(6722:JASDAQ) エイアンドティー 2016年12月期第2四半期業績レポート

2016/09/21

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今回のポイント
・電解質検査、グルコース検査を中心とした臨床検査のための装置、試薬などの開発、製造、販売を行う「血液検査事業」と、臨床検査作業の効率化を支援する「IT化・自動化支援事業」が柱。検査室に必要な製品を揃え、レイアウトも含めて導入から運営までの最適なソリューションをワンストップで提供できる総合提案力、海外の有力OEM供給先が評価する高い技術力などが強み。・16年12月期第2四半期(累計)の売上高は前年同期比6.5%減の47億円。臨床検査情報システム(LIS)の大型案件が減少。臨床検査試薬も減少した。ただ第2四半期の売上高としては過去2番目の高水準。他社製品の販売が増加しプロダクトミックスにより粗利率は低下し売上総利益も減少。販管費は同0.1%増と抑制したが減収により営業利益は同27.3%減の5億84百万円。中国の合弁会社の事業再編に伴い移転損失を計上し、四半期純利益は同35.0%減の3億35百万円となった。売上高は計画を下回ったが、利益は計画を超過した。

・第2四半期の実績を踏まえ、売上原価、売上総利益、販管費の通期計画値を修正。売上高は変わらないものの、売上原価が上昇。これを人員配置、投資案件の集中と選択による販管費の抑制で吸収する計画で、営業利益、経常利益、当期純利益の修正は行っていない。対前期比では検体検査自動化システム(LAS)や消耗品は伸びるが、プロダクトミックスにより売上総利益が減少。販管費のコントロールでは吸収できず、前期が高水準だったこともあり、営業利益以下減益を見込んでいる。

・市場環境の項で触れたように、生化学検査分野において日本企業は世界的に高い競争力を有している。同社の場合、日本電子へのOEM製品がシーメンスに供給されているが、会社側が今後の注力分野として挙げているOEM供給先の拡大がどういうスピードで進んでいくかを注目していきたい。また、LIS、LASは国内のみならず海外市場においても大きな需要が想定できることから、こちらの開拓状況についても期待していきたい。一方で、今期減益という事もあるが、PERは1ケタ台、PBRは1倍割れと、株価評価は極めて低い。認知度の向上とともに中期的な成長戦略の明示も望まれる。

会社概要

電解質検査、グルコース検査を中心とした臨床検査のための装置、試薬などの開発、製造、販売を行う「血液検査事業」と、臨床検査作業の効率化を支援する「IT化・自動化支援事業」が柱。
検査室に必要な製品を揃え、レイアウトも含めて導入から運営までの最適なソリューションをワンストップで提供できる総合提案力、海外の有力OEM供給先が評価する高い技術力などが強み。

【1-1 沿革】

総合化学メーカーである株式会社トクヤマ(4043、東証1部)がそれまでの素材中心からファインケミカルへと事業範囲の拡大を指向していた1980年代、保有する様々な技術・アイテムのたな卸を行う中で、化学製品の一つであるラテックス(ゴムの原料)を用いて抗原抗体反応を検査するラテックス試薬の開発に取り組むこととした。
その過程で、1978年に全自動血糖分析装置を発売するなど業界をリードしてきた臨床検査装置の開発・製造・販売を手掛ける株式会社アナリィティカルインスツルメンツと業務提携を行い、1988年4月に両社により販売合弁会社、(旧)株式会社エイアンドティーが設立された。(アナリティカルインスツルメンツの「A」とトクヤマの「T」を結合)
1990年11月には現在の主力生産拠点である江刺工場(岩手県)を新設。
1994年に(旧)株式会社エイアンドティーを吸収合併し、併せて株式会社トクヤマの診断システム部門を統合し商号を株式会社エイアンドティーに変更した。1980年代から90年代は臨床検査の分野において多くのコア技術が産み出された成長期であり、その追い風を受けて順調に業容は拡大。
2003年7月、株式を店頭登録した。現在は東証JASDAQ市場に上場している。

【1-2 経営理念など】

企業理念として「医療を支え、世界の人々の健康に貢献する。」を掲げ、以下3つの経営方針の下、医療の質向上と医療コストの削減を目指している。

【1-3 市場環境】
◎市場規模
(国内市場・世界市場)

株式会社富士総研によれば、日本における臨床検査市場は2015年4,639億円で世界市場の6.0%を占めるが、これまで拡大をけん引してきた免疫血清検査の伸びが鈍化しており、市場は微増となっている。2020年の市場は4,890億円と年平均成長率は1.1%にとどまる。
日本臨床検査薬協会のホームページの情報を基にエイアンドティー社が推定した国内の装置・試薬市場は約5,300億円。うち生化学検査が1,759億円、血液検査は275億円となっている。

一方で、同じく富士総研の調査によれば世界市場は2015年に約623億米ドル(1ドル=100円で6兆2,300億円)となった。今後も世界市場は年平均2.4%で成長し、2020年には約704億米ドル(1ドル=100円で7兆400億円)と予測されており、検査環境が整備途上にある東欧、ロシア、アジア、南米、アフリカが成長の牽引役となると見ている。
日本メーカーは国内市場の飽和感が強まる中、国内の安定した事業基盤をベースに、その高い技術や品質を武器に世界市場での展開を指向する方向にあると述べている。

(検査領域別動向)

免疫血清検査が最大市場を形成(37.1%、約231億米ドル、約2兆3,100億円)、感染症を中心に市場拡大が続いている。
同社が手掛ける血液検査市場は7.5%、約47億米ドル(約4,700億円)で、北米や欧州(特に西欧)、日本では既に普及が進み、横ばいから微増となっている。アジアやその他地域は市場が拡大しており、今後も確実な成長が期待されると同調査は述べている。

(医用検体検査機器動向)

厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」によれば、2014年の日本の医療機器市場(国内生産額+輸入額-輸出額)は約2.7兆円。大半は治療系機器が占めており、同社が手掛けるカテゴリーに該当する医用検体検査機器は573億円となっている。(生産1,694億円、輸入203億円、輸出1,323億円)
ただ、医療用機器総額が大幅な入超なのに対し、医用検体検査機器は出超となっており、日本企業の世界的な競争力の高さを示している。日立がロシュ(スイス)に、東芝がアボット(米国)にOEMで検査機器を供給しているように、同社もシーメンスにOEM供給を行っており、日本製検査機器は世界の臨床検査分野において無くてはならないものとなっている。

主な上場の臨床検査装置メーカーを比較してみた。
同社は表中の企業中では事業規模は最も小さいが、収益性では上位に位置している。ただ、株価評価は最も低く、認知度向上と今後の業容拡大に向けた戦略の明示が必要だろう。

【1-4 事業内容】

病院の臨床検査室を構成する検査装置、試薬などの製品群の開発、製造、販売に加え、カスタマーサポートまでを一貫して手掛けている。また、検査室のレイアウト提案も含め、導入から運営までをカバーする総合的コンサルティングも行っている。

(臨床検査とは)

臨床検査には、レントゲン、CT、MRI、心電図、超音波など、医療機器を使用して体を直接調べる「生体検査」と、患者から採取した血液、尿・便、細胞などの生体試料(検体)を調べる「検体検査」がある。
同社が取り扱うのは検体検査で使用される製品群で、検体検査の中でも血液検査が中心である。
また、病院や人間ドッグなどで行われている血液検査には、肝臓系検査、腎臓系検査、尿酸検査、脂質系検査、糖代謝系検査、血球系検査、感染症系検査など多くの種類があるが、同社は「電解質検査」と「グルコース検査」を中心に展開している。

「電解質検査」

人体の約60%は水分で構成されており、細胞内液や血漿などの体液として存在している。体液はさらに、水に溶けて電気を通すミネラルイオンである電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、クロールなど)と、水には溶けるが電気は通さない非電解質(ブドウ糖や尿素など)とに区分される。
それぞれの電解質はバランスをとりながら、「ナトリウム」はからだの水分調節、「カリウム」は筋肉や神経の制御、「カルシウム」は骨や歯の形成、神経刺激の伝達、血液の凝固、「クロール」は体内への酸素供給など、人間が生命を維持する上で重要な役割を果たしている。血中の電解質濃度に変化が生じた場合、腎機能やホルモンの働きに異常が発生している可能性がある。

電解質検査は、体液中の電解質イオンの濃度を測定し、バランスの崩れを調べて体内の障害を診断するもので、採取した血液や尿を検査装置で検査する。

「グルコース検査」

血漿中の糖(血糖)はほとんどがグルコース(ブドウ糖)で、人間の大脳を始めとする中枢神経系ではグルコースが唯一のエネルギー源である。空腹時(食後5時間以降)では肝臓から1時間あたり8グラム程度のグルコースが放出され、そのうちの約2分の1を脳が、筋肉と赤血球がそれぞれ4分の1を消費している。
血糖値は通常、腸からの吸収と肝臓での産生による上昇と筋肉などでの消費による低下とのバランスの上に厳密に調節されている。この調節が上手くいかなくなると高血糖や低血糖状態となる。
グルコース検査は血液や尿中のブドウ糖の濃度を調べる検査である。

1.事業分野

同社の事業は、血液検査のための検体検査装置や臨床検査試薬、消耗品の開発・製造・販売を行う「血液検査事業」と、病院の検査室の人的作業の効率化をIT化・自動化によって支援する「IT化・自動化支援事業」の2事業で構成されており、病院の検査室を総合的にサポートしている。
(単一事業であるため、決算短信、有価証券報告書などにはセグメント情報を記載していない。また、同社では決算説明資料等で製品系列別売上高を開示しているが、両事業名としての売上高の開示とはなっていない点には留意する必要がある。)

①血液検査事業
(概要)

「電解質検査」、「グルコース検査」のための検体検査装置、臨床検査試薬(電解質、血糖値等を測定するために検体検査装置で使用する試薬)、消耗品(検査装置内で使用されるセンサーなど)の開発、製造、販売、カスタマーサポートを行っている。

(商流)

*国内
顧客となる中小規模病院に全国8ヵ所の支社を中心に検体検査装置、試薬、消耗品の直接販売を行っている。現在約4,000台以上が稼働している。

*海外
検体検査装置のOEM販売を行っている。同社が得意とする電解質ユニットを日本電子株式会社(6951、東証1部)など国内他社メーカーに供給。OEM供給先は自社の大型自動分析装置に同ユニットなどを組み込んで販売している。日本電子は大型自動分析装置の世界的企業の1社であるシーメンスにOEM供給している。

(ビジネスモデル)

新規に検体検査装置が導入されると、検査を行うための臨床検査試薬や消耗品が継続的に納入され、加えて検体検査装置の保守サービスも提供することとなる。
一旦採用されると検査データや使い勝手の継続性から顧客である病院が採用メーカーを変更することは少なく、新規参入は難しい。7から10年後には機能を高めた後継機種に更新されるというのが同事業の特長である。

(主な参入企業)

シスメックス(6869、東証1部)、日立ハイテクノロジーズ(8036、東証1部)、日本電子(6951、東証1部)、和光純薬工業(非上場)、アークレイ(非上場)

②IT化・自動化支援事業
(概要)

臨床検査は血液検査であれば、採血室で採取した患者の血液(検体)を臨床検査室に運び、手作業で検体を検査装置にセットする必要がある。
多くの検体について数種類の検査を同時に行わなければならないが、極めて労働集約的な作業で非効率であるとともに、検体の取り間違いといった人的なミスも避けがたいという課題を抱えている。
こうした状況に対し同社では以下2種類のシステムにより検査業務の効率化を支援している。

LASの導入により、従来は7~8名が必要であった作業人員は2名程度で賄うことができるほか、検査時間も90分の検査が30~40分に短縮できるという。
また、LISの導入で、従来は検査項目ごとに紙で出力されていた検査結果をITを使ってデータ集約し、医師に迅速かつ正確にフィードバックできるようになった。また、データマイニングの機能を利用し、異常値の再検数(再検査数)の削減や検査時間の短縮にも役立っている。

(商流)

*国内
LISは日立、IBM、富士通といった病院情報システムメーカーと連携し、LASは日立、東芝、日本電子など大型生化学免疫装置メーカーと連携し、総合提案(※)として大中規模病院検査室を対象に同社の営業が直接販売を行っている。
※総合提案については、【1-5特長・強み】の項を参照。

*海外
LASを韓国、中国などアジアに直接販売を行っている。また米国では提携先に血液を分注する装置のOEM販売を行っている。

(ビジネスモデル)

LIS、LASともにシステム導入後の保守サービスに加え、LISでは追加のシステム接続やカスタマイズなど、LASでは保守サービス、消耗品の供給等、どちらも安定的に売上が計上される。
また検体検査装置同様に使い勝手やデータの連続性などから、顧客における他社製品への乗換え動機は極めて小さい。個別案件の価格帯は、LISで1,000万から5,000万円、LASで1,000万から1億円となっている。

(主な参入企業)

LIS:シスメックスCNA(シスメックス子会社)、地元ベンダー企業等
LAS:アイディエス(非上場)、日立アロカ(非上場)、シーメンスなど

2.開発体制

電気、機械、化学、情報システムについて長年にわたって培ってきた要素技術と幅広い製品分野を縦横で組み合わせたマトリックス組織を採用している。
製品区分にとらわれないC・A・C・Lの総合ソリューションを提供する製品開発を進めている。
本社および湘南サイトに約80名のスタッフが在籍している。
売上高研究開発費率は2015年12月期実績で9.1%。今後も10%程度を目途に引き続き積極的な研究開発を進めていく。

3.生産体制

臨床検査試薬、消耗品製造を行う湘南工場(神奈川県)、機器や検体検査自動化システム(LAS)製造を行う江刺工場(岩手県)の2拠点が生産を担う。
高度な設備と厳重な管理体制の下で高品質かつ安全な製品を製造している。開発部門と連携して品質向上や効率化のための改良にも取組んでいる。
今後の更なるトップライン拡大の基盤作りのために、17億円の投資により江刺工場に延床面積7,300㎡の新棟を建設し、大幅な能力増強を行う。

4.販売ルート&販売方法

前述のように国内では全国8つの支社が顧客である病院に対し、総合提案力を武器に直接販売を行っている。
また、海外には日本電子など国内OEM先を通じて、シーメンスなど海外顧客やディーラーへ供給している。
このOEM供給によるスケール拡大を基本戦略としており、OEM供給先の多様化に注力している。

海外顧客やディーラーに同社が直接販売する直接海外売上高およびその比率は2015年12月期で約6億円、5.9%だが、国内OEM先を通じて海外に販売している売上高(同社推定値)を加えた実質海外売上高比率は2015年12月期で23.4%。2016年12月期第2四半期累計では25.9%と上昇傾向にある。

【1-5 特長と強み】
◎総合提案力

同社が取り扱う検査対象は電解質検査とグルコース検査が中心で、他の検査装置を製造販売している訳ではない。
ただ、顧客である病院は臨床検査室に様々な検査装置を設置する必要がある。
こうしたニーズに対し同社の検体検査自動化システム(LAS)は、自動搬送ベルトラインに同社装置のみならず、他社装置も組み入れてセッティングすることができる。
自社製品、他社製品を組み合わせて自由に接続・搬送できるシステムおよび技術力を持っているのは同社を含め数少なく、国内シェアは約3割となっている。
また、同社では装置を納入するのみでなく、検査室の広さや形状を踏まえた上で、最も効率的に検査作業が進められるようなレイアウトについても3DCAD等を用いて営業員が提案を行っている。
このように、検査室に必要な製品を揃え、レイアウトも含めて導入から運営までの最適なソリューションをワンストップで提供できる総合提案力は顧客である病院から高く評価されている。

◎特定分野での高い技術力

同社が手掛ける主要検査対象は「電解質検査」と「グルコース検査」の2つだが、特に電解質分析装置における高い技術力は、医用を含めた各種計測機器大手の日本電子や世界的大企業シーメンスがOEM供給を受けていることからも明らかである。
市場環境の項で触れたように、日本の医用検体検査機器は世界的に高い競争力を有しており、同社もその一翼を担っている。

2015年12月期はレバレッジが低下する中でも売上高当期純利益率の改善でROEは大きく上昇した。
今期の予想売上高当期純利益率は5.3%と前期よりも低下するが、総資産回転率、レバレッジが同程度とすれば今期も2桁のROEを維持すると予想される。

2016年12月期第2四半期決算概要
減収・減益

売上高は前年同期比6.5%減の47億円。臨床検査情報システムの大型案件が減少。臨床検査試薬も減少した。ただ第2四半期の売上高としては過去2番目の高水準であった。
他社製品の販売が増加しプロダクトミックスにより粗利率は低下し売上総利益も減少した。
販管費は同0.1%増と研究開発人員増を人員配置、投資案件の集中と選択により抑制したが減収により営業利益は同27.3%減の5億84百万円となった。
中国の合弁会社の事業再編に伴い事業分離における移転損失1億14百万円を計上し、四半期純利益は同35.0%減の3億35百万円となった。
売上高は計画を下回ったが、利益は計画を超過した。

◎臨床検査機器システム
前年同期比15.5%の減収

検体検査装置はOEM販売が低調だった。
臨床検査情報システムは新製品CLINILAN GL-3の初期導入後の対応に注力したことに加え、前年同期が好調だった反動から国内大型案件数が減少した。
検体検査自動化システムは前年並みだった。

◎臨床検査試薬
前年同期比5.0%の減収

主として直接販売が低調に推移した。

◎消耗品
前年同期比1.3%の増収

OEMで販売した検体検査装置の稼働台数が増加したため堅調に推移した。

◎その他前年同期比37.2%の増収

臨床検査情報システム及び検体検査自動化システムの国内大型案件に附随する他社製品の販売が増加した。

売上債権の減少等で流動資産は前期末比7億99百万円減少。関係会社出資金の減少で投資その他の資産が減少し固定資産は同1億32百万円減少、資産合計は同9億32百万円減少の88億91百万円となった。
仕入債務、短期借入金の減少で流動負債は同9億91百万円減少。長期借入金の減少で固定負債も同1億30百万円減少し、負債合計は同11億21百万円減少の29億91百万円となった。
利益剰余金の増加で純資産は同1億89百万円増の59億円。
この結果自己資本比率は前期末の58.1%から8.3ポイント上昇し66.4%となった。

税引前四半期純利益は減少したが、売上債権の減少などで営業CFのプラス幅は拡大。投資CFのマイナス幅はほぼ変わらず、フリーCFのプラス幅は拡大した。
短期買入金の収入減少などで財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

2016年12月期業績予想
増収もプロダクトミックスで売上総利益が減少し営業減益

第2四半期の実績を踏まえ、売上原価、売上総利益、販管費の通期計画値を修正した。
売上高は変わらないものの、売上原価が上昇。これを人員配置、投資案件の集中と選択による販管費の抑制で吸収する計画で、営業利益、経常利益、当期純利益の修正は行っていない。
対前期比では検体検査自動化システムや消耗品は伸びるが、プロダクトミックスにより売上総利益が減少。販管費のコントロールでは吸収できず、前期が高水準だったこともあり、営業利益以下減益を見込んでいる。

予想売上高合計103億円の修正は無いものの、その内訳には修正があった。以下のようなポイントが挙げられる。

臨床検査情報システムは期初見込んでいた大型案件が来期へ延期となった。
検体検査自動化システムは海外の大型案件数の増加を見込んでいる。

前期比では、以下のような状況を見込んでいる。

検体検査装置のOEM販売が下期からの価格改定で減収
臨床検査情報システムは上期同様、新製品CLINILAN GL-3の初期導入後の対応に注力する。また過去最高だった前期の反動で減収。
検体検査自動化システムはアジア向け大型案件が増加。米国提携先との継続的なOEM取引も底支えとなる。
消耗品はOEM販売が堅調。
臨床検査情報システム及び検体検査自動化システムの国内大型案件に附随する他社製品の販売が増加。
(3)下期の取り組み
①重点施策の進捗状況
三坂社長に聞く

三坂 成隆社長に、自社の強み、今後の成長戦略、投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「社長が考える自社の強みや特長は何でしょうか?」
A:「総合提案力、高い技術力が当社の強み。チャレンジを続け大きな成長を目指していく。」
まずは何と言っても「総合提案力」だ。電解質検査、グルコース検査にほぼ特化しながらも、検査室に必要な製品を供給でき、レイアウトまで含めて総合提案できる企業は数少ない。また装置を納入するだけでなくアフターフォローまで一貫して提供することでお客様からも高く評価いただいている。
高い技術力も当社の強みだ。血液検査における血液の前処理装置でのスピードやクオリティで評価され、世界的有力企業にOEM供給を行っている。加えてFDA(米国食品医薬品局)の基準をクリアしたことも当社の評価を更に高めたという点で大きなポイントとなった。
トクヤマのステディさ(堅実さ)とアナリィティカルインスツルメンツのベンチャースピリットがバランスよく融合されている企業風土は当社の特長だ。当社社内で保有する様々な要素技術をベースに、新たな分野にチャレンジしていく。私は3代目の社長だが、就任時に「A&Tを超えて」をテーマに掲げた。従来の発想にとらわれることなく新しいコンセプトで更に大きな成長を目指していく。
Q:「社長としての自身のミッションをどう考えていますか?」
A:「トップラインの拡大を目指す。そのために生産能力の増強と開発力のブラッシュアップに注力する。」
私のミッションは「A&Tを超えて」とある通り、当社を更に成長させることと考えている。売上高経常利益率10%以上と、収益性も重視するが、トップラインの拡大を最重要目標と定めている。
そのためにはもう少し背伸びをしてもいい。もちろん無理、無茶はしないが、全社挙げてもっとトライをしていかなければならない。
具体的にはまず生産能力の増強に注力する。今期江刺工場の増設に着手した。17億円の投資により生産能力はこれまでの倍以上となり、今後の海外展開のための基盤となるマザー工場とする。海外での生産拠点設立はまず新しい江刺工場をしっかりと立ち上げ、湘南サイトの再編後の課題として検討していく。
生産能力増強と同じく重要なのが開発力のブラッシュアップだ。
そのための仕組み作りとして、月1回の開発リーダー会議に加え、これも月に1回「開発戦略会議」を開いている。
これは、電気、機械、ソフトウェア、ケミカルなどの技術サイドの議論に、営業や生産の事業サイドも加わり、技術のシーズと顧客のニーズを融合させて既存製品の改良や新たな製品開発に繋げるもので、活発な議論が繰り広げられている。
この他、様々な分野で頻繁に勉強会なども行い、開発力強化に取り組んでいる。
当社飛躍のため、開発に携わる社員にはより自主性、自発性を持って今まで以上に提案力を高めてもらいたいと考えており、機会があるたびに社内へメッセージを発信している。
Q:「今後の戦略を短期、中期、長期に分けてお聞かせください。」
A:「短・中期的にはLIS、LASおよびOEM供給の拡大、長期的には検査室外に活躍の場を広げていく。」
短期的には国内の血液検査事業は大きな伸びは期待しにくいが堅調に推移するだろう。その上で、まだまだ市場開拓の余地がある臨床検査情報システム(LIS)、検体検査自動化システム(LAS)の拡大に注力する。また海外向けのOEM供給については既存OEM先との連携を強化するとともに、新規供給先の開拓も進める。
中期的にはLIS、LASを海外でも大きく展開していきたい。
長期的には、医療費抑制や、病気になってから対応する「医療」中心から病気になる前の未病段階での「予防」重視という流れの中で、POCT(※)の視点に立った事業展開、つまり、これまでの「検査室内での総合提案」にとどまらず、検査室から出て新たな事業の柱を構築する事が必要になるだろう。これに向けてより積極的に研究開発活動を展開していく。
(※)POCT(Point Of Care Testing:臨床現場即時検査)
小型分析器や迅速診断キットを用いて医療現場で行うリアルタイム検査。病院の検査室あるいは外注センター以外の場所で実施されるすべての臨床検査を包含する。そのため実施場所や活用法においては、広域かつ多様なケースが想定される。
被検者の傍らで医療従事者が行うため検査時間の短縮および被検者が検査を身近に感ずるという利点を活かし、迅速かつ適切な診療・看護、疾患の予防、健康増進等に寄与し、被験者のQOL(Quality of life)向上に資すると言われている。
Q:「コーポレートガバナンスについてのお考えをお聞かせください。」
A:「株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築を目指す。」
コーポレートガバナンス・コード適用を機に、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ機関設計を変更した。
これまでの社外監査役はトクヤマからの人間だったが、今回からトクヤマとは関係の無い方に社外取締役に就任して頂いた。
監査等委員会設置会社にはいろいろ疑問の声があることも承知しているが、私はこの制度が日本に実はフィットするのではないかと考えており、それを実績として示していきたいとも思っている。
今回の変更を機に経営陣の意識も大きく変化してきたと考えており、株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築を目指す。
Q:「最後に投資家へのメッセージをお願いします。」
A:「様々な技術を磨き上げて事業化を進めていく。その可能性に注目して応援していただきたい。」
ベンチャー企業として誕生してから40年弱経つが、今後もベンチャースピリットを持って成長を追求していきたい。そのために今後も積極的な投資が必要であるため、配当については安定配当の継続を基本方針としていることを是非ご理解いただきたい。
創業以来、多くの要素技術を保有し、それを活かして幅広く事業を展開するという企業風土や文化が当社にはある。
そうした様々な技術を磨き上げて一つ一つ形にしていく考えで、その発展可能性を投資家の皆さんには是非注目して中長期の視点で応援していただきたい。
今後の注目点
市場環境の項で触れたように、生化学検査分野において日本企業は世界的に高い競争力を有している。
同社の場合、日本電子へのOEM製品がシーメンスに供給されているが、会社側が今後の注力分野として挙げているOEM供給先の多様化、拡大がどんなスピードで進んでいくかを注目していきたい。
また、LIS、LASは国内のみならず海外市場においても大きな需要が想定できることから、こちらの開拓状況についても期待していきたい。
一方で、今期減益という事もあるが、PERは1ケタ台、PBRは1倍割れと、株価評価は極めて低い。認知度の向上とともに中期的な成長戦略の明示も望まれる。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年3月31日に提出している。
また、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則5項目を全て実施している。

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