(3386:JASDAQ) コスモ・バイオ 2014年12月期業績レポート

2015/03/25

cosmobio

今回のポイント
・生命現象を科学的観点から研究する学問であるライフサイエンス。その成果は先端医療や医薬品の開発、健康、美容、食料、環境、農業等、様々な分野で活用され、経済や社会の発展に貢献している。同社は研究用試薬、機器、及び臨床検査薬の専門商社として、大学、研究機関、更には企業等のライフサイエンスの研究を陰で支えている。・ただ、ライフサイエンスの研究、特にその基礎研究は広範で多岐にわたるため、多種多様な試薬が開発・販売され、使用されている。多くの研究者に使われる汎用的な試薬もあるが、ごく少数の研究者にしか使われない試薬も多い。また、猛烈なスピードで研究開発が進む中においては研究テーマの移り変わりが早いため、毎年、何万~何十万点単位で商品の入れ替えが起こる。このため、膨大で専門知識を要し、かつ「ユーザーニーズ」と「有効期限」という2つの意味で足の速い「商品」と、エンド・ユーザーの多様な「ニーズ」とを効率的にマッチングさせる必要があり、この作業こそが同社の最も重要な役割であり真髄である。

・足元の事業環境は厳しい。円安が利益を圧迫する中、政府の科学研究費の伸び悩みで販売競争が激化しているからだ。このため15/12期業績予想は経常利益が前期比30.0%減少する見込み。しかし、我が国のライフサイエンス研究は、再生医療研究や脳神経科学研究、更には癌研究等、最先端を行く研究が数多い。2014年には、再生医療の分野で世界の注目を集める先進的な法体系が整備され、2015年には、これらの研究を支援する日本医療研究開発機構(AMED)が発足する。このため、今後、徐々に研究活動が活発化してくるものと思われる。独立系のライフサイエンス専門商社として、メーカー系等の商社にない機動力と営業力を有する同社が、このチャンスをどのように活かしていくか、注目していきたい。

会社概要

研究用試薬、機器、及び臨床検査薬の専門商社として世界のライフサイエンス研究を支援している。ライフサイエンスの研究を行っている大学、研究機関、企業等の研究者を主なエンド・ユーザーとし、世界のメーカーから仕入れる膨大な商品ラインアップ(=シーズ)の中からエンド・ユーザー(研究者)に有用な商品(=ニーズ)を選び出し、タイムリーに届ける。デリバリーは国内約200拠点・海外28拠点に及ぶ代理店の物流網を活用しており、また、一部の商品(自社ブランド品)については自社で開発・製造している。グループは、同社の他、研究用機器の扱いが中心の連結子会社 ビーエム機器(株)、及び米国現地法人の非連結子会社COSMO BIO USA, INC.。

自社ブランド品
細胞内へのグルコース(ブドウ糖)の取込量の測定は、血糖値をコントロールする薬剤の研究や基礎研究における細胞の増殖性確認等の際に実施される。
サンプルからタンパク質やDNAを分離するために使われる電気泳動装置。遺伝子解析の際等に使われる。
電気泳動とは、タンパク質やDNAが電圧をかけたときに移動する性質を利用して分離を試みる方法(それぞれ移動距離が異なる)。
グルコース細胞内取込量測定キット
(広範囲、蛍光法)
電気泳動装置 i-MyRun II(あいみらんII)
【健康で活力のある長寿社会と持続可能な社会を実現する “ライフサイエンス”】

ライフサイエンスについて文部科学省では、「ライフサイエンスは生物が営む生命現象の複雑かつ精緻なメカニズムを解明する事で、その成果を医療・創薬の飛躍的な発展や、食料・環境問題の解決等、国民生活の向上及び国民経済の発展に大きく寄与するものとして注目を浴びている分野。文部科学省では、理化学研究所、科学技術振興機構、大学等の機関における基礎的・先導的な研究の推進や研究支援業務などを実施し、ライフサイエンスの総合的な推進に努めている」と説明している。(文部科学省Webサイト)
また、内閣府では “科学技術基本政策策定の基本方針” の中で、「ライフサイエンス研究は、国民の健康長寿の実現、鳥インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)など新興・再興感染症への対応、食の安全の確保等の国民の安全の確保を実現すると共に、食料自給率向上や、医薬品産業、農林水産業、食品産業等の産業競争力強化や新産業創出につながる科学技術として期待されている。また、国際的にもライフサイエンス研究に対する期待は大きく、各国とも積極的な投資を行い、研究開発競争が激化している」としている。

ライフサイエンスの研究は社会的な意義が極めて高く、その市場は長期の継続的な拡大が期待できる市場である。また、その研究は、分子構造解析、シグナル伝達解析、タンパク質解析等の「基礎研究」、その成果を実用化するための「応用研究」、更には製品化に向けた「開発研究」の大きく3段階に分類される。

【事業の特徴 -専門知識を要する膨大な種類の「商品」と「商品情報」、多種多様な「ニーズ」を効率的にマッチング-】

ライフサイエンスの研究は広範で分野が多岐にわたるため、多種多様な試薬が開発・販売され、使用されている。多くの研究者に使われる汎用的な試薬もあるが、ごく少数の研究者にしか使われない試薬も多い。また、研究テーマの移り変わりが早いため、機器も含めて年間何十万単位の新商品が新たに加わる一方で、なくなる商品も何万点とあり、その時々で個々の研究テーマにあった商品が必要となる。このため、同社の営業社員は専門知識を要する膨大な種類の「商品」と「商品情報」(仕入先:国内外の約640社、取扱商品:約800万品目)、そして多種多様なエンド・ユーザーの「ニーズ」とを効率的にマッチングさせる必要があり、この作業こそが同社の最も重要な役割であり真髄である。
ただ、研究者全てのニーズを同社の営業社員だけで拾い上げる事は難しい。このため、同社商品の情報発信と言う面も含めて、各地の大学・企業等の近隣に営業所を構え、日々研究室を訪問している代理店とのパートナーシップが重要になる。同社商品の情報発信と言う面でも、代理店は需要な役割を担っており、そのネットワークは、国内約200拠点、海外28拠点に及ぶ。

尚、大学等は、毎年3月末(同社の第1四半期末)が年度末であるため、同社の売上は上期に多くなる傾向がある。一方、カタログ費用等の販管費は下期に多くなる傾向があるため、利益は上期のウエートが大きくなる(上期は多く、下期には少なくなる)。

【コスモ・バイオ グループ】
コスモ・バイオ(株)
ライフサイエンス試薬を中心とした商品の仕入卸売販売、情報提供、自社製品の製造販売、及び受託試験(プライマリーセル事業部)コスモ・バイオ(株)
連結子会社 ビーエム機器(株)
ライフサイエンス研究用の機器類や消耗品の輸入商社
非連結子会社
COSMO BIO USA ,INC.
コスモ・バイオが輸出する商品の北米での販売、新規仕入先・商品の探索、及び情報収集

国内では同社・連結子会社ビーエム機器(株)共に全量が代理店経由。一方、海外販売は、同社による海外代理店経由の販売と輸出直販、及び非連結子会社COSMO BIO USA, INC.による北米ユーザーへの直販に分かれる。

【研究試薬及び機器の市場】

調査会社の資料によると、ライフサイエンス分野の試薬の市場(生化学研究用試薬市場)規模は約1,000億円。競合企業は大きく、海外企業の日本法人、大手企業の子会社・事業部門、及び独立系商社に分ける事ができ、業界トップはサーモンフィッシャーサイエンティフィック、次いで、武田薬品グループの和光純薬工業株式会社、タカラバイオ株式会社、フナコシ株式会社、シグマアルドリッジジャパン、そして同社。この6社に、ロシュ、キアゲン、GE等の子会社や東洋紡株式会社を加えた4社でトップ10を形成している(10社合計でシェア70.5%)。

機器の市場については、GE等の外資系メーカーが強いNMR(核磁気共鳴装置)等の大型据置装置を除く小型機器の市場規模が、やはり1,000億円程度と見られており(同社推計)、国内大手メーカーには株式会社日立製作所や株式会社島津製作所等がある。

【沿革】

1978年3月に丸善石油株式会社(現、コスモ石油株式会社)の技術開発部の生化学グループとして創業し、1983年8月に丸善石油株式会社の100%子会社 丸善石油バイオケミカル株式会社として法人化。1986年4月に丸善石油株式会社と大協石油株式会社が合併してコスモ石油株式会社が誕生した際に、コスモ・バイオ株式会社に商号を変更した。2000年9月にMBO(マネジメントバイアウト)によりコスモ石油株式会社から独立。2004年8月には最大のライフサイエンス研究国である米国(カリフォルニア州サンディエゴ)に、仕入先探索と日本からの輸出品の販売推進を目的に100%子会社Cosmo Bio USA, Inc.を設立した。

2005年9月にジャスダック証券取引所に株式を上場。2006年12月には、脂肪細胞等の初代培養細胞(プライマリーセル)の製造・販売及び細胞の受託解析等を手掛ける株式会社プライマリーセルの発行済株式数の80%を取得(2008年に100%子会社化、2013年7月に吸収合併)。2007年12月にはライフサイエンス研究の支援事業として研究用機器・器材の輸入販売を手掛けるビーエム機器株式会社を関連会社化し(発行済株式数の約30%を取得)、2010年3月に同社発行済株式の約33%を追加取得して連結子会社とした(現在、約63%を保有)。

現在、コスモ石油株式会社とは支配関係はなく、脳腫瘍の術中診断(光線力学的診断法)等に用いられる試薬「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」の仕入れ取引があるのみである。

【リスク要因 -ライフサイエンス研究関連費用の支出動向、為替、仕入先等-】

同社グループのエンド・ユーザーは、大学・公的研究機関及び企業における研究者が大きな比重を占めている。このため同社グループの業績を考える上では、公的研究費や企業の収益・研究開発の支出動向(ライフサイエンス研究関連費用の支出動向)に注意する必要がある。

また、同社商品の大半は外貨で決済される輸入品のため、同社の収益は為替の影響を大きく受ける(為替が円安に向かうと、仕入原価が上昇し利益が減少する)。同社は、実需の範囲内で為替予約を実施しているが、為替予約でカバーされない外貨の決済もあり、その場合、為替の変動により円ベースの仕入価格が変動する。また為替予約レートよりもスポットレートが有利な為替相場となる際には、全ての外貨取引をノンカバーで決済する場合よりも不利になる。

この他、同社グループの仕入先の大半は海外の企業だが、海外仕入先のM&Aや日本における販売体制の改編(メーカーの直販)等により、同社グループの仕入価格や国内販売権が影響を受ける。

【社会貢献】

同社は社会貢献の一環として、「公開講座応援団」への協賛や「iGEM生物ロボットコンテスト」の支援等の取り組みを継続して実施いている他、米国科学振興協会(AAAS)が発行する研究者のためのオンラインジャーナル“Science Signaling”の日本語サイトの同社ウェブ上での運営を行っている。「公開講座応援団」への協賛では、大学等が行うライフサイエンスの面白さと楽しさを伝える公開講座の支援をしており、「iGEM生物ロボットコンテスト」の支援では、米国マサチューセッツ工科大学で毎年行われている「生物ロボット」コンテストに参加する日本の大学チームに資金援助を行っている。2014年は9チームを支援し、支援大学の一校である東京工業大学(チーム名:Tokyo Tech)がInformation Processing部門で最優秀賞を受賞した。

2014年12月期決算
(1)3ヶ年計画(14/12期~16/12期)と2014年12月期の取り組み

14/12期にスタートした3ヶ年計画(~16/12期)では、「成長と信頼の研究支援会社の実現」を目指して、「顧客満足度の追求」、「業容の拡大」、及び「経営基盤の安定化」という3つの課題に取り組んでいる。「顧客満足度の追求」では、研究動向にあった商品・サービスの導入、自社ブランド品の開発強化、更には顧客の求める情報提供の充実に努め、「業容の拡大」では、販売、商品開発、業務効率化・強化のための投資仕入先との関係強化・提携等を推進している。また、「経営基盤の安定化」では、株主資本、経営資本の安定、事業リスク(仕入先M&A、為替、法規制等のリスク)の低減に取り組んでいる。14/12期は、下記の通り、それぞれの課題に対して一定の成果をあげる事ができた。

「顧客満足度の追求」

「顧客満足度の追求」の一環としての“短納期”の実現に加え、「業容の拡大」にもつなげるべく、仕入先との連携による在庫施策を進めた。具体的には、2014年2月のProteintech社との契約において、日本国内での独占販売権を獲得すると共に、日本で販売するProteintech社の抗体製品をコスモ・バイオ(株)が管理する事となった。短納期の実現で顧客満足度を追求すると共に、受注増にもつなげていく考え。現在、同様の契約交渉を複数の仕入先と進めている。また、今後の活動に活かすべく研究者向け「顧客満足度アンケート」と代理店向け・社内向け「業務改善アンケート」を実施した。現在、アンケートの分析結果を踏まえて対応を進めている。

「業容の拡大」

上記の、仕入先との連携による在庫施策に加え、価格競争を回避して収益性を高めるべく、自社ブランド品の積極的な開発・販売にも取り組んだ。14/12期は遺伝子解析に使われる(主にタンパク質やDNAの分離に用いる)電気泳動装置「i-MyRun II」、疾患の発症や進展に関わっているコラーゲンの糖化反応を阻害する物質のスクリーニング等に用いる「抗糖化アッセイキットシリーズ」(試薬)等の有望自社商品を複数上市した。自社ブランド品については、ユーザーニーズはあるが、メーカーが手掛けていない商品にフォーカスして取り組みを進めている。一方、海外は、13/12期に世界の主要拠点をほぼカバーする代理店ネットワークの構築が完了した事から、3ヶ年計画では販売の拡大・強化に軸足を移し施策を進めていく。

「経営基盤の安定化」

業務の効率化を図るべく、グループ会社各社の基幹システムをSAP社のSAP® Business Suite powered by SAP HANAに統一する事とした他、取扱商品の拡大に伴い関連法令への対応も難しくなっているため、専任部署を整備し法令への対応を強化した(同社のビジネスは法規制の影響を受ける)。基幹システムについては、既に導入作業が始まっており、15/12期から一部の償却が始まる。

(2)ライフサイエンス研究市場の動向

医師主導臨床研究での不正疑惑の影響が尾を引く中、STAP細胞問題もあり、2014年の基礎研究市場は大学・研究機関を中心に慎重な予算執行が続き、我が国の基礎研究を支える文部科学省の科学研究費(科研費)助成額も、2014年度は2,304億円と前年度に比べて14億円減少した(次項参照)。特に、大学では、消費税率引き上げによる研究材料費・光熱費等の高騰の影響も加わり、研究費の消費動向は厳しい状況だったと言う。

※2011年度から一部種目について基金化を導入した(基金内で翌年度以降への繰り越しや前倒しが可能になった)事により、予算額が当該年度の助成額を表さなくなった。このため、当該年度に助成する金額を「助成額」として、予算額とは別に表記している(オレンジ色)。
一方、一定の需要が見込める企業向けも、研究開発拠点の集約や海外シフト等により市場は横ばいから微増にとどまった。このため、市場は伸び悩み、シェア獲得のための販売競争が激化した。

前期比2.6%の増収、同35.8%の経常減益

売上高は前期比2.6%増の72億35百万円。大学・公的研究機関において慎重な予算執行が続く中、企業の研究予算も、研究開発拠点の集約や海外シフト等の影響で横ばいから微増にとどまった。このため、市場は伸び悩み、シェア獲得のための販売競争が激化したものの、同社においては、商品の充実、積極的な情報発信、納期の改善等に取り組んだ結果、抗体や細胞・培養関連の試薬を中心に売上が増加。上期決算発表時に修正した予想値をほぼ達成した。

利益面では、販売競争の激化と下期の急激な円安の進行による仕入原価の上昇で原価率が66.5%と前期に比べて3.7ポイント上昇。経費節減により販管費は22億61百万円と同3.7%減少したものの、売上総利益の減少をカバーできず営業利益は1億62百万円と同40.2%減少。為替予約にかかる差益が増加(72百万円→1億02百万円)したものの、受取保険金(13/12期:67百万円)の計上がなくなった事で営業外収益も減少した。ドル/円レートの平均値は106円と前期の96円に比べ10円の円安。ただ、下半期の急激な円安の影響を大きく受けた。

配当は1株当たり12円の期末配当を予定しており、上期末配当と合わせて年20円となる。

期末総資産は前期末に比べて1億16百万円減の81億61百万円。借り方では、現預金や有価証券が減少する一方、短納期対応の一環としてたな卸資産が増加。貸し方では、仕入債務が増加する一方、繰延税金負債や純資産が減少した。100%超であれば短期的な支払い能力は安全とされる流動比率は463.2%(前期末675.7%)、100%未満であれば長期的に安全と言われる固定比率が53.5%(同51.1%)、自己資本比率74.1%(同76.2%)。実質無借金経営であり、流動性に富み、かつ、長期的な安全性も有する優れた財務内容である。

13年7月の(株)プライマリーセルとの吸収合併に際して同社の欠損金を取り込んだため、14/12期は税金費用が発生しなかった。このため、営業利益が減少する中で営業CFが増加した。一方、投資CFはマイナス幅が拡大したが、これは余資運用(投資有価証券や社債の購入)によるもの(実質的なフリーCFは潤沢だ)。財務CFのマイナスは配当金の支払いによる。

*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

売上高当期純利益率と総資産回転率の低下で14/12期のROEは前期の5.42%から3.25%に低下した。売上高当期純利益率の低下は、競争激化や急激な円安の進行による原価率の悪化が要因。ここ数年は円安に連動する形で売上高当期純利益率が低下化傾向にある。一方、総資産回転率の低下は、投資先企業の評価額の上昇(株式公開したため)による投資有価証券の増加や短納期対応の一環としてのたな卸資産の増加が要因。
現金、有価証券、及び投資有価証券の中の任意に売却できる株式等の合計は30億円程度になると思われる(年商の42%、約5ヶ月分の売上高に相当)。財務内容に優れる同社だが、収益拡大に向けた潤沢な資金の有効活用が課題である。尚、東証発表の「決算短信集計」によると、14年8月15日現在のマザーズ上場企業の13年度のROEは、金融を除く全産業3.13%(前期は3.00%)、製造業-5.86%(同-4.58%)、非製造業7.79%(同6.76%)。

2015年12月期業績予想
(1)2015年12月期の取り組み

「成長と信頼の研究支援会社の実現」に向け、引き続き、「顧客満足度の追求」、「業容の拡大」、及び「経営基盤の安定化」という3つの課題解決に向けた取り組みを進める。
15/12期のポイントは、①市場が拡大しないなかで売上を確保するための、シェアの確保・拡大、②自社ブランド商品の導入・販売の効率化、③円安環境でも利益を出せる収益構造への改革、④顧客満足度の追求に向けた具体策の検討・実行、の4項目。その上で、重点目標として、「市場低迷・円安環境に打ち勝つ」、「効率的・合理的な仕事への転換」の2点を挙げている。

「市場低迷・円安環境に打ち勝つ!」

トップラインの引き上げと利益確保に向け、適切な商品価格への是正を図ると共に顧客満足度の向上に努める。具体的には、為替の水準を反映した価格に改定すると共に(ここ数年の円安局面で価格改定を行わなかった)、商品の充実、情報提供の改善、更には在庫施策等を推進する。また、自社ブランド品の拡充・拡販、受託サービスビジネスの拡大等で事業の高付加価値化を図る他、グローバルなネットワークの整備が進んだ事を踏まえて海外販売もアクセルを踏み込む。

「効率的・合理的な仕事への転換」

物流経費・事務経費の削減に加え、販管費全般の見直しによる経費の効率的な使用に努めると共に、社員一人一人が環境変化を認識し、業務の効率化に努める。現在、グループ内の情報共有化と業務効率化を目指し、新基幹システムへの移行を進めている。

前期比7.3%の増収ながら、同30.0%の経常減益

自社ブランド品や受託サービス等の高付加価値商材の強化や顧客満足度の追求による国内でのシェア拡大に加え、海外販売の増加もあり、売上高が77億60百万円と同7.3%増加する見込み。

利益面では、増収効果に加え、高付加価値商品の売上構成比の上昇や在庫廃棄損の減少が見込まれるものの、円安が大きな負担となる中で、基幹システムの更新に伴い減価償却費も増加する。このため、営業利益は同56.8%減の70百万円と大きく落ち込むが、為替差益が見込めるため経常利益は同30.0%減の2億円を確保できる見込み(為替予約は営業活動と一体となって行われるため、営業利益よりも経常利益の方が実態をよく表している)。

為替の前提は前期に比べて14円円安の1ドル=120円。

配当は1株当たり上期末6円、期末8円の年14円(連結配当性向69.2%)を予定している。

【笠松 敏明社長に聞く 株主還元と今後の展望】

2015年3月6日、会社概要、株主還元、今後の展望について、笠松 敏明社長にお話を伺った(会社概要については既に説明した通り)。

株主還元

配当を基本に株主還元を進めていく。本来、配当性向に基づく、業績に応じた配当が望ましいと考えており、配当性向30%が目途になる。しかし、一時的な業績の落ち込みに際しては、前期及び今期のように配当性向を引き上げて対応していきたい。

今後の展開

当社は「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」という経営理念の下、ライフサイエンスの基礎研究に携わる数多くの研究者を支援してきた。そして、有用な商品や確かな情報サービスの提供等を通して、研究者の更なる満足度向上を追求している。今後も、ライフサイエンスの研究支援会社として、成長と信頼を更に高める経営を推し進め、より確かな研究支援会社の実現を目指すと共に、その結果を業容の拡大につなげていきたい。また、そのための基礎として経営基盤の安定化も追求していく。
こうした取り組みの継続によって安定的成長と企業価値の最大化を図り、株主の皆様の期待に応えていきたいと考えている。

今後の注目点
円安が利益を圧迫する中、研究費の伸び悩みで販売競争が激化しており、足元の事業環境は厳しい。このため、15/12期の業績予想が慎重なものとなったが、我が国のライフサイエンス研究は、再生医療研究や脳神経科学研究、更には癌研究等、最先端を行く研究が数多い。2014年には、再生医療の分野において、世界の注目を集める先進的な法体系が整備され、2015年には、これらの研究を支援するべく、日本版NIH(米国国立衛生研究所)と呼ばれる日本医療研究開発機構(AMED)が設立される。
このため、今後、徐々に研究活動が活発化してくるものと思われ、特に先進的な法体系が整備された再生医療分野は日本が研究の中心になる可能性が高い。独立系のライフサイエンス専門商社として、メーカー系等の商社にない機動力と営業力を有する同社が、このチャンスをどのように活かしていくか、注目していきたい。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
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