(6250:東証1部) やまびこ 2016年3月期業績レポート

2016/06/29

yamabiko

今回のポイント
・小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機、など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。

・16/3期の売上高は前期比7.7%増の1,133億円。北米での小型屋外作業機械、国内の農業用管理機械が数量を伸ばしたほか、円安による押し上げ効果もあった。営業利益は同18.3%増の67億円。宣伝協力費の計上方法の変更や販売価格調整などによる粗利率の低下はあったものの、円安効果もあり2ケタの増益となった。

・17/3期の売上高はほぼ前期並みの1,140億円の予想。国内は新製品投入によるマーケットシェアの拡大やブランド力強化により増収を見込む。海外は、北米は円高により円ベースでは減収予想だが、良好な市場環境の下、小型屋外作業機械が堅調に推移しドルベースでは増収の計画。欧州では新製品投入効果、ロシアの底入れを見込んでいる。営業利益は同4.0%増の70億円。実質売上の増加に伴う利益増、販売台数増による実質原価率の改善などが寄与する。配当は前期と同じく30円/株の予定。予想配当性向は25.8%。

・「中期経営計画2017」では、重点施策として、「販売力の強化」、「製品競争力の強化」、「製品品質向上と生産効率の改善」、「経営基盤の強化」の4つを挙げている。各主力市場でそれぞれ着実に施策を進めている。米州市場は堅調だが、ロシア市場の低迷、今期の円高の進行などにより、最終年度となる今期の目標を引き下げた。

・「中期経営計画2017」最終年度目標の達成は残念ながら難しくなった。ただ、最大市場の米州においては、販売ルートの拡大、新製品の投入、主力製品のシェアアップといった明るい材料が揃っているのは今後に期待できる。今期の四半期ごとの進捗もさることながら、今回の未達を踏まえ次の中期経営計画においてどのような施策を打ち出してくるのか注目したい。一方、純資産倍率割れとなっている株価については、定量面においてはトップラインの拡大と収益性の向上、定性面では、独自の技術力を中心とした同社の強みの投資家における理解促進が必要となろう。

会社概要

小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。

【1-1 沿革】

同社は、国内で農業機械、グローバルで小型屋外作業機械を扱っていた株式会社共立(東・名・阪一部上場)と、グローバルで小型屋外作業機械及び一般産業用機械を扱っていた新ダイワ工業株式会社(東証2部上場)の2社が2008年12月に設立した共同持株会社「株式会社やまびこ」が、2009年10月に両社を吸収合併して事業会社化した会社である。

株式会社共立は、1947年、東京で創立された株式会社共立農機を前身とし、農業機械事業において「国産初のスピードスプレーヤ(農薬散布機)」、小型屋外作業機械事業において「国内初の背負動力刈払機」、「世界初の手持ち式パワーブロワ」を開発するなど、両事業におけるリーディング企業であった。また、創業時より小型屋外作業機械のエンジン自社開発に注力し、合併前の2008年のエンジン累計生産台数は4,000万台に上っていた。

一方新ダイワ工業株式会社は1952年、広島で創業した浅本精機製作所が前身。小型屋外作業機械事業において「国産初の電動チェンソー」を開発したほか、一般産業用機械事業においてエンジン発電機、エンジン溶接機などを製造販売。また、世界初の混合燃料使用の4サイクルエンジンを開発するなど、高い技術開発力を特長としていた。

1990年代後半に入り温室効果ガスを要因とする地球温暖化問題への関心が高まるとともに、欧米、特にアメリカでエンジンの排出ガス規制が強化され、新基準をクリアするための研究開発費が増大。これに対応できない中堅・小型企業を対象として小型屋外作業機械市場において2000年代に入りグローバル規模での業界再編が急速に進行した。
加えて、新興国企業による安値攻勢や顧客ニーズの多様化などにより、事業環境は一段と不透明なものとなっていた。

そうした中、激化する競争を勝ち抜くためには一段と企業体力を強化する必要があるとの判断から、両社は将来的な経営統合を前提として2007年5月に業務・資本提携契約を締結。
開発、生産、物流、販売、管理を始めとした全ての事業における効率化と拡充を目指して2008年12月共同持株会社、株式会社やまびこを設立し、2009年10月、株式会社やまびこが両社を吸収合併し事業会社化した。

社名「やまびこ」は、山の神「山彦」を由来としており、「人と自然と未来をつなぐ」を経営理念とし、自然と環境の育成・整備への貢献を掲げる同社の姿勢を表している。

【1-2 経営理念など】

やまびこグループの理念は「エッセンス」、「存在意義」、「行動指針」という3つの要素で構成されている。
「エッセンス」は、「存在意義」と「行動指針」を凝縮した、やまびこグループとして目指すべき企業の姿・企業活動の本質を表現したもの。
「存在意義」は、やまびこグループが社会の中で担うべき役割と責任を宣言し、約束するもの。
「行動指針」は、やまびこグループの社員一人ひとりが業務に臨むべき姿勢をまとめたもの。

これに加えて、行動指針を補完し、具体的な対応方法を示した14項目からなる行動指針細目を制定し、企業理念に則った事業活動が行われるように努めている。
永尾社長はこれら「エッセンス」、「存在意義」、「行動指針」を念頭に置いたメッセージを日頃から様々な機会を捉えて発信している。また各部門・部署ごとに実際の行動に結び付けるよう日々取り組んでいる。

≪永尾 慶昭社長プロフィール≫

永尾 慶昭社長は1953年2月生まれの63歳。子供の頃からプラモデルなど「モノ作り」が大好きだった永尾社長は、中学に入ると所謂「アメ車」を始めとした自動車に大きな関心を持ち始め、大学院ではエンジンを研究する「燃焼工学」を専攻。1978年4月に(株)共立に入社した。
入社後は研究部に配属。自ら関心のある課題を見つけて自由に取組むという社風もあり、チェンソーを中心に
様々なエンジンの研究、開発に携わった。また、研究室内で研究に没頭するのではなく、山へ出かけユーザーである樵(きこり)の方々からの製品評価や要望などをきめ細かく汲み取る事にも力を注いだという。

ほぼ技術畑を一貫して歩んできた後、2006年2月に米国の子会社エコー・インコーポレイテッドの代表取締役に就任。米国における排出ガス規制の状況とその対応、そうした中でユーザーの満足度をどうすれば高められるかに注力。また共立、新ダイワ工業の合併時には現地販売ルートの整理をスピーディーかつドラスティックに進めるなど、ご自身でも「仕事の幅が広がる重要なステップであった。」と振り返る。
やまびこ設立後、取締役兼執行役員産業機械本部長として、新ダイワ工業の本社所在地である広島で統合後のスムーズな一体化にも注力。2011年6月、(株)やまびこの代表取締役社長に就任した。

【1-3 市場環境】

小型屋外作業機械市場についての明確な統計は存在していないが、米国を始めとする北米市場が最大市場とされ、ついで欧州地域が続いており、日本は100万台という統計がある。
同社の収益動向に影響を与える関連指標としては、海外市場においては「住宅着工件数」、「穀物価格」、「原油価格」等、国内市場においては「米価」等が挙げられる。

小型屋外作業機械でグローバルに展開するメーカーとしては、欧州(ドイツ・スウェーデン)に2社存在すると認識している。

【1-4 事業内容】
1.セグメント

小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業の3事業を展開している。また、この3事業で供給している機械のアクセサリー、部品の製造・販売も行っている。
(報告セグメントは、「小型屋外作業機械・農業用管理機械」、「一般産業用機械」、「その他」の3セグメント。但し、売上高については、小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業、その他の4つを開示している。)

『小型屋外作業機械事業』

「手で持つ」または「背負って」使用する小型エンジンを搭載した山林・緑地管理用などの機械の製造・販売を行っている。
主要製品は、チェンソー、刈払機、パワーブロワ、ヘッジトリマーなど。

長年をかけて蓄積してきたノウハウや顧客ニーズにきめ細かく対応する高い開発力をベースに、高性能・高耐久・高品質エンジンを産み出し続けている。

(ガソリンエンジンの仕組み)

小型屋外作業機械のチェンソーや刈払機などの動力には主に2ストロークガソリンエンジンが用いられている。
後述するように、同社のエンジン開発能力の高さは最も重要な特長・強みの1つとなっている。
ガソリンエンジンの仕組みおよびエンジンの種類による特長を知っておくことは同社事業を理解する上でも有用なので以下簡単に解説する。

ガソリンエンジンとは、基本的に以下の4つのステップを経てガソリンが燃焼する力でピストンを押し下げて動力を発生させるもの。

ピストンの往復運動は、クランクシャフトと呼ばれる部品によって回転運動に変換され、自動車の車軸やチェンソーの回転軸を回転させる。

この4つのステップ「1周期」をピストンの往復運動何回で完結するかによって、ガソリンエンジンは2ストローク・エンジンと4ストローク・エンジンの2つに概ね大別される。

「2ストローク・エンジン」

2つのストロークで1周期を完結させる。すなわち、「ピストン1往復、クランクシャフト1回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「吸入」と「圧縮」を行う。
2回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「膨張」によりピストンが下降し、その後半で「排気」を行う。

「4ストローク・エンジン」

4つのストロークで1周期を完結させる。「ピストン2往復、クランクシャフト2回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「吸入」を行う。
2回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「圧縮」を行う。
3回目のストローク(ピストンの下降):「膨張」によりピストンが急速に押し下げられる。
4回目のストローク(ピストンの上昇):燃焼済のガスが「排気」される。

4ストローク・エンジンは、吸気と排気をコントロールしやすいといったメリットがある反面、吸・排気バルブをシリンダーヘッド部に設置するため、シリンダーの胴体に設置されるポートから吸・排気を行う2ストロークに比べ構造が複雑になる。また、そのため重量も重くなる。

これに対し、2ストローク・エンジンは、混合気の吹き抜けやピストン運動を円滑にするために用いられるエンジンオイルが燃料と一緒に燃焼する割合が4ストローク・エンジンに比べると多いため、排気ガス中に有害物質が多くなるといった面があるものの、構造がシンプルで部品数も少ないため小型・軽量化が可能で、同じ理由からオーバーホールも容易といったメリットがあり、小型屋外作業機械には2ストローク・エンジンが最適である。

『農業用管理機械事業』

国内向けに農薬散布のための機械である防除機械、北米向け農作物収穫機械などの製造・販売を行っている。
主要製品は、防除機(スピードスプレーヤ、乗用管理機、動力噴霧機)、畦草刈機、大豆収穫機など。
2014年11月に、業務用ロボット芝刈機を開発、製造、販売するベルギーのベンチャー企業「ベルロボティクス社」を買収した。

共立が長年にわたって蓄積してきた送風技術、噴霧技術、ポンプ技術、機器の軽量化や小型化等が同事業における技術的な強みである。

『一般産業用機械事業』

建設・土木・鉄工用機械の製造・販売を行っている。
主要製品は発電機、溶接機、投光機、切断機、高圧洗浄機など。

新ダイワ工業が創業時から蓄積してきたAC(交流)モータ開発技術を進化、発展させた発電体設計技術や、電子制御技術、防音技術などが同事業における技術的な強みである。

『その他』

各種機械用のアクセサリーやアフターサービス用部品の製造・販売を行っている。
5ページのグラフにあるように収益性は最も高い。

2.ブランド

2社の統合によって設立された同社だが、両社製品は長年にわたり日本およびグローバルで認知されているため、ブランド名はそのまま、KIORITZ 、Shindaiwa 、ECHO の3ブランドを展開している。
更なるブランド価値の向上を目指し、積極的なマーケティング投資、新しい販売ルートの開拓を進めている。

3.開発体制
各事業では以下のような重点課題を設定し、開発に取り組んでいる。

排出ガス規制は今後もさらに厳しくなることが予想されるため、最重点課題である。
この他、電子制御分野において制御技術の研究を進めている。

4.生産体制

国内3事業所(横須賀、盛岡、広島)と4社の生産関連子会社を、海外では、アメリカ、ベルギー、中国、ベトナムに合計7社の生産関連子会社を有している。

5.販売ルート&販売方法

世界90か国以上、約2万8千店舗に同社製品は供給されている。
全売上高6割以上が海外売上となっている。

<国内市場>

7社の販売子会社が販売代理店、全農(全国農業協同組合連合会)、ホームセンター、建設機械レンタル会社等に販売し、エンドユーザーである農林業家、建設・土木・鉄工業者、緑地管理業者などに供給される。

販売店や代理店と協力しながら展示会を各地で実施し、実演や試乗などを通じて販売に繋げている。
また、販売店と同行してエンドユーザーを訪問。ユーザーのニーズを汲み取ったうえで製品開発に活かしている。

<北米市場>

子会社エコー・インコーポレイテッドグループがホームデポ(※)や代理店に販売し、エンドユーザーである緑地管理業者、ホームオーナー、農林業家、建設・土木業者などに供給される。

※ホームデポ(The Home Depot)
世界最大の住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン。1978年設立。2015年の売上高885億ドル(約9.7兆円)、純利益70億ドル(約7,700億円)。米国、カナダ、メキシコに2,274店舗を有する。NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場。(同社WEBSITEより抜粋)

ホームデポでは、GOOD、BETTER、BESTの区分で品質ごとに分類されており、高品質なBESTとして製品を供給しているのは同社のみである。これが、同社製品が北米市場で高く評価されている証左の一つとなっている。

中南米市場においては子会社エコー・インコーポレイテッドが各国代理店に販売し、その後販売店を通じてエンドユーザーに供給される。
欧州・アジア・その他地域では、やまびこが各国代理店に販売している。

海外の販売店では、ブランド別に製品を展示しており、エンドユーザーのニーズを聞きながら販売員が対面販売を行っている。
またホームセンターでは、各機種群別・価格別に製品が展示されており、エンドユーザーはニーズや予算、CM等で得たイメージを基に購入する。

【1-5 特長と強み】
①独自の生産技術力・一貫生産能力

同社最大の特長・強みは「独自の生産技術力・一貫生産能力」である。
中心事業である小型屋外作業機械に搭載される2ストローク・エンジンに関しては、開発、材料となるアルミの調達、鋳造、部品製造、加工、組立てまで全て自社で一貫して生産する体制をとっているが、世界的に見ても他に例がないという。なお、農業用管理機械事業と一般産業用機械事業の製品も動力源はエンジンであるが、主に外部調達をしている。

また、様々な課題を鉄めっき、放電加工などの自社独自技術で解決し、製品の品質向上や生産能力向上に結び付けている。
具体的には下記のような技術を確立している。

<具体例①:鉄めっき>

めっきとは金属などの材料の表面に金属の薄膜を被覆した表面処理のこと。エンジン製造においては、ピストンとの摩擦による摩耗防止のためシリンダー内部にめっきを施す必要がある。
従来は耐久性やコストからクロムめっきが一般的であったが、環境への悪影響、生産効率の低さといった問題点から、他の材料によるめっき加工が求められてきた。

同社では、環境負荷低減の観点などから1978年より「鉄めっき」に取り組んでいる。
当初日産能力は数百個であったが生産性向上、めっき精度の向上、環境負荷削減などを進めた結果、現在では仕上げ加工が不要で環境負荷を大幅に削減した鉄めっき技術を確立することが出来、日産能力も数千個と大幅に拡大させることができた。
現在鉄めっき関連特許を保有している。

<具体例②:放電加工>

前述の様に、2ストローク・エンジンは、部品数が少なく構造も4ストローク・エンジンに比べシンプルであるため、「手で持つ」、「背負う」小型屋外作業機械には最適であるが、混合ガスの一部が排気されるという側面があり、世界的に強化が進む排出ガス規制に対応するためには、混合ガスの流れをコントロールして効率よく燃焼させることが課題であった。
そのためには、シリンダー内面形状を変更(混合ガス通路とシリンダー内面の間に壁を設ける)する必要があり、生産方法の検討が必要となった。

ダイカスト鋳造(※)により「壁」を形成する事は可能だったが、その壁に混合ガスを燃焼室に導くための横穴を開ける必要があり、ダイカスト鋳造では横穴を開ける事は出来ず、また狭い箇所であるため切削加工も困難であった。

そこで同社では、ダイカスト鋳造の特長を活かしながら切削加工できない形状を加工するために「放電加工(※)」を採用することとした。
放電加工は複雑な形状も加工が可能である一方、加工時間が長く電極消耗が多いなどコスト面での課題があった。
同社は量産化に向け加工条件の研究、特殊電極形状の設計などに取り組み、加工時間の短縮、省人化、電極の低コスト化、能率向上など量産化に成功した。
放電加工関連特許保有件数は3件であり、他社には真似のできない同社独自技術を確立した。

(※)ダイカスト鋳造
金型鋳造法のひとつで、金型に溶融した金属を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間に大量に生産する鋳造方式のことで、薄肉化、低コストを可能にする。

(※)放電加工
電極と非加工物との間に短い周期で繰り返される放電によって、非加工物表面の一部を除去する機械加工の方法。極めて硬い鋼鉄などに複雑な輪郭を切り出すことができる。

同社はこれらの技術を始めとした「高度なモノ作り力」によって、排出ガス規制対応以外にも、軽量化、高耐久性、更なるコスト削減など様々なニーズに対応し、「排出ガス規制対応・軽量化・高耐久性2ストローク・エンジン」の開発・量産に成功している。
これらの課題に対応できず市場から退出を余儀なくされた企業も世界的に多数ある中で、同社はトップクラスのメーカーとして更なる成長を続けている。

②各事業固有の研究・開発力

環境問題の対応力は高く、同社エンジンに対する米国EPA(Environmental Protection Agency、環境保護庁)によるエンジン認証数は世界でもトップクラスとなっている。
また、小型屋外作業機械に限らず、農業用管理機械、一般産業用機械においても固有の研究開発力を有している。
共立、新ダイワ工業それぞれが長い年月を経て培った技術力をベースに、更に磨きをかけている。

③豊富なラインアップ・販売ネットワークの拡大

様々な顧客ニーズに対応し、3事業それぞれにおいて豊富なラインアップを有している。
また、現在世界90カ国以上、約2万8千店舗に同社製品が供給されている。
2社の合併によって、ラインアップおよび販売ネットワークは更に拡充された。

④充実したテクニカルサポート体制

製品に対する信頼性を高め、代理店や販売店との関係をより強固なものとするためにテクニカルサポート体制の充実にも注力している。
2013年4月から2016年3月の3年間に、17か国で128回に及ぶサービススクールを実施した。

⑤高い製品シェア

上記①から④の特長・強みを総合的に発揮してグローバルで高い競争力を実現しており、小型屋外作業機械事業では最大市場の北米で上位、日本においては30%以上のシェアを持つNo.1企業である。

売上高当期純利益率およびレバレッジの低下によりROEは低下傾向にあるが、2桁を超えている。
来期以降にかけてチャレンジ目標である「営業利益率7%」を達成できればROEの更なる上昇が見込まれる。

2016年3月期決算概要
米州堅調、円安効果もあり増収・営業増益

売上高は前期比7.7%増の1,133億円。北米での小型屋外作業機械、国内の農業用管理機械が数量を伸ばしたほか、円安による押し上げ効果もあった。
営業利益は同18.3%増の67億円。宣伝協力費の計上方法の変更や販売価格調整などによる粗利率の低下はあったものの、円安効果もあり2ケタの増益となった。
前期の為替差益が為替差損に転じたこと、欧州子会社(ベルロボティクス社)ののれんの減損損失を計上したこと等により、経常利益、当期純利益はそれぞれ同0.7%、4.3%減少した。

◎小型屋外作業機械

売上高は前期比12.0%増の653億円。
国内は、おととしの米価下落の影響による小型防除機が減少した一方、チェンソーの新製品効果やホームセンタールートで刈払機が引き続き好調で堅調だった。
北米では、住宅着工件数が前年比プラスで推移したことに加え、天候も順調で、良好な市場環境の下、数量が伸長した。
欧州では、チェンソーの新製品効果はあったが、ロシア市場の低迷のほか、熱波の影響で西欧でも刈払機が伸び悩んだ。
中南米は、政治、経済問題により依然販売が低迷している。

◎農業用管理機械

売上高は前期比7.5%増の184億円。
国内では、農業機械出荷実績が大きく減少する中、ディーゼルエンジン排出ガス規制施行前の特需もあり乗用型防除機等が好調だった。
北米では、穀物価格の低迷により主力の大型収穫機などが低調だった。

◎一般産業用機械

売上高は前期比11.1%減の99億円。
国内建設機械出荷額がほぼ前期並み。投光機などが減少した。

◎その他

売上高は前期比5.6%増の195億円。
国内は減収だったが、北米が順調な天候を背景に堅調に推移した。

たな卸資産の減少等で流動資産は前期末比29億82百万円減少の619億47百万円。退職給付に係る資産の減少で、固定資産は同18億8百万円減少の294億92百万円。
短期借入金の減少で流動負債は同61億64百万円減少の339億37百万円。長期有利子負債は増加したが、繰延税金負債が減少した結果、固定負債は同2億26百万円減少。負債合計は63億91百万円減少し453億57百万円となった。
利益剰余金の増加などで純資産は同16億円増加し460億82百万円。この結果自己資本比率は前期末より4.2%上昇し50.3%となった。
有利子負債は同27億51百万円減少し218億26百万円となった。

たな卸資産が減少したこと等により営業CFのプラス幅は拡大。前期にあった子会社株式の取得が無かったため投資CFのマイナス幅は縮小した。
短期借入金の減少などで財務CFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは小幅低下した。

2017年3月期業績予想
売上高はほぼ横ばいながらも、販売台数増加等により増益

売上高はほぼ前期並みの1,140億円の予想。国内は農業用管理機械でのディーゼルエンジン排出ガス規制に伴う駆け込み需要の反動減はあるものの、新製品投入によるマーケットシェアの拡大やブランド力強化により増収を見込む。海外は、北米は円高により円ベースでは減収予想だが、良好な市場環境の下、小型屋外作業機械が堅調に推移しドルベースでは増収の計画。欧州では新製品投入効果、ロシアの底入れを見込んでいる。
営業利益は同4.0%増の70億円。実質売上の増加に伴う利益増、販売台数増による実質原価率の改善などが寄与する。
為替レートは1ドル=110円(前期121円)、1ユーロ=120円(前期132円)と設定している。
配当は前期と同じく30円/株の予定。予想配当性向は25.8%。同社は配当について配当性向25%を目安にし、安定配当の継続を掲げている。

中期経営計画2017の進捗

同社では「中期経営計画 2017」(2015年3月期から2017年3月期の3年間)が現在進行中。

前中計を「次なる成長フェーズに向けた体制整備期間」と、いわば「守備固めの期間」と位置付けたのに対し、今回の中計は「収益力の伴った更なる事業拡大を推進し、利益体質強化を図る」事を目指しており、「攻めの期間」と考えている。

◎重点施策

重点施策として、「販売力の強化」、「製品競争力の強化」、「製品品質向上と生産効率の改善」、「経営基盤の強化」の4つを挙げている。

この重点施策を受けて各主力市場において様々な取り組みを行っている。

◎主力市場における取組

小型屋外作業機械事業における海外及び国内市場での主な取り組みは、以下の通り。

① 海外市場

『「ストラテジック・マーケティングの強化」によるシェア拡大』をテーマとして掲げ、各市場で具体的な取り組みを進めている。

<北米市場>

新規需要層の発掘と創出、販売チャネルの開拓と深耕に力を入れている。

*販売チャネル
代理店、ホームデポの主力ルートは引き続き伸びている。
また新規の販売チャネル開拓は、代理店の取組みや、ホームデポの通販などにより着実に増加している。
*製品
注力製品のチェンソー、刈払機のシェアは上昇している。
グローバルエンジンを搭載したパワーブロワ「PB-580」は出足好調で、通年でも大きく伸ばす計画である。
これまでの代理店ルートに加えて、今年1月からホームデポでもティラー(小型の土を耕す耕うん機)の取り扱いを開始。
代理店ルート、ホームデポ通販ルート向けにエンジンを使用しないバッテリー製品の販売を強化している。
新しい販売プログラムの実施やキャンペーンの実施により、利益率の高いアクセサリー製品の販売強化に取り組んでいる。
*プロモーション強化
新規需要層の発掘のためMLB(Major League Baseball)の野球場に広告を出すなど企業広告を強化しているほか、ウェブサイトの利便性を高めている。
ディーラーを通じたプロモーション強化のために、収益性の高い混合燃料などを対象とした期間限定プログラムを実施した。
<欧州市場>

欧州はこれまで日本のマーケティング部門が独自で活動に取り組んでいたが、より戦略的にブランド力を向上させるため、イギリスのマーケティングエージェンシーとタイアップする事とした。各国代理店からも好意的に受け取られている。

*マーケティング・サービス
代理店との関係強化に取り組むとともに、プロユース仕様である「ECHO」のブランドイメージを訴求するために屋外広告などを増やしている。
欧州の全代理店を対象としたサービスセミナーミーティングを開催した。
*製品
数機種のエンジンプラットホームを統合するグローバルエンジンを搭載し、燃焼効率の高い刈払機「SRM-2620ES」を発売した。
プロ志向のエンジン製品開発で培ってきた技術を踏襲した「プロ仕様バッテリー製品シリーズ」3機種を2016年
7月より発売予定。高度なモーター制御技術、プロも満足する作業量、低騒音が特長。
*ロシア市場
ルーブル安および原油安でロシア市場における売上は前々期、前期とも計画を大きく下回り、今期も前期並みと見ている。
② 国内市場

新製品導入やOEM取引の拡大等による売上伸長を図るとともにシェアの向上を目指している。

新規顧客開拓のため、「TRY! お試しキャンペーン」を2016年4月から8月に実施中。
保証期間を最長5年(ホームユーザー向け)とするワランティ期間延長制度を導入した。
大手ホームセンタールートを拡充した。
大手電動工具メーカーとのOEM取引が拡大している。
[設備投資、研究開発、減価償却]
2016年3月期の設備投資は45億円で当初計画より1億円未達。今期は当初計画35億円を上回る予定。
研究開発費は計画を1億円上回る51億円。製品開発に注力し、今期も51億円の計画を上回る予定。
減価償却は計画を2億円下回る35億円だった。今期も計画の37億円を下回る見込み。
[収益性の向上]

生産性向上及びコスト削減による収益力強化のため、「生産設備の自動化」、「組立ラインの短縮化」、「生産効率改善策の実施」、「資材費の削減」に取り組んでいる。

◎数値目標

最終年度の2017年3月期の目標として以下のような数値を掲げている。

永尾社長に聞く

永尾 慶昭社長に、同社の強み、今後の取り組み、投資家へのメッセージなどを伺った。

「経営統合は順調に進んでいる。シナジー効果を更に追求するのが自分の社長としてのミッション」
経営統合は順調に進んでいる。自分の長所の一つは誰とでもオープンマインドで付き合える事。統合過程で新ダイワ工業の本社である広島に赴任した際も、積極的に心を開くことで良好な人間関係を構築することができたと思う。
もちろん統合は100%完成したとは言えず、改革の余地はまだ残っている。私のミッションである「シナジーの最大化」を更に追求していく姿勢に変わりはないが、懸念や心配はしていない。
「やまびこ」として継続的に企業価値の向上に注力していく。
「最大の強みは全てを自前で完結させることができる技術力、製造能力」
当社最大の強みは何と言っても主力である小型屋外作業機械のエンジン製造の全ての工程を自社内で完結させることができる高い技術力、製造能力だ。
アルミの鋳造から手掛けている会社は当社以外他にはない。
例えばシリンダー製造に欠かせない内面のめっき加工は、特にクロムめっきは環境問題から外注先も無くなってきている。当社では「鉄めっき」技術を進化させてきた結果環境問題に対応できたことに加え、コスト競争力を強化する事もできている。
この強みを更に磨き上げる事で、グローバルでの競争力をより強化することができると考えている。
「積極的なマーケティングによるブランド力向上とシェア拡大に注力。ロボット技術にも取組む。」
中期経営計画2017は最終年度に入ったが、最も注力するのは充実した販路の活用や、マーケティング投資により、さらにブランド価値を上げ、シェアを拡大していくことだ。
当社は日本のメーカーとしては早くから米国市場に進出したことで、一定の認知度やブランド力、シェアを獲得することができた。ホームデポにおいて高品質の区分とされる、BESTの位置付けでECHOブランド製品を置くことができるのもそうした成果だ。
ただ、グローバル展開している競合2社も強固なブランド力を有しており、彼らが現在保有しているシェアを奪うのは簡単なことではない。
そこで、既に小型屋外作業機械を利用している層のみではなく、これから小型屋外作業機械を使用する潜在的なユーザー層に対する当社の認知度を向上させることも重要と判断し、TVCMを始め新たなマーケティング投資を行っている。加えて、新規販売チャネルの開拓にも取組み、ブランド力とシェアを更に向上させる。
一方で新技術や新製品の開発も重要な取り組みだ。2014年に買収したベルギーの「ベルロボティクス社」のロボット芝刈り機は欧州以外の地域を含む一層の拡販に注力するとともに、ロボット技術を転用した他の製品への展開にも挑戦する。特に、農業機械においては無人防除などの製品は社会的な有用性も高いだろう。
また、今後の事業展開においては、アライアンスも含め様々な展開を検討している。
「研究開発体制の更なるブラッシュアップも重要な課題だ」
当社の研究開発力は業界内でもトップクラスにあるのは間違いないがそれに安住するつもりはない。
長い歴史を持つ当社では開発スタッフの世代交代が進んでいるが、昔のように「こだわり」を持ったスタッフが減ってきていると感じている。その意味では「技術伝承」をいかに上手く進めていくかは大きな課題だ。
私の感覚からは少しおとなしい社員が増えている。決められたことはしっかりとこなしてくれる点は良いのだが、それにとどまらず、自らの殻を破るようなイノベーティブなアクションをもっと見せて欲しい。
そのためにはOJTのみでなく、技術伝承や開発力向上のための具体的な仕組みを人事制度も含めてより充実しなければならないと考えている。
「安定・継続して着実な成長を目指す当社を是非応援していただきたい。」
当社の手掛ける事業領域は成熟ステージに入っており、急激な拡大は望みにくいものの安定した成長を見込むことができる。
当社は高い開発力を武器に更なるシェア拡大を通じて着実な成長を目指していく。またトップラインの成長と同時に収益性の改善にも取組んでおり、売上高営業利益率7%以上を目指している。
同時に25%の配当性向を目安に株主の皆様には利益の還元もしっかりと行っていく。
是非中長期の視点で当社を応援していただきたい。
今後の注目点
「中期経営計画2017」最終年度目標の達成は残念ながら難しくなった。ただ、売上高60億円の未達(見込み)の内訳は、ロシア市場低迷に起因する欧州売上が36億円、国内売上26億円であるが、一方最大市場の米州においては、販売ルートの拡大、新製品の投入、主力製品のシェアアップといった明るい材料が揃っているのは今後に期待できる。今期の四半期ごとの進捗もさることながら、今回の未達を踏まえ次の中期経営計画においてどのような施策を打ち出してくるのか注目したい。
一方、純資産倍率割れとなっている株価については、定量面においてはトップラインの拡大と収益性の向上、定性面では、独自の技術力を中心とした同社の強みの投資家における理解促進が必要となろう。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
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