(6908:東証1部) イリソ電子工業 2017年3月期第2四半期業績レポート

2016/12/14

iriso

今回のポイント
・17/3期2Qの売上高は前年同期比6.8%減収の181億円。為替の影響が大きく減収となったが、カーエレクトロニクス分野を中心に数量は増加した。営業利益は同9.9%減少の28億円。熊本地震による影響で車載およびコンシューマー関連の顧客の生産減に伴う販売減などで営業利益率は15.7%にとどまったが、通期18%の維持を目指す売上、利益とも期初予想を下回った。

・為替の状況を考慮し、期初計画を下方修正した。売上高は前期比4.7%減少の364億円の予想。上期動向同様、安全系、パワートレイン系は堅調だが、円高の影響、中華圏での同社コネクタ搭載車種の需要動向、熊本地震による顧客の生産減を勘案した。数量ベースでは約8%の増加を見込む。営業利益はほぼ横ばいの65億50百万円の予想。円高の影響はあるが原価低減が上期比で下期の方が多いこと、下期に追加で材料費の削減や合理化・経費の削減を進める。営業利益率は期初計画通り18.0%。配当は、中間の記念配20.00円/株に加え、期末60.00円/株の計80.00円/株を予定。予想配当性向は21.3%。

・業績下方修正となったが、数量ベースでは堅調に需要を取り込んでおり、為替次第の点はあるが大きな下振れの可能性は少なそうだ。為替も円安で推移している中、下期でどの程度上積みを行えるかに注目したい。また、売上高1,000億円達成に向けた「第2の柱(産業機器)の確立」の具体的な動きについても進捗を見守りたい。

会社概要

配線基板同士を接続するコネクタを開発、製造、販売。顧客の作業効率を格段に向上させる主力製品「可動 B to B®」コネクタを始め、高付加価値商品を有する。売上の約80%が車載向けで、国産自動車メーカー及び海外の主要メーカー全てに同社コネクタは搭載されている。電気自動車、ハイブリッド自動車の普及でビジネスチャンス拡大。早期から海外進出に積極的で、売上、生産共に海外が中心。

【沿革】

1966年に、佐藤 定雄 会長が創業。TVや音響製品などの普及に伴い、ハンダで接続するのではなく、着脱が自由なコネクタの需要が増大し、付加価値機能を備えたピン製品を開発し、コネクタ分野へ本格進出。1980年代には現在の主力事業である車載分野に参入し、高付加価値製品「B to B®」を投入。セット時の芯ズレを吸収するという独自の機構が評価され、高いシェアを獲得。
顧客ニーズに対応し、早期より海外進出を積極化。
社名の「イリソ」は『初めて受注をいただいたお客様が埼玉県入間郡「入曽村」(現在の埼玉県狭山市)にあったことから、そのご恩と感動を忘れないために入曽(イリソ)の地名を当社の社名と致しました。』(同社WEBサイトより)との由来による。

【経営理念】

-未来に続く架け橋として-
人の心を尊重し、豊かな価値を創り、社会貢献に努める。

【事業内容】
<コネクタとは?>

電子回路や光通信において配線基板同士を接続するために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。

同社は、用途に応じた様々なコネクタを製造しているが、その中でも代表的な製品が、同社が登録商標を持っている「B to B®コネクタ」(ボード・トゥ・ボード コネクタ)。

B to Bコネクタとは、基板と基板を直接接続することができるコネクタで、垂直接続、平行接続、水平接続などの組み合わせで、様々な接続が可能となる。
そのB to Bコネクタの中でも、接続部分が数ミリ可動する「遊び」が設定されている「可動 B to B®」コネクタは同社の独自性が発揮されている製品。

通常のコネクタは遊びが無いため、接続する際にソケット側とプラグ側にズレが無いよう作業しないと接続できないため、作業効率が悪くなる。
これに対して可動コネクタは、遊びがあるため、ある程度ずれた状態で接続作業を行っても問題なく接続できる。

また、可動コネクタは、通常片側のみが可動することが常識だったが、同社では顧客からの「両側が動けば、より作業効率が向上する」との声に基づき、ソケットとプラグの両方が可動する両側可動(ダブルフローティング)コネクタも開発した。顧客の組み立て作業の効率化が図れる製品として高い評価を受けている。
加えて、2015年から発売を開始したZ-MoveコネクタはX-Y軸だけでなくZ軸方向のズレも吸収することが出来、組み立て作業時のみでなく、可動部分が自動車走行中の振動、衝撃を吸収するため、自動車のパワートレイン部分にもその性能が大いに発揮される製品だ。

この他にも、以下の様なコネクタをラインアップしている。

○FPC/FFCコネクタ

FPC基板やFFCケーブルの接続に開発されたコネクタの総称。コネクタの挿入時にほとんど力を加えずにFPC/FFCのロックが可能なタイプや、軽い力で挿入可能なタイプがある。

○I/Fコネクタ

I/Fとはインターフェースの略。機器間の信号の接続を行うコネクタの事で、I/O(インプット/アウトプット)コネクタとも呼ばれる。カーナビ、PCなど様々な機器の側面(裏・表面)に装着され、機器への電源供給、音声・映像信号データ等の入出力を行う。

○P/H

線材をカット加工したピン(電導体)をハウジング(樹脂材でできた絶縁体)で支えたプラグ(オス側)コネクタの基本形であり、様々な分野・機器の内部接続(基板間接続)に使用されている。横から見ると、生け花の花止め「けんざん」のように見えるのが特長。メス側はソケットと呼ばれる。

○コンプレッションコネクタ

コンタクトのスプリング圧を利用した脱着コンセプトを採用したコネクタ。省スペース化にも貢献。モバイル機器の内部接続、クレドール等に使用されている。

主力の車載分野における同社の主要な直接顧客は、Tier 1と呼ばれる自動車メーカーに部品を納入する大手自動車部品メーカー。顧客を通じ、全ての国産メーカー及び、主要な海外メーカーの殆どに同社の製品は搭載されている。
車載分野は、顧客の要望に基づいて製造するカスタム品が多く、高い付加価値を生んでいる。
また自動車メーカー各社は、品質や安全性に対し極めて高い基準を部品メーカーに要求している。同社では早い段階から車載分野に進出しており、永年に渡る納入実績は同社製品の優秀さを証明している。
今後、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)の普及に伴い、電気系統の重要性が増す。また安全性ニーズの高まりを受けて、車間距離を測るミリ波レーダーやカメラの搭載も進み、使用される電子部品数およびコネクタ数は今後も増加する見込み。
矢野経済研究所によると、2014年の車載用センサーの世界市場規模は、パワートレイン向けやADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)向けセンサーの市場が堅調に伸び、前年比26.8%増の2兆2543億円に拡大したという。車載用センサーの世界市場は今後も年平均成長率(CAGR)5.7%を維持し、2020年に3兆1487億円に達すると予測。環境規制、燃費向上に向けたパワートレイン向けセンサーの需要拡大、日本、米国、欧州と中国市場におけるADASの普及拡大が続くという。
特にADAS向けセンサーは、検知精度向上や多機能化により、複数個のセンサーを搭載するセンサーフュージョンが中心になり、車両1台あたりに搭載するADAS向けセンサーの数量が増加する。車両前方に加え、車両側面/後方でのセンサー搭載も増える見込みで、2014~2020年までのADAS向けセンサー世界市場のCAGRは20.5%。2020年の同市場規模は9,094億円に達すると予測している。
同社でも、これまではどちらかといえばカーAV、カーナビ等、車室周りの電子部品に使用されるコネクタが多数だったが、これからは、前記のパワートレインと言われる、駆動部分(モーター等)に使われる高電圧、高出力に対応する電子部品への進出も期待でき、ビジネスチャンスが拡大すると考えている。
コンシューマー分野は汎用品が多く、構造もそう複雑ではないため価格競争になりやすい。
インダストリアル分野は、車載分野で培ってきた技術力、ノウハウを活かすことができるため、まだ規模は小さいが今後の成長が見込まれる。

16/3期のROEは前期より低下したが、2ケタ台を維持している。今期予想の売上高当期純利益率13.3%が達成できれば、再度業界内でも上位のROEを示すこととなろう。

2017年3月期第2四半期決算概要
数量増も為替の影響などで減収減益。計画未達。

売上高は前年同期比6.8%減収の181億円。為替の影響が大きく減収となったが、カーエレクトロニクス分野を中心に数量は増加した。
営業利益は同9.9%減少の28億円。熊本地震による影響で車載およびコンシューマー関連の顧客の生産減に伴う販売減などで営業利益率は15.7%にとどまったが、通期18%の維持を目指す。
売上、利益とも期初予想を下回った。

車載市場は、安全系(車載カメラ、レーダー)は好調を維持し前年同期比約1.2倍。数量も14%増加したが、円高の影響が-12%、熊本地震の影響で生産調整があった。
コンシューマー市場は円高の影響が-12%、ゲーム機向けが減少し、熊本地震の影響でデジカメ向けが減少した。
インダストリアル市場はスマートメーターやPLC(※)向けが増加した。
※PLC:プログラマブルロジックコントローラ。工場などの自動機械の制御に使われるほか、エレベーター・自動ドア・ボイラー・などの機械の制御にも使用されている。
日本は新車向け及び安全系、パワートレイン、インダストリアル市場が好調だった。
中華・韓国圏は円高の影響に加え、車載市場で搭載車が伸び悩んだ。
欧州以下は円高の影響で減少。
FPCは円高の影響に加えデジタルカメラの減少に加え、コンシューマー市場(デジタルカメラ)の需要が減少した。

棚卸資産は減少したが現預金が増加し流動資産は前期末比2億49百万円増加。固定資産は建物及び構築物、機械装置及び運搬具の減少等で同10億98百万円減少し、資産合計は同8億49百万円減少の467億7百万円となった。
未払法人税等などの減少などで流動負債は同13億12百万円減少。固定負債は同78百万円減少し、負債合計は同13億89百万円減少の68億70百万円となった。
純資産は、資本準備金および利益準備金が大幅に増加したが、円高により為替換算調整勘定がマイナスに転じたことで同5億40百万円増加の398億36百万円。自己資本比率は前期末から2.6%上昇し84.9%となった。

税金等調整前四半期純利益の減少、法人税支払額の増加などで営業CFのプラス幅は前期に比べ17億71百万円縮小。有形固定資産の取得額縮小で投資CFのマイナス幅は同2億76百万円縮小した結果、フリーCFのプラス幅は同14億95百万円縮小した。
自己株式の処分を行ったため財務CFは15億25百万円のプラスに転じた。キャッシュポジションは前期末に比べ21億34百万円の増加。

2017年3月期業績見通し
為替の影響により業績予想を下方修正

為替の状況を考慮し、期初計画を下方修正した。
売上高は前期比4.7%減少の364億円の予想。上期動向同様、安全系、パパワートレイン系は堅調だが、円高の影響、中華圏での同社コネクタ搭載車種の需要動向、熊本地震による顧客の生産減を勘案した。数量ベースでは約8%の増加を見込む。
営業利益はほぼ横ばいの65億50百万円の予想。円高の影響はあるが原価低減が上期比で下期の方が多いこと、下期に追加で材料費の削減や合理化・経費の削減を進める。営業利益率は期初計画通り18.0%。
配当は、中間の記念配20.00円/株に加え、期末60.00円/株の計80.00円/株を予定。予想配当性向は21.3%。

製造力強化の取り組み

同社は長期的に売上高1,000億円達成を目指している。
地域別でみると、中国・アジア及び、欧州・米国地域での売上の拡大を計画しており、これを達成するために現在の世界4工場体制から2工場を追加し、「6工場体制」とすることを計画している。
地産地消を目指し生産能力をアップさせるとともに、コスト力及び品質の向上も目指す。
第5工場は欧州・米国市場向けに、第6工場は中華圏・アジア市場をターゲットとする。

第5工場はメキシコに建設する予定で、用地取得の契約に向けて動いている。
日産、GM、マツダ、トヨタ、HONDA等の車載基地の近郊で、現在最大のベトナム工場を上回る、54,000㎡の面積となる予定。

第6工場は中国に建設する予定。
面積はメキシコ工場を下回る36,000㎡だが、建ぺい率の関係でメキシコ工場に次ぐ2番目の大きさとなる。

2つの工場で設備投資額は今後数年で数十億円を想定している。

今後の注目点

業績下方修正となったが、数量ベースでは堅調に需要を取り込んでおり、為替次第の点はあるが大きな下振れの可能性は少なそうだ。為替も円安で推移している中、下期でどの程度上積みを行えるかに注目したい。

<参考1:中期経営計画について>

同社は2017年3月期から2019年3月期の3年間の中期経営計画を策定した。

<経営方針>

真のグローバル企業を目指し次のステージへ飛躍する。
顧客第一、業界No.1を掲げ、全社員の知恵をお客様のために捧げる。

<外部環境>

自動車販売台数の増加、情報化の進展(クラウド、ビッグデータ、IoT)、映像技術の進歩(4K、8K)、新興国のインフラ整備加速、Industry4.0 による生産システムの進化 といった市場の拡大や変化に伴い、電気自動車・ハイブリッド電気自動車化の進展、ADASの普及など「車載市場の拡大」、FA機器、通信機器、医療機器、事務機器における「コネクタ市場の拡大」が進展する見込み、需要取り込みを図る。

<業績目標>

今後3年間の売上高 383億円、415億円、450億円を経て、早期に売上高1,000億円、業界順位世界10位以内を目指す。
また2019年3月期の営業利益率20%、EPS 560円を掲げている。

<重点施策>

売上高1,000億円に向けた基盤整備を進めるため、
① 伸びる市場(車載市場)の攻略
② 第2の柱(産業機器)の確立
③ 生産力とコスト力の強化
に注力する。

①伸びる市場(車載市場)の攻略

「高速伝送、高電圧、高電流」という市場ニーズにマッチした技術を先行的に開発を進める。
またADASの進化や電気自動車やハイブリッド電気自動車の普及に伴い、「PA25(Project Automotive Application 5)」というプロジェクトを強力に推進する。

「PA25」とは、「伸長するEV/HEV車両へ搭載されるPower&Motor Category」と、「全ての車両に適用するSafety&Cockpit Category」の2つから成るもので、具体的には、コックピット、安全系(カメラ、レコーダー関連)、パワートレイン(インバーター、コンバーター、電池周り)、モーター(駆動系)、インターフェースなど同社の強みを更に伸ばす領域での製品開発を進める。
前回のレポートで紹介したパワートレイン関連の新製品「Z-Moveコネクタ」の世界的な拡販も目指している。

また、海外販売力を強化し、非日系顧客比率を50%以上に引き上げる。加えて、課題解決型ソリューション提案を強化し販売力の強化にも注力する。

②第2の柱(産業機器)の確立

売上高500億円への生産体制は茨城工場とフィリピン工場の拡充で準備は完了した。現在の生産割合は、上海6割、日本1割、ベトナム2割、フィリピン1割だが、今後はベトナム、フィリピンの割合を急速に高める。そして、前述の通り新工場を、1,000億円に向けた生産拠点の増強として機能させる。

③生産力とコスト力の強化

「生産の抜本改革」、「コスト力No.1の実現」、「品質向上」を掲げている。

「生産の抜本改革」では、グローバル管理体制の再構築と、TSCM(トータル・サプライ・チェーン・マネジメント)改革を進める。
「コスト力No.1の実現」においては、素材の集約購買やQCD(品質、納期、コスト)を意識した管理の推進による市場価格を先取りしたコスト削減、成形・プレス・メッキといったキープロセスの内製化拡大や低コスト成形技術の実現、イリソ版Industry4.0の構築による他社に勝つ生産技術の確立、新製品比率30%以上の実現を推進する。
「品質向上」においては部品品質の向上、重要保安部品の管理システムの更なる向上を目指す。

<設備投資と研究開発>

成長のための先行投資として、3年間で243億円の設備投資を行う。
また、新製品開発を増加させるため、研究開発に同37億円を投資する。

<参考2:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年6月24日に提出している。

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