(3778:東証1部) さくらインターネット 2016年3月期業績レポート

2016/06/01

SakuraInternet

今回のポイント
・16/3期連結決算は前期の非連結決算との比較で14.3%の増収、同1.2%の営業増益。販売パートナーの拡充やエンタープライズ及び大口顧客の開拓強化等の施策が成果をあげ、VPS・クラウドの売上が前期比41.0%増と伸びた他、M&A効果でレンタルサーバの売上も同19.2%増加。クラウドに押され苦戦が続いていた専用サーバも、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)分野での高性能サーバ需要の取り込みで増収に転じた(同0.9%増)。利益面では、サービス・技術・運用の強化や組織力・人材力の強化に加え、将来のコスト効率向上に向けた先行投資による営業費用の増加を増収効果で吸収した。・17/3期予想は前期比20.0%の増収、同8.6%の営業増益。専用サーバやレンタルサーバが堅調に推移する中、VPS・クラウドが伸び、成長ペースが加速する。エンジニア及び営業の増加や積極的なマーケティング等による営業費用の増加を増収効果で吸収して3期連続の営業増益。配当は前期と同額の1株当たり2.5円の期末配当を予定している。

・16/3期のポイントは、VPS・クラウドが4Qに同社において最大の売上規模を誇る事業になった事と、AIやディープラーニング等の高火力コンピューティング分野の需要を追い風にした専用サーバの底打ちである。膨大なデータの「蓄積、処理、転送」を必要とする高火力コンピューティングの分野では、分散化されたクラウドのコンピュータよりも、とにかく速くて、しかも低コストのコンピュータが必要だ。このため、大容量バックボーンとアジアNo.1のコスト競争力を強みとする石狩データセンターを有し、速くて安いコンピュータを即納できる同社が存在感を高めている。

会社概要

東京(西新宿、東新宿、代官山:いずれもフロア単位の賃借)、大阪(堂島:フロア単位の賃借)、北海道(石狩:土地建物保有)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存するのに対して、同社はインフラを自社で保有する事で高収益を追求しており(価格競争力の源泉となる)、このインフラをハウジングサービスの提供にも活用する事で稼働率を上げ固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。

【企業理念】

同社は、下記のミッション、ビジョン、バリューを企業理念として定め、これを実現することによって、全てのステークホルダーから価値ある企業として支持される事を目指している。

コーポレート・ミッション  使命
私たちは、人々とビジネスの可能性を広げるデータセンターサービスの提供を通じ、インターネットによってひらかれる創造性と驚きに満ちた未来の実現に貢献します。
コーポレート・ビジョン  目指す姿
サービス 高品質で低価格なITプラットフォームと革新的で面白いインターネットサービスの提供
インフラストラクチャー スケールメリットと柔軟性を兼ね備えたコスト競争力の高いITインフラの実現
テクノロジー 価値あるサービスの実現とインターネットの発展に寄与する先進的な技術の探究
コーポレート・バリュー  重視する価値観
・質の高いサービスを生みだす絶えざるイノベーション
・コストパフォーマンスを支える卓越したオペレーション
・すべての活動のベースとなる良質なコミュニケーション
【沿革】

1999年8月、レンタルサーバサービスと専用サーバサービスの提供を目的とした、さくらインターネット(株)として設立、同年10月に大阪(大阪市中央区)と東京(京都豊島区)にデータセンターを開設し、ハウジングサービスを開始した。2005年10月に東証マザーズに株式を上場した。2008年2月に双日(株)と資本提携し(持分法適用会社となる)、2011年2月には双日(株)のTOBに賛同し資本関係を強化すると共に(連結子会社となる)、改めて業務提携契約を締結。同年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターを北海道石狩市に建設。2015年4月にレンタルサーバをメインとするホスティング事業、SSL サーバ証明書発行、ドメイン取得等のサービスを提供している(株)Joe’s クラウドコンピューティングを子会社化した。

【事業内容】

事業は、ハウジングサービス、ホスティングサービス、及びその他サービス(ドメイン取得サービスや回線・ネットワーク関連サービス等)に分かれ、16/3期の売上構成比は、それぞれ21.3%、68.2%(専用サーバ22.5%、レンタルサーバ23.3%、VPS・クラウド22.4%)、10.4%。

ハウジングサービス

同社が運営するデータセンター内に、顧客所有の通信機器類を自由に設置できるスペースと、インターネット接続に必要な回線や電源などを貸与するサービス。ラック単位で設置スペースを貸し出す「ラック貸し(回線、電源等も提供)」が中心だったが、自社で土地建物を保有する石狩データセンターの稼働に伴い「スペース貸し」(大規模ハウジング)を開始した

ホスティングサービス

専用サーバサービス、レンタルサーバサービスの物理ホスティングと、VPSサービス、クラウドサービスの仮想ホスティングに分かれる。

専用サーバサービス
同社が所有する物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらの専用サーバ」)。専門知識を要するサーバのメンテナンス等の負担があるものの、独自にサーバの設定が可能である事や、ソフトウェアのインストールに制約が無い事等、レンタルサーバサービスと比べて自由度の高い点が特徴。
レンタルサーバサービス
同社が所有する物理サーバと豊富な機能をメンテナンス不要で利用できるサービス。1台の物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらのマネージドサーバ」)と1台の物理サーバを複数の顧客が共同で利用するサービス(「さくらのレンタルサーバ」)を提供。サーバの設定やソフトウェアのインストールに一定の制約があるものの、専門知識を要するサーバのメンテナンス等は同社が代行するため、利用者は作業負担を大幅に軽減する事ができる。
VPS・クラウドサービス
仮想化技術により、物理サーバ上に複数の仮想サーバを構築し、そのひとつひとつが専用サーバのように利用できるサービス。基本的に仮想サーバ1台毎の単体契約となるサービス(「さくらのVPS」)と、契約の中で複数台サーバの申し込みとそのネットワーク設定を可能とし、日割や時間割での課金が可能なサービス(「さくらのクラウド」)を提供。物理サーバ(専用サーバサービスやレンタルサーバサービス)よりも自由度が高く、かつコストパフォーマンスに優れる。
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

同社は先行投資が続く中で高いROEを維持している。データセンターへの投資に加え、M&A、高い技術力や新しい技術を有する顧客への出資、更にはブランド強化のためのプロモーション等、積極的な先行投資が続いているが、先行投資負担を吸収して利益を伸ばせる体制が整いつつある。装置産業的なビジネスのため、今後、売上の増加に伴う加速度的な収益性の改善が期待でき、ROEにも反映されていくものと考える。

◎コーポレートガバナンス報告書

同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2016年2月3日に提出している。

2016年3月期決算
前期の非連結決算との比較(以下、前期比)で、14.3%の増収、同7.2%の最終増益

売上高は前期比14.3%増の120億86百万円。販売パートナーの拡充やエンタープライズ及び大口顧客の開拓強化等の施策が成果をあげ、VPS・クラウドの売上が前期比41.0%増と伸びた他、M&A効果等でレンタルサーバの売上も同19.2%増加。減少傾向が続いていた専用サーバの売上も、AIやディープラーニング分野での高速サーバ需要の取り込みで増加に転じた(同0.9%増)。

営業利益は同1.2%増の9億76百万円。サービス・技術・運用の強化や組織力・人材力の強化に加え、将来のコスト効率向上に向けた先行投資に伴う営業費用の増加を増収効果で吸収した。営業費用では、サービス機材の保守コストや回線費用等の変動費の増加に加え、エンジニアの増員(開発エンジニア19名増、運営エンジニア27名増)や一時的な販売用機材原価の増加等もあり、売上原価が86億88百万円と同12.5%増加。減価償却費(新社内システムの稼働)の増加や営業及び社内システム開発エンジニアの増員(販促含め営業11名増、開発エンジニア6名増。人材紹介手数料の料率を引き上げて採用を強化した)、更には広告宣伝・営業イベントなど販促活動の積極化やIoT等新規サービスの開発・サポート費用の増加もあり、販管費が24億21百万円と同28.3%増加した。

貸倒引当金戻入額の計上がなくなる一方、東証市場変更手数料を計上したため、経常利益が8億22百万円と同4.2%減少したものの、実効税率の低下で最終利益は5億53百万円と同7.2%増加した。

配当は1株当たり2.5円の期末配当を予定(2015年9月に1株を4株に分割しており、実質的には前期と同額の1株当たり10円)。

2016年12月竣工予定の石狩データセンター3号棟関連の投資・借入等で期末総資産は185億88百万円と前期末(非連結)に比べて44億90百万円増加した。借方では、石狩データセンター3号棟の資金調達で現預金が増加した他、同3号棟の建設着手に伴う建設仮勘定、同2号棟の増床、及びサービス機材増加等で有形固定資産も増加。貸方では、同3号棟の資金調達による借入金の増加や同2号棟の増床等によるリース債務の増加等が主な増加要因。流動比率101.9%、長期固定適合率99.1%、自己資本比率23.8%。

営業CFは、税金費用の増加に加え(1億73百万円→4億24百万円)、クラウドの売上増や専用サーバでの分割支払プラン導入による売掛金増加等で前期に比べて減少したものの、15億47百万円を確保した。一方、投資CFは、石狩データセンター3号棟の建設着手金の支払い等で25億50百万円のマイナスとなった。尚、同社サービスは先払いが基本だが、成長著しいクラウドはサービスの特性から後払いである(カード決済のため、他のサービスとの比較で2カ月遅れの入金となる)。また、専用サーバはユーザーにとって、初期費用が重いため、2015年6月に初期費用の12ヶ月分割払制度を導入した。

第4四半期は、スポット的な機材売上がなくなった反動でハウジングの売上が前四半期比13.7%減少したものの、VPS・クラウドが同10.7%増加した他、専用サーバやレンタルサーバの売上も増加した。利益面では、利益率の低い機材売上が減少した事で売上総利益率が改善する中、広告宣伝や営業イベント等の減少で販管費も減少し、営業利益率が大幅に改善した(第3四半期5.9%→第4四半期9.8%)。

尚、レンタルサーバをメインとするホスティング事業、SSLサーバ証明書発行、ドメイン取得等のサービスを提供している(株)Joe’s クラウドコンピューティングを2015年4月に子会社化しており、売上・利益の両面で16/3期の連結業績に寄与した。同社の売上高は第1四半期78百万円、第2四半期74百万円、第3四半期76百万円、第4四半期73百万円。

第4四半期は、VPS・クラウドサービがサービス別で最大の売上事業に成長した他、専用サーバやレンタルサーバも堅調に推移した。専用サーバは、ここ数年、クラウドに押されていたが、ビッグデータの高速処理が必要なAIやディープラーニング分野での需要の取り込みで底打ち感出てきた。レンタルサーバは(株)Joe’s クラウドコンピューティングの寄与で前年同期比では大幅な増収。専用サーバやレンタルサーバのオプション関連の売上であるその他の売上も増加した。一方、スポット的な機材売上の減少でハウジングの売上が減少した。

広告宣伝や営業イベント等の減少は一時的なもので、引き続き積極的にプロモーション活動を展開していく考え。一方、人員については、人材見合いでの採用は続けていくものの、第3四半期でほぼ体制が整った。

第4四半期の営業CFは、税前利益の増加や第3四半期に賞与の支払い及び法人税等の納付等があった反動等で第3四半期に比べて大幅な増加。一方、投資CFは、第3四半期に石狩データセンター3号棟の着手金の支払いがあったため、マイナス幅が縮小。一方、財務CFは、同3号棟用資金の借り入れで増加した。

ホスティングの顧客数(利用中件数)が順調に増えている。単価の面では、業界全体では下落が続いているものの、同社のホスティングに関しては総じて堅調。顧客数の増加と堅調な単価が相まって売上の増加につながっている。一方、ハウジングは価格競争にさらされているが、同社は機材調達まで手掛ける等、様々な付加価値を付ける事で売上の維持に努めている。
尚、1ラック15~20万円/月のハウジングに比べると、ホスティングの顧客単価は低いが、1ラックあたりの売上高は高い。

同社は、個人やSOHO等のロングテール(小口)と、SIer、Webサービス、エンタープライズ系等のショートヘッド(大口)の両面から顧客開拓に取り組んでおり、大口の顧客でスケールメリットを享受しつつ、小口でも利益を上げている(顧客のうち10万円未満が51.9%)。ロングテールでは広告宣伝で幅広く需要の取り込みを行い、ショートヘッドでは、近年、エンタープライズ系の開拓に力を入れており、人員を増強して営業を強化している。ロングテール向けの中心サービスであるレンタルサーバは、合従連衡に伴うビジネスチャンスも大きい。一方、エンタープライズ系は、営業強化が成果をあげ、伸びてはいるものの、未だ同社に対しては「個人向け」、「安価(品質面が課題)」と言う誤ったイメージが強い。このため、エンタープライズ系の開拓では、先ず、同社の認識を改めてもらう必要があり、16/3期はエンタープライズ系ユーザーとの接点を増やすべく、クラウドEXPO等へ積極的に出展した。
尚、期末時点の月額料金100万円以上の顧客の業種別内訳は、Webサービス提供15社、システム開発13社、Web制作・コンサル10社、広告7社、ゲーム・アプリ6社、ホスティング・クラウド6社、EC関連5社、ASP・SaaS1社、その他10社。

2016年3月期の重点課題と成果
【経営指標】

同社が重視する経営指標と目標は、売上高成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高経常利益率10%以上。固定費ビジネス故に、同社は売上高成長率を最も重視している。16/3期は、その売上高成長率が7期ぶりに目標の10%を超えた(14.3%増)。先行投資負担等で売上総利益率及び売上高経常利益率は目標に届かなかったものの、売上総利益率は改善傾向にあり、第4四半期は29.4%と第2四半期・第3四半期の27.2%から2.2ポイント上昇した。一方、売上高経常利益率は新社内システムの稼働に伴う減価償却費の増加(2015年4月から月額10百万円程度増加)等が負担になった。
17/3期は売上高成長率を最重要視しつつ、売上総利益率及び売上高経常利益率の改善に取り組んでいく考え。

【16/3期の重点課題】

16/3期は、足元の成長だけでなく、将来の成長も見据えて、売上高の成長、サービス・技術・運用の強化、組織力・人材力の強化、及びコストの最適化に取り組んだ。

売上高の成長では、営業強化(パートナー強化、新規・既存顧客向け各施策、エンタープライズや大学等の大口顧客向け強化)やM&A・アライアンス等に加え、クラウドのコントロールパネル英語対応といったグローバルを意識した展開を進めた。この結果、売上高成長率が7期ぶりに目標の10%を超える等、着実に成果が上がっており、同社は手応えを感じているようだ。

サービス・技術・運用の強化では、顧客サービスの改善、サービスラインナップの拡充、サービス間連携(専用サーバとクラウドの併用等)及びバリューチェーン連携(部門間連携)の強化等に取り組んだ他、IoT等の成長分野におけるサービス開発も進めた。

(※)通信プラットフォーム 「さくらのIoT Platform」
通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供するIoTのプラットフォーム。「さくらのIoT通信モジュール」と、キャリアネットワークをL2接続した閉域網を用意し、ストレージ、データベース、ルールエンジンを含むバックエンド、外部のクラウドやアプリケーションサービスと連携できるAPIまでを垂直統合型で提供する。将来的には、利用者がデータ販売を可能とするプラットフォームの構築も計画している。

③組織力・人材力の強化では、73名を増員し、開発体制と営業体制の整備・強化が進んだ。また、コストの最適化では、将来のコスト効率向上を見据えて、データセンターの効率化(より少ない投資でサーバを稼働させる)やネットワークの高速化に取り組んだ。具体的には、投資・運用効率を高めた石狩データセンター3号棟の建設に着手した他(フル稼働時の1ラック当たりの投資額を既存棟比で35%削減)、新たなネットワーク基盤の構築によりネットワークを高速化した(回線容量を従来の10Gから100Gに増強し、回線速度比の単価を70%低減した)。この他、オペレーションの自動化・効率化への取り組みを継続的に進めている。

2017年3月期業績予想と今後の展望
前期比20.0%の増収、同8.6%の営業増益

パートナーシップ及び営業施策の強化による新規受注の増加が見込まれ、売上高が前期比20.0%増の145億円と伸びる。サービス別では、引き続きVPS・クラウドで高い売上の伸びが見込める他、専用サーバやレンタルサーバも堅調な推移が見込まれる。営業利益は同8.6%増の10億60百万円。変動費や減価償却費・リース料及びエンジニア人件費等の増加で売上原価が同18%強増加する中、広告宣伝費や人件費等を中心に販管費も同30%強の増加が見込まれるが、増収効果で吸収する。
高火力コンピューティング(AI、ディープラーニング分野等の演算能力に特化したサービス)等の新規取り組みについては、先行投資負担をフルに織り込む一方、売上は一部を織り込むのみにとどめた。

配当は前期と同額の1株当たり2.5円の期末配当を予定している。

投資計画

設備投資は90億円を計画している。内訳は、データセンター関連43億円(石狩データセンター3号棟30億円、同3号棟以外12億円、その他設備1億円)、サーバ及びネットワーク機器40億円、IoT関連1億円、その他(システム等)6億円。尚、石狩データセンター3号棟への投資は約43億円を計画しているが、このうち約13億円は16/3期に実行済みである。

人員計画

エンジニアの獲得は一区切りが付いたが、将来の成長のための人材獲得は一定数継続する考えで、17/3期の新規採用は新卒8名を含む37名を予定している。また、事業の企画・推進力の向上を目的に、事業の企画、開発、推進のための人材登用、自社の製品やサービス、ノウハウ等を説明するエバンジェリストの活動を強化する他、プロジェクト推進力向上のための体制整備にも取り組む。

(2)今後の展望
市場動向

「IDC FutureScape:世界と国内のデジタルトランスフォーメーション市場 2016調査会社」(2016年1月、IDCジャパン発表)によると、今後、LAN、インターネット、クライアント・サーバー等への投資が年率2.5%で縮小していくのに対して、クラウド、ビッグデータ・アナリティクス、モビリティ、ソーシャル技術等への投資は年率5%成長が見込まれると言う。実際、従来、企業内やデータセンターに散在していたデータのデータセンターへの集約が進みつつあり、しかもデータ量が爆発的に増えている。また、AIやディープラーニングに代表されるように、データを蓄積して、解析・学習し、結果を転送する「蓄積、処理、転送」のニーズも増えている。
データセンターの利用機会の増加とデータの増加は、言うまでもなく、データセンターを運営する同社にとって大きなビジネスチャンスである(同社は、蓄積、処理、転送のサービス毎に課金するシステムを構築済みである)。

将来的な産業構造の変化も同社にとって追い風となる。経済産業省「IT融合新産業の創出に向けて~ビッグデータ・ブームの次を見据えて~」によると、現在は、IT・データを活用した新ビジネスが生まれているが、今後、様々な分野でIT・データと既存産業の融合による新ビジネスが生まれ、更には、「エネルギー×自動車×交通システム」、「医療×ヘルスケア×農業」、「ロボット×小売×都市計画」といったように、IT・データを媒介とした異分野の融合による新たな産業が生まれてくると言う。つまり、現状では、IT・データは製品や事業のプラスアルファにとどまるが、将来的には製品や事業の本質的な価値になっていく(IoTやAI・ディープラーニングの技術が製品やサービスに組み込まれる)。
上記の変化を同社のビジネスに置き換えて考えると、例えば、ゲーム会社が同社のサービスを利用する場合、ゲームユーザーの増加や利用時間の増加で同社の課金収入が増えるが、IoT等での利用の場合、幅広い分野で使用される大量の機器がデータを生成する事で課金収入が発生し、更に処理や転送でも課金収入が発生する。

17/3期の重点課題と施策
ビジョン(各サービスの位置付け)

安定成長が期待でき比較的収益性も高い専用サーバ及びレンタルサーバをベースロードと位置付けて注力し、その上で成長のけん引役としてVPS・クラウドに取り組んでいく。また、昨年から取り組みを始めたIoTやAI等の分野は3~5年後に爆発的な成長が期待できる分野であり、中長期的な観点から取り組んでいく。

中期成長のけん引役となる新規分野での取り組み

総務省「平成26年度版情報通信白書」等によると、2009年時点でインターネットに接続されているPC、スマートフォン、タブレット等の端末数は16億個で、IoT関連は9億個だが、2020年にはPC、スマートフォン、タブレット等は73億個に対し、IoT関連は260億個に拡大すると言う。同社は、インターネットに接続される端末数の増加に伴い発生するデータセンター需要を手軽さと価格競争力を強みに取り込んでいく考え。具体的には、工業分野ではなく商業向け(コンシューマー向けや生活向け)のIoTに軸足を置き、スタートアップ企業や中小企業をターゲットに、参入しやすいサービスの提供や事業化の支援・促進に力を入れる。特定のソリューションではなく、インターネットにふさわしい「オープン」をキーワードに、様々な企業との連携を通じながらプレゼンスを高めていく。
一方、AI・ディープラーニングの分野では、技術を支えるプラットフォーマーとして、技術・ノウハウを持つ企業との提携や自社での技術・ノウハウの蓄積に努め、廉価な高火力コンピューティングを提供していく。実績面でのアドバンテージを確保する事が重要であると言う。

17/3期の重点課題と施策

ビジョンと新規分野における取り組みを踏まえ、前16/3期に成果の出た施策を継続すると共に、IoT、AI分野に注力していく考え。17/3期の重点課題として、売上高の成長、サービス・技術・運用強化、コストの最適化、組織力・人材力の強化の4項目をあげると共に、具体的な施策を示している。

売上高の成長については16/3期の取り組みを継続する。サービス・技術・運用強化では、自社の開発活動を強化すると共に、高い技術や先進技術を持った企業への出資もしくは提携にも力を入れていく。「インターネット・ビジネスは技術とスケールメリットによって成長していく」と言われており、スケールメリットに加えて、自社技術の強化と外部からの取り込みで技術力を高めていく。また、コストの最適化では、売上に連動しないコスト構造の構築とオペレーションの確立に取り組んでいく。一方、組織力・人材力の強化では、新卒の獲得に注力する他、人材見合いで即戦力の採用も継続する。

直近のトピックス

新たな取り組み分野を中心に、売上高の成長、サービス・技術・運用強化、コストの最適化、組織力・人材力の強化の4項目で施策が進捗している。売上高の成長では、セキュリティコンサルティングやサイトの脆弱性診断サービス等を提供するゲヒルン(株)を子会社化してセキュリティ分野を強化した他、海外展開への足がかりとするべく、IoTの国際標準化を推進する団体である「OpenFog コンソーシアム」にアジア初の「Contributing Member」(中心メンバー)として加入した。

サービス・技術・運用強化では、IoT分野でのプレゼンス向上に向け、(株)アパマンショップホールディングスのグループ会社(株)システムソフトとホームIoT関連事業を手掛ける合弁会社(株)S2iの5月設立で合意した。第一弾として「さくらのIoT Platform」対応のスマートロックを、アパマングループとの業務提携(予定)を通じて未入居物件に設置する予定。
また、ブロックチェーン関連では、2016年1月にスタートしたmijinクラウドチェーンβが計画通り進んでいる(今後のブロックチェーン技術のIoTにおける活用が期待される)。引き続きブロックチェーンのインフラとしてのデータセンターを念頭に事業を進めていく。この他、高火力コンピューティングの分野でPreferred Networks社及びUEI社と提携し、今期中の正式リリースに向けてサービスを開発中だ。アジアで最も速くて価格競争力を有する石狩データセンターを武器に、AIやディープラーニング需要に応える演算能力に特化したコンピューティング環境を提供していく考え。

コストの最適化では、石狩データセンター3号棟の建設工事が、本年12月の竣工、2017年4月の稼働を目指して予定通り進んでいる。本年4月末に2回目の支払いを予定しているが、その資金は2016年2月に調達済みである。

今後の注目点
16/3期のポイントは、VPS・クラウドが第4四半期に同社において最大の売上規模を誇る事業になった事と、AIやディープラーニング等の高火力コンピューティング分野の需要を追い風にした専用サーバの底打ちである。膨大なデータの「蓄積、処理、転送」を行う高火力コンピューティング分野では、分散されたクラウドのコンピュータよりも、とにかく速くて、しかも低コストのコンピュータが必要だ。このため、大容量バックボーンとアジアNo.1のコスト競争力を強みとする石狩データセンターを有し、速くて安いコンピュータを即納できる同社が存在感を高めている。
ちなみに、人間の脳をモデルにしたディープラーニングでは、コンピュータが膨大なデータの中から特徴を抽出し、事象を認識したり分類したりする。自動運転や医師の診断支援等、あらゆる分野で使われ、向こう10年間で5千億ドル(約54兆円)規模の事業機会を生み出すと言われている。ディープラーニングのように膨大なデータを蓄積して処理するビジネスの拡大は同社にとって追い風となる。この一環として、既に複数のプロジェクトがスタートしており、ユーザーと業務提携し、それぞれの強みを活かしてビジネスを作り上げていく取り組みが進められている。こうしたプロジェクトはユーザーが高い技術力や新規性の高い技術を有する事が条件になるため真贋を見分ける目が必要となるが、プロジェクトが始まれば、市場拡大に伴うデータの増加を収益の増加につなげつつ、研究・開発を進める事ができる。
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