(4282:東証1部) EPSホールディングス 2016年9月期上期業績レポート

2016/06/22

EPSHD

今回のポイント

<div・16/9期上期は前期比16.3%の増収、同57.0%の経常増益。モニタリング業務を中心に国内CRO事業が堅調に推移する中、2Qに(株)綜合臨床ホールディングスを連結した効果で国内SMO事業の売上が同60.0%増と伸長。大型案件の順調な進捗等でGlobal Research事業の売上も同75.3%増加した。利益面では、原価管理の徹底等による国内CRO事業の収益性改善、Global Research 事業の損益改善(黒字転換)、更には(株)綜合臨床ホールディングスの寄与で営業利益が同55.6%増加した。

・通期予想は前期比16.1%の増収ながら、同2.6%の経常増益。上振れした上期決算を踏まえて通期予想を上方修正したが、人材投資や(株)綜合臨床ホールディングスの子会社化に伴うのれん償却等を織り込み下期の利益予想を引き下げた。この結果、通期の営業利益は1Q時の予想を10.5%上回るものの、前期比では4.7%の減益。期末配当は1株当たり10円を予定(上期末配当と合わせて、創立25周年記念配当2円を含む年20円となる見込み)。

・上期は利益が大きく上振れしたものの、主力事業であるCRO事業の受注が前年同期比22%強減少した。引き合いは旺盛だが、リソース不足で対応できないと言う。このため、下期はリソースの確保や新人事制度による人材育成等の予算を積み増す考えだ。加えて、上期決算には、前期の期ずれや下期に予定していた売上の前倒し計上等の特殊要因もあった。これらを踏まえた結果、下期の見通しは慎重なものとなった。

会社概要

「価値あるソリューションの創出を通じて、健康産業の発展に貢献します」を企業理念に掲げ、医薬品や医療機器等の開発に関わる業務を様々な角度からサポートしている。国内で展開する、CRO(Contract Research Organization:臨床試験に関連して製薬会社を支援)、SMO(Site Management Organization:臨床試験に関連して医療機関を支援)、及びCSO(Contract Sales Organization:医薬品の販売業務を支援)の3事業を収益基盤に、医薬品メーカーのグローバル治験(治験:新薬開発のための臨床試験)に対応するべくGlobal Research(グローバル・リサーチ)事業を育成中。また、日中のヘルスケア産業の懸け橋として専門商社の機能を担う益新事業の育成にも取り組んでいる。

国内事業は、国内CRO事業、国内SMO事業、国内CSO事業の3セグメントに分かれる。このうち国内CRO事業は、イーピーエス(株)、派遣型CRO業務の(株)イーピーメイト、医薬・医療系IT関連業務のイートライアル(株)、及び(株)EPSアソシエイトの4社で事業展開している。国内SMO事業は中間持株会社である(株)綜合臨床HDの下、SMO(治験施設支援機関)事業の(株)EP綜合とCRO(開発業務受託機関)事業の(株)綜合臨床メデフィが事業展開。国内CSO事業は(株)EPファーマラインの事業領域であり、医薬向けCMR(契約MR:医薬情報担当者)業務、医薬向けコールセンター業務、及びPMS(市販後調査)業務を手掛けている。

海外事業は、Global Research事業と益新事業に分かれる。Global Research事業は、統括会社である日本国内のEPSインターナショナル(株)と海外のグループ会社で構成され、CRO事業・SMO事業を手掛けている。一方、益新事業では、CRO・SMO事業以外の中国事業を手掛けており、日本国内のEPS益新(株)と中国国内の益新(中国)有限公司及びその海外グループ会社で事業展開。EPS益新(株)は日本国内からの益新事業全体の管理及びサポート、益新(中国)有限公司は現地における事業の統括を行っている。

その他グループ関連では、2016年9月期より新設したCPO事業と、主にグループのコストダウンを目的としたシェアードサービスで構成されている。CPO事業の統括会社であるEPI(株)は、データ処理のオフショア・ニアショアを展開している他、2015年10月に設立したジェイクルーズ(株)が臨床研究関連のサービスを展開している。(株)イーピービズはグループ内外にシェアードサービスを提供している。

【EPSグループ創業25年の歩み】

EPSグループは、CROからSMO、CSOへと事業領域を広げ、現在、医薬品開発にとどまらず、健康産業に関わる様々な事業をサポートする企業グループに成長している。また、早くから中国をはじめとした海外展開にも取り組み、新薬開発のグローバリゼーションへの対応も進めてきた。

EPSグループの歴史は、CROビジネスが黎明期にあった1991年に始まる。臨床試験関連のソフトウェアの開発・販売を事業目的とした(株)エプス東京として設立され、1993年に症例登録センターを設置し、CRO事業に本格参入した。SMO事業への参入は(株)イーピーリンクを設立した1999年。2005年に(株)イーピーリンクと(株)ミントが合併し、(株)イーピーミントが設立された(2011年にJASDAQ上場)。その前年の2004年には、1997年に設立した(株)サイバーメディカルの商号をイーピーメディカル(株)に変更してCSO事業に本格参入している。

海外展開では、1999年に中国現地子会社を設立して、Global Research事業の源流となるCRO及びソフト開発事業を開始。2008年には中国事業を現地で統括する益新(中国)有限公司を設立した。

BPO・CPO事業では、2010年にEMS(株)を設立し、医薬品マーケティング情報等のデータセンター業務を開始。2013年には、BPO事業の統括会社としてEPI(株)を、BPOの国内ニアショア拠点として(株)イーピーエス山梨(2015年にEPI山梨(株)に商号変更)を、それぞれ設立。2015年にはBPO事業をCPO事業に名称変更し、EPI(株)がEMS(株)を吸収すると共に、CPO事業の一環として臨床研究関連事業を育成・強化するべくジェイクルーズ(株)を新設。

2016年に創業25周年を迎えた。

2016年9月期上期決算
前期比16.3%の増収、同57.0%の経常増益

売上高は前年同期比16.3%増の256億50百万円。モニタリング業務を中心に国内CRO事業の売上が同8.3%増と堅調に推移する中、第2四半期に(株)綜合臨床ホールディングスを連結した効果で国内SMO事業の売上が同60.0%増と伸長。継続中の大型プロジェクト(グローバル案件)の順調な進捗と新規プロジェクトの寄与でGlobal Research事業の売上も同75.3%増と高い伸びを示した。
利益面では、モニタリング業務及びデータマネジメント業務での原価管理の徹底等による国内CRO事業の収益性改善やGlobal Research 事業の損益改善に加え、(株)綜合臨床ホールディングスの連結効果もあり、営業利益が37億94百万円と同55.6%増加。消費税等差益の増加や貸倒引当金繰入額の減少による営業外損益の改善、及び投資有価証券売却益の計上と減損損失の計上がなくなった事等による特別損益の改善で、最終利益は25億24百万円と同2.6倍弱に拡大した。

国内CRO事業

売上高134億43百万円(前年同期比8.3%増)、営業利益36億31百万円(同26.9%増)。モニタリング業務を中心に売上が増加し、原価管理の徹底とリソースの最適化やデータマネジメント業務におけるグループ会社との連携強化で収益性も改善した。一方、受注高はリソースの不足で旺盛な引き合いに応える事ができず123億60百万円と同22.4%減少。受注残高も359億26百万円と前期末に比べて5.3%減少した。

国内SMO事業

売上高50億04百万円(前年同期比60.0%増)、営業利益4億19百万円(同32.2%増)。第2四半期に(株)綜合臨床ホールディングス(以下、綜合臨床HD)を連結した効果に加え、(株)イーピーミントにおいて、前期からズレ込んだ大型案件が好調に進捗した。CRCの新規採用やがん領域の施設拡大に伴うがん領域担当CRCの教育強化等による販管費の増加を吸収して利益も伸びた。
受注高は、綜合臨床HDの連結効果もあり、44億04百万円と同17.6%増加。受注残高も179億99百万円と前年同期末比2.1倍に拡大した。

国内CSO事業

売上高35億39百万円(前年同期比5.0%増)、営業利益124百万円(同40.4%減)。CSO業界におけるCMR総数の減少傾向を踏まえて、医薬向けCMRの人材を、医療機器CMR、PMS(市販後調査)に振り向ける等、人員の効率的配置と経費削減等に努めた。受注高は29億68百万円と同0.4%減少したものの、PMS業務を中心に受注残は61億07百万円と前年同期末比39.4%増加した。

Global Research事業

売上高20億98百万円(前年同期比75.3%増)、営業利益2億19百万円(前年同期は1億49百万円の損失)。継続中の大型プロジェクト(グローバル案件)の順調な進捗と新規プロジェクトの寄与で売上が大幅に増加。売上増とコスト削減で営業損益が黒字転換した。受注高は前年同期比16.7%減の23億04百万円、受注残高は前期末比6.9%増の59億円。

益新事業

売上高18億69百万円(同7.2%減)、営業損失74百万円(前年同期は1億22百万円の損失)。中国経済の低迷を受けてデジタルレントゲン検査機や画像フィルム等の医療機器の販売が減少したものの、原価管理の徹底等で営業損失が減少した。
当事業は納期が短いため、受注と売上がほぼ一致する。

綜合臨床HDの完全子会社化に伴い上期末の総資産は526億27百万円と前期末に比べて132億40百万円増加した。借方では、のれんが前期末の9億28百万円から71億円に増加しており、貸方では、純資産が235億90百万円から343億70百万円に増加した。自己資本比率は64.5%(前期末59.0%)。

税金等調整前四半期純利益の増加(22億07百万円→41憶82百万円)に加え、資金効率の改善もあり、前期は5億67百万円だった営業CFが24億81百万円に増加。投資有価証券の売却等で投資CFのマイナス幅も縮小し、22億31百万円のフリーCFを確保した。

2016年9月期業績予想
前期比16.1%の増収ながら、同2.6%の経常増益予想

上振れした上期決算を踏まえて通期予想を上方修正したが、専門力強化に向けた人材投資や綜合臨床HDの子会社化に伴うのれん償却を織り込み下期の利益予想を引き下げた。このため、通期の営業利益は52億25百万円と第1四半期決算発表時の予想を10.5%上回るものの、前期比では4.7%減少する見込み。
期末配当は1株当たり10円を予定しており、上期末配当と合わせて、創立25周年記念配当2円を含む年20円となる見込み。

各事業セグメントで売上が順調に増加するものの、人材投資で国内CRO事業の利益が減少する他、のれん償却で国内SMO事業も同1.3%の増益にとどまる見込み。また、子会社の先行投資的費用でCPO事業が営業損失となる他、益新事業は若干の営業損失が見込まれる。一方、Global Research事業は日本での大型案件の寄与で売上が大幅に増加し、前期は31百万円の損失だった営業損益が1億円の黒字に転じる見込み。

国内CRO事業

重点施策

・原価管理の徹底と、新規顧客の発掘
・他の事業セグメントを含めたグループ全体での連携強化
・重点疾患領域ごとの開発戦略推進による、専門性、競争力の強化
・イーピーエスとEPSアソシエイトのシナジー発揮の推進
・受託プロジェクトの確実な実施と、積極的な案件受託
・CRAなど専門人材の大幅確保とオフィス拡充等、中長期成長のための先行投資

当事業を中心に、RBM(後述)による治験ネットワークを有する国内SMO事業、PMS(市販後調査)等の製販後ネットワークを有する国内CSO事業、及びHTA(医療経済評価)に基づく知識とネットワークを有するCPO事業との連携を強化していく考え。尚、RBMとはRisk Based Monitoringの略で、治験におけるモニタリングをより効率的に行う手法の事。

国内SMO事業

重点施策

・がん領域の施設拡大、がん領域経験CRCの育成
・2016年1月1日に経営統合した綜合臨床ホールディングスとの統合効果を発揮させ、EP綜合として業容を拡大する
・適正な人員配置によるCRC生産性の向上

尚、5月1日付けで、下記の通り、組織再編を実施した。

綜合臨床HDをEPSグループに取り込んだ事で、国内SMO事業はCRC1,000名体制となり、売上高100億円、業界シェア30%を、それぞれ超えた。課題である生産性向上に取り組みつつ、中枢神経系、整形外科、生活習慣病領域など幅広いサポートが特徴の旧(株)綜合臨床サイエンスと特にがん等の高難易度領域が強い旧(株)イーピーミントの特徴を活かして、特殊疾患から生活習慣病領域、がん等の高難易度領域まで、幅広い領域を支援していく。
また、提携医療機関数も5,600施設を超え、業界最多となる。専門性の高い中小のクリニックが多い旧(株)綜合臨床サイエンスと200床以上の大病院が中心の旧(株)イーピーミントの特徴を活かして、多様化・高度化する市場ニーズに応えていく。

国内CSO事業

重点施策

・PMS部門の着実な業務遂行と教育の重点強化
・医薬向けCMR部門の専門性強化と差別化の実現
・医薬向けコールセンター部門における、アウトバンドの積極的提案と案件獲得

当事業を手掛ける(株)EPファーマラインの強みは、CMR(売上構成比43.4%)、コールセンター(同42.5%)、及び医療機器(同14.0%)の3つの収益源を有する事(同社の資料によると、同業他社はCMRが95%近くを占め、医療機器が数%)。この強みと人材リソースを活かして、「MRダイレクトサービス」と「製造販売後調査(PMS)サポートサービス」を打ち出している。「MRダイレクトサービス」は、電話と“e”ディテーリングを活用した新たなセールスプロモーションを創造し、O2O(Online to Offline)を実践する。具体的には、(株)EPファーマラインのコンタクトセンターにMR薬剤師等をMRコミュニケーターとして配し、電話やインターネットを介しての医師・薬剤師等の医療従事者やMRとの情報交換を通してセールスプロモーションを展開している。
一方、「製造販売後調査(PMS)サポートサービス」は、製薬会社の担当MRの営業方針の下、(株)EPファーマラインのPMSに特化したMRであるモニタリングMRが医療機関に対してディテーリング(学術)営業を行い、製薬会社に報告・連絡する。

Global Research事業

重点施策

・アジアを含むグローバル試験の更なる獲得、遂行
日本、アジア・パシフィックでの営業強化
10数カ国の地域カバーの有効活用
・顧客の要求水準に対応できる体制作り

当事業は、中国、台湾、韓国、シンガポール、タイ、マレーシア・インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、オーストラリア、米国に拠点展開しており、日系CROとしてアジアでの拠点数はNo.1を誇る。

益新事業

重点施策

・医療機器販売をベースに、投資事業、非臨床基礎研究用資材など関連業務での収益拡大
・EPS益新と益新(中国)を中心に事業全体の統合的運営強化
・効率的な投資管理による資産価値の増大

益新事業ではCRO・SMO事業以外の中国事業を手掛けており、日本国内のEPS益新(株)と益新(中国)有限公司及びその海外グループ会社で事業展開している。EPS益新(株)は日本国内からの益新事業全体の管理及びサポートを行い、益新(中国)有限公司は現地における事業の統括を行っている。

CPO事業・その他(シェアードサービス)

従来、各事業セグメントで案件毎に対応していた臨床研究を、16/9期の期初に新設したCPO(Clinical Process Outsourcing)セグメントに集約した。EPI(株)と2015年10月に設立したジェイクルーズ(株)の2本柱で臨床研究支援分野のビジネスモデル確立を目指している。また、コストの見える化と集中処理による効率化を目的に、グループの間接部門を(株)イーピービズに集約した(グループ企業にシェアードサービスを提供する)。

尚、ジェイクルーズ(株)の事業は、医師や研究者主導の臨床試験または大規模な疫学研究の支援等を行うNPO法人 日本臨床研究支援ユニット(略称:J-CRSU)との連携の下で進め、J-CRSUが臨床研究のコンサルティングを行い、ジェイクルーズ(株)が実際のオペレーションを行う。具体的には、臨床研究に関する登録業務、データマネジメントと統計解析、事務局業務などを手掛ける事になるが、その際EPI(蘇州)、EPI(山梨)といったEPSグループのリソースを活用していく。

CPO事業の事業体制と(株)イーピービズの組織図は下記の通り。

今後の注目点
上期決算は利益が大きく上振れしたものの、主力事業であるCRO事業の受注が前年同期比22%強減少した。引き合いは旺盛だが、リソース不足で対応できないと言う。このため、下期はリソース確保の予算や新人事制度の下での人材育成等の予算を積み増す考えだ。加えて、上期決算には、前期の期ずれ案件の寄与や下期に予定していた売上の前倒し計上等の押し上げ要因があった事もあり、下期は慎重な見通しとなった。軌道化してきたGlobal Research事業についても、円ベースの収益が不安定な為替の影響を受ける可能性があり、保守的な業績予想にとどめた会社側の判断は理解できる。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2016年4月26日に提出している。

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