(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 2016年3月期第2四半期業績レポート

2015/12/09

asahirubber

今回のポイント
・16/3期第2四半期は前年同期比4.2%の減収、同60.4%の経常減益。売上面では、ASA COLOR LED、スイッチ用ゴム製品など自動車用ゴム製品の受注が好調に推移したものの、RFID向けゴム製品、卓球ラケット用ラバー、医療用ゴム製品の受注が在庫調整の影響を受けて減少した。利益面では、売上の減少に加え、マイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコストの増加も影響した。

・同社は、11月9日に16/3期の会社計画の下方修正を行った。修正後の会社計画は、前期比0.8%の増収、同126.5%の経常増益。売上高面は、医療用ゴム製品の受注が回復するものの、RFIDタグ用ゴム製品と卓球ラケット用ラバーの受注が引き続き弱含む前提。利益面は、15/3期に計上した役員退職慰労引当金繰入額の減少が主な増益要因。一方、1株当たり配当は、15/3期と同額(上期末3円、期末10円)の予定から変更なし。

・ASA COLOR LEDをはじめとする自動車用ゴム製品の受注が海外市場向けに回復し、今第2四半期業績が前四半期比で増収増益となったことは明るい兆候である。一方、今後更に業績を拡大するためには、現在顧客の在庫調整と新タイプの生産準備の長期化により落ち込んでいるRFID向けゴム製品の回復が不可避である。RFID向けゴム製品の今後の受注動向が注目される。

会社概要

小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。

【事業内容と主要製品】

事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ80.8%、19.2%。
今後は、RFIDタグ向け新製品、マイクロTAS製品などの新製品の販売拡大が期待される。

・ASA COLOR LED

ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。

ASA COLOR LED

・医療用ゴム製品

点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。

プレフィルドシリンンジ向けガスケットのイメージ

・マイクロ流体デバイス

今後、分子接着・接合技術を応用したマイクロ流体デバイスの販売拡大を目指す。分子接着は、ゴムと樹脂を接着させる技術で独自の積層流路を形成し、複雑な分析に対応可能。

マイクロ流体チップのサンプル

・RFIDタグ用ゴム製品

溶剤を使わずに接着させる“分子接着技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のIC タグを提供。

RFIDタグ用ゴム製品イメージ

中期経営計画

新中期経営計画を策定するにあたり、独自の新製品開発による成長を描くため、中期3ヶ年の2回分である2020年を見据えたビジョン「AR-2020VISION」を制定。

AR-2020VISION
・技術革新を基盤に、新しい価値を創造し続ける企業になる。
・現在の仕事に慢心せず、常に変革を求め、経営環境の変化に応じ継続的に磨きをかける。
・人財こそが、事業運営の要とし、人材の育成を行う。

このビジョンの実現に向けて、最初のステージである15/3期~17/3期の中期経営計画(V-1計画)を作成。中期経営方針として、①既存事業の質・量の持続的成長、②新市場・新分野への事業展開、③2020年に向けた事業基盤の強化と整備と定め、最終年度である17/3期に数値目標である、売上高80億円、営業利益8億円の達成を目指す。

今後、各工場技術間の連携を深め、各事業分野において独自技術である分子接着・接合技術を活用した新製品の開発を強化する方針。

(1)今後の事業戦略
自動車分野

主力ASA COLOR LEDは、16/3期に24億円を見込んでいたが、下期から既存の受注先の数量減や新規採用品の生産時期の後ろ倒しなどにより、23億円の見通し(前期比7.4%増)。接点ラバー、Oリングは、海外向けのスイッチ用ラバー、スイッチ用防水カバーの受注拡大で売上が増加。17/3期の売上高目標は37億円であるが、40億円への引き上げを検討中。

医療分野

プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットなどの拡大を図る。前期までに設備投資を行った分野であり、V-1計画では新製品の開発期間と位置付け、今後の成長に向けた要素技術の深を進める他、ライフサイエンス分野とのシナジー効果を生み出す。17/3期の売上高目標は13億円。

ライフサイエンス分野

卓球ラケット用ラバーは、顧客の要求に着実に応えていく。マイクロ流体デバイスは同社の柱と位置付け拡大を目指す。16/3期のマイクロ流体デバイスの売上高は1億10百万円を予定(うちNEC向けのポータブル型DNA解析装置向け製品は0.8億円の売上を計画)。今後も分子接着・接合技術を活かした新製品の開発に努める。17/3期の売上高目標は16.5億円。
分子接着・接合技術によるマイクロ流体デバイスなどの複合製品の生産拠点として、白河工場(福島県白河市)の隣接地に新工場の建設を決定。完成は来年春を目指す。工場と生産設備は福島県の「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象事業として採択を受ける。交付金額は最大7.5億円。

その他分野

主力RFIDタグ用ゴム製品は、顧客の在庫調整と新タイプの生産準備が長引き、前期売上高6.6億円から、16/3期売上高は3.6億円となる見込み(前期比45.8%減)。コア技術の深堀りと新しい製品、新しい分野に挑戦する。

2015年3月期第2四半期決算
前年同年比4.2%の減収、同60.4%の経常減益

売上高は、前年同期比4.2%減の28億98百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が前年同期比2.3%減少。ASA COLOR LEDの受注は第1四半期までは自動車メーカーの販売・生産計画調整の影響を受け減少していたものの、第2四半期には海外向けの受注が増加。一方、機能製品であるRFIDタグ用ゴム製品は海外向けの受注が新機種対応で受注調整が続いていることから減少した。また、スポーツ用ゴム製品である卓球ラケット用ラバーの受注についても顧客在庫調整が続いており受注が減少した。加えて、医療・衛生用ゴム事業の売上高も前年同期比11.9%減少。プレフィルドシリンジガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓を販売している一部顧客の生産調整が影響した。
営業利益は、前年同期比51.7%減の75百万円。工業用ゴム事業のセグメント利益は、同48.7%減益となった。RFIDタグ用ゴム製品や卓球用ラケット用ラバーなどの売上減少に加え、マイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコストの増加が影響した。一方、医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益は、同37.3%増加した。プレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・薬液混注ゴム栓の生産調整の影響を受けたものの、前年同期に計上した一部の製品における品質管理に係るコストが減少した。RFIDタグ用ゴム製品などの採算性の高い製品の売上減少により売上総利益率は、23.7%と前年同期比1.8ポイント低下。人件費と販売費の減少により販管費の総額は減少したものの、売上減少の影響により売上高対販管費率が同0.8ポイント上昇した。

今第2四半期と前第1四半期の比較では、ASA COLOR LEDをはじめとした自動車用のゴム製品が海外市場向けで受注が増加したため、増収増益となった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。

3,025海外売上は前年同期比27.8%の増加となったものの、国内売上が同8.7%減少した。

ASA COLOR LEDは、国内自動車メーカーの販売・生産計画の調整が第1四半期で終了し、第2四半期は海外市場向けに受注が増加。卓球ラケット用ラバーは、顧客の大幅な在庫調整による受注の減少が継続。また、ディスポーザブル用ゴム製品もプレフィルドシリンジ用ガスケットや採血用・薬液混注用ゴム栓を販売している一部の顧客の生産調整により受注が減少。更に、RFIDタグ用ゴム製品においても新機種タイプへの切り替えで海外向けの受注調整が継続している。

連結業績同様に、RFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバー、医療用ゴム製品などの受注減少により売上と利益が減少。

朝日FR研究所は、研究を委託する会社であり影響は小さい。ARI International Corpは、自動車向けゴム製品の販売が主であるが、新規製品の採用拡大と北米市場の回復により売上高が回復。香港の貿易拠点である朝日橡膠(香港)有限公司は、RFIDタグ用ゴム製品の日本向けの販売が減少した。東莞朝日精密橡膠制品有限公司はRFIDタグ用ゴム製品の日本向けの減少を中国現地向けの増加でカバーし売上高が増加したものの、製品ミックスの悪化により減益となった。一方、朝日科技(上海)有限公司は、現地企業への販売拡大により黒字基調が定着してきた。

15年9月末の総資産は15年3月末比4億51百万円減の87億32百万円。資産面では未収入金と売上債権が、負債・純資産面では役員退職慰労引当金が主な減少要因。

CFの面から見ると、前年同期と比較で、役員退職慰労引当金の減少などにより営業CFの黒字が縮小したものの、定期預金の払戻による収入の増加などにより投資CFの赤字が減少し、フリーCFが黒字に転じた。一方、長期借入による収入額が減ったことから財務CFの黒字が減少した。
15/3第2四半期の設備投資は1億78百万円(14/3第2四半期2億43百万円)、減価償却費は2億1百万円(同1億98百万円)。

2016年3月期業績予想
前期比0.8%の増収、同126.5%の経常増益予想

同社は、11月9日に16/3期会社計画の下方修正を行った。修正後の会社計画は、売上高が前期比0.8%増収の61億10百万円、経常利益が同126.5%増益の2億77百万円。医療用ゴム製品の受注が回復するものの、RFIDタグ用ゴム製品と卓球ラケット用ラバーの受注が引き続き弱含むことを考慮している。
利益面は、前期に発生し役員退職慰労引当金繰入額の計上という特殊要因がなくなることから、営業利益と経常利益が大幅に増加。売上総利益率は、0.7ポイント低下の25.2%、売上高対販管費率は、3.5ポイント低下の20.5%の会社前提。この結果、営業利益は、前期比153.8%増益の2億円91百万円となる見込み。一方、当期純利益は、前期に受取保険金の計上があった反動により減益となる計画。
一方、1株当たりの配当は、15/3期と同額の年間13円(上期末3円、期末10円)の期初計画から変更なし。

通期会社計画の下方修正は、第2四半期までのRFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバーの受注減が年明けまで続く見通しであること、加えて、第3四半期以降、ASA COLOR LEDの受注が当初予測より伸び悩む見通しであることを考慮。

下期の主な設備投資は、ASA COLOR LEDの量産設備の導入とマイクロ流体デバイスの接着工程設備の導入。
今期の設備投資計画5億43百万円の事業分野別内訳は、自動車分野2億5百万円、医療分野95百万円、ライフサイエンス1億32百万円、その他分野1億10百万円。

今後の注目点
同社の16/3期第2四半期累計期間の決算は、RFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバー、医療用ゴム製品の受注が在庫調整の影響で減少するなど厳しい内容となった。同社は、下期も主力のASA COLOR LEDの受注が当初予測を下回り、また、RFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバーの受注減少も年明けまで続くなど、引き続き厳しい事業環境を想定している。こうした中、ASA COLOR LEDをはじめとする自動車用ゴム製品の受注が海外市場向けに回復し、今第2四半期の業績が前四半期比で増収増益となったことは明るい兆候である。今後国内の自動車用ゴム製品においても、前期の第4四半期に始まった得意先の品質総点検による新車発売の後ろ倒し、在庫調整、新規製品への切替などの悪影響が終息し、回復傾向を強めてくるものと期待される。
その一方で、中期経営計画の達成に向けてのハードルは高い。その鍵を握るのは、収益性の高いRFIDタグ用ゴム製品の底打ちとマイクロ流体デバイスの本格量産と言えよう。顧客の在庫調整と新タイプの生産準備の長期化により落ち込んでいるRFIDタグ用ゴム製品がどの時点で反発に転じるのか、また、最終顧客の評価待ちとなっているマイクロ流体デバイスが市場で高い評価を獲得し、来期に本格量産を実施できるのか、その動向が注目される。
加えて、同社では、今後各工場技術間の連携を深め、各事業分野において独自技術である分子接着・接合技術を活用した新製品の開発を強化していく方針である。将来の競争力の源泉となるであろう分子接着・接合技術を用いた新製品の開発状況にも注目していきたい。
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