業の寡占化状態にあったが、2015年12月に業界第4位のデュポン(米)と同第6位のダウ・ケミカルの(米)が統合を発表したほか2016年2月には業界第2位のシンジェンタ(スイス)を中国国有の化学大手「中国化工集団」が430億ドルで買収すると発表。同年9月には同第3位のバイエル(独)がトップのモンサント買収で合意したと発表するなど、集約が進んでいる。

【事業内容】

果樹、野菜向けを中心とした農薬の開発・製造・販売を行っている。
主な品目としては、ダニ剤、土壌処理剤、線虫防除剤、病害防除剤など、現在約 90種類の農薬を扱っている。
販売契約の相手先は、主として、「兼商会」と呼ばれる全国の会員店(代理店)、農薬販売店、JA(農協)であるが、創業以来、最終ユーザーである農家との関係構築を重視し、様々な技術普及活動を行っている。

◎研究開発体制

農薬の開発には、開発スタートから登録申請するまでに約10年という長い歳月と30億円の研究開発費が必要。開発された農薬が登録される(使用される)には、薬効試験、薬害試験、人畜・環境への安全性試験等、約200項目に亘る試験が実施され、関係官庁は、農林水産省を始め、厚生労働省、環境省、食品安全委員会、消費者庁と幅広い。
更に2年を要する安全性を担保するためのこうした厳しい試験を経た後、晴れて、「対象とする作物、病害虫、使用方法・回数・時期など」が規定された農薬登録が行われる。
また、一旦登録された農薬でも、異なる対象作物に使用する際は、改めて評価を受けなければならない。
この「適用拡大」は、追加の手間、コストは必要なものの、初めから新たな農薬を開発するものではないことから、売上・利益を効率的に拡大させることができる有用な手法となっている。

同社の研究開発における方針は、「新規化合物の合成研究を通じた新たな薬剤を創出する」、「現場のニーズに応える農薬の登録、新製剤や使用技術の研究開を行う」というものであり、埼玉県所沢市と茨城県結城市の生物研究所の2か所で行われている。

特徴と強み
1.農家密着型の営業体制

先述のように、同社は最終ユーザーである「農家」との関係構築・維持・発展を重視し、農家密着型営業を展開している。
兼商会会員店、小売店、JAなどに農薬の情報や技術を直接説明するのはもちろんのことだが、同様に農家に対しても直接説明する機会を積極的に設けている。
他メーカーが卸や全農を中心に、場合によっては小売店やJAに情報提供を行うものの、農家には直接接触する事が殆どないのと比較すると極めて対照的だ。

この密着営業のキーマンが、TCA(テクニカル&コマーシャル・アドバイザー)と呼ぶ支店・営業所の技術普及担当者だ。
TCAは、ほとんどが地元採用となっている。その地方の出身であるため、生活習慣や言葉にも難なく溶け込み、その土地の農業や環境、地域の問題などにも熟知していることから、農家と円滑なコミュニケーションを取ることができる。こうして構築された関係の中から汲み上げられた最終ユーザーである農家の声を製品開発に生かしている。
植物成長調整剤「ターム水溶剤」、「ヒオモン水溶剤」、「アークランド液剤」は農家の声を重視した中からに生まれた製品である。

TCAは、「地域のリーダーとなる中核農家、「」農薬販売・指導を行うJAや販売店」と有機的に結びつき、技術情報の交換、農家ニーズ調査・確認、展示圃の設置、新技術の開発等を行い、製品の理解と普及を進めており、これを同社では「トライアングル作戦」と呼び、具体的には以下の様な活動を行っている。

◎展示圃活動

地域の農業指導機関と連携して、農薬の効果的で適正な使い方を実演によって説明し、その効果、特性を理解してもらうための展示圃場を運営している。

◎農家説明会

作物の栽培に合った効果的な病害虫の防除方法や農薬の使用方法を指導している。また、病害虫防除暦の作成支援、技術情報の提供等をおこなっている。

◎技術部会

地域ごとの会員店社員に対して、展示圃活動を通した技術の習得や製品知識の向上を図り、製品販売に携わる人々すべてが十分な製品知識および、使用技術に基づき農家に販売できるよう研修体勢を整えている。

また、欧州、米国などの農業および農薬の製造・普及・販売を実施研修するため、1969年以来、毎年研修視察に社員を派遣している。各国の農薬メーカーや販売業者、農業試験場、農協、農家などを訪問し、知識を深めるとともに交流を図っている。この研修には会員店社員や農薬販売店社員も参加し、海外の技術を吸収し、国内での農薬普及技術の向上に役立てている。

2.積極的な海外展開

市場環境で述べたように、グローバル市場における農薬需要は今後も拡大すると予想される中、同社も積極的な海外展開を進めている。
現在海外には2子会社、1支店を有し、1999年に日本で登録された同社の主力製品の一つであるダニ剤「カネマイトフロアブル」を中心に市場開拓を進めている。
2016年12月期の海外売上高は36億円で、売上構成比は26.0%。

2016年12月期決算概要

売上高は前期比1.9%減収の143億円。海外売上高が同12.8%減の37億円と振るわなかった。
粗利率は0.4%改善したものの、粗利額は減少。一方で研究開発費中心に販管費が同7.4%増加したため、営業利益は同14.8%減の20億円となった。
前期にあった為替差益81百万円および受取ロイヤリティー67百万円が無くなったことなどから経常利益は同20.5%減の21億円となった。受取補償金2億23百万円が特別利益に計上され、当期純利益は同11.6%減少の12億円となった。
計画に対しては、減収だったものの、研究開発費が約1.6億円未消化であったため利益は超過した。

売上債権減などで流動資産は14億円の減少。固定資産はほぼ変わらず、この結果、総資産は14億円増加し242億円となった。一方負債面では、仕入債務、長短借入金の減少などで負債合計は15億円減少し55億円となった。
純資産はほぼ変わらず。この結果、自己資本比率は前期末の60.2%から64.5%へ4.3%上昇した。

営業CFのプラス幅はほぼ変わらず。有形固定資産の取得、定期預金の預け入れなどで投資CFのマイナス幅は拡大した。自己株式の取得を増加させたため財務CFのマイナス幅は拡大した。キャッシュポジションは前期末比2億円減少の132億円となった。

(3)トピックス
◎株主優待を導入

株主の支援に感謝するとともに、同社株式への投資の魅力を高め、より多くの投資家に株式を保有していただくことを目的として、株主優待制度を導入した。
毎年12月末日現在の株主名簿に記載または記録された、同社株式1単元(100株)以上保有の株主を対象に、500円相当の全国共通おこめ券2枚を贈呈する。

◎中間配当を開始

同社は株主に対する利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、財政状態やキャッシュ・フローの状況等を総合的に勘案し、配当による株主への利益還元に努めることを基本方針としているが、2016年12月期においては、今後の成長戦略にかかる投資、および財政状態等のバランス、さらに第2四半期までの業績等を総合的に勘案した結果、当期より中間配当を実施することとした。

◎東京電力ホールディングス株式会社に対する損害賠償請求訴訟において和解成立

同社は、東京電力ホールディングス株式会社に対し、東日本大震災時に発生した福島第一原子力発電所の事故により、立入り不能となった福島工場土地の損害賠償請求訴訟を提起していたが、アグロ カネショウが主張していた請求額に近い和解案に基づき、2016年9月2日付で和解が成立した。

(和解の経緯と概要)
福島工場土地の損害賠償額に対し、東京電力ホールディングスの提示した額は 約74百万円であり、アグロ カネショウが主張する約1億39百万円と2倍近い開きがあった為、訴訟を提起。
裁判の過程で、土地価額の鑑定を裁判所が選定した鑑定会社に委託する事で双方が合意し、その鑑定結果は 約1億17百万円となり、東京電力ホールディングスが主張する損害賠償額を大きく上回る結果となった。
尚、土地の鑑定額に基づく弁護士費用、及び遅延損害金についても、アグロ カネショウの主張を認め、和解金総額 約1億37百万円,で和解が成立した。

◎代表取締役を追加選定

2016年3月29日、専務取締役 井上 智広氏が代表取締役専務に就任した。
1972年に入社した井上氏は、長年にわたり研究開発部門のリーダーとして同部門を牽引してきた。
「2025年売上高300億円」達成を目指す同社において、新規剤の投入を始めとした研究開発は今後益々重要となるため、経営管理体制の一層の強化と充実を図る。

◎役員退職慰労金制度の廃止及び役員報酬制度の改定

2017年2月、役員報酬制度の見直しを行い、役員退職慰労金制度を廃止すること、取締役ならびに監査役の報酬額を改定すること及び取締役に対し、信託を用いた株式報酬制度を導入することとした。
役員報酬制度は、業績及び株式価値と取締役の報酬との連動性をより明確にし、取締役が株価上昇によるメリットを享受するのみならず株価下落リスクをも負担し、株価の上昇による利益・リスクを株主と共有することで、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることを目的としている。

2017年12月期業績見通し

小幅増収ながらも、引き続き研究開発投資を積極的に進めるため減益を予想している。
前期にあった受取補償金が無くなるため当期純利益は2割の減益となる。
配当は中間10円/株、期末12円/株の合計22円/株の予定。予想配当性向は27.6%

中期事業計画について

同社では、中期事業計画において2018年12月期 売上高171億円、営業利益23億円、当期純利益14億円を目標としている。
また、長期事業計画「Lead The Way 2025」を策定、2025年売上高300億円を目指しており、そのための施策として「新規剤の投入」、「新規買収剤の投入」、「海外展開の推進」を掲げている。

(達成を目指して)

中長期事業計画達成のためには、同社の強みである「果樹・野菜向け農薬に特化」、「農家密着型経営」、「研究開発・海外展開」の3要素をリンクさせることが重要となる。

取扱い薬剤の中では、バスアミド、D-D、ネマキックなどの売上の半分以上を占める「土壌消毒剤」の更なる拡大に注力する考えであり、効果的な土壌の改良や消毒に繋げるために土壌要因や病害虫要因の分析を行う土壌分析・診断事業の強化を進める。

現在新規剤として、害虫防除剤(2016年末登録申請、2020年上市予定)、病害防除剤(2019年登録申請、2023年上市予定)の他、数種類を開発中である。

今後の注目点
前期に続き、今期も減益となる見通しであるものの、長期間1倍割れで推移していたPBRは1倍を超し、PERも東証1部平均16.44倍(2017年3月31日)を上回ってきた。
株主優待制度の開始も一つの材料だろうが、安定した財務基盤、一般的に日本企業に期待されていると言われている8%を上回るROEなど、バリュー株としての魅力を投資家が見直したという事が言えるだろう。
今後は、長期事業計画で掲げる「2025年売上高300億円」に向けた各種施策の進捗状況を注目したい。
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