(4282:東証1部) EPSホールディングス 2016年9月期第1四半期業績レポート

2016/03/09

EPSHD

今回のポイント
 
・16/9期1Q(10-12月)は前年同期比9.9%の増収、同109.0%の経常増益。中国の景気減速の影響を受けた益新事業を除く全てのセグメントで売上が増加。利益面では、原価管理の徹底とリソースの最適化で国内CRO事業の利益が同47.0%増と伸びた他、大型案件が順調に進捗した国内SMO事業の利益も同9.2倍に拡大。Global Research事業は大幅な損益改善で黒字を確保した。

・2016年1月、国内SMO事業強化を目的に同事業大手(株)綜合臨床ホールディングス(以下、綜合臨床HD)を完全子会社化した。このM&Aにより、国内SMO事業はCRC1,000名体制が確立され、シェアが30%に上昇したと言う。また、臨床研究の支援を行うジェイクルーズ(株)が活動を本格化させた。同社はNPO日本臨床研究支援ユニットの業務を引き継ぐ形で、昨年10月に設立されたグループ会社。EPSホールディングス(株)では、臨床研究事業の強化を目的に、CPO事業セグメントを新設し、それまでグループ各社が案件毎に対応してきた臨床研究支援業務をEPI(株)に集約した。ジェイクルーズ(株)は、EPI(株)と共に臨床研究事業の中核を担う企業として期待されている。

・綜合臨床HDのM&A、ジェイクルーズ(株)の立ち上げ費用と本格稼働、更には1Qの国内CRO事業の利益面での貢献を踏まえて、上期及び通期の業績予想を修正した。売上高・利益共に上方修正した上期予想は、前年同期比11.1%の増収、同14.3%の経常減益。一方、売上高のみを上方修正した通期予想は、前期比14.4%の増収、同13.3%の経常減益。上期は綜合臨床HDの完全子会社化で利益が上振れするものの、通期では、M&Aに伴うのれん償却費やジェイクルーズ(株)の先行投資的費用を大きく見込んでいる。ただ、上期・通期共に減益予想に変更はなかった(特別損益の改善等で最終利益は増加する見込み)。

 
会社概要
 
「価値あるソリューションの創出を通じて、健康産業の発展に貢献します」を企業理念に掲げ、医薬品や医療機器等の開発に関わる業務を様々な角度からサポートしている。国内で展開する、CRO(Contract Research Organization:臨床試験に関連して製薬会社を支援)、SMO(Site Management Organization:臨床試験に関連して医療機関を支援)、及びCSO(Contract Sales Organization:医薬品の販売業務を支援)の3事業を収益基盤に、医薬品メーカーのグローバル治験(治験:新薬開発のための臨床試験)に対応するべくGlobal Research(グローバル・リサーチ)事業を育成中。また、日中のヘルスケア産業の懸け橋として専門商社の機能を担う益新事業の育成にも取り組んでいる。
 
【中期経営戦略】
3年後に目指す姿として、“日本国内における持続的成長可能な事業基盤の確立”、“日本発のアジア・グローバルCROへ”、“日本と中国、東南アジアを繋ぐヘルスケア専門商社へ” の3項目を挙げており、経費削減による収益力の強化を含めてビジネスモデルを再構築してく考え。この方針の下、事業セグメント別の経営戦略テーマを次のように定めている。
 
事業セグメント別中期経営戦略のテーマ
国内CRO事業     :確固たる業界 “No.1”へ
国内SMO事業     :確固たる業界 “No.1”へ
国内CSO事業     :独自性を持ったリーディングカンパニーへ
Global Research事業 :日本発のアジア・グローバルCROへ
益新事業      :日本と中国、東南アジアを繋ぐヘルスケア専門商社へ
グループ全体    :グループ経営の確立、管理部門の効率化
 
 
国内事業は、国内CRO事業、国内SMO事業、国内CSO事業の3セグメントに分かれる。このうち国内CRO事業は、イーピーエス(株)、派遣型CRO業務の(株)イーピーメイト、医薬・医療系IT関連業務のイートライアル(株)社、及び(株)EPSアソシエイトの4社で事業展開している。国内SMO事業は(株)イーピーミント及び2016年1月に株式交換により完全子会社化した綜合臨床HDの2社で事業展開。国内CSO事業は(株)EPファーマラインの事業領域であり、医薬向けCMR(契約MR:医薬情報担当者)業務、医薬向けコールセンター業務、及びPMS(市販後調査)業務を手掛けている。

海外事業は、Global Research事業と益新事業に分かれる。Global Research事業は、統括会社である日本国内のEPSインターナショナル(株)と海外のグループ会社で構成され、CRO事業・SMO事業を手掛けている。一方、益新事業では、CRO・SMO事業以外の中国事業を手掛けており、日本国内のEPS益新(株)と中国国内の益新(中国)有限公司及びその海外グループ会社で事業展開。EPS益新(株)は日本国内からの益新事業全体の管理及びサポート、益新(中国)有限公司は現地における事業の統括を行っている。

その他グループ関連では、2016年9月期より新設したCPO事業と、主にグループのコストダウンを目的としたシェアードサービスで構成されている。CPO事業の統括会社であるEPI(株)は、データ処理のオフショア・ニアショアを展開している他、2015年10月に設立したジェイクルーズ(株)が臨床研究関連のサービスを展開している。(株)イーピービズはグループ内外にシェアードサービスを提供している。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は、インベストメントブリッジが参考値として決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
同社は10%以上のROEを維持している。13/9期のROEの悪化が目につくが(前期に比べて4.6ポイント悪化)、主な要因は、国内3事業の収益性の悪化(連結営業利益率:12/9期 14.7%から→13/9期 9.3%)による売上高当期純利益率の低下。その後、営業利益率は、14/9期10.7%、15/9期12.1%と回復傾向にあり、ROEも改善しているが、未だ12/9期実績とのかい離は大きい。
尚、予想ベースだが、16/9期は営業利益率が9.9%に低下し、売上高当期純利益も、4.75%とわずかに15/9期の実績を下回る見込み。
 
 
(株)綜合臨床ホールディングスの完全子会社化と臨床研究事業の強化
 
2016年に入り、国内SMO事業の強化に向け国内SMO大手の(株)綜合臨床ホールディングス(以下、綜合臨床HD)を完全子会社化すると共に(2016年1月1日)、臨床研究の支援を行うジェイクルーズ(株)が活動を本格化させた。
 
(1)圧倒的な “No.1 SMO企業” へ
国内SMO事業は綜合臨床HDを子会社化した事で、CRC1,000名体制が確立され、国内シェアが30%に上昇した。がん領域施設に強い(株)イーピーミントとプライマリー領域施設に強い綜合臨床HDは補完的な関係にあり、イーピーエス(株)との連携を強化する事で、SMOとCROの更なるシナジーも期待できる。今後の組織再編を経て、綜合臨床HDが中間持ち株会社として国内SMO事業を統括していく事になるが、「先ずは上記2社の問題点を洗い出す予定であり、利益獲得に走らない」としている。
 
 
(2)臨床研究事業の強化
CPO(Clinical Process Outsourcing)事業を新たにセグメントして、臨床研究事業の拡大に取り組んでいる。臨床研究分野については、従来、グループ各社が案件毎に対応してきたが、CPO事業のセグメントを機に、登録業務やデータマネジメント・統計解析等を手掛けるEPI(株)に集約された。EPI(株)は、EPI(蘇州)、EPI(山梨)といったグループ企業のリソースを活用しつつ、業務を進めている。

また、臨床研究の支援を目的に昨年10月に設立したジェイクルーズ(株)が、2016年1月から活動を本格化させている。同社は、医師や研究者主導の臨床試験または大規模な疫学研究の支援等を行うNPO法人 日本臨床研究支援ユニット(略称:J-CRSU)の業務を引き継ぐ形で設立された。J-CRSUとの連携の下で事業を進めており、具体的には、J-CRSUが臨床研究のコンサルティングを行い、ジェイクルーズ(株)が実際のオペレーションを行っている。
 
 
 
2016年9月期第1四半期決算
 
 
前年同期比9.9%の増収、同109.0%の経常増益
売上高は前年同期比9.9%増の115億48百万円。中国の景気減速で医療機器関連商品の販売が減少した益新事業を除く全てのセグメントで売上が増加。主力の国内CRO事業の売上が同10.0%増加した他、大型案件の進捗が順調だった国内SMO事業の売上が同24.8%増、Global Research事業の売上が同82.5%増、と伸びた。

営業利益は同114.4%増の18億20百万円。貢献が最も大きかったのが国内CRO事業で、原価管理の徹底とリソースの最適化等で利益が17億22百万円と同47.0%増加した。この他、国内SMO事業の利益が2億67百万円と同9.2倍に拡大した他、前年同期は1億03百万円の損失だったGlobal Research事業が1億20百万円の利益を計上した。最終利益が11億05百万円と同2倍強に拡大したのは、実効税率の低下による。

受注高は前年同期比8.6%減の108億54百万円。国内CRO事業がモニタリング業務を中心に58億88百万円と同16.4%増加したものの、その他のセグメントで受注が減少した。一方、第1四半期末の受注残高は583億56百万円と前年同期末比11.7%増加した。
 
 
国内CRO事業
売上高63億31百万円(前年同期比10.0%増)、営業利益17億22百万円(同47.0%増)。当事業は、CRO業務のイーピーエス(株)及び(株)EPSアソシエイト、派遣型CRO業務の(株)イーピーメイト、医薬・医療系IT関連業務のイートライアル(株)の4社で事業を展開している。売上面では、データマネジメント業務の売上が減少したものの、モニタリング業務とCROその他業務の売上増で吸収。利益面では、モニタリング業務やデータマネジメント業務における原価管理の徹底やリソースの最適化等、収益性改善に向けた取り組みが成果を上げ利益率が改善した。
受注高は同16.4%増の58億88百万円。モニタリング業務の受注が堅調に推移する中、医薬・医療系IT関連業務の受注が伸びた。受注残高は前年同期末比11.3%増の372億74百万円。
 
国内SMO事業
当事業は、(株)イーピーミントが事業を展開している。
売上高18億20百万円(前年同期比24.8%増)、営業利益267百万円(同828.7%増)。売上面では、前期からずれ込んでいた大型プロジェクトが進捗した事に加え、治験体制の整備やプロジェクト管理体制の強化といった取り組みも成果を上げた。利益面では、採用強化、がん領域の施設拡大、更にはがん領域経験CRCの育成等、先行投資に伴う人件費及び経費の増加を増収効果で吸収した。
受注高は同4.2%減の15億54百万円、受注残高は前年同期末比10.4%増の90億63百万円。
 
国内CSO事業
当事業は、(株)EPファーマラインが事業を展開している。売上高17億36百万円(前年同期比3.4%増)、営業利益50百万円(同58.3%減)。売上の伸び悩みで、新規予定プロジェクトのための採用関係費用(人件費、経費)が負担となった。
受注高は同53.9%減の6億57百万円、受注残高は前年同期末比23.8%増の55億92百万円。
 
Global Research事業
当事業は、EPSインターナショナル(株)と海外グループ会社で構成されており、中国を含む東アジア及び東南アジアを中心に事業を展開している。
売上高10億30百万円(前年同期比82.5%増)、営業利益1億20百万円(前年同期は1億03百万円の損失)。実施中のプロジェクトの進捗と新規プロジェクトの寄与で売上が大幅に増加し、損益分岐点を超えた。
受注高は同34.4%減の15億78百万円、受注残高は前年同期末比7.5%増の62億23百万円。
 
益新事業
当事業は、日本国内から益新事業全体の管理及びサポートを行うEPS益新(株)、現地で事業の統括を行う益新(中国)有限公司、及び益新(中国)有限公司の海外グループ会社が展開している。
売上高8億78百万円(同13.3%減)、営業損失82百万円(前年同期は84百万円の損失)。中国国内景気の減速で益通(蘇州)医療技術有限公司が扱うデジタルレントゲン検査機や画像フィルム等の医療機器関連商品の販売が減少した。
受注高は同2.8%減の10億29百万円、受注残高は前年同期末比92.9%増の1億94百万円(当事業は納期が短いため、受注残は他の事業ほど意味を持たない)。
 
 
 
配当金、賞与、法人税等の支払い等で、第1四半期末の総資産は388億66百万円と前期末に比べて5億21百万円減少した。自己資本比率は61.7%(前期末59.0%)。
 
 
営業CFは12億54百万円のマイナス(資金の流出)。第1四半期は季節要因で営業CFがマイナスになる事が多く、この第1四半期は税負担の増加等でマイナス幅が拡大した。投資CFについては、有形・無形固定資産の取得や出資金の払込等がマイナスとなった要因。一方、長短借入金の積み増しで財務CFは黒字となった。
 
自己株式取得の取得
株主還元の充実及び資本効率の向上を図ると共に、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため、自己株式の取得を実施する。具体的には、2016年2月2日から同年4月28日にかけて、1,450,000株、2,000 百万円を上限に市場委買い付けを行う予定。
 
(1)取得対象株式の種類  当社普通株式
(2)取得し得る株式の総数 1,450,000株(上限) (自己株式を除く発行済
              株式数に対する割合3.16%)
(3)株式の取得価額の総額 2,000 百万円(上限)
(4)取得方法       市場買付
(5)取得期間       2016年2月2日~同年4月28日

(参考)
2016年1月1日時点の自己株式の保有状況  発行済株式総数 46,311,389 株、
自己株式数 395,780 株
 
 
2016年9月期業績予想
 
(1)上期及び通期業績予想
2016年1月1日付での(株)綜合臨床ホールディングス(以下、綜合臨床HD)の完全子会社化、2016年1月からのジェイクルーズ(株)の本格稼働、更には第1四半期の国内CRO事業の利益面での貢献を踏まえて、上期及び通期の業績予想を修正した。
 
上期は売上高・利益共に期初予想を上方修正
上期予想は、売上高245億円(前年同期比11.1%増)、営業利益22億円(同9.8%減)、経常利益21億50百万円(同14.3%減)、(親会社株主に帰属する)四半期純利益12億50百万円(同27.0%増)。
綜合臨床HDの完全子会社化に伴い、同社の1月~9月の業績予想がEPSホールディングス(株)の連結対象となった事、及び今期より臨床研究関連事業の強化を目的に新設したジェイクルーズ(株)が1月より本格稼動した事を踏まえて、予想売上高を期初の229億45百万円から245億円に6.8%上方修正した。
利益面では、原価管理の徹底とリソースの最適化によるCRO事業の利益貢献や綜合臨床HDの完全子会社化に伴う営業利益の上乗せを踏まえて、営業利益を21億円から22億円に上方修正し、つれて経常利益、四半期純利益も上方修正した。
 
通期は売上予想のみを上方修正し、利益予想は据え置き
通期予想は、売上高517億円(前期比14.4%増)、営業利益47億30百万円(同13.7%減)、経常利益46億50百万円(同13.3%減)、(親会社株主に帰属する)当期純利益22億70百万円(同4.9%増)。「第2四半期より、のれん償却費が発生する事に加え、ジェイクルーズ(株)の立ち上げに伴う先行投資的な費用を大きく見込んでいる」として、売上高のみを上方修正し、営業利益以下の各利益を据え置いた。
 
営業利益及び経常利益の減少要因
上期・通期共に増収ながら、営業利益及び経常利益が減少する見込みだ。今回、新たに、のれん償却費やジェイクルーズ(株)の立ち上げに伴う先行投資的な費用が織り込まれたが、当初から、益新事業の損益の悪化(ライセンスの一部売却で前期の利益が押し上げられた反動による)、CRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)など専門人材の増員とオフィス拡充、中期的成長のための先行投資による国内CRO事業の利益減少、更には綜合臨床HDとの経営統合を前にした国内SMO事業の提携先施設の見直し(低稼働施設との提携解消)に伴う諸経費等が織り込まれていた。
もっとも、(親会社株主に帰属する)当期純利益については、特別損益の改善で増加する見込み。

尚、配当は1株当たり創立25周年記念配当2円を含む年20円を予定している(上期末10円、期末10円)。
 
 
 
今後の注目点
直近の決算が売上高59億24百万円、経常利益6億84百万円の綜合臨床HDを取り込んだが、今期に限れば、売上はともかく、利益については期待したほどの貢献はない様だ。しかし、開発期間(短縮)や開発コスト(抑制)に対する製薬企業・医療機器企業の意識は強く、医薬品や医療機器の開発にかかるアウトソース市場は拡大が続いている。また、海外も、Global Research事業の売上が30億円に拡大し(国内CRO・SMO企業が手掛ける海外事業としては恐らく最大規模)、通期での利益確保が見込まれる等、基盤整備が進んでいる。いずれ、綜合臨床HDの子会社化効果も顕在化してくるだろうから、今期が減益決算だったとしても悲観する事はない(最終利益は増加する見込み)。

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