(3175:東証1部) エー・ピーカンパニー 会社紹介レポート

2015/12/24

apcompany

今回のポイント
・「日本の食のあるべき姿を追求する」という理念の下、地鶏や鮮魚などの食材の生産・流通から、外食店舗による販売までを一貫して手掛ける「生販直結モデル」を展開。生産流通事業では、養鶏場、加工センター等を自社運営するほか、自社漁船・定置網も保有する。販売事業では、地鶏をメインメニューとした「塚田農場」、鮮魚を提供する「四十八漁場」などの店舗を直営中心に展開。顧客感動満足を実現しリピート(再来店)につなげる独自の販促手法も大きな特徴。新規事業の育成に注力中。

・「第一次産業の活性化」、「高品質で低価格な商品とサービスの提供」を目的として展開する食品の生産(一次産業)から流通(二次産業)、販売(三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の『生販直結』という六次産業化ビジネスモデルは、「生産地との直接提携関係と自社生産体制の構築」、「流通ソリューション」、「ブランド創出&伝達」、「第一次産業および地域の活性化」といった特徴を持つ。

・成長戦略として、着実な店舗出店、商品開発力の強化、人材採用などによる既存事業の強化とともに、海外出店の加速、弁当事業の拡大、ブライダル事業の開始などによる新規事業の拡大を進めている。

・16/3期通期の売上高は前期比17.4%増の225億76百万円、営業利益は同24.6%増の15億81百万円の予想。
出店拡大と新規事業の立ち上がりによりコストが増加するが、増収効果で吸収し2桁の増収増益、過去最高の売上、利益の更新を見込んでいる。

・同社の特長を実感し、投資判断するためには「塚田農場」に是非一度足を運ぶことをお勧めする。メニューブック、実際の料理と合わせて他社との圧倒的な違いや特長を感じることが出来るだろう。また、「日本の食のあるべき姿を追求する」という理念に基づいた「生販直結」のビジネスモデルも同社の独自性として注目される。
ただ一方で、同業と比較した高いROEも含めた違いや特長は株式市場の評価に結び着いていないのが現状だ。「外食産業」という範疇からの脱却の鍵となる新規事業の進捗スピードを、M&Aを絡めた生産流通事業の拡大とともに注目していきたい。

会社概要

「日本の食のあるべき姿を追求する」という理念の下、地鶏や鮮魚などの食材の生産・流通から、外食店舗による販売までを一貫して手掛ける「生販直結モデル」を展開。
生産流通事業では、養鶏場、加工センター等を自社運営するほか、自社漁船・定置網も保有する。
販売事業では、地鶏をメインメニューとした「塚田農場」、鮮魚を提供する「四十八漁場」などの店舗を直営中心に展開。顧客感動満足を実現しリピート(再来店)につなげる独自の販促手法も大きな特徴で、新規事業の育成に注力している。

【沿革】

2001年10月、飲食業のプロデュースなどを手掛ける有限会社エー・ピーカンパニーを設立した米山社長は、短期間に売上を急速に拡大させた。

しかし、食材の流通構造、生産者の現状、居酒屋の存在意義など様々な問題を感じる中で、単に居酒屋の経営にとどまることに満足することが出来なかった米山社長は、食材を問屋から仕入れて販売するのではなく、生産まで遡って自社で手掛け、生産者にも消費者にもメリットを提供する「生販直結モデル」によって日本の食産業に変革を生み出すこと決意。このミッションがエー・ピーカンパニーの存在意義であり、「生販直結モデル」は同社の大きな差別化要因となっている。

まず美味しい地鶏を手掛けようと、苦戦しながらも養鶏業者との信頼関係を構築する中で、2006年2月、宮崎県日南市に子会社(有)APファームを設立し、同市内に自社養鶏場を建設。みやざき地頭鶏の生産を開始した。
仕入価格を大幅に引き下げることに成功するとともに、事業環境改善による後継者問題の解決や新規雇用の創出にも繋がることを確認した米山社長は、「生産者と消費者を直接つなぐことで、日本の食を変えていく。そのためには消費者に一番近い自分たちが、生産者の想いや生産の現場をきちんと知ったうえで、両者の橋渡しをしなくてはならない。」との想いを強め、「生販直結モデル」の更なる強化に邁進する。

2007年8月には地鶏モデルの主力店舗『宮崎県日南市 塚田農場』ブランドの出店を開始。また、地鶏に加えて、鮮魚においても「生販直結モデル」を構築し、2011年7月には鮮魚モデルの主力ブランド「四十八漁場」の出店を開始した。
生産から手掛ける事で美味しい食材をリーズナブルな価格で提供することに加え、日本各地の隠れたブランド食材のメニュー化、リピート率を高めるための独自の販促手法などが消費者に評価され、出店数、売上ともに急速に拡大し、2012年9月、東証マザーズ市場に上場。翌2013年9月には東証1部に市場変更した。

こうした理念を同社オリジナルの研修システム(後述)によって正社員、アルバイトに浸透させる取り組みに力を入れている。

【事業内容】
◎食産業に対する問題意識

同社は日本の食産業について以下のような問題意識を持っている。

約100兆円の市場規模がある食産業において、農協や漁協が中心となった従来の管理形態、多層的な卸売市場、有形無形の規制が絡む複雑な流通構造により、農業・漁業などの第一次産業事業者と、小売・外食等の第三次産業事業者は分断されてきた。
そのため卸売市場、商社、問屋等、流通を手掛ける第二次産業が肥大化する一方で、生産者の販売価格は低く抑えられ、逆に消費者は高価格での入手を余儀なくされている。
また、生産者の販売価格が低く抑えられていること等から農水産業は就業者の高齢化と後継者問題が深刻化し、耕作放棄地も拡大している。
加えて、日本全国には特色ある農水産物が多数存在するが、資本力、生産量、流通構造の問題などから他県まで出荷されていないものも多く、これらを日本全国に提供できるようになれば、生産者・消費者双方にとって大きなプラスとなる。
◎ビジネスモデル

こうした問題を解決し「食のあるべき姿を追求する」というミッションのもと、「第一次産業(農業、漁業等)の活性化」、「高品質で低価格な商品とサービスの提供」を目的として展開しているのが、食品の生産(第一次産業)から流通(第二次産業)、販売(第三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の『生販直結』という六次産業化(※)ビジネスモデルだ。

(※)六次産業化
「一般的には、一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出すことを言うが、同社の場合は二次産業として流通業を指す。一、二、三を足す又は掛けると六になることから名づけられた。」
特長1:生産地との直接提携関係と自社生産体制の構築

日本各地の潜在的な競争力をもつ農漁業生産者や地域と直接提携関係を構築すると共に、現地に設立する子会社等において地鶏や鮮魚の自社生産等(養鶏・加工業、定置網漁業)を行っている。

多くの卸業者等が介在する流通構造においては、食材の生産者と販売者が直接顔を合わせる事は、極めて稀であるが、同社では、生産者と販売者が直接交流し、アルバイトも含めた全従業員が生産の現場を知る機会を設けている。
この機会を通じて同社スタッフは、生産者の生産現場における苦労や食材にかける想いを深く理解することができ、消費者との接客時に、食材の価値や産地情報をリアルに自信を持って伝えることが可能となる。
また生産者に対しては、「自分が生産した食材がどこでどのように消費されているのか?」といった、これまで触れる機会がなかった消費者の情報を提供しており、これがモチベーションや商品価値の向上に繋がっている。

特長2:流通ソリューション

生産地の課題に対して、物流コスト低減や納期短縮による鮮度向上、未利用魚(※)の加工商品化等の流通ソリューションを立案し提供している。

(※)未利用魚
サイズが小さかったり、消費者にあまり知られていなかったりといった理由から商品価値が低く市場に出回らない魚
特長3:ブランド創出&伝達

地域の食文化、生産物の特性、生産方法および生産者の想いを理解することを基本として、生産地や生産物の情報をメニューブックや店内装飾、接客等で伝達することにより付加価値を高めている。
自らも生産に携わることがリアルで深みのあるブランドの創出に繋がっている。

特長4:第一次産業および地域の活性化

生産・流通・販売までを一貫して手掛け、適正価格・継続的販売を前提とした、安定かつ十分な収入が得られる事業環境の提供により、雇用促進など第一次産業および地域産業の活性化に貢献している。

◎事業セグメント

生産流通事業と販売事業の2セグメントによって構成されている。

<生産流通事業>

「生販直結モデル」の一部として、地鶏、鮮魚、青果物などの生産及び加工販売を手掛けている。
自社店舗やライセンス供与先に供給するほか、グループ外の外食・小売店舗にも販売している。

①地鶏の生産流通

2006年に宮崎県日南市に子会社を設立し、自社農場での「みやざき地頭鶏」の生産を開始し、翌2007年には加工場を建設した。2010年には雛センターと食鳥処理場を統合し、一貫生産体制を確立している。
また、そのノウハウを活用し、2011年からは「新得地鶏」(北海道)を、2012年からは「黒さつま鶏」(鹿児島)を自社農場で生産・販売している。

②鮮魚の生産流通

当日朝に水揚げされた水産物を、夕方には店舗に届ける「今朝獲れ便」を活用しながら、日本各地の漁師・漁協との卸売市場等を経由しない直接取引を順次拡大している。また、2011年には宮崎県延岡市に子会社(株)プロジェクト48を設立し、漁協組合員との共同経営による定置網漁業も開始している。

加えて、東京都中央卸売市場の大田市場青果部の売買参加権を取得して青果物の直接買入と販売を行っているほか、全国各地の青果物生産者との直接取引、販売も行っている。

<販売事業>

自社農場等で生産された地鶏料理をメインとする「塚田農場」、日本各地の漁師から直送される鮮魚をメインとする「四十八漁場」の2つを主要ブランドとして、中価格帯である平均客単価4,000円前後の居酒屋を、首都圏中心に店舗展開している。また、販売チャネル多角化のため中食店舗の運営も行っている。(2015年9月末時点)

【特長と強み】
1.独自の販促手法

塚田農場を始めとした店舗における独自の販促手法は大きな特徴となっている。
「期待を超えるサービスの積み重ねこそが顧客に満足と感動を与え、これが再来店(リピート率の向上)につながる。」という消費者心理の分析に基づき、接客担当者が一定の予算内で自由にサービス(販促)を企画実行し、再来店の動機を創出している。
リピート率は「来店総組数に対する再来店顧客を含む組数の割合」を指す。(同社店舗のファンとなってくれた消費者が知り合いや仲間を連れてきてくれる頻度を計測するため、同社では組数の割合をより重視している。)

同社事業にかける米山社長の想いを綴った著書「ありきたりじゃない 新・外食」は、この独自の販促手法について触れており、その一部をここで紹介する。

*「付加価値提供トーク」

「生産者の想い」という重要な価値を全社の代表として来店客に伝えること。
第一次産業と関わっているからこそ知ることが出来る生産者の想いや苦労を消費者にも是非知って貰いたいという一種の使命感が「付加価値提供トーク」のベースとなっている。
他店にはない圧倒的に差別化された特長を言葉にして来店客に伝えることで客に「同社店舗に行く理由」を植え付け、「選ばれる店」になるための重要な役割も担っていると考えている。

例)「こちら看板メニューの地鶏の炭焼きです。自社養鶏場で育てた新鮮な地鶏を、1番おいしくお召し上がり頂けるレア焼きにしております。まずはそのままお召し上がり頂いて、その後自家製の柚子胡椒も使ってみてください。」

「こちら、三陸を代表する魚「ドンコ」です。関東ではあまり知られていませんが、現地では誰もが知っており、とっても美味しい魚です。鮮度抜群の美味しいドンコを煮付けにして是非お召し上がりください。」

*「鉄板ジャブ」

来店客に期待を超えた「感動」を経験してもらいリピートに繋げるためには、客が経験したことの無いサービスをいくつも提供する必要がある。この販促手法を同社では「鉄板ジャブ」と呼んでいる。
(同書では「ジャブの連打こそが客をKOする」と書かれている。)

例)同社の代表的なメニューである「じとっこ炭火焼」を提供する際は、まず緑のゆずこしょうを付けて食べてもらう。
スタッフは客が少し食べたところで、今度は、塩分を一切使わず完熟ゆずと唐辛子だけで作った赤いゆずこしょうを持って行く。
じとっこ炭火焼を残している客には、冷めたままでは本来の味を楽しめないし、残すという事は食のあるべき姿を目指す同社スタッフには許されない事なので、宮崎の日向夏ポン酢とネギを出し、スタッフがその場で和えて別の味を楽しんでもらう。
また、完食した際は食べ終わった鉄板をいったん下げ、鉄板に残った鶏の油を熱して溶かしライスとスパイスで混ぜ合わせてハート形の「じとっこライス」として再び提供する。

赤いゆずこしょうを提供するというアイデアは、「緑だけではなく違ったゆずこしょうも提供してみたい。」というバイトスタッフの提案を受けて、商品開発担当者が全国の食材の中から素材を選んで開発したという事だ。

こうした「生産者が丹精込めて作った食材を最後までおいしく食べてもらいたい」と考えるバイトスタッフのアイデアから生まれた多数の付加価値提供トークや鉄板ジャブは各店舗で共有されている。
各店長はバイトスタッフが積極的にこうしたアイデアを生み出す環境作りに注力しており、これが同社店舗の独自性、他社店舗との大きな差別化に繋がっている。

2.研修制度
◎理念浸透のための仕組み

「付加価値提供トーク」、「鉄板ジャブ」はともに、「日本の食のあるべき姿を追求する」という同社の基本理念がバイトも含めた全社スタッフに浸透・理解されて初めてリアルでかつ意味のあるものとなる。
その浸透のための仕組みである研修制度も同社を特徴づける大きなポイントだ。

当初は内部に研修が行える人材がいなかったため外部講師を使っていたが、外部講師は教え方は上手でも中身が伴わないという問題があった。
そこで米山社長は、外部コンサルの人材を社員として採用し、研修のノウハウを社内に積み上げて行った。現在では33名の社員が研修講師を行うことが出来る体制となっている。

社長一人では理念、ミッション、存在意義を伝達・浸透させるのは限界があり、店長クラスが現場10数人ではなく100~200名に伝達できるスキルを持たせることを主眼に置いており、研修講師になれる事は社内の一つの目標にもなっているという。

同社の研修制度が充実している大きな理由としては、研修材料が豊富かつリアリティのあるものであるという事が挙げられる。
生販直結モデルにより、第一次・二次・三次産業それぞれに直接接していることから、「第1次産業や地域経済の活性化」、「第2次産業の課題」等に加え、「命の尊さ」など、接客時のお辞儀の仕方や言葉遣いなど、ありがちなマニュアルに留まらない、より実際的で共感できるテーマ・材料を豊富に揃えている。

例えば、新卒社員は3年目に宮崎の地鶏生産現場で2~3週間の実地研修を行う。
地鶏は孵化から4~5か月で出荷準備が整い、食肉処理場では地鶏は3分程度で解体され食肉となる。その光景を目の当たりにした社員の多くは泣き出し、数日間は放心状態になってしまうという。
その後社員たちは、「自分の役割は何か?」を考え、命を頂く有難さを改めて感じた上で、「最終消費者によりおいしい状態で残さず食べてもらう事だ。」と気付く。
また、この研修風景は映像に記録し、新入社員やアルバイトに見せ、見終わった後本人が店舗における自分達の役割を伝える。
このようにして若い社員が自らの体験を伝えることにより、理念やビジョン、ミッションが浸透し、生産者の想いや姿を、リアリティをもって消費者に伝えることが可能となっている。

◎M&Aにおけるアドバンテージ

この研修制度は、同社が今後積極的に行うM&A戦略においても大きな武器となるものと考えられる。

M&Aを成功させるには、「優良な案件の発掘」、「適切な価格での実行」が重要であることは論を待たないが、場合によってはより重要なのが「M&A後」であり、想定した通りのシナジー効果を生み出すためのプロセスである「PMI(Post Merger Integration)」の重要性が注目されている。
M&Aによる統合効果を確実にするためには、M&A初期段階より統合阻害要因等に対し事前検証を行い、統合後にそれを反映させた組織統合マネジメントを推進することが不可欠だが、中でも、企業文化の違いをどのようにマネジメントするかはPMIの重要なテーマであると言われている。

通常、M&Aにおいては被買収企業社員のモチベーション低下などが課題となるが、「企業理念の理解促進・浸透」のために大きな効果をもたらしている同社の研修制度は、マインドセットを通じてグループ一体化において大いに力を発揮する事が期待できよう。

3.バイトスタッフの採用

外食産業におけるアルバイトの人手不足が顕著となっているが、同社においては人材確保にはさして苦労はしていないという事だ。
その背景として、同社では従業員満足度を顧客満足度と同じレベルで捉えた施策を行っているという点が挙げられる。

採用時には同社の理念やミッションへの共感を持つことが出来るかがポイントとなるが、採用後バイトスタッフは同社がバイトスタッフのために開催している「就職支援セミナー」に無料で参加できる。
このセミナーでは、就職活動とは何か、その心構えの説明から始まり、最終的には卒業後の就職先を斡旋までも行っている。
「塚田農場で働いている」点を評価する企業も多く、学生、企業双方に評価が高いという事だ。
また、店舗における販促手法に関しては、優れたアイデアに対する表彰制度もあるなど、モチベーションを与えつつ、自己成長できる様々なプログラムを提供している点も学生には好評だ。

こうした点から、バイトスタッフを確保するために時給を大きく引き上げる必要が無い一方で、平均在籍年数は1.9年と比較的長く、安定して人手を確保できる仕組みとなっている。

同社のROE(前期実績)は30.5%と高く、同業他社に比べても一段高い水準にある。
レバレッジがやや高いものの、本業での収益性の高さが注目される。

成長戦略

同社は既存事業をより強固なものとすると同時に、新規事業の育成を進め、今後の更なる成長を目指している。

【既存事業】
①出店体制

2015年3月期において当初40店舗の出店を目標としていたが実績は26店舗と、14店舗の未達に終わった。
そのため、外部からの人材招聘も含め人員を強化するとともに、店舗開発部を2分割し、より効率的な店舗開発を進めていく。

出店計画は以下の通りで、ウェディングモデル、鴨モデルの新業態の出展も開始する。

②商品開発体制

地方各地に同社駐在社員を派遣する。
その地域に根付いて生活する社員が、彼らだからこそ得る事の出来る地元の価値ある食材の情報を収集し、継続的かつ魅力的なメニュー開発につなげていく。

③人材採用

同社は「食の総合マーケティング企業」を目指し、六次産業化ビジネスモデルを背景に、外食の枠組みにとらわれることなく事業領域の拡大を進めている。
そのため、それにふさわしい発想を持った社員の採用が可能となっており、今後もさらに優秀な人材の確保を強化する。
また、六次産業化ビジネスモデルを背景とした新規事業の立ち上げにより、外食、EC、海外、外販、弁当、ブライダルなど、多様なキャリアパスを提供することができるようになり、これも人材獲得の大きなカギとなる。

【新規事業】
①アジアへの出店加速

2012年7月に子会社 Apcompany International Singaporeを設立し、同年10月に「美人鍋レストラン塚田農場」の第1号店を出店したシンガポールでは、今後3年間で16店舗を出店し、売上高25,000千SD(約2,000万円)を目指している。食材、メニュー共に妥協のない本当の和食をきめ細やかなおもてなしと共に提供する。
アジア各国の食材をシンガポールで販売することは、各地の農業従事者の所得向上や雇用促進を通じて、アジアの第1次産業の活性化に繋がると考えている。

2016年1月1日付けで、シンガポールで日本食のダイニングレストランや居酒屋を運営しているEN HOLDINGS PTE LTD及びそのグループ3企業(以下EN Groupという)が運営する飲食店4店舗の事業譲受を予定している。
この事業譲受により、シンガポールにおける出店を加速する。

また、フィリピンでも「美人鍋」ブランドの3店舗のFC契約締結が完了し、エリアの拡大も進めて行く。

②アメリカへの出店開始

「和食」の評価が高いアメリカマーケットへ参入し、本格的な和食文化の発信を行う。
2015年秋にサンフランシスコに「nojo San Fransisco」、2016年1月、ハワイに「TSUKADA FARM Hawaiiを出店予定で、アジア圏以外の、国際マーケット獲得の足掛かりとする。
前述の様に、社員に対する多様なキャリ形成の機会を提供することが出来る点も大きなポイントだ。

③ブライダル事業の開始

2015年9月より横浜のフレンチレストラン「タイクーンコンチネンタル」で結婚式の1.5~2次会の営業を開始した。
「生販直結」のビジネスモデルの強みを活かした高品質・低価格の料理を提供する。
外食の既存店舗を結婚式2次会用として利用し、既存店の有効活用・収益拡大につなげる。

④宅配弁当事業

2014年7月より宅配弁当事業「おべんとうラボ」の営業を開始した。
塚田農場での生産地に根付いた商品開発の強みを活かした弁当を宅配する。

現在は東京23区内の医療・製薬会社向けおもてなし高級弁当(単価1,200~3,000円)に特化している。
リピーターの増加や口コミ・紹介により新規顧客は着実に増加している。2015年3月末の総客数579名に対し、リピーター総数は326名でリーピーター率は5割を上回っている。

今後は、製造拠点の拡充、顧客ターゲットの拡大(一般企業、BtoC)、物流拠点増強による宅配エリア拡大を進め、2018年3月期売上高3,315百万円、営業利益384百万円を目指している。

⑤外販およびEC事業

◎外販事業
法人向け宅配弁当事業をベースに、個人向け外販事業への展開を検討している。
店舗メニューのうち、「塚田農場 秘伝の味噌」、「塚田農場 塚だまプリン」などを商品化して外販する。

◎EC事業
個人向けに農業製品の通販事業を検討している。
宅配弁当と同様、生産や販売のこだわりを強みとしてブランド化を図る。

米山 久社長に聞く

米山社長に目指す姿、投資家へのメッセージなどを伺った。

<食の総合マーケティング企業を目指す>
当社は「日本の食のあるべき姿を追求する」を理念として掲げ、「生販直結」という独自のビジネスモデルによって日本の食産業の変革を志している。そのためには、今まで以上に優秀な人材を採用し、活躍してもらわなくてはならない。
ただ、残念ながら、外食産業は学生からは不人気業種。優秀な学生は、最も不可欠な食材の生産と最終消費者と接する販売というメインの現場ではなく、流通や情報仲介といった中間業種に行ってしまう傾向がまだまだ強い。
当社は売上構成からはまだ販売事業が大部分ではあるが、理念実現のために目指す姿として「食の総合マーケティング企業」を掲げ、事業を展開していく。
そのため新規事業においては外食以外の分野でも事業を拡大して、より高いスペックの人材が活躍してもらう環境を創り出していく。
例えば、店長として消費者のニーズや実情を肌で知った後、それを生産や他のフィールドで実現するといったように、様々なキャリアパスを示してあげる必要があると考えている。
最近では大手食品メーカーから内定をもらった学生が、当社で第一次産業を変えたいと考え入社したケースもある。東京農大出身の社員も多数おり、単なる外食産業ではない当社の将来に期待して、変化が生まれていることを実感している。
<新規事業の展開について>
食材には様々な部位があるため、販売チャネルとしては外食のみでなく、様々なチャネルを有している方が食材を無駄なく使って、適切なコストで商品を提供できる。順調に拡大している弁当事業はそうした点で、今後さらに有望なビジネスだ。
海外事業に関しては、日本の誇るべき「和食」がきちんと伝えられていないという現状を解決しなければならないと考えている。「生販直結」モデルは海外市場においても十分通用するものであり、美味しい和食を提供できるノウハウを生産から販売まで豊富に持っている当社は大きなアドバンテージを有している。
ブライダル事業においては、例えば新郎と新婦の出身地の食材を使ったフランス料理を提供するなど、当社が持つ食材の全国ネットワークを使い、「食」にこだわって差別化を図っていく。
<投資家へのメッセージ>
現在の「単なる居酒屋」という外部からの評価をどう変えていくかが課題と認識しており、事業ポートフォリオの変革を進めている。
そうした下では、利益率の確保や向上よりもまずはトップラインおよび企業規模の拡大に注力している。
既存事業についてはこれまで、店舗数の拡大が最重要と位置付け取組んできたが、新規事業、特に弁当事業も順調に立ち上がり、他事業も目途が立ち始めてきたなかで、出店ペースについては、来期以降はやや抑え気味にして、新規事業に注力する。
それにより新規事業の更なる拡大とともに、既存事業の方も店舗のクオリティーをより向上させることが出来るだろう。
国内においては販売チャネルの多様化を、海外においてはこれまで培ってきたノウハウを活用して「六次産業のグローバル化」を進めて行く。企業規模拡大の過程で、M&Aに関しても積極的に取組んでいく考えだ。
「日本の食のあるべき姿を追求する」当社のチャレンジを是非中長期の視点で応援していただきたい。
2016年3月期業績予想

売上高は前期比17.4%増の225億76百万円、営業利益は同24.7%増の15億81百万円の予想。
出店拡大と新規事業の立ち上がりによりコストが増加するが、増収効果で吸収し2桁の増収増益、過去最高の売上、利益の更新を見込んでいる。

(2)トピックス

自社株買いを発表
11月17日付けで15万株、260百万円を上限に自己株式の取得を発表しており、さらなる資本効率を図るとともに機動的な資本政策の遂行に備える。

今後の注目点

文中の「付加価値提供トーク」や「鉄板ジャブ」をといった同社の特長を実感し、投資判断するためには「塚田農場」に是非一度足を運ぶことをお勧めする。
このサービスを体験した全ての人がウェルカムではないかもしれないが、メニューブック、実際の料理と合わせて同社の販売手法における圧倒的な違いや特長を感じることが出来るだろう。
また、「日本の食のあるべき姿を追求する」という理念に基づいた「生販直結」のビジネスモデルも同社の独自性として大いに注目される。
ただ一方で、同業と比較した高いROEも含めた同社の違いや特長は株式市場の評価に結び着いていないのが現状だ。
「外食産業」という範疇からの脱却の鍵となる新規事業の進捗スピードを、M&Aを絡めた生産流通事業の拡大とともに注目していきたい。

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