(4641:東証1部) アルプス技研 2015年12月期上期業績レポート

2015/08/26

alpsgiken

今回のポイント
・15/12期上期は前年同期比13.1%の増収、同42.0%の経常増益。自動車関連が伸びた他、半導体関連の人材需要も回復し、アウトソーシングサービス事業の売上が同15.6%増加。台湾・上海子会社によるグローバル事業の売上も52.2%増加した。アウトソーシングサービス事業の利益が収益性の改善を伴って増加する中、介護事業の撤退効果もあり、営業利益が同35.1%増加した。

・通期予想に変更はなく、前期比12.1%の増収、同18.7%の経常増益。売上・利益共に過去最高の更新が見込まれる。利益面では、アウトソーシングサービス事業の中核をなす個別業績の好調に加え、子会社の損益も改善する見込み。配当は1株当たり5円増配の年65円を予定(上期末32円、期末33円)。

・足元、旺盛な人材需要が続いており、当面の見通しは明るい。同社は良好な事業環境を活かして、「チームアルプス」の取り組みを進めていく考え。この取り組みは、優良顧客の深耕と人的リソースの充実による強固な収益基盤の確立を目指すもの。アルプス技研グループ各社が一体となって(チームアルプス)、ワンストップサービスを提供する事で顧客深耕を図ると共に、グループの技術者、営業、本社が一丸(チームアルプス)となって業務に当たる事で成長の原動力となる人的リソースを充実させていく。

会社概要

自動車・自動車部品、電機、半導体など大手製造業を中心とした約400社の顧客企業に対し、正社員として常用雇用した技術者「アルプスエンジニア」を派遣する技術者派遣事業大手の一角。高い技術力により、「研究・企画・設計」といった付加価値の高いものづくりの上流工程を中心にサービスを提供。技術者としてのみならず社会人としても一流であるべしとの想いから、創業以来一貫して技術力のみならず、ヒューマン研修にも注力。

【沿革】

取締役会長の松井 利夫氏が1968年に開業した松井設計事務所がその前身。自ら事業を立上げることを志し、同事務所を開業した。当時は、電気設計と機械設計が別々に行われており、そこから発生する様々な不具合を解決するために「機電一体設計」という独自で斬新な手法を顧客企業に提案していった。オイルショックを始め様々な困難に遭遇したが、不断の努力により「顧客の要請に応じて技術提供する」ベンチャー企業として顧客の評価を着実に高めていく。

1986年7月に労働者派遣事業法が施行。企業による労働者の募集・紹介、供給は職業安定法により禁止されていたが、働き方の多様性、社会需要の変化などから「派遣労働」が国によって公認された。これを機に、労働者派遣業界の認知度を更に高め社会に理解を促進することを目指し、1996年6月に株式を店頭登録。2000年9月に東証2部、2004年12月に東証1部へとステップアップした。リーマン・ショック時の2009年第3四半期に稼働率は約60%まで低下したが、人を大切にする企業として解雇、リストラなどを一切行うことはなかった(14/12期の新卒を除く稼働率:通期平均97.4%)。

社名の「アルプス技研」には、山をこよなく愛する事に加え、アルプス山脈のような雄大な企業を目指そうという創業時の松井氏の思いが込められている。

「Heart to Heart」

人と人との心のつながりを大切に「『社会や企業の発展も個人の成長も全て人間関係が基本である』ことを認識し、本当の親切とは、真の友情とは、真実とは何かを考えよう。自己を厳しく律し人間研究をしよう。企業人として、自社の技術や製品に心をこめて社会へ送り出そう。」という意味を込めている。

創業当時、「企業が発展と成長を遂げていくためには、まずなによりも『優れた正しい経営理念の確立』が必要である。」との思いから、経営理念「Heart to Heart」を定めた。「相手への真の思いやりの心をもって、本人の将来のために、厳しく躾けることで、真の人間関係を築くことができる。」とする経営理念をもとに、技術者は自身の研鑽に努めている。

また、「企業は人なり」という言葉を重視し、人と人とのつながりが企業を成長、発展させるとして人材育成に力を入れている。
「人材育成は中小企業にとって経営の要」、「会社は自己実現のための人生道場」であるとの考えから、アルプス技研の歴史は社員教育の歴史でもある。

【事業内容】

約400社の顧客企業(大手製造業)に対し技術者「アルプスエンジニア」を派遣する「アウトソーシングサービス事業」が全売上高の92.8%(14/12期実績。以下同じ)を占める。派遣する技術者は同社が無期雇用契約を締結した正社員。技術者数は2014年12月末現在で2,330名。全国に19の営業所の他、2か所のものづくりセンターを有している。また、「アウトソーシングサービス事業」には、製造業への人材派遣と請負事業による設計事業からアフターサービスに至るまでの技術系の収益に加え、事務系の人材サービス等を手掛ける(株)アルプスビジネスサービスの収益も含まれている。

この他、(株)アルプスキャリアデザイニングによる技術者の職業紹介や転職支援の「職業紹介事業」の売上構成比が0.3%、台湾及び上海の子会社による海外の日系企業に対する機械据え付けや人材サービス等の「グローバル事業」が3.9%。

尚、14/12期までは、介護付有料老人ホームを運営する「介護事業」(売上構成比3.0%)がセグメントされていたが、2014年12月11日に事業主体である(株)アルプスの杜の全株式を譲渡した。

(1)アウトソーシングサービス事業のビジネスモデル

グローバルな企業間競争がますます激しくなる中、企業は様々な分野で効率化を図ることに積極的に取組んでいる。製造業の製品開発プロセスにおいては、「開発サイクルの短縮」、「専門分野の強化」、「先端技術の導入」といった点での更なる改善や強化が大きなニーズとして存在するが、全てを自社の従業員で賄うことは社員教育の時間、コストといった問題から現実的ではない。そこで、同社は高度な技術力を持った「アルプスエンジニア」の派遣やプロジェクトの受託といった顧客企業のニーズに応じたスタイルにより技術力を提供、顧客企業の研究開発、製品開発を支援している。

派遣

アルプスエンジニアは、同社が常用雇用した正社員の派遣技術者であるため常時安定した技術提供が可能。アルプスエンジニアの活用により、顧客企業は自社で技術者を育成する費用や、研修期間を削減することができる。
加えて、技術者の経験年数、スキル、対応可能分野などを網羅したデータベースを用い、顧客ニーズに最適なアルプスエンジニアを派遣している。また、派遣スタイルとしては技術者を単独で派遣するほか、チームとしてエンジニアを派遣するケースが増加している。

チーム派遣による顧客企業のメリットとしては、通常の派遣技術者活用メリットに加え、チームリーダーがメンバーの業務管理や、顧客の要望を適切にメンバーへ指示、フォローするため、顧客の指揮命令者の負担を軽減することができる点があげられる。同社としても、まだ経験の少ない新卒技術者をメンバーに加えれば、先輩社員による指導によりスキルが向上すると共に、稼働率向上にも繋がるというメリットがある。

請負・受託開発

同社は「宇都宮テクノパーク」、「蓼科テクノパーク」の2工場を有している。自社工場を有するという特長を活かし、開発→設計→製作というプロセスを一括で受託する体制を構築している。

(2)顧客企業(五十音順)

14/12期の売上上位10社は、デンソーテクノ、キャノン、東芝、日立オートモティブシステムズ、日野自動車、三菱電機、日産自動車、アイシン精機、日立アプライアンス、三菱重工業。いずれも自動車関連、精密機器関連、電機関連等の大手企業が名を連ねるが、上位10社合計の売上構成比は25.0%にとどまり、顧客分散が進んでいる。また、業種別売上構成は、自動車関連37.7%、精密関連20.1%、半導体関連10.0%、電機関連8.4%、その他(工作機械、ソフト開発、太陽光、医療系、航空宇宙等)23.8%。

【強みと特徴  -人材育成に注力-】

「優秀なエンジニアであり、かつ、人間として信頼できる人材である事が顧客満足度を高める」という考えの下、技術研修(実務教育)だけでなく、ヒューマン研修(人間教育)等、多彩できめ細かなサポートを行う事が同社の教育・研修制度の特徴であり、創業以来一貫して社員教育に力を入れている。

新入社員は入社後約1週間の「新卒合宿研修」に参加する。この合宿は、ビジネスマナーを始めとした社会人としての行動規範を徹底的に教え込むといった、新入社員にはかなりハードな研修を行う一方で、「内観」により、自分の過去を振り返り、自分自身の心の動き・状態を自分で観察するなど、周囲の人々に対する感謝の気持ちに気付かせるといった研修も合わせて行っている。トレーナーとして数十名の先輩社員も参加するが、そのトレーナーのための研修も別途実施するという事で、会社としてのこの研修に対する注力度合いがよく解る(先輩社員はその期間不稼働となり、数字上では売上減になってしまうが、中長期的にそれを大きく上回る果実を会社にもたらすものと認識している)。
また、フォローアップとして3年次研修も実施しており、日々の業務に追われて忘れてしまいがちなポイントを改めて認識させると共に、普段は顔を合わせる機会の少ない同期社員の成長から刺激を受ける場ともなっていると言う。こうした合宿研修を始めとしたヒューマン研修で、ビジネスマナーの他、コミュニケーション力、ロジカルシンキング、問題解決力等を身につけ、「ヒューマンスキル」を徹底的に磨いている。

もちろん、「高度技術者集団」として技術力の向上を図るべく、専門部署が体系的な技術研修を実施している他、エンジニア自身が主催する自主的な「勉強会」や「新入社員の技術成果発表会」等も随時行われており、技術スキルの向上に励んでいる。勉強会は全国の拠点ごとに年間約1,000回程度行われており、技術者のスキルアップ意欲が極めて高い事がわかる。

上記の他、社員教育の一環として「役職や世代を超えた交流の場」を大切にしており、創業者自身が社員に歴史や理念の浸透を図る「創業者と語る会」、社長自身が「チームアルプス」というビジョンについて直接浸透を図る「明日を語る会」を定期的に開催している他、「ロボットコンテスト」、「お花見」、「フットサル大会」の実施や、野球、テニスなどサークル活動も盛んで、顧客先に派遣されるとなかなか交流する機会が少ない技術者同士の交流の機会を積極的に作り出している。これらを媒介とした仲間同士、技術者同士の絆が同社の強さの源泉となっている。

*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

米系大手総合情報サービス会社によると、東証1部上場企業の14年度(15年3月末)のROEは8.15%と13年度の8.56%から低下したが、同社のROEは前期の7.64%から14.38%に大きく改善した。好調な業績を反映して、売上高当期純利益率、総資産回転率、レバレッジのいずれもが向上しており、特に売上高当期純利益率の改善が著しい。固定資産売却益など特別利益利2億68百万円を計上したが、営業利益率(13/12期:5.9%→14/12期:8.1%)の改善が示すように、利益率の改善は一時的な要因ではなく、事業の収益性向上によるものである。特別利益の計上がなかったとしても、11%程度のROEを確保できたと思われる。

新たな経営体制と2015年12月期の施策及び中期目標
【新たな経営体制がスタート】

2015年3月25日開催の第34回定時株主総会及びその後開催された取締役会を経て、取締役営業推進部長の職にあった今村 篤氏が代表取締役社長に就任した。今村社長は、1990年4月に同社に技術者として入社し、2006年10月に技術部長に就任。その後、東海事業部長、営業推進部長、業務執行役員営業推進部長を歴任し、現在、46歳である。「経営環境の変化に素早く対応し、成長していくため、会社を大きく変革していく時期にある」との判断の下、将来を見据えて体制を強化するべく経営陣の若返りが図られた。

【2015年12月期の施策】
(株)アルプス技研個別施策

この4月に257名の新卒が入社し、140名を計画していた中途採用も既に完了したため、現在は引き続き中途採用を積極推進するとともに、16年入社の新卒280名の採用活動と派遣先となる優良顧客の開拓に力を入れている。既存技術者、中途採用社員、新卒社員の混成によるチームを作り、チーム単位で派遣し、チームでノウハウ・技術を共有する事で全体のレベルアップを図る「キャリアターゲットローテーション」を進めている。チーム化は、新卒社員の早期稼働を実現すると共に、個々の単価の引き上げを図りつつチーム全体の金額を抑える事ができる(新卒が入るため、既存社員のみで構成されるチームに比べて同じ人数でも全体の金額を抑える事ができる)。また、チーム単位で業務に当たる事は、仲間意識(帰属意識)を高めるため、退職の防止にもつながる。

グループ施策

国内においては、総合人材アウトソーシング企業グループを目指して子会社2社の事業の育成・強化に取り組んでおり、海外においては、新たな成長エンジンの獲得に向け、台湾子会社及び上海子会社の収益基盤強化と東南アジアへの展開を進めている。
具体的には、国内において、製造業の後工程、事務系派遣の(株)アルプスビジネスサービスが高稼働率の維持に、技術者の職業紹介・転職支援を手掛ける(株)アルプスキャリアデザイニングが成約率の向上に、それぞれ取り組んでいる。一方、海外では、工程事業(主に液晶パネル搬送装置や製造装置の据え付け)で培ったノウハウを活かし、環境エネルギー分野やメンテナンス事業の拡大を図ると共に採算を重視した営業・受注活動を進めている。
また、東南アジアでの事業展開を本格化するべく、この4月にミャンマーにヤンゴン支店を開設した。2003年以降、創業者でもある取締役会長松井利夫氏が私財を投じ、ミャンマーにIT技術者及び介護補助専門家養成スクールを開設する等、現地人材の育成に深くかかわってきた。こうした10年以上にわたる現地での活動実績もあり、2015年7月に支店開設の本許可を取得。アルプス技研グループで培った人材ビジネスやエンジニアリング事業のノウハウを活用して事業展開を加速していく考え。

【中期目標(個別:15/12期~17/12期)  -営業利益率10%以上、平均実単価4,000円以上-】

15/12期から17/12期にかけての3か年で、10%以上の営業利益率の達成と平均実単価4,000円以上の達成を目指している。
14/12期の実績は、売上高原価率73.3%、売上高販管費率17.7%、売上高営業利益率9.0%。17/12期にかけて高稼働率が続くとの前提の下、顧客との交渉により単価アップに取り組む一方、技術社員の処遇向上を図るべく報酬を増額する。このため、原価率が75.0%に上昇するが、間接部門の効率化により販管費の伸びを抑え販管費率を15.0%に引き下げる事で目標である売上高営業利益率10.0%を実現する。技術社員の処遇向上は、定着率の向上と採用力の向上、ひいては “アルプスブランド” のブランド力強化につながり、中期的には同社の収益を拡大させる。

2015年12月期上期決算
前年同期比13.1%の増収、同42.0%の経常増益

売上高は前年同期比13.1%増の109億56百万円。自動車関連分野が伸びた他、半導体分野の人材需要も回復し、主力のアウトソーシングサービス事業の売上が103億12百万円と同15.6%増加。台湾・上海子会社による海外の日系企業向け機械据え付け等を手掛けるグローバル事業の売上も6億27百万円と52.2%増加した。一方、事業撤退により前年同期に3億24百万円を計上した介護事業の売上がなくなった他、職業紹介事業の売上高が前年同期の29百万円から16百万円に減少した。

利益面では、単価の上昇もありアウトソーシングサービス事業の利益が利益率の改善を伴って増加する中、介護事業からの撤退効果もあり、営業利益が9億26百万円と同35.1%増加。金融収支の改善や支払手数料の計上がなくなった事で経常利益は9億52百万円と同42.0%増加した。

主要指標 上期末の技術社員数2,592名、単価上昇、稼働率上昇

アウトソーシングサービス事業における上期末の技術社員数は前年同期に比べて255名増の2,592名(前年同期末2,337名)、稼働人数は同301名増の2,464名(同2,163名)、契約単価は同124円増の3,757円(同3,633円)。上期平均の稼働工数は同2時間増の175.3時間(同173.3時間)。

自動車関連、半導体関連の売上構成比が上昇。環境や医療機器関連で新規開拓も進む

個別ベースの業種別売上高は自動車関連が39.4%と前期の37.7%から1.7ポイント上昇した他、半導体関連が10.0%から12.3%に上昇。環境や医療機器関連の新規開拓が進み、その他(工作機械、ソフト開発、太陽光、医療系、航空宇宙等)も23.8%から25.6%に上昇した。一方、電機関連が8.4%から5.1%に、精密機器関連が20.1%から17.6%に低下した。低下の要因は、一部で選択と集中を進めた事もあるが、例えば、医療機器も手掛ける精密機器メーカーにおいて、好調な医療機器での人材需要が増えたケース等もある。

※2015年4月入社の新卒257名は、ヒューマン研修・技術研修を終了し2015年7月末までに全員配属先が決まった。

業容拡大に伴い、現預金、売上債権、純資産等が増加した事で上期末の総資産は135億23百万円と前期末に比べて1億72百万円増加した。財務内容は流動性に富み、かつ長期的な安定性にも優れ、流動比率243.4%(前期末243.9%)、固定比率39.8%(同39.8%)、自己資本比率67.9%(同67.9%)。

2015年12月期業績予想
通期の業績予想に変更はなく、前期比12.1%の増収、同18.7%の経常増益予想

アウトソーシングサービス事業の中核をなす個別業績の好調に加え、職業紹介事業を手掛ける(株)アルプスキャリアデザイニングの期中黒字化や介護子会社の売却等で子会社の損益も改善する見込み。

(3)利益配分

15/12期は1株当たり上期末32円(前年同期10円)、期末33円(同50円)を予定しており、年間で5円増配の65円。配当性向は50.6%となる見込み(前期は50.1%)。同社は連結ベースの配当性向50%を基本としており、かつ、安定配当として、業績にかかわらず年間配当20円を維持する考え。また、上期末配当は13/12期に開始したが、今期より年間配当の50%を目処に実施していく考え。

今村社長に聞く

今村 篤 社長に、足元の動向と今後の見通し、新体制下でのビジョンと取り組み等について、お話を伺った。

Q:足元、好調な業績が続いています。
今村社長

引き続き自動車関連が好調で、半導体関連からの人材需要も強い。自動車関連の顧客は、自動車メーカーだけでなく、電装品メーカー、電気・電子メーカー等、幅広い。エンジン開発(EV、プラグインハイブリッド、ディーゼル、ガソリン等)、車体外装設計(ドア、フェンダー、ボンネット等)の機械系、ハイブリッド車制御デバイスの設計、電子制御ユニットの設計、各種制御系マイコンの設計、車載オーディオ/ナビゲーションの回路設計等の電気・電子系、更にはハイブリッド車制御デバイスや電子制御ユニットの組み込みソフト開発等のソフト系と万遍無く需要がある。
また、自動車関連はチームアルプス(後述)の取り組みとしての顧客深耕と言う観点からも力を入れている。

一方、半導体関連の顧客は半導体メーカーや半導体製造装置メーカー等で、半導体製造装置、装置部品、治具等の機構設計、製造工程のシステム設計、更には半導体製品・材料に係る化学分野にも技術者を派遣している。

この他、上期の成果として、環境関連や医療機器関連で新規開拓が進んだ。環境関連は、「次世代電力計」とも言われるスマートメーターや蓄電池の設計・開発、HEMS(Home Energy Management System:ヘムス)に係るシステム開発等で、医療機器関連は内視鏡及びその付属品の設計・開発等である。

Q:下期はもちろん、来期以降も同様の事業環境が続くと見て宜しいでしょうか。
今村社長

足元、旺盛な人材需要が続いており、保守的に見ても17/12期までの見通しは明るい。もっとも、良好な事業環境を追い風に単に規模拡大を急ぐのではなく、良好な事業環境を活かして「チームアルプス」の取り組みを進める考えだ。

Q:「チームアルプス」の取り組みは、新体制のビジョンとして掲げていらっしゃいますが、具体的には、どのような取り組みでしょうか。
今村社長

優良顧客の深耕と人的リソースの充実による強固な収益基盤の確立に向けた取り組みであり、アルプスブランドの確立に向けた取り組みでもある。この取り組みにおいてミッションとして掲げているのが、“顧客の心の中を「優れた人材集団=アルプス技研グループ」で満たしたい”。つまり、モノづくりの上流から下流(設計・開発から生産・製造)、更には事務系も含めたトータル人材サービスの提供による、優良顧客の深耕である。この実現には、製造業における“人”の全てを解決するサービス体制の構築が必要となる。
このため、(株)アルプス技研単独ではなく、生産・製造工程や事務系の人材サービスを手掛ける(株)アルプスビジネスサービス、技術者の職業紹介や転職支援の(株)アルプスキャリアデザイニング、更には液晶パネル製造措置メーカーの海外ビジネスを支援する台湾及び上海子会社のグループ5社が一体となったチームアルプスとしてサービスを提供していく。

人的リソースの充実には、グループの技術者、営業、本社が一丸となって業務に当たる一方で、事業部間での競争原理を働かせていく。組織として決して諦めない強い思いが原動力となる。
当社には「技術者支援育成システム(ESS)」と言う技術者の育成システムがある。このシステムの下、技術者は技術的なターゲットを定めてスキルアップに励み、営業担当者は、単に案件を獲得するのではなく、技術者のスキルや希望に応じた案件の獲得に取り組む。そして、本社は、ヒューマン研修や技術研修に加え、「役職や世代を超えた交流の場」を設ける等、多彩できめ細かなサポートを行う事で、技術者と営業担当者の取り組みをバックアップしている。その上で、競争原理を働かせ、切磋琢磨して行く事が必要だ。

また、技術者個々の派遣ではなく、チームとしての派遣を推進している。チームは、ベテラン技術者、中堅社員、新卒入社社員を業務に応じてバランス良く組み合わせた社員構成となっており、チーム化する事で、新卒入社社員の早期稼働と早期戦力化を実現すると共に、派遣された技術者への技術指導等、派遣先企業の負担増を回避できる。また、社員個々の単価の引き上げを図りつつ、チーム全体の金額を抑える事にもつながる(新卒入社社員が入るため、既存社員のみで構成されるチームに比べて同じ人数でも全体の金額を抑える事ができ、派遣先業績のコストが軽くなる)。
他社に出向いて業務に当たる派遣技術者は、ともすると孤独になりがちだが、チーム単位で業務に当たる事は仲間意識(帰属意識)を高めるため、退職の防止にもつながる。

Q:海外展開も「チームアルプス」の取り組みの一環と言えるのでしょうか。
今村社長

海外事業はグローバル事業としてセグメントしており、台湾子会社と上海子会社が工程事業を手掛けている。主に液晶パネル搬送装置や同製造装置、半導体製造装置等の据え付けを行っている。液晶パネル製造の大半は海外に移ったが、製造装置では依然として日本メーカーが強く、当社は、これら装置のメーカーと装置開発やライン設計に係る技術者派遣等で取引がある。国内で人材サービスを提供している当社が工程事業を手掛ける事で、顧客である装置メーカーは現地での人の手配に煩わされる事がない。一方、当社にしてみれば、開発やライン設計業務等で培った技術やノウハウを工程事業で活かす事ができる。現地で採用され、日本で技術者教育を受け、実際の派遣業務で経験を積んだ技術者が母国に帰り、業務に就いている例もある。採算重視の営業・受注活動ではあるが、業容拡大に向けてメンテナンス業務の取り込みや環境エネルギー分野への展開も進めている。

また、7月に支店開設の本許可を得た事で、今後、ミャンマーでの事業が動き出す。先ずは教育事業から始め、現地の方に日本語や日本文化の教育を受けてもらう。現地で教育を受けた人材は、その後の日本での活躍や現地での技術者派遣等の事業拡大の原動力として期待されている。尚、教育事業につては、中国でも青島市(山東省)の提携会社が手掛けている。

良く分かりました。「チームアルプス」の取り組みは、海外展開も含めた「顧客と御社グループ」と言う社会的な取り組みと、技術者育成という組織的な取り組みが平行して進められている訳ですね。その成果に期待したいと思います。最後に株主や投資家の皆様へのメッセージをお願いします。
今村社長

良好な事業環境に加え、現在、参議院で審議中の改正派遣法は、無期雇用を原則とし、充実した教育・研修システムを有する当社にとって追い風である。このチャンスを活かして「チームアルプス」の取り組みを推進し成果をあげていきたい。また、改正派遣法の施行を機に増加が予想されるM&Aについても、お互いの企業文化を重視しつつ機動的に対応していく考えだ。そしてその成果を、配当性向50%を目処とする配当と自社株買いで還元していく。派手さを好まない社風であるため、これまで株主の皆様や投資家の皆様へのアピールが弱かった面があるかもしれない。今後、IRを工夫し、こうした面からも期待に応えていきたい。

(株)インベストメントブリッジ所感

「良好な事業環境を追い風に単に規模拡大を急ぐのではなく、良好な事業環境を活かして「チームアルプス」の取り組みを進め “アルプスブランド” の確立を図る」と言う考えは同社らしい。「チームアルプス」の取り組みは収益力の向上はもちろん、優良顧客との関係強化につながるため、不況時の抵抗力も強くなる。現在、技術者派遣業界は活況を呈しているが、リーマン・ショック後は各社が例外なく辛酸をなめた事も記憶に新しい。「チームアルプス」の取り組みは、“守りを固めながらの攻め”といった印象だ。
また、今村社長自身が技術者出身なだけに、現場の細かな課題をよく把握しており、様々な課題についても解決すべく取り組んでいるようだ。チーム化が徐々に浸透してきた事で、技術者の退職率がピーク時に比べて半減していると言う。営業担当者が技術者のキャリアアップを支援すると言う方針も、他では聞かない斬新なもので、同社ならではの方針と言える。

今後の注目点
新聞報道によると、自動車大手の2016年3月期の研究開発費は過去最高の水準となる見込みだ。北米販売の好調と円安で好業績が続く中、燃料電池車(FCV)やハイブリッド車(HV)などエコカー開発を含めた燃費改善や自動運転システム等の安全技術において将来の競争を見据えた基盤固めを急ぐと言う。トヨタにおいては、研究開発費を1兆円から500億円程度上積みする予定だが、研究開発費の振り向け先の8割が国内と言う。また日立製作所は、16年度(17/3期)から3年間の中期経営計画において、売上高に占める研究開発投資比率を13年度の3.7%から4~5%に引き上げる考えで、人工知能、センサー、ロボット、セキュリティ等への開発投資を3倍に増やす方針と言う(15年度は3%増)。
「チームアルプス」の取り組みの成果は、すぐに数値に反映されるものではなく、また、数値だけで確認できるものでもない。しかし、上記の通り、良好な事業環境が長く続きそうで、取り組みを進めるに当たって、風は追い風。今村社長の経営手腕とリーダーシップに期待したい。
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