(2183:東証1部) リニカル 2016年3月期業績レポート

2016/07/06

linical

今回のポイント
 
・16/3期は前期比57.4%の増収、同136.2%の経常増益。売上面では、日本、アジア、米国、欧州におけるグローバル受託体制の構築を強力に推し進めたことにより、国内案件、海外案件及び国際共同試験のいずれも受注が好調に推移したことからCRO事業を中心に大幅に増加した。利益面でも、日本の業績好調に加え、海外子会社の大幅な赤字額の縮小及び黒字化が寄与しCRO事業を中心に大幅に増加した。

・17/3期の会社計画は、前期比12.6%増収、同3.7%の経常増益の予想。売上面では、高い評価を受けている既存顧客のリピート受注に加え、新規顧客に対しても引き続き営業活動を強力に推進することにより拡大を図る。利益面でも、韓国、欧州子会社のM&Aに伴うのれん償却の影響が続くとともに、海外子会社における先行投資が発生するものの、CRAの稼働率を維持することにより、利益の拡大を目指す。配当は1株当たり10円であるが、16年1月1日効力発生の1:2の株主分割を考慮しない場合の期末配当は20円となり、実質6円の増配となる。

・好調な受注環境の一方で、CRO業界は人手不足が深刻化しており今後の成長のボトルネックになるのではないかとの懸念が強まっている。同社は中途採用に過度に傾斜するのではなく積極的に新卒採用を行った社員の教育を通じて受託能力の拡大を図っている。今後も競合他社に比べ受託能力で優位性を発揮することが予想されるものの、更なる工夫が必要となりそうである。株式市場が懸念する人材不足を解消し旺盛な受注を獲得できるのか今後のボトルネック解消の動きが注目される。

 
会社概要
 
臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後{以下製販後という}臨床研究・調査の受託などを行う育薬事業を手掛ける。
医薬品は発売前に厚生労働省の承認・認可を受けることが義務づけられており、承認前の薬剤(医薬品候補)を患者さまに投与して効果や安全性を確かめる必要がある。その臨床試験としての治験を支援する事業がCRO(Contract Research Organization)である。また、医薬品は製造販売後も調査、臨床研究を行う必要があり、その段階を支援する事業が育薬(Contract Medical Affairs)である。
同社は創業以来、がん・中枢神経系など、世界中の人々がその撲滅を願い、新薬開発への強いニーズが存在する疾病領域を中心にCRO事業を展開してきた。これらは非常に難易度が高い領域であり、同社の知識・経験豊富なエキスパートが高度な治験を支えている。また、同社は創薬支援・育薬事業にも力を注ぎ、申請業務支援、承認後のマーケティングや臨床研究、製造販売後調査支援まで、単なるアウトソーシングを越えてお客様の事業を幅広くコンサルティングする「製薬会社の真のClinical Development Partner(医薬品開発パートナー)」を目指している。更に、国際化・大規模化が進む医薬品開発の流れのなかで、グローバルで大規模なプロジェクトにも同社グループのワンストップで十分な対応を行い、製薬会社とともに新しい時代を開拓していく戦略的ビジネスパートナーとして、顧客の市場競争力の拡充をトータルに支援している。
 
 
【沿革】
2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO.,LTD.とLINICAL KOREA CO.,LTD.を設立。14年4月には、LINICAL KOREA CO.,LTD.と買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。14年10月29日には欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbHとの間で締結し、12月1日付けで同社の100%子会社となった。更に、グループとしての一体感の醸成と連携強化を図るため、連結子会社となったNuvisan CDD Germany GmbHの名称をLINICAL Europe GmbHに商号変更した。
 
 
【業務内容】
CRO事業
主力のCRO事業においては、新薬の迅速な市場投入につながる高品質で高効率な治験の支援を目指して、高い技術と豊富な経験をもつスタッフが担当にあたっている。今後も拡大するグローバルスタディに対応していくため、アジア(韓国、台湾、シンガポールなど)と欧州、米国に拠点を開設。薬事から企画、実施計画書の作成、モニタリング、データマネージメント、統計解析、ファーマコビジランスまでワンストップで対応。国際共同試験においては、リニカル本社を窓口に位置づけ、各国に医薬品開発事情に精通した人材を配置。日本語ベースで機動的な国際共同治験が可能な開発環境を整えている。10年から20年近くに及ぶ新薬開発プロジェクトの中でも、3年から7年を要するといわれる治験で特に重要とされる患者を対象とする「第II相(フェーズII試験)」「第III相(フェーズIII試験)」のプロセスに特化し、治験の核となる「モニタリング」を「品質管理」「コンサルティング」とともに提供。信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な新薬開発の実現を支援している。さらに担当領域も市場からの開発要請の強いがん領域や中枢神経系領域をはじめ難易度の高い領域に特化することで、顧客である製薬会社のニーズに応えている。
 
 
育薬事業
医薬品承認後の臨床研究は、臨床現場における医薬品使用について有効性の検証、安全性の確認、相互作用の検討等を実施するもので、医療の質の向上に寄与するEBM(Evidence Based Medicine)データを創出。近年、臨床研究についてルール整備が進んでおり、従来の医師主導臨床研究に加え、企業主導臨床研究も多く実施される様になってきている。同社は、治験で培った臨床試験のノウハウに加え、最新の規制情報に対応した臨床研究をグローバルで実施することができ、試験の介入研究のみならず、観察研究、データベース研究と各種の臨床研究の受託が可能。今後、製薬会社においては、営業活動の適正化・透明化に伴い、各疾患領域のKOL(Key Opinion Leader)への意見聴取は、MA部(Medical Affairs)のMSL(Medical Science Liaison)が主体として実施することが予測されている。MSLは、KOLエンゲージメント、アドバイスボードの運営、講演会運営等を多種の業務を実施しており、その育成も重要となってきている。同社は、これまでの営業資材作成、ROL(Regional Opinion Leader)支援、臨床研究の手順書作成支援、コンサルティング業務の経験を生かし、各種MSL業務支援をグローバルで実施。
 
 
創薬支援事業
同社が提供するサービスは、治験のモニタリング業務の受託、 新薬の販売支援などにとどまらず、 開発計画の立案や治験計画書作成から発売に至るまでの医薬品開発業務全般に幅広く対応するなど、クライアントである製薬会社のニーズに的確に対応。更に、医薬品開発の初期段階にある、「クスリの種」となるような化合物について、創薬ファンドや助成金などを活用したリスクの少ない開発の提案を行う。
 
 
【強み】
(1)知識・ノウハウ・経験等の専門性を集中し製薬会社の様々なニーズに対応
1つの新薬が開発・承認され市場で販売されるまでには 10~18年もの長い歳月を要する。 その中でも、3~7年の期間を要する治験では、準備不足やデータ不備、思わぬトラブルのために往々にしてスケジュールが遅れ、販売遅延の原因になる場合がある。 同社は経験豊かなCRAがオリエンテーションの段階から臨床開発におけるプロセスを見通し、「いかにしてスムーズに進められるか」を考え、予測できる問題を未然に防ぎ、高精度のデータをスピーディーに収集するノウハウを持っている。更に、同社は事業特化型CROとして、経営効率の高い下記の3業務へ特化していることころに特徴がある。
① 開発のコアである3つの業務(「モニタリング業務」「品質管理業務」「コンサルティング業務」)に特化し、100%社内で受託する体制を整備。
② 治験の中でも特に重要な2つの試験段階(「第II相・第III相試験」)に特化。
③ 豊富な医薬品開発情報を有する大手製薬会社に特化。
 
(2)難易度が高く競争相手が少ないがん領域や中枢神経系領域のモニタリング業務に強み
難易度が高く競争相手が少ないがん領域や中枢神経系領域のモニタリング業務に強みを有する。例えば、がん領域であれば、薬の副作用によるものか、がんの進行によるものか、安全性評価が難しく、中枢神経系領域であれば、例えばアルツハイマー病の患者は問診等による薬の有効性評価が難しいため、モニタリングでは高度な対応が必要とされる。この他、急性疾患や特定疾患(いわゆる難病)と呼ばれる領域も難易度が高い分野で、がん領域や中枢神経系領域と共に新薬開発が活発だ(しかし、対応できるCROは限られる)。一方、生活習慣病の治験は患者の状態が比較的安定しており、有効性評価についても比較的容易であるため、難易度は低い(例えば、糖尿病では血糖値の測定データの収集が中心)。
新薬の開発トレンドは生活習慣病から治療満足度が低いがん領域や中枢神経系領域にシフトしているが、上記の通り、がん領域では安全性情報の取り扱いが難しく、中枢神経系領域では有効性評価の標準化が難しい。このため、これらの領域では同社のように受託実績を有し、経験豊富なメンバーを有するCROに案件が集中する傾向がある。
受注残高は、がん領域、CNS領域、急性疾患や特定疾患などのその他領域で拡大傾向。
 
 
 
 
(3)高い収益性
同社が手掛ける案件の逸脱率は非常に低く抑えられており、また、症例の組み入れやデータの回収期間を含め、全案件の8割程度は実施期間の短縮に成功している。同社は難易度の高い分野で高品質・短納期を実現しているため適正価格での受注が可能であり、スケールメリットのハンデを補って、高い利益率を実現している。
収益力の源泉となるのがCRAの質だが、同社CRAの質の高さを示す一例として、GCPパスポート認定試験の合格率をあげる事ができる。GCPパスポート認定試験とは、わが国の臨床試験および臨床研究の推進と質の向上を図ることを目的にした試験で、日本臨床試験学会が実施している。なお、同社では受験資格を得た社員はすべて受験をしており、他社と比べると高い合格率を誇っている。
 
 
 
経営戦略
 
(1)CRO事業
CRO事業の重点戦略は、①がん領域や中枢神経系領域などで実績を積み上げるとともに、リピート受注から独占契約へつなげる、②早期に国内CRA300名体制を構築し、CRAの高稼働率を維持するするとともに、米国・台湾の規模を拡大する、③グローバル体制構築による国際共同試験のワンストップ受託を拡大するというもの。
 
 
国内は、案件増加への対応するため、質・スピードを確保しつつ人材を積極的に採用し、早期にCRA300名体制を構築する。更に、CRAの高稼働率を維持するとともに、がん領域や中枢神経系領域などにおける独占契約の拡大を図る。
17/3期は、薬学を中心とした定期採用で確実な増員を確保するとともに、中途採用は競争激化も前年並みの採用を確保する計画。
 
グローバル展開
グローバルでは、確立した日亜・米・欧州における国際共同試験の受託体制を武器に、今後事業の拡大を加速させる。治験の多国間実施体制の整備の一環として、2013年5月に、LINICAL TAIWAN CO., LTD.(台湾台北市、資本金1千万台湾ドル)、及びLINICAL KOREA CO., LTD.(韓国ソウル特別市、資本金10億ウォン)を設立(いずれも100%出資)。2014年4月には、LINICAL KOREA CO., LTDと買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。また、2008年7月に設立したLINICAL USA, INC.(米国ニュージャージー州)は業務拡大を目的として2014年9月にサンディエゴ事務所を設立した。更に、2014年10月29日に欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで完全子会社化が完了、同時に商号をLINICAL Europe GmbHと変更した。これにより日亜・米・欧3極による受託体制が確立された。
 
 
連結子会社となったLINICAL Europe GmbH(旧Nuvisan CDD Germany GmbH)は、欧州の主要各国でCROの事業を行っているため、同社グループの受託体制が飛躍的に強化、拡充されグローバルによるワンストップサービスが可能となった。LINICAL Europe GmbHの子会社は、ドイツ、スペイン、フランス、オランダ、クロアチア、イギリスに所在し、それら隣国でのモニタリングサービスを提供している。これにより、同社グループがサービスを提供できる国は、パートナー経由も含めると40カ国前後まで一気に拡大した。また、LINICAL Europeは、同社グループが注力しているがん領域の臨床試験を中心に、グローバル大手製薬企業に対する国際共同試験をはじめとする豊富な試験の実施経験を有しており、同社グループとの大きなシナジー効果が期待される。更に、LINICAL Europeは、国際共同試験のモニタリング以外にも、eCRF、CDISK対応を含めデータマネジメント、統計解析、メディカルライティングにおいて豊富な実績を持っており、今後同社グループにおいて国際共同試験のフルサービスを一括受注することが可能となった。
 
 
また、今後の更なる海外拠点の拡張のため米国地域において、日米製薬会社が集中する東海岸(ニュージャージー)に米国子会社の本社を移転。今後は、中南米への進出を検討している。アジア地域においても、台湾の規模を拡大するとともにシンガポールに子会社を設立。今後、香港、中国、フィリピンへの進出を検討している。
 
(2)育薬事業
他社が手掛けるMRの派遣サービスとは一線を画し、同社が主体となって業務を進める受託サービス型の育薬事業を志向している。具体的には、特定の疾患領域やエリアで経験豊富なMRを採用し、CRO事業部で蓄積したノウハウを活用する事で専門性の高い業務を受託し差別化を図っていく考えで、現在、臨床研究のサポート業務受託とプロダクトマーケティング(リエゾン)業務受託が2本柱。臨床研究のサポート業務受託は、エビデンス創出のための臨床研究において質の確保が課題となっている。同社では、手順書作成などの体制構築サポートやモニタリング、監査などを実施している。プロダクトマーケティング(リエゾン)業務では、未経験領域の新製品上市に伴う新規医療機関・医師の開拓や製品差別化戦略の提案・実行を行う。13/3期は臨床研究の受託に成功し、セグメント損益が黒字転換し、14/3期以降臨床研究等の新規受注により売上・利益の成長が加速してきた。
 
 
(3)創薬支援事業(新規事業の育成)
製薬会社・バイオベンチャーにおいては、短期業績に影響の少ない新薬開発スキームを構築したい、開発計画作成から申請までワンストップで委託したいというニーズが高まっている。また、患者や台湾と日本の行政当局においては、アジア諸国でドラックラグ化合物の積極的な開発を行って欲しい、がん・痴呆・難治性疾患への新薬の開発や再生医療の実用化を行って欲しいというニーズが高まっている。同社では、こうした昨今のニーズへの対応を念頭に創薬支援事業の育成を目指している。このため、治験実施計画書作成、データ回収以降の業務を含む案件の戦略的な受託と経験の拡充に取り組むとともに、助成金/創薬ファンドの活用による早期段階に限定した化合物の自社開発を行うことを計画している。こうした創薬ファンドを活用した化合物の開発は、今後の同社のCRO事業の拡大に繋がるとともに、これまでの経験で同社が培ってきた目利きの力が生かされる。更に、開発計画立案から当局対応までの受託経験が蓄積される。
 
 
2016年3月期決算
 
 
前期比57.4%の増収、同136.2%の経常増益
売上高は前期比57.4%増の76億66百万円、経常利益は同136.2%増の19億85百万円となった。
同社が属するCRO業界とCSO業界は、医薬品開発・販売のアウトソーシング化及び国際共同試験の増加を背景として、市場規模は緩やかに拡大している。
こうした中、売上面では、日本、アジア、米国、欧州におけるグローバル受託体制の構築を強力に推し進めたことにより、国内案件、海外案件及び国際共同試験のいずれも受注が好調に推移したことからCRO事業が大幅に増加した。育薬事業においても製販後の臨床研究を中心とした案件の受託により増加した。
利益面でも、CRO事業において日本の業績が好調に推移したことに加え、海外子会社の大幅な赤字額の縮小及び黒字化が寄与した。また、育薬事業おいても受託案件の増加により人員の稼働率が上昇したことが利益に貢献した。国内増員、欧州M&Aなどの拡充に伴い原価人件費等が増加したものの、売上総利益率は45.1%と前期比8.4ポイントの大幅な上昇。一方、欧州M&Aなど海外拠点の拡充にともないのれん等の販管費が増加した影響により、売上高対販管費率は、18.8%と同0.1ポイント上昇した。この結果、営業利益は20億12百万円と同129.5%増加した。 また、営業外費用で為替差損が前期比約20百万円減少したことなどにより経常利益の増益率が高まった他、前期に計上した退職給付費用105百万円がなくなったことなどにより、親会社に帰属する四半期純利益の増益率も高まった。地域別では、米国は増員等による先行投資負担が影響したものの、欧州、台湾、韓国等は計画を上回り好調に推移した。
2016年1月1日を効力発生日として1:2の株式分割を実施。分割後の配当金は1株当たり10円(記念配当1円を含む)となった。株式分割を考慮しない場合の1株当たり配当金は20円となり、前期比6円の増配。
 
 
CRO事業、育薬事業ともに大幅な増収増益となった。
 
 
CRO事業、育薬事業共に、1年から3年程度の受託契約期間において、契約に従い毎月売上が発生する(受託総額が毎月案分計上される)。受注残高は、既に契約締結済みの受託業務の受注金額の残高である。このため、今後1年から3年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。

2016年5月13日時点の受注残高は、前期末(2015年3月)に比べ、19.5%増加。これは、既存の受託契約を順調に消化し受注残高の金額が売上高として計上されたものの、これを上回る受託案件の新規契約があったもの。アウトソーシング化及び国際共同試験の増加を背景に足元の受注環境は良好であり、営業活動の成果により既存・新規顧客からの受託案件の打診が多いことから、同社ではCRA(臨床開発モニター)の増員などにより、受託体制の強化を図る計画。
 
 
 
16/3期末の総資産は前期末比14億79百万円増の71億22百万円。資産サイドは現預金が、負債純資産サイドは預り金と利益剰余金が主な増加要因。16/3期末ののれんは、12億12百万円と同2億96百万円の減少。CF面では、税金等調整前当期純利益の増加などにより、営業CFのプラスが拡大。連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少により投資CFもプラスとなり、フリーCFも大幅なプラスへ転換した。一方、社債の償還による支出などから財務CFはマイナスとなった。
16/3期末の自己資本比率は42.4%と前期末比約5.9ポイントの上昇となった。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比12.6%の増収、同3.7%の経常増益予想。
17/3期の会社計画は、売上高が前期比12.6%増の86億33百万円、経常利益が同3.7%増の20億60百万円の予想。
大手製薬会社は、大型製品の特許切れの影響を補完するため、アウトソーシングによる経営の合理化・効率化並びに有望な医薬品開発品目の確保のため、海外ベンチャー企業の買収などを加速させており、医薬品開発のための治験受託件数は増加するものと予想される。特に、がん領域及び中枢神経系領域においては、いまだに有効な治療法が確立していない疾病があるため、その治療薬の開発が強く望まれており、こうしたニーズに対応するための医薬品開発は増加傾向となっている。
こうした環境下、CRO事業においては、高い評価を受けている既存顧客からのリピート受注の獲得と営業活動の強化により新規顧客の獲得を目指す。特に、同社グループが得意とする顧客ニーズの高いがん領域及びCNS領域を中心に、国際共同治験を含む新規案件を受託し、売上高の拡大を図る計画。利益面においては、韓国、欧州子会社のM&Aに伴うのれん償却の影響が続くとともに、海外子会社における先行投資が発生するものの、CRAの稼働率を維持することで利益の増加を図る。また、育薬事業においても、新規顧客に対する営業活動を強化し、CRO事業で得たノウハウを活かした専門性の高い領域での新規案件の受託を拡大する。
営業利益は前期比3.1%増の20億75百万円の予想。国内の増員と米国の拡大など先行投資負担の増加を織り込み、売上高営業利益率は24%と前期比2.2%ポイント低下する保守的な計画となっている。その他、営業外損益と特別損益の大きな計上の予定はない。
なお、同社の17/3期の会社計画は、各地域の計画の積み上げとなっており、グローバル体制強化による国際共同試験のワンストップ受注や海外拠点とのシナジー効果は考慮されていない模様。
 
 
今後の注目点
16/3期決算は、売上高が前期比57.4%の増収、経常利益が同136.2%の増益と非常に好決算となった。一部製薬会社からの受注の急増も寄与し同社の売上と受注残高は拡大傾向を強めている。同社が強みを有するがん領域や中枢神経系領域においては、今後も新薬の開発加速が予想され、同社のCRO事業の成長期待も大きい。その一方で、CRO業界は人手不足が深刻化しており今後の成長のボトルネックになるのではないかとの懸念が強まっている。同社は中途採用に過度に傾斜するのではなく積極的に新卒採用を行った社員の教育を通じて受託能力の拡大を図っている。今後も競合他社に比べ受託能力で優位性を発揮することが予想されるものの、更なる工夫が必要となりそうである。株式市場が懸念する人材不足を解消し旺盛な受注を獲得できるのか今後のボトルネック解消の動きが注目される。
また、同社の17/3期会社計画は売上高が前期比12.6%の増収、経常利益が同3.7%の増益と非常に保守的な内容となっている。売上においては、各地域の計画の積み上げで作成されており、グローバル体制強化による国際共同試験のワンストップ受注や海外拠点とのシナジー効果は考慮されていない。また、利益計画においては、国内や米国や台湾などにおける積極的な先行投資負担の影響を考慮した内容となっている。国際共同試験をワンストップで受注できた場合、従来からの各国単独の受注に比べ、1プロジェクトあたりの受注金額が数段大きくなることが予想される。また、シナジー効果により収益性の向上も期待される。今期から国際共同試験のワンストップ受注を獲得できるのか今後の受注動向が注目される。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降のコーポレート・ガバナンス報告書直近の提出日、2016年6月24日。

<基本的な考え方>
当社は、その有している医薬品開発の技術をもって国内大手製薬会社のパートナーとして医薬品開発に貢献し、医薬品の分野から社会全体の期待に応えてまいります。さらに、企業価値を高めていくためには、健全性と透明性が確保された迅速な意思決定を可能にする体制の整備が必要であると考えております。
そのため、今後は最重要課題であるコンプライアンスの徹底を含む内部統制の強化を図っていく所存です。
 
 
 
<その他>
同社は社外取締役を選任していない。CGCでは複数の社外取締役の導入を推奨しており、社外取締役を選任している一部上場企業は9割を超えている(15/6月 東証)。昨年の会社法改正以降、監査等委員会設置会社への移行が進んでおり、従来からの社外監査役が取締役になることで複数社外取締役の条件を満たす企業も多い。同社には社外監査役が3名おり、制度上の資格を満たすことは可能であるが、あえてその形式をとらずに、リニカル個別の事情を踏まえコードの原則を実施することが適切かどうか、そして実施しない理由を具体的に説明している。その他、株主総会の議決権行使の方法の選択肢や反対票が多かった場合の開示については今後検討していくとしている。
 
 

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