(7775:東証1部) 大研医器 2016年3月期業績レポート

2016/06/08

DaikenIki

今回のポイント
・「医療現場第一主義」を掲げる研究開発型医療機器メーカー。医師、看護師など医療現場の声を吸い上げながら、麻酔領域、感染防止関連を中心に独創的な製品を多数開発。手術用及び病棟用吸引器で国内トップシェア。新分野、海外など新たな市場の開拓に積極的。

・16/3期の売上高は前期比2.8%増収の82億61百万円。吸引器関連、注入器関連とも堅調だった。人件費、業務委託費、研究開発費などが増加したが販促費のコントロールもあり販管費増を吸収し、営業利益は同4.6%増の16億95百万円。2016年1月、価格競争の影響などで売上が想定した程は伸びていない事から業績下方修正を行ったが、結果的には売上、利益共に修正予想を上回り、経常利益、当期純利益は期初予想を上回る着地となった。

・17/3期の売上高は前期比3.5%増の85億50百万円の予想。キューインポットが同8.4%と堅調に拡大する見通し。営業利益は同2.6%増の17億40百万円、経常利益は同2.7%増の17億50百万円の予想。販売費、研究開発費、人件費も増加するが増収効果と生産効率化等で吸収する。11期連続の増収・経常増益を目指す。配当は前期と同じく16円/株の予定。予想配当性向は40.0%。

・同社の中心的企業価値は独創的な製品の開発力とそれによる高い収益性。山田圭一社長、執行役員 江原開発部長に、企業価値創造の源泉とも言える研究開発体制、特に開発スタッフ育成の仕組みなどを伺った。

・前期に続き今期も増収率、増益率とも1ケタにとどまるが、今後の成長を支える新製品がいよいよ今期からリリースされる。実際の収益への寄与は来期からという事になろうが、具体的な売上、利益へのインパクトが期待される。また、独創的製品を生み出し続けるための研究開発体制も理想の形に近づいているという事であり、企業価値向上のドライバーが更に強化される同社の中長期的な成長軌道にも注目したい。

会社概要

「医療現場第一主義」を掲げる研究開発型医療機器メーカー。医師、看護師など医療現場の声を吸い上げながら、麻酔領域、感染防止関連を中心に独創的な製品を多数開発。手術用及び病棟用吸引器で国内トップシェア。
新分野、海外など新たな市場の開拓に積極的。

【沿革】

現代表取締役の山田満会長が、起業を志し1968年11月、大阪で医療機器販売会社として大研医器(株)を設立。1971年には医療機器の製造業許可を取得したが、暫くは商社として活動を続けていた。当時手術室や病棟で使用され、患者の血液、体液、痰などを吸引する吸引器はガラス製で内容物を捨てるのが大変なだけでなく、洗浄して何度も利用する事から感染の危険性も高かった。日頃から医療現場に密着する事が重要と考えていた山田満会長は、医療従事者からそうした情報を入手。その悪環境を改善すべく、現代表取締役の山田圭一社長と共にプラスチック製の吸引器の開発に着手し、1990年9月、現在国内シェア約7割の同社主力製品「フィットフィックス」を開発し販売を開始。これが本格的な医療機器メーカーとしての始動となった。
その後も、医療現場第一主義の下、現場の声を製品開発に活かして、1997年 携帯型ディスポーザブル持続注入器「シリンジェクター」、2004年 病棟用吸引器の「キューインポット」など現在の主力製品を次々に開発・販売し業績は拡大。2009年3月には東証2部に上場し、翌2010年10月には東証1部に上場した。
その後も、2011年には小型・軽量薬液注入ポンプ「シリンジポンプCSP-110」、携帯型ディスポーザブル持続注入器「シリンジェクターPCAセット(改良型)」など独創性の高い製品をリリース。新分野および巨大な海外市場開拓に向けた新製品の開発を続けている。

【経営理念など】

「我々は現在の医療を見つめ、明日の医療の創造を通して社会に貢献します。」を社是とし、基本方針として「医療現場と協力し、常に新しい医療機器の開発と需要の創造に努めます。」などを挙げている。

この経営理念は、同社の最も大きな強み・特徴である「独創的な新製品開発」のベースとなっている。

【市場環境】

経済産業省が2015年11月に発表した「経済産業省における医療機器産業政策について」によれば、日本の医療機器産業を取り巻く環境や産業政策の概要は以下の通りである。

◎日本の医療機器市場動向

日本の医療機器市場は2003年をボトムに拡大に転じ、2013年の日本の医療機器市場規模は約2.7兆円で過去最大となった。2004年 2.1兆円からのCAGR(年平均成長率)は3.0%と堅調に拡大している。

◎日本の医療機器市場の構造

医療機器市場は、診断系、治療系、その他に分類することができる。
2013年の約2.7兆円のうち、治療系が約1.4兆円で53%を占め、診断系7,000億円、その他6,000億円と続く。
成長率も治療系は3.8%と市場全体を上回る。ただ、治療系は輸入比率が相対的に高い。

◎世界の医療機器市場動向

高齢化の進展と新興国における医療需要の拡大を受け、世界市場は今後年率7%程度で成長すると見られる。
そうした中、2010年から2014年における日本の医療機器の輸出伸び率(CAGR)は、診断系10.3%、治療系3.9%、その他3.3%、全体7.8%と拡大傾向にある。(各数値は「経済産業省における医療機器産業政策について」に掲載数値をベースにインベストメントブリッジが計算。)

◎オールジャパンでの医療機器開発

こうした中、安倍政権はアベノミクスの3本目の矢である「成長戦略(日本再興戦略)」において「戦略市場創造プラン」のテーマの1つに「国民の『健康寿命』の延伸」を掲げ、「国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の設立」(2015年4月)、「医療機器開発基本法の成立」(2014年6月)といった施策を打ち出してきた。
また2015年6月には、「日本再興戦略 改訂2015」において、「ものづくり力を結集した日本発の優れた医療機器等の開発・事業化」を目標とし、規制の緩和、医療機関と企業の連携推進(医工連携事業化推進)など、オールジャパンでの世界最先端の医療機器開発を目指す姿勢を打ち出している。

以上の様な市場環境、産業政策である一方、日本の医療機器関連企業は海外大手企業と比べると売上規模で大きな開きがあること、輸出も増加傾向にあるものの全体では輸入超過の状態にあることなど課題も多いが、同社は「4.今後の成長戦略」で述べるように、独創的な製品の開発・投入による国内市場の開拓と並行して、巨大な海外市場への参入についても準備を進めている。
また、同社が今後の成長の柱に位置付ける「高性能低コストマイクロポンプを用いた薬液注入器の開発」は、「国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)」により「医工連携事業化推進事業」の一つに採択されており、最大3年間で1.5億円の予算が提供される。
(国立大学法人岡山大学、学校法人川崎学園川崎医科大学の2大学と共同研究開発を実施中)

【事業内容】

全国に約1,000施設あるベッド数300床以上の大病院を主要納入先として、下記のような製品を納入している。

Ⅰ.主要製品群

主に院内感染防止関連および麻酔関連製品の企画開発・製造販売を行っている。製品は以下の5つの製品群に分類される。87.8%(2016年3月期)がディスポーザブル(使い捨て)製品であり、安定した収益構造につながっている。またほとんど全ての製品で特許を取得しており、競争力の高さに繋がっている。

①吸引器関連(真空吸引器関連)

院内感染防止関連の製品で、手術室、集中治療室、病棟等において、血液、体液、痰など排液を吸引する非電動式の真空吸引器。 従来はガラス製の吸引容器が使用されていたが、重量が重いため作業が大変で、洗浄して再利用する際の院内感染の危険性が高かった。これに対し、同社のプラスチック製吸引器は軽量なため作業が楽で、またディスボーザブルであるため感染の危険性が極めて低い。

<主な製品>
◎フィットフィックス(手術室用吸引器)

排液量が比較的多い、手術室、集中治療室等で使用する。蓋部分とボトル部分から構成されるプラスチック製の凝固剤一体型の密閉容器で、蓋部分に凝固剤があらかじめ充填されている。
吸引によってボトル部分に排液が溜まった後に、蓋部分を押すと凝固剤が投下され、蓋を開けることなく排液を凝固する事ができ、その後に容器ごと焼却処分をするため、排液に直接触れることがなく感染の危険性が極めて低い。手術の規模によっては、数個のフィットフィックスを連結して使用するが、1回の手術に使用されるのは平均2~3本。
現在ではガラス製からプラスチック製への代替がほぼ終了している。

同製品は発売開始以来、医療従事者から高い評価を受け、手術用吸引器市場における国内シェアは2014年度で75.0%(約48億円)の圧倒的なトップシェアを有している(同社推定。2位 13.1%、3位 5.3%)
今後も圧倒的な競争力により、引き続き堅調にシェアは上昇すると会社側は考えている。

◎キューインポット(病棟用吸引器)

排液量が比較的少ない、病棟等で使用する。プラスチック製の本体に凝固剤入りのライナー(ディスポーザブル)が内蔵されており、その中に血液や痰など排液を吸引し、凝固した後、ライナーごと焼却処分することにより、排液からの感染を防止する。

2016年3月期のキューインポットの売上高は15億14百万円で、同社によれば約50億円の病棟用吸引器市場において35.9%のトップシェアとなっている。フィットフィックスと違い病院の現場ではまだガラス瓶使用が54.1%と過半を占めているが、ガラス瓶からの代替は必然的であり、他社製品に対する競争力も極めて高いため、フィットフィックス同様シェアは今後も上昇すると同社は考えている。

②注入器関連(加圧式医薬品注入器関連)

麻酔関連製品で、主に手術後の痛みを軽減する目的でカテーテル(医療用の細いチューブ)等に接続し、局所麻酔剤や鎮痛剤を微量、持続的に投与するために使用する、加圧式医薬品注入器(携帯型ディスポーザブル注入ポンプ)。通常は病院施設内で使用されるが、一部では医師の管理指導のもと、在宅でも使用されている。電気を使用せず軽量で携帯ができ、局所麻酔剤や鎮痛剤を投与できるため、患者のQOL向上に寄与している。

<主な製品>
◎シリンジェクター

加圧方式に大気圧を利用した注入器で、一定速度で薬液を注入する。日本、米国および欧州の一部で特許を取得している。

下の図にあるように、大気圧を利用したシリンジェクターは、バルーン式のものより流量を安定させることができる。

◎バルーンジェクター

加圧方式にバルーン(風船)の収縮力を利用した注入器で、一定速度で薬液を注入する。比較的大容量の薬液を投与する際に使用する。

◎PCA装置

シリンジェクター及びバルーンジェクターに付属させて使用する装置。PCAとは「Patient Control Analgesia」の略で、患者自身がPCA装置のボタン操作を行い薬液を投与することで、鎮痛の緩和を行うことができるものである。

同社が開発したPCA装置は、押しやすいボタンによる医師及び患者の操作性の向上、時間の経過によりそれ以上薬液が注入されないロックアウトタイム式の採用、薬液投入履歴の自動記録機能など、より利便性を高めたもので、特許も取得している。

国内疼痛緩和領域の市場は今後も毎年3%程度の伸びが見込まれ、同社PCA装置に対する病院の評価は極めて高く、今後も着実な拡大が期待される。

2014年度の国内市場約51億円のうち、同社は約20億円、40.6%のトップシェアを有している。(同社推定。2位は33.3%)

③電動ポンプ関連(注射筒輸液ポンプ及び汎用輸液ポンプ関連)

麻酔関連の製品で、極めて微量の薬液を精密に制御しながら持続的に投与するために使用する医用電気機器。

<主な製品>
◎シリンジポンプ

医薬品を充填したシリンジの押し子を制御することによって精密かつ持続的に医薬品を投与する機器。手術室や集中治療室等で使用する。

◎輸液ポンプ

医薬品を充填した輸液バッグや医薬品容器に輸液セットを接続し、その輸液セットのチューブをしごくことによって医薬品を投与する機器。輸液ポンプは、シリンジポンプに比べて薬液投与の制御能力が低いため、集中治療室や病棟等で使用する。

④手洗い設備関連(殺菌水製造装置関連)

手術室、集中治療室、病棟等において医療従事者の衛生的な手洗いに使用される設備装置。

<主な製品>
◎ステリキープII

水道配管設備に接続設置し、フィルター等で濾過を行い、手洗い用の無菌水または殺菌水を供給する装置。

◎ザウバーゾーン

シンクと蛇口の形状や高さを新設計し、疲れにくさと使いやすさを追求した手洗い装置

◎ワイペル

滅菌済みのディスポーザブルタオル。摩擦による脱落繊維がほとんど無く、繊維が手に残らないように安全面を考慮した製品。

⑤その他の製品
<主な製品>
◎気管支ブロッカーチューブ

胸部外科手術を行う際の分離肺換気を目的に使用されるカテーテルで、先端に設置されたカフ(風船)を気管支内で膨張、閉塞させることで分離肺換気を行う。

◎ブレスウォーム

吸湿発熱繊維(アクリレート系繊維)を配合し、人体の水分を吸湿すると吸着熱により発熱する、保温性を高めた不織布オイフ。

◎クーデックブレスウォームサポーター

初の一般消費者向け製品として、肘、膝、腰を守る「保温サポーター(ブレスウォームサポーター)」
2009年に発売した病院向け製品であるクーデックブレスウォームで用いている特殊な毛布素材を活用したもので、保温性と吸湿性に優れている。

Ⅱ.営業&販売体制

全国10支店、約60名の営業部隊がベッド数300床以上の大病院1,000施設を対象に直接販売を行っている。実際の発注、納入は代理店を使用するが、営業担当者は医師、看護師など医療従事者から製品の使い勝手など、現場の声を吸い上げ、研究開発部門にフィードバックし、研究開発部門はそうしたニーズや改善点をベースに製品の改良及び新製品の開発に繋げている。
認知度向上に伴い、研究開発スタッフだけでなく、営業スタッフも優秀な人材が採用できるようになってきた。
益々高度化・専門化する医療技術や知識に対応できる若手営業スタッフの採用・育成にも一段と力を入れている。

Ⅲ.生産体制

基本的には自ら工場を持たない「ファブレス」企業であるが、「自ら手を汚して製造する事が製品力の強化に繋がる」との考えに基づき、大阪府和泉市にある和泉アセンブリセンターでは全ての新製品について企画から組立てまで、製造工程全てを社内で行いノウハウを蓄積しており、これも他社との大きな違いとなっている。

ある程度の数量が出荷できるようになれば外部へ生産を委託するが、その際も、生産体制における規格や詳細を全て同社自ら指示することができるため、価格交渉も有利に進める事が出来る。
海外ではタイの委託工場で、主として吸引器関連、注入器関連を生産している。
2016年3月期末の海外生産比率は46.9%(前期比+5.4%)と、海外への委託も順調に進んでいる。

2016年3月期のROEは18.7%と2015年3月期よりも低下したが、独創的製品開発力に裏付けられた高い売上高当期純利益率を背景に高水準のROEを維持している。

【特徴と強み】
①医療現場第一主義

創業時から「医療現場第一主義」を唱え、医師を始めとした医療従事者の現場の声をきめ細かく吸い上げることを徹底してきた。
営業部隊のみでなく、研究開発部門のスタッフも病院へ足を運び直接医療従事者からのヒアリングを行っている。

②独創的な製品開発力

この「医療現場第一主義」によって吸い上げた声を基に、同社ならではの独創的な製品の開発を行っているのが、大阪府和泉市にある「商品開発研究所」だ。2016年3月現在平均年齢33歳、32名の研究者が従事している。
開発スタッフの多くは機械、電気、物理分野の修士号、博士号保有者となっている。
(より詳細な開発体制については、「企業価値創造の源泉:同社の研究開発体制」を参照。)

研究開発、試作品製作、安全性試験にとどまらず、和泉アセンブリーセンターで使用する製造用組み立て装置の製作も行っており、メカトロニクスからバイオ関連まで幅広く製品開発に取り組んでいる。

製品開発に際しては、医療現場の声に加え、同社が長年にわたって培ってきたネットワークを活かし、有力な医師にも参画してもらいアドバイスを得ている。現場の声、有力な医師からの的確なアドバイス、優秀な開発スタッフという3つが、独創的な製品を生み出す重要な構成要素である。

③主力製品の高いマーケットシェアと差別化要因

前述の通り、フィットフィックス、キューインポット、シリンジェクターという同社主力製品は国内市場においてトップシェアを有しており、今後もその圧倒的な競争力を背景にシェアアップが続くと会社側は考えている。
特許によるプロテクト、信頼性の高さ、長年かけて培われたブランド力に加えて、性能、価格といったポイントのみでなく、現場第一主義に基づいたきめ細かいフォローアップ体制も他社製品との大きな差別化要因になっている。

2016年3月期決算概要
10期連続の増収・経常増益

売上高は前期比2.8%増収の82億61百万円。吸引器関連、注入器関連とも堅調だった。売上総利益は3.4%増加の43億16百万円。人件費、業務委託費、研究開発費などが増加したが販促費のコントロールもあり販管費増を吸収し、営業利益は同4.6%増の16億95百万円となり、売上、利益共に予想を上回った。

吸引器関連では引き続きキューインポットが前期比13.7%増と2桁の伸び。キューインポットライナーの販売量も、約314万個で同15.9%増と順調だった。
2016年3月末のキューインポット本体設置数は10万300台で前期末比12,000台増加し、シェアはほぼ目標通りの35.9%と前期比4.1ポイント上昇した。2017年3月期は11,500台の増加を目標としている。
注入器関連のうち、PCA装置付きの販売数量は前期比4.3%の増加となったが、伸び率は前期、前々期には及ばず1ケタ台に低下した。

現預金の増加などで流動資産は前期末比2億3百万円増加し62億5百万円。工場用地取得等により有形固定資産が同11億89百万円増加し固定資産は同11億64百万円増加の39億31百万円となり、資産合計は同13億67百万円増加の101億36百万円となった。
工場用地取得のため、長期有利子負債が同6億94百万円増加し負債合計は同6億96百万円増加の36億24百万円となった。利益剰余金の増加などで、純資産は同6億71百万円増加し65億12百万円。
この結果自己資本比率は前期末より2.3%低下し、64.2%となった。

税引前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大した一方、工場用地取得など有形固定資産の取得による支出が増加し、投資CFのマイナス幅は拡大した。フリーCFはマイナスに転じた。
工場用地取得の資金調達のため長期借入による収入を拡大させたため、財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

2017年3月期業績見通し
主力製品が堅調に拡大。11期連続の増収・経常増益

売上高は前期比3.5%増の85億50百万円の予想。キューインポットが同8.4%と堅調に拡大。注入器関連は1.6%程度の伸びにとどまるが引き続きシェアはアップ。
営業利益は同2.6%増の17億40百万円、経常利益は同2.7%増の17億50百万円の予想。販売費、研究開発費、人件費も増加するが増収効果と生産効率化等で吸収する。
11期連続の増収・経常増益となる見込み。
配当は前期と同じく16円/株の予定。予想配当性向は40.0%。

今後の成長戦略

同社は成長スピードを更に上昇させ、将来的に売上高、経常利益、配当をそれぞれ飛躍的に拡大させるとの目標を持っている。
そのためには、現在の主力製品のシェアアップだけではなく、「対象領域の拡大」、「新分野への進出」、「海外展開の推進」によって新たな市場を自ら創造・開拓する事が不可欠であると考えており、以下の様な新製品を国内外で投入していく。

(1)「対象領域の拡大」
①救命救急領域への展開:クーデックアイクール(咽頭冷却装置)

日本では毎年約13~14万人が心筋梗塞や交通事故などで心肺停止状態となるが、生存する確率は極めて低く、また幸運にも一命を取り留めた場合でも、脳に多大なダメージを被る患者が多く、社会復帰率は極めて低い。
このような現状を踏まえ、産学連携で研究開発を進めているのが、患者が心肺停止状態に陥った際、脳の温度を速やかに下げてダメージから脳を保護し(脳は温度が低下すると酸素を必要としなくなるため、脳細胞の死滅が進行しにくくなる。)、社会復帰率のアップを目指す咽頭冷却装置だ。

現在行われている心肺停止患者の治療方法としては、冷水を循環させたブランケットを巻き付けるなどして体の外側から冷却し、脳温を34℃程度に保つ低体温療法があるが、脳温を34℃まで低下させるのに数時間が必要であり、その間に脳のダメージが進行してしまう可能性が高い上、心臓も体温低下による悪影響を受けてしまう。
そうした欠点を補うべく同社が研究開発している「咽頭冷却装置」は、口の中(咽頭部)のすぐ横を通る動脈を冷却し、冷えた血液を脳に送ることにより、脳温のみを脳内部から急速に下げるという仕組みで、アイスクリームを食べると頭が痛くなるという現象を応用したもの。

2014年2月に薬事承認を受けた後、同年4月に上市された。
保険適用に向けて関連省庁と調整中であったが、2016年4月より保険収載された。現在は本格発売に向けて保険点数を踏まえた価格交渉も含めて顧客である病院との交渉中である。

②麻酔分野での広がり ~クーデックダブルルーメン気管支チューブ~

肺癌など胸部の手術を行うときに使用する分離肺換気用のチューブ。
一般的に全身麻酔時には気道確保のために気管チューブを口から挿入し、人工呼吸を行うが、胸部の手術では左右の肺を別々に人工呼吸する必要があることが多く、主にダブルルーメン(二腔)気管支チューブを使用する。既に海外メーカーを中心に数種類販売されているが、手術中に行う体位変換や手術操作により気管支に留置した気管支用カフ(風船状の部品)がずれ、再度正しい位置に戻す操作に手間がかかる事や、チューブ自体による気管支の損傷、カフからの空気漏れ、誤嚥(食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと)などの問題がある。

こうした「ずれ」の問題は、海外メーカー製品が体格の大きな外国人を念頭に製造されていることも一因と考えられ、同社では国産メーカーとして日本人の体格にフィットし、こうした欠点を解消する製品の開発に取り組んでおり、上述の気管支用カフは既に特許を取得している。また、2015年9月には手術時間を大幅に短縮させる技術が特許化された。

国内市場規模は約10億円と大きくはないが、現場からのニーズは高く、同社が強みを持つ「麻酔分野」での新たな需要を開拓する。
ほぼ量産体制が整い、2016年5月に開催される関連学会での量産品のプロモーションなどを契機に、2016年6月には発売開始の予定だ。

(2)「新分野:マイクロポンプ関連製品への進出」
◎MEMSデバイス「マイクロポンプ」を搭載した医療機器の製品化を目指す

コスト及び機能面で圧倒的な競争力を有する製品の投入を目指す中で、重要な役割を果たすのが現在研究開発中の医療用「マイクロポンプ」だ。
「マイクロポンプ」はMEMS(※)デバイスの一つだが、医療機器の分野で使用されているケースは世界を含めても現在のところごく僅かであり、同社では世界市場においてこの独創的製品によって新たな需要を開拓していく考えだ。

※MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路等を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化した微細デバイスおよびその製作技術を指す。実用例としてはインクジェットプリンタのヘッド部にある微小ノズルのほか、圧力センサー、加速度センサー、流量センサーなどの各種のセンサーなどがあり、高機能・小型・低コスト化された高付加価値製品であることが特長。ある民間機関調査によれば、MEMS関連市場規模は2015年1.5兆円、2020年3.1兆円と予想されている。

「マイクロポンプ」を軸としたMEMSデバイスの使用により、従来製品よりも高機能・小型・低コスト化された高付加価値の医療機器の開発が可能となる。
これにより、医療機関の医療費負担軽減に加え、在宅医療に使用可能な製品や救急医療に優位性を発揮できる製品等を実現させることは、早期離床の促進や患者のQOL向上に大きく貢献するものと同社では考えている。
既存領域だけでなく、新領域に向けた様々なMEMSデバイスを搭載した新製品を研究開発し、国内だけでなく欧米を中心とした海外市場の開拓を進めて行く。

現在はマイクロポンプを用いた以下2製品の早期上市を目指している。

*具体的製品例1:胸腔ドレナージ

肺癌手術等の際、肋骨や胸椎、胸骨や横隔膜で囲まれ、心臓・肺・気管・大動脈・食道などが存在する胸腔部から空気や血液などを吸引する医療処置が胸腔ドレナージ。
現在使用されている製品は、胸腔部からカテーテルで繋がれた吸引器の重量が数kgと重く、医療従事者の負担が大きい。これに対しマイクロポンプを使用した同社の吸引器は大幅な小型化・軽量化を実現することができる。
また、2015年4月に複数の特許も登録になっており、医療現場のニーズを実現化したテクノロジーである。
製品としてはほぼ完成しており、2016年上半期中に薬事申請の予定で、3~6か月程度で承認、今期中にMEMS関連製品第1号として発売を見込んでいる。

*具体的製品例2:次世代医療用注入ポンプ

現在の医療用注入ポンプは、その使われる輸液、薬液の種類や、流速、流量の違いによってそれぞれ専用のポンプを使用されることが多い。このことにより、医療従事者は多くのポンプの複雑な使用方法を習得し、様々なケースによって使い分ける必要が生じている。また医療施設においては全てのポンプを揃え、メンテナンス等の管理をするために高額な費用を投じている。更には、既存ポンプの多くが、サイズも大きく重たいものであり、患者様自身が移動する際、負荷を与えるだけでなく転倒等のリスクも考えられる。
これらの課題を解決する為、高性能低コストマイクロポンプを使用した次世代医療用注入ポンプの研究開発を進めている。

医療機器分野を日本の成長戦略における重要な柱の1つと位置付ける国立研究開発法人日本医療研究開発機構は、同社の「高性能低コストマイクロポンプを用いた薬液注入器の開発」を「医工連携事業化推進事業」の一つに採択した。最大3年間で1.5億円の予算が提供される。
(国立大学法人岡山大学、学校法人川崎学園川崎医科大学の2大学と共同研究開発を実施)

◎「フラウンホーファー研究機構」との共同研究について

マイクロポンプの研究を更に発展させるため、2014年7月、欧州最大の応用研究機関である「フラウンホーファー研究機構(※)」(ドイツ)と、「マイクロポンプを用いた多様なディスポーザブル型医療機器の開発」を目的とした共同研究契約を締結した。
フラウンホーファー研究機構の研究機関のひとつであるフラウンホーファーEMFT(※)からのライセンスの使用、技術の供与、ノウハウの教育等を通してマイクロポンプの技術を吸収することにより、様々なディスポーザブル型医療機器に使用できる高性能低コストマイクロポンプを確立させる。

過去20年間マイクロポンプの研究開発を行ってきた同研究機構が、マイクロポンプを用いた最終製品の企画を複数有していた同社の製品開発力を高く評価したことが今回の共同研究契約に繋がったという。ライセンス使用契約の締結にも成功し、同社に対する評価の高さがここからも伺える。
2015年4月より同社研究員1名がフラウンホーファー研究機構に派遣されている。が、今後の増員も検討している。
現在は、マイクロポンプの様々な課題をフラウンホーファー研究機構の有する技術力やノウハウによって解決させ、製品実現化に向けて取り組んでいる段階であるが、より緊密な共同研究開発体制に移行しておりワークショップの回数も増加している。

※フラウンホーファーおよびフラウンホーファーEMFT
フラウンホーファーは、欧州最大の応用研究機関であり、ドイツ国内に67の研究所・研究ユニットが点在し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアに研究センター及び代表部が設置されている。23,000名以上のスタッフのうちの大半が研究者及びエンジニアであり、年間研究費総額は約20億€(約2,700億円)で、その70%が民間企業からの委託研究や公共財源による研究プロジェクトから発生し、30%はドイツ連邦政府及び州政府により、経営維持費としての資金提供が行われている。
フラウンホーファーEMFTは、人類や環境に役立つセンサーやアクチュエータなどに関する最先端技術を先導している研究機関。約100名の研究員が在籍する研究部門では、微小流体システムやシリコン技術等のマイクロシステム技術についての研究が行われている。
(3)「海外展開の推進」

海外の医療機器市場は日本の約10倍、27兆円で今後も約7%程度のスピードで成長するものと推計されているが、現在同社の海外売上高比率は2.3%(2016年3月期)と低水準にとどまっている。そこで、上記のようなマイクロポンプ搭載製品を武器に、併せて強力な販売体制を構築し巨大市場の開拓を進めて行く。

企業価値創造の源泉:同社の研究開発体制

同社の中心的企業価値は独創的な製品の開発力とそれによる高い収益性である。
そこで、山田圭一社長、江原開発部長に、同社企業価値創造の源泉とも言える研究開発体制、特に開発スタッフ育成の仕組みなどを伺った。

江原部長は現在入社7年目。家電メーカーでメカニックのエンジニアとして勤務後、「医療という社会貢献度の高い場で自分の築き上げてきたスキルを活かしてみたい」との想いで同社に入社した。

『「技術」と「医療」、2つの資質を兼ね備えた開発スタッフの育成は着実に進んでいる。』
江原部長
当社の開発スタッフには2つの資質が必要だ。1つはメカニック、ソフトウェア、電気など、「技術」。もう一つは「医療」の知識と現場を知る事だ。
この2つの資質を高い次元で兼ね備えた人間を育てなければならないが、5年ほど前まではまだ若いスタッフをしっかりと管理できる人間が少なかった。そこで2年程度かけて、30歳代前半の人間を対象に、まず技術的スキルを磨き上げるための徹底した教育を行った。
同時に医学の分野では、様々な臨床医をお呼びして2年間で30回程度の社内セミナーを開催し、こちらも徹底的な知識の取得を行った。また、座学だけでは不十分であるため、技術者も積極的に現場に出向き医療従事者との面談、対話の機会を増大させた。自分が想定している製品のニーズが本当に医療現場にとって妥当、適切なものであるかを自分の肌で感じ取ることが大事だからだ。
2つの資質をベースとした必要なスキルの達成度を毎年レーダーチャートで視覚化、点数化して評価しているが、こうした2つの資質を磨き上げる取り組みによって開発スタッフのレベルは大きく向上しており、理想の形に近づいてきたと実感している。
山田社長
当社の大きな特徴である「独創的製品の開発」という点は20数年前から変わらない。当社のような小さい会社が成長するには「独創的であること」は必須で、そうした製品の発売が成功してきた。
そうした成功事例が蓄積されると、外部からは「大研医器は独創的な製品をリリースする会社だ。」との評価が定着し、そうした評価や期待に背く訳にはいかない。また営業も「うちは独創的な製品を扱うのが当たり前」という意識になる。こうした中で、「独創的な製品でないとラインアップに載せない」という土壌が出来上がった。
一方、会社の規模がある程度大きくなった時点からは、独創性に加えて、高品質、低コスト、タイムリーな供給といった点も重要になってきたため大企業のノウハウが必要となり、ヘッドハンティングを進めた。
現在はヘッドハンティングによる社内ノウハウの構築・蓄積も一段落したため、江原部長の説明した育成システムによる新卒社員の教育・育成に軸足を移しており、彼らが大きく花開くステージへ入ってきた。
『上場を機に全国から優秀な人材が集まっている。ポテンシャルの高い彼らの成長スピードは極めて速い』
江原部長
現在毎年5名前後の大学院卒の学生が開発スタッフとして入社しているが、上場を機に全国の有名大学から優秀な学生を継続的に採用できるようになった。
新入社員はまず2年間の「シニア・ジュニア制度」という研修期間に入る。これは入社3~5年目の社員がインストラクターとなり、社会人としての基本動作を身に付けさせる事に加え、OJTで実際に設計等にも関わってもらう。
この2年間で当社開発スタッフとしての最低限の基礎が出来上がるが、彼らのポテンシャルは高いので、成長スピードは極めて速い。
『当社独自の教育・評価体制で挑戦意欲に溢れた開発スタッフを持続的に輩出』
江原部長
開発スタッフに常日頃言っているのは、「旺盛な好奇心を持て」、「自律せよ」、「情熱と執念によるモノ作り」といったことだ。また「胆力を鍛えよ」とも言っている。「どんなに困難な課題であってもまずは度胸を持ってチャレンジしろ。たとえ思った通りの結果でなかった場合でも、責任は会社が取るので、尻込みせず挑戦せよ。」との指導を徹底して行っている。
また、開発が計画通りに行かない場合でも、どうリカバリーしたか?、どう行動したか?も開発スタッフの評価項目として重視している。それによって責任感やチャレンジする気概が養われるからだ。
以上の様な当社独自の教育制度や評価制度、日常的な指導により、挑戦意欲に溢れたレベルの高い開発スタッフを持続的に輩出する体制が整ってきた。
当社の独創的な製品開発力は今後益々磨きがかかってくるものと確信している。
『新分野、新製品を相次いでリリース。再び大きく成長する当社に是非期待していただきたい。』
山田社長
ここ数年既存製品のシェアアップが中心で独創的な製品リリースが少なかったが、今期からはクーデックアイクール、胸腔ドレナージ、クーデックダブルルーメン気管支チューブと3製品が相次いでリリースされる。
安定した既存製品をベースに、新製品で一気に大きく飛躍する時が来たと考えている。
国内のみでなく巨大な海外市場を開拓するためのグローバルパートナー作りも交渉は着実に進行している。
今期の売上、利益の伸びはまだ低いが、成長のための基盤は出来つつある。是非当社のこれからに期待していただきたい。
今後の注目点
前期に続き今期も増収率、増益率とも1ケタにとどまるが、今後の成長を支える新製品がいよいよ今期からリリースされる。
実際の収益への寄与は来期からという事になろうが、具体的な売上、利益へのインパクトが期待される。
また、独創的製品を生み出し続けるための研究開発体制も理想の形に近づいているという事であり、企業価値向上のドライバーが更に強化される同社の中長期的な成長軌道にも注目したい。
<参考>

主な上場医療機器専業メーカーの業績、バリュエーションなどを比較した。同社の「目標とする経営指標」である売上高経常利益率を含めている。規模は小さいもののPBR、ROEで高い評価を受けている。

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