(2154:東証1部) トラスト・テック 2015年6月期業績レポート

2015/08/26

trusttech

今回のポイント
・15/6期は前期比18.0%の増収、同23.1%の経常増益。自動車を中心にした輸送用機器関連企業の旺盛な人材需要や半導体製造装置関連企業の人材需要の回復で技術者派遣・請負・委託事業の売上が同32.6%増と伸長。製造請負・受託・派遣事業も、期中に発生した一部顧客企業における減産と派遣抵触日到来による契約終了の影響を大きく受けたが、自動車関連、電気機器、住宅関連企業からの増員要請への対応で吸収した。

・16/6期は前期比36.9%の増収、同41.7%の経常増益予想。自動車関連企業向けの好調とM&A効果で技術者派遣・請負・委託事業の売上が同59.5%増と大きく伸びる他、前期苦戦の影響が残る製造請負・受託・派遣事業も通期では同2.0%増加する見込み。M&Aにかかる一時的な費用や営業及び採用担当者の増強、更には拠点の開設・移転等で営業費用が増加するものの、増収効果で吸収して営業利益が同44.0%増加する見込み。配当は1株当たり15円増配の75円を予定。

・売上高の1%程度にとどまっているIT・組み込みソフト分野を強化していく考えで、この一環として、15年7月に、NTTデータ傘下で優良顧客を抱える(株)テクノパワーの事業部門を譲受すると共に自動車向け組み込みソフト開発に強みを持つ(株)フリーダムを子会社化した。同分野は同社にとって伸び代が大きい上、組み込みソフトは、ITとの融合が進む自動車向けやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)向けで高い成長が期待されている。

会社概要

メーカー向けトータルソリューションを特徴とし、開発・設計等の上流(開発部門)から加工・組立等の下流(製造部門)までを対象とした一気通貫の人材サービス(派遣、請負、受託)を提供。主なグループ企業は、製造部門向けサービスの(株)TTM、香港を拠点に中国で事業展開する日系企業向けに人材サービスを提供する香港虎斯科技有限公司(HKTT)及び、障がい者雇用を目的とした特例子会社の共生産業(株)、及び2015年7月に子会社化した(株)フリーダム(傘下の子会社含む社)の連結子会社4社。

【経営理念】
お客様に対しては
・常に顧客企業の視点で考えることを意識し、真のパートナーシップカンパニーとなることに努めます。
・関係法令を正確に理解・遵守し、常に顧客企業に適正なソリューションを提供することに努めます。
・常に職場の安全衛生に配慮し、事故の発生を未然に防ぐことに努めます。
社員に対しては
・ステップアップできる仕事を提供し、研修や教育を通じて能力開発を支援します。
・公平で適正な評価を行い、貢献度に応じた処遇を心がけます。
・進取の気性に富みチャレンジ精神に溢れる人材を歓迎し、自己表現の場を積極的に提供します。
社会に対しては
・コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスを重視し、雇用の創造により社会に貢献いたします。
株主に対しては
・株主価値の最大化を意識した企業運営に努めます。
【沿革】

神奈川県相模原市で製造請負・派遣等を手掛けていた三栄商事(株)の「障害者雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社 共生産業(株)として1997年8月に設立(現在の共生産業 株式会社は2005年7月に新たに設立した別会社)。04年11月に(株)トラストワークスサンエーへ社名を変更し、同年12月に三栄商事(株)より営業権を譲受。05年6月には(株)アミューズキャピタルから技術者派遣・請負・委託を手掛ける(株)トラスト・テックの全株式を取得すると共に一般労働者派遣事業免許を取得。06年11月の(株)トラストワークスへの商号変更を経て、07年6月にJASDAQに株式を上場した。

08年10月には(株)トラスト・テックを吸収合併すると共に、(株)トラスト・テックへ商号を変更。09年3月、ラディアホールディングス・プレミア(株)の傘下にあった(株)PLM(現在の株式会社TTM)を子会社化し製造業向け請負・受託サービスに参入。10年6月には香港の人材紹介業企業を子会社化し、香港虎斯科技有限公司 (HKTT)として、香港及び中国において業務請負・人材紹介・人材コンサルティング等のサービスを開始した。
また、13年8月に東京証券取引所市場第2部へ市場変更。同年12月には東京証券取引所市場第1部に指定された。

【事業内容 - 開発/設計(上流)から製造/流通(下流)まで一気通貫の人材サービスを提供 -】

各種設計、開発、評価実験、生産技術といった業務に人材サービスを提供する技術者派遣・請負・委託事業、子会社の事業領域で加工・組立、検査・梱包業務など製造部門へ人材サービスを提供する製造請負・受託・派遣事業、神奈川県相模原市に保有する不動産の賃貸を手掛ける不動産賃貸事業、及びCSRの一環としての障がい者雇用促進事業の4セグメント。開発・設計(上流)から製造・流通(下流)まで一気通貫のサービスを提供する事で「技術」と「製造」の事業間シナジーを追求している。
15/6期の売上構成比は技術者派遣・請負・委託事業が61.1%、製造請負・受託・派遣事業が38.6%(連結調整前利益の構成比は、88.9%、11.1%)。

技術者派遣・請負・委託事業 事業主体:(株)トラスト・テック、香港虎斯科技有限公司(HKTT)、(株)フリーダム

売上の約8割を占める技術者派遣(特定労働者派遣)に加え、業務請負・委託、技術者の人材紹介、紹介予定派遣も手掛けている。派遣される技術社員は「常用雇用者」(期間の定めのない雇用契約を締結)である。また、香港虎斯科技有限公司(HKTT)が、中国で事業展開する日系企業向けに人材サービスを行っており、ベトナム、インドネシア等、東南アジアへ進出する企業への対応も進めている。2015年7月に、自動車向けソフトウエアの開発に特化した企業グループの持ち株会社(株)フリーダムを100%子会社化した。

技術者派遣

同社の技術社員がメーカーへ常駐する形で業務を行い、プロジェクト内での指揮命令等はメーカー担当者から受ける。業務は、開発・設計、実験評価、生産技術、ソフト開発、設備保全等。

請負・委託

メーカーに対し、仕事の完成を約束する請負事業では、同社社員のみでメンバーが構成され、チームでプロジェクト完了を目指し、完成品を納品。

製造請負・受託・派遣事業  事業主体:(株)TTM

請負は主に顧客企業の構内において、同社が業務遂行指示や管理業務を含めて、加工・組立、検査・梱包等の作業を行うもので、一般の製造業同様に労働基準法等の関係法令の規制を受ける。売上の約4割が請負・受託で、約6割が派遣(一般労働者派遣)。

障がい者雇用促進事業  事業主体:特例子会社 共生産業(株)

特例子会社 共生産業(株)が、重度の知的障がい者を主体に雇用し、梱包業務・クリーニング業務等の軽作業や(株)トラスト・テックが神奈川県相模原市に所有する不動産の保全業務を手掛けている。障がい者が健常者と同じ職場で役割分担をしながら安心して働ける職場の提供を目的としたCSRの一環としての事業である(障がい者雇用率は法定の2%を上回る水準を維持している)。

【労働者派遣の市場規模】

厚生労働省「労働者派遣事業の平成26年6月1日現在の状況」(平成27年3月1日発表)によると、国内の派遣労働者数は約125.5万人(前年比1.4%減)で、このうち、一般労働者派遣事業従事者が約97.8万人(同0.8%減)、特定労働者派遣事業従事者が約27.7万人(同3.2%減)。一般労働者派遣事業従事者は、事務職、営業職、製造工程の技能職等が中心であるのに対して、特定労働者派遣事業従事者は、システム開発や機械設計等の専門職種が中心。

最盛期は400万人を超えた労働者派遣市場だったが、民主党政権下での規制強化で市場が縮小した。ただ、技術者派遣市場は開発需要の増加を反映して成長が続いている。
一般労働者派遣事業従事者

派遣元企業に登録し、派遣先が見つかった時だけ雇用契約を結んで就労する。

特定労働者派遣事業従事者

主に正社員として雇用され、派遣先の仕事が終了した後は新たな派遣先にて就労する(雇用関係は継続される)。

【トラスト・テックの特長・強み - 営業力、採用力、教育・研修、請負化の実績、及び国際化対応力 -】

同社の強みとして、営業力、採用力、技術者への教育・研修、請負化の実績、及び国際化対応力の5点を挙げる事ができる。
営業力及び採用力は、全国へ展開する拠点ネットワークとグループの総合力を源泉とし、全国の拠点に配置された採用担当者と営業担当者が連携する事で即戦力の人材を機動的に採用でき、顧客企業のニーズにタイムリーにマッチングできる体制を整えている。

また、入社後には、教育・研修のカリキュラムが用意されており、技術者一人一人が目標設定を行うスキルアップ計画を立て、同社の人事担当者、派遣先企業が一体となって技術者個々のスキルアップ推進を行っている。

企業によっては、「派遣」から「請負」へ人材サービスの利用を切り替える場合もあるが、自己完結で結果責任(生産量、品質、コスト)が求められる「請負」は、「派遣」のノウハウしかない人材サービス会社にはハードルが高い。同社は業務請負で豊富な実績を有し、自社の開発センターでの受託業務にも対応が可能だ。

更に、香港の現地法人(HKTT)は、人材紹介等により日系企業の中国進出支援や中国現地企業向けサービスで実績を積み重ねている。慣れない海外での手厚い人材サービスを評価する顧客企業は多く、国内での受注拡大につながっている。この実績を踏まえて、東南アジアへの展開を進めている。

*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE =売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

同社は正社員による収益性の高い技術者派遣・請負・委託事業と有期雇用契約社員による機動力と資産効率を特徴とする製造請負・受託・派遣事業のハイブリッド経営により、高い利益率と優れた資産効率を実現すると共に健全な財務体質を維持する事で上場企業の平均を大きく上回るROEを実現している。(米系大手総合情報サービス会社の集計によると、東証1部上場企業の14年度(2015年3月末)のROEは8.15%と13年度の8.56%から低下した)。

【業績推移】
2015年6月期決算
前期比18.0%の増収、同23.1%の経常増益

売上高は前期比18.0%増の208億19百万円。自動車を中心にした輸送用機器関連企業の旺盛な人材需要や半導体製造装置関連企業の人材需要の回復で技術者派遣・請負・委託事業の売上が同32.6%増加。製造請負・受託・派遣事業も、一部顧客企業における減産と派遣抵触日到来による契約終了の影響を大きく受けたが、自動車関連、電気機器、住宅関連企業からの増員要請への対応で吸収した。

利益面では、技術社員や技能社員の手当の引き上げに加え、製造請負・受託・派遣事業における顧客企業の減産等に伴う休暇取得や退職時の諸経費の発生による売上原価の増加や営業拠点及び採用拠点の増加等による販管費の増加等の要因もあったが営業利益は15億97百万円と同23.7%増加した。

技術者派遣・請負・委託事業 :(株)トラスト・テック、香港虎斯科技有限公司

売上高127億16百万円(前期比32.6%増)、セグメント利益14億43百万円(同40.1%増)。引き続き自動車を中心に輸送用機器関連企業の技術者需要が旺盛で、設計、生産技術、試験分野の人材サービスが増加した他、半導体製造装置関連企業の人材需要も回復し、生産設備関係等の分野が増加した。
旺盛な人材需要に応えるべく、全国規模での中途採用により技術者と顧客企業とのマッチングを進めると共に、CAD研修施設や教育研修制度の拡充等により4月入社の新卒技術者の早期稼働にも取り組んだ。この結果、期末の技術社員数は2,219名と前期末に比べて607名増加し、稼働率も94.9~96.1%の高水準で推移した。

製造請負・受託・派遣事業 :(株)TTM

売上高80億40百万円(前期比0.6%増)、セグメント利益1億80百万円(同33.0%減)。期中に発生した一部顧客企業の減産と派遣抵触日到来による契約終了の影響を大きく受けたが、自動車関連、電気機器、住宅関連企業からの増員要請に応える事で吸収。売上高はわずかに前期実績を上回った。ただ、売上が伸び悩む中、技能社員の手当等の拡充や採用強化のためのコスト増に加え、顧客企業の減産等に伴う休暇取得や退職時の諸経費が当初の想定を上回った事もあり、セグメント利益が落ち込んだ。
期末の技能社員数は前期末に比べて147名減の2,221名。第3四半期末を底に技能社員が増加に転じたものの、期初の社員数に回復するには至らなかった。

※ 3月決算企業の年度末と重なる第3四半期末は季節要因から契約終了となる案件が多く、稼働率が低下する傾向がある。また、新卒採用を強化した結果、2015年4月に新卒260名が入社したため15/6期第4四半期の稼働率が低下した。

業容拡大に伴い期末総資産は77億25百万円と前期末に比べて12億70百万円増加した。流動性に富み、かつ長期的な安定性も高い優れた財務体質も同社の強みであり、現預金が総資産の40%弱を占め、流動比率199.3%(前期204.4%)、固定比率26.6%(同30.6%)、自己資本比率57.0%(同59.4%)。調達した資金の収益性を図る投下資本利益率も24.4%(同21.6%)と高水準だ。

利益の増加で前期は8億61百万円だった営業CFが12億9百万円に増加。有形・無形固定資産の取得等で投資CFは小幅なマイナスとなったものの、10億61百万円のフリーCFを確保した。財務CFのマイナスは配当金の支払いによるもので、現金及び現金同等物期末残高は30億38百万円と前期末に比べて6億9百万円増加した。

2016年6月期業績予想
(1)IT・組み込みソフト分野向けサービスの強化

同社は、輸送用機器や電気機器等の企業の技術者ニーズにスピーディーに応える事で技術者派遣・請負・委託事業を拡大させてきたが、同じ技術系でもIT・ソフトウエア分野は、市場規模が大きいにもかかわらず、十分なソリューションを提供できていなかった。しかし、業界トップに追い付き追い越すためには、既存の事業分野での更なる技術者ニーズの取り込みはもちろん、IT・組み込みソフト分野の育成が欠かせない。

このため、2015年7月1日付けで、(株)フリーダムを子会社化(全株式を取得)すると共に、(株)テクノパワーからテクニカルソリューション事業部を譲受した。M&Aを梃子に営業・技術の両面から同分野の体制を整備し、(株) トラスト・テックの強みである営業及び採用ノウハウとのシナジーを追及していく考え。16/6期は売上高で40~50億円、経常利益(のれん償却後)で2~3億円のM&A効果が期待できる。

制御系ソフト(組み込みソフト)に強みを持つ(株)フリーダムの子会社化

(株)フリーダム(愛知県刈谷市)は、トヨタを取引先とした自動車向けソフト(カーナビゲーション、ハイブリッドシステム、オートマチックトランスミッション、ECU等の制御)の開発に特化した企業グループの持ち株会社。(株)トラスト・テックグループの組み込みソフト分野の成長戦略の核となる事を期待しており、(株)フリーダムグループが持つ技術力と(株)トラスト・テックグループが持つ全国規模での採用力や教育研修制度を融合させる事で業容拡大を図っていく考え。

尚、(株)フリーダムグループは、持ち株会社である(株)フリーダムと、実際の業務を手掛ける(株)イーシーエス、(株)システムOne、及びその他の子会社数社(いずれも100%子会社)で構成されており、制御系ソフトの開発業務、設計支援業務、試験業務等を手掛けている。
今回のM&Aに要した費用(取得価格)はアドバイザリー費用等約1億30百万円を含む34億90百万円。買収資金に充当するべく、みずほ銀行及び三井住友銀行から合計23億円の借り入れを行った。

IT分野で人材サービスを手掛ける(株)テクノパワーからテクニカルソリューション事業部を譲受

(株)テクノパワー(東京都江東区)はNTTデータグループ傘下の企業として同グループのみならず多くのSIerを取引先とし、ITシステム構築から運用、保守等のトータルサポートを、受託・請負・派遣を通じて手掛けている。事業譲受したテクニカルソリューション事業部は、サーバー、ネットワーク、セキュリティ等の設計、構築、保守及びソフト開発といった業務を受託・請負・派遣を通じて手掛けており、14/3期の売上高は12億76百万円。今回の事業譲受により、(株)トラスト・テックグループへの収益貢献はもちろん、営業基盤の構築と技術力向上への寄与が期待できる(「テクニカルソリューション事業部」として同社に組み込む)。

技術系人材サービス会社(株)カナモトエンジニアリングを子会社化

さらに、技術者派遣の(株)カナモトエンジニアリングの全株式を2015年10月1日付で取得する事を発表している。カナモトエンジニアリングの売上規模は直近で5~6億円であり、自動車関係の設計開発、原子力プラントの設計や解析等、(株)トラスト・テックグループとの親和が期待される。

前期比36.9%の増収、同41.7%の経常増益予想

引き続き自動車関連企業を中心に引合いが増加傾向にある中、M&A効果によるIT・組み込みソフト分野の拡大で技術者派遣・請負・委託事業の売上が同59.5%増の202億79百万円と大きく伸びる他、当初は前期の苦戦の影響が残る製造請負・受託・派遣事業も通期では82億円と同2.0%増加する見込み。

利益面では、M&Aにかかる一時的な費用や営業及び採用担当者の増強、更には拠点の開設・移転等で営業費用が増加するものの、増収効果で吸収して営業利益が23億円と同44.0%増加する見込み。

技術者派遣・請負・委託

売上高202億79百万円(前期比59.5%増)、セグメント利益21億08百万円(同46.1%増)。M&A効果が売上高で50億円、経常利益で2~3億円織り込まれているが、M&A効果を除いても、同20%強の増収、同25%強の経常増益と売上・利益共に高い伸びが見込まれる。
テクニカルソリューション事業部の譲受とフリーダムグループの子会社化により16/6期は技術社員数が約500名の純増からスタートする。人材需要が堅調な輸送用機器、特に自動車関連企業への技術者派遣を中心に、IT・組み込みソフト分野の拡大に注力する他、CAD研修等の充実で2016年4月の新卒技術社員(300名を予定)の早期稼働を目指す。

利益面では、上期はM&Aにかかる一時的な費用、営業及び採用担当者の増強、拠点の開設・移転等の先行的な支出による経費増で増益ながら経常利益率が低下するが、一時的な費用がなくなる下期は売上高の増加が素直に利益の増加に反映される。ただ、2億円程度ののれん償却費を織り込んだため、通期の経常利益率が10.4%と前期の11.3%から0.9ポイント低下する。

製造請負・受託・派遣

売上高82億円(前期比2.0%増)、セグメント利益2億70百万円(同49.8%増)。上期は自動車関連企業向け派遣を中心に増員基調が続く見込みだが、技能社員数が前年同期を下回る水準でスタートするため、売上高はほぼ前年同期並みにとどまる見込み。下期に向け住宅関連及び電気機器等の業界を中心に既存取引先の他工場や関連企業に対する派遣・請負の営業を強化する。下期は自動車関連企業が堅調に推移する中、上期に獲得した顧客の寄与により前年同期比で増収に転じる。

利益面では、上期は売上がわずかに減少する中、営業・採用強化のための営業担当者の増強や求人費の増額等で経常利益が前年同期比で減少するものの、下期は売上高の増加や、固定コストの圧縮及び費用対効果の精査に加え、人手不足を反映して新規獲得案件の利益率が改善傾向にある事から経常利益率の大幅な改善が見込まれる。

(4)16/6期の取り組み

同社は技術系の営業及び採用を強化する事で技術領域(分野)の拡大を加速させる考え。中でも、M&Aと事業シナジーの追求によりIT・組み込みソフト分野の業容拡大に力を入れる。

技術系の営業、採用を強化し、技術領域の拡大を加速

16/6期は事業譲受したテクニカルソリューション事業部と子会社化した(株)フリーダム傘下の技術者約500名を加えてスタートした(15/6期末施術者数2,219名+500名=2,719名)。引き続き中途・新卒採用にも積極的に取り組む考えで、東京、名古屋、大阪を重点エリアと定め、新た採用センターを設置する他、2016年4月入社300名以上を目標に新卒の採用組織を継続的に強化していく。

教育・研修については、技術社員のスキルアップ促進や派遣法改正・各法令への対応はもちろん、新卒内定者向けのCAD研修制度も強化する。一方、営業については、戦略地域へ経営資源を集中的に配分する。また、請負・受託事業の拡大に向け開発センターの体制も強化する考えで、この一環として、営業所長が兼ねていた開発センター長を独立させ、営業所長と同レベルの権限を持たせた(従来、営業所長が開発センター長を兼ねていたため、派遣中心の営業になりがちだった)。技術者派遣が派遣・請負・委託事業の拡大をけん引する事に変わりはないが、請負・受託の一段の活性化も必用との判断である。

M&Aと事業シナジーによるIT・組み込みソフト分野の業容拡大

IT・組み込みソフト分野を同社グループの今後の成長の柱とする考えで、M&Aと事業シナジーの追求で同分野の業容拡大を図り、市場シェアを高めていく。テクニカルソリューション事業部と(株)フリーダムは、技術力や優良顧客を持ちながら、採用力や営業力に課題があり、業績が伸び悩んでいた。(株)トラスト・テックの強みである採用力や営業力を活かす事で、テクニカルソリューション事業部及び(株)フリーダムとのシナジーを追及し、“足し算”ではなく、“掛け算”でのグループ全体の成長加速につなげていく。

(5)利益配分に関する基本方針

安定配当を重視しつつ、業績に連動した配当を実施していく方針。16/6期は、中間配当を1株当たり5円増配の30円、期末配当を10円増配の45円とする考えで、年間で15円増配の75円を予定している(4期連続の増配)。

今後の注目点
IT・組み込みソフト分野は、同社にとって、これまで売上高の1%程度(個別ベースの技術者構成比2.2%)にとどまっていただけに伸び代が大きい。加えて特に組み込みソフトの開発は、ITとの融合が進む自動車向けやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)向けで高い成長が期待されている。このため、NTTデータグループで高い技術力と優れた顧客資産を有する(株)テクノパワーの事業部門の譲受やトヨタを主要顧客とし自動車向けの組み込みソフト開発に強みを持つ(株)フリーダムの子会社化は興味深い。
また、(株)カナモトエンジニアリングの子会社化に見られるように引続きM&Aによる成長戦略にも注目したい。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
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