(3031:東証マザーズ) ラクーン 2015年4月期第3四半期業績レポート

2015/03/25

raccoon

今回のポイント
・15/4期3Qの売上高は前年同期比5.9%増加の15億18百万円。利益率の高い売掛債権保証事業が伸びたことに加え、Paid事業の赤字幅が大幅に縮小し、粗利率は1.2%上昇。売掛債権保証事業において営業力強化のために人件費が増加したが、全般的に販管費はコントロールすることが出来たため、営業利益以下大幅な増益となった。・通期業績見通しおよび配当予想を上方修正。売掛債権保証事業の保証残高が50億円を超え、その後も順調に積み上がっており、売上高が堅調に推移している。利益面では、「スーパーデリバリー」のコスト構造改革が順調に進んだことに加え、売掛債権保証事業において保証履行が想定よりも少なく売上原価が予想を下回り、各利益ともに予想上限値を上回る見通し。配当予想も前回予想の5.30円/株から6.80円/株へ修正。予想配当性向は19.9%。

・前回のレポートで「過去4期の上期進捗率(実績ベース)は、概ね40%前後であるが、今期は既に50%(対予想ベース)を超えている。」と書いたが、第3四半期に入っても引き続き好調で上方修正を行った。一般企業の年度末を含む同社第4四半期にどの程度の上積みが可能かを期待したい。また、Paid事業の単月黒字化達成は、同社業績に与えるインパクトが大きいため、いつ頃となるかにも注目したい。

会社概要

中小企業間の取引を便利でスムーズに行うためのサービスを提供する企業として、インターネット上でB to B(企業間電子商取引)市場である「スーパーデリバリー」というWebサイトを運営している。
「スーパーデリバリー」は、アパレル、雑貨を中心にメーカー、インポーター等の出展企業の取扱う商品を、全国の中小規模小売店に販売している。

また、2010年11月に売掛債権保証事業を行っている(株)トラスト&グロースを子会社化。これによって中小企業間決済事業を新たな事業ドメインと位置づけし、本格的に取組を開始し、更に2011年10月から、企業間取引を安心かつスムーズにする後払い決済サービス「Paid(ペイド)」の提供を開始している。2014年3月からは、第4番目のサービスとして、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツール「COREC(コレック)」の提供を開始した。

【経営理念】

経営理念を「企業活動を効率化し便利にする」に刷新した。企業間取引に関し、これまで培ってきた情報と決済に関するノウハウを活かし、企業活動を効率化し便利にする仕組みを今後も提案していくというビジョンを表している。

小方社長は創業後、企業としての方向性をしっかり定め、経営者としてやっていく決意を固めるまでは安易に人を増やすべきではないという考えから従業員を一人も雇用せず、自分一人で同社を運営してきたが、方向性と決意が定まった2000年に初めて正社員30名を採用した。
当時の日本のEC業界は、米国に先例がある訳でもなく、自らがゼロから作り上げていかなければならない黎明期であったが、この最初のメンバーが中心となって、日本のB to B ECを作り上げてきた。
同社においては、EC専門家の彼らが最大の経営資源であると小方社長は考えている。
今後、新しいビジネスモデルを創造していくにあたり、企業領域を明確にしていく必要性があると考え、経営理念を刷新することとした。
重要なポイントは以下の2点。

①事業領域の明確化の必要性

既存事業とのシナジーは特に意識しないが、同社のコア・コンピタンスであるノウハウを活用しながら、「中小企業向けB to Bインフラ」であること、「ECと決済の専門知識」を活かすものであること、に事業領域を絞りこむ。

②企業間取引のインフラサービス企業としての総合サービス化への転換

存在して当たり前のインフラとなるべく、今回の新サービス「COREC」に続き、第5、第6、第7と制限を設けず、新サービスを提供し続け、これまで以上に、よりインフラサービス業へと進化していく。

【事業内容】

「EC事業」、「Paid事業」、「売掛債権保証事業」の3セグメントで構成されている。

(1)「EC事業」

「スーパーデリバリー」はファッション・雑貨業界のメーカーと小売店が出会い、継続して取引を行うことができるB to B(企業間取引)サイトである。サイトを利用することで、これまで取引のできなかったメーカーと小売店に新たな取引機会が生まれ、さらに新商品の紹介や受発注のやりとりも効率化される。また、代金はスーパーデリバリーが小売店から回収し、メーカーへまとめて支払うことから、未回収リスクのない取引の実現が可能となる。

スーパーデリバリーに参加するためには、同社の審査をパスする必要がある。
この点、同業他社の中には「数=取引量の拡大」を最優先とし、ネット小売店を中心に緩い審査基準で加盟店を数多く集める事に注力しているところもあるが、同社の場合は、「質」と「数」のバランスを重視するため小売店に関しては、ネット小売店ではなく、実際に店舗を運営している小売店であるか?などを中心に審査を行っている。
また、サプライヤーに関しても、質の高さを重視している。スーパーデリバリーの立ち上げ当初は質の高い、ブランドを確立したサプライヤーは、他のそうでないサプライヤーと共に並べられるのを嫌がり、参加を拒むケースもあったが、現在では他のサプライヤーの質も高い事が理解され、そうしたことは無くなっている。小売店にとっても、質の高いサプライヤーと取引出来る点が大きなメリットとなっている。
B to C取引と異なり、B to B取引は、取引量を拡大させるためには、リピート取引を如何にして拡大させるかがカギとなるため、マーケットのクオリティ向上が最も重要であると同社は考えており、この点が同業他社との大きな違いの一つとなっている。

また、同社はEC企業ではあるが、他社が、ECのマーケットプレイスを開設・運営するシステム会社という側面が極めて強いのに対し、同社はただ単にそれにとどまらず、アパレル・雑貨を中心とした商品知識、業界知識がきわめて豊富な点も、他社との違いとなっている。
「スーパーデリバリー」の収益は、出展企業から得る出展基本料(月額4万円)、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)、出展企業からのシステム利用料(会員小売店に卸した商品代金の10%)の3つから成っている。

商品は出展企業が会員小売店に直接配送するが、代金に関しては同社が出展企業の代わりに会員小売店から代金を回収し、出展企業に支払うため、売上高として商品代金を計上し、システム利用料を控除した額を売上原価として計上する総額計上を行っていたが、2015年4月期第1四半期より、売上表示を従来の総額表示から純額表示に変更した。純額表示における売上高は、出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。
サービスの種類も増加しておりインフラサービス提供企業としてのポジショニングを明確にすることが目的。またマーケットプレイス事業を手掛ける同業他社との比較も容易になり投資家のメリットも大きいと判断した。

2015年1月末での会員小売店数 43,398店舗(前期末比2,957店舗増)、出展企業数1,057社(同109社増)、商材掲載数452,000点(同1,115点減)となっている。

2014年3月には、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツールサービス「COREC(コレック)」を同事業内でスタートさせた。

(2)Paid事業

「Paid」は企業間取引の非効率な管理プロセスや内在する信用リスクを解消する決済サービス。
Paidを利用することで、バイヤーはすべての加盟企業と締め支払いで取引が可能となり、効率的にかつ運転資金にゆとりを持った取引が実現できる。サプライヤーは登録するバイヤーと代金未回収のリスクや請求督促の手間なく決済ができ、効率的かつ安全で顧客に喜ばれる取引が可能となる。
2015年3月に加盟企業数は1,200社を突破した。

(3)「売掛債権保証事業」

「売掛債権保証事業」は、11年4月期第3四半期から子会社化した(株)トラスト&グロースにおいて行っている事業である。「T&G売掛保証サービス」は、取引先が倒産した場合に、あらかじめ保証を掛けておけば、保証の枠の中で同社が損害分を代わって支払いするサービス。審査に際して、取引先に対する直接的なヒアリングや取引先からの申し込みなどは一切必要がない。独自の与信判断により90%以上の高い承認率を実現し、審査依頼から2営業日程度で回答も得られる。更に、顧客の商習慣に合わせた保証内容のカスタマイズが可能と利便性も高い。
2015年1月末の保証残高は52億78百万円(前期末比12.6%増)となっている。

2015年4月期第3四半期決算概要
3事業とも増収。コストコントロールも奏功し大幅増益。

売上高は前年同期比5.9%増加の15億18百万円。3事業共に増収で、利益率の高い売掛債権保証事業が伸びたことに加え、Paid事業の赤字幅が大幅に縮小し、粗利率は1.2%上昇した。売掛債権保証事業において営業力強化のために人件費が増加したものの、全般的に販管費はコントロールすることが出来たため、営業利益以下大幅な増益となった。大阪支社移転に伴う移転費用5百万円を特別損失に計上した。

◎EC事業

売上高は前年同期比2.4%増の11億51百万円。営業利益は同27.6%増の1億61百万円。
スーパーデリバリーの流通額は同3.6%増の71億円。
新規出展企業数は引き続き堅調に拡大している。信頼性およびブランド価値向上を図るため前期より営業体制を変更し、営業とMD(専門知識を持ったマーチャンダイザー)が一体となって出展企業の獲得に取り組んでいるが、その効果が現れている。会員小売店からのニーズの高い出展企業の獲得も進んでおり、流通量増加に結び付いている。

2014年3月よりサービス提供を始めた「COREC(コレック)」は、9月より有料プランの課金がスタートした。
また、Yahoo!JAPANコマースパートナーに認定され、Yahoo!ショッピングやヤフオク!に出展されているネットショップの獲得を開始した。同時に、ユーザーから寄せられる声をもとにユーザビリティの高いシステムを構築していくための機能の追加も順次行っている。
現在は種蒔きの段階であるため、知名度向上とユーザー獲得に注力している。
2015年1月末におけるユーザー数は1,620社となり、2014年10月末比510社増加した。

◎Paid事業

売上高は前年同期比28.8%増の1億94百万円。営業損失は14百万円だが、前年同期の31百万円の損失から大幅に縮小した。
様々なニーズに対応するソリューション営業による加盟企業の増加と、システムの利便性を高めて獲得した加盟企業の稼働率向上に注力した結果、取引高は75億85百万円と同27.0%増加した。
今期中の単月黒字化が見えてきたということだ。

◎売掛債権保証事業

売上高は前年同期比12.5%増加の4億17百万円。営業利益は同37.0%増の77百万円。
代理店経由のクライアントの新規契約が伸びており、7月末に消費増税の駆け込み需要の反動で減少した保証残高が復調した。
2014年4月に開始した事業用家賃保証サービスが堅調に伸びている。
また、クラウド請求書作成管理サービス「Misoca」を提供しているスタンドファーム株式会社との業務提携(2014年11月)、オンライン物流ネットワーク「トラボックス」を運営するトラボックス株式会社との業務提携(2014年12月)など、クライアントの窓口を広げるための積極的な業務提携を進めている。
保証残高は52億78百万円で前期末に比べ12.6%増加した。

現預金などの増加で流動資産は前期末に比べ1億51百万円増加。固定資産に大きな変化は無く、資産合計は同1億62百万円増加の33億91百万円となった。
負債面では、短期借入金が同1億61百万円減少した一方、長期借入金が同1億22百万円増加したことなどで、負債合計は同2億39百万円増加の17億7百万円となった。純資産は利益剰余金等の増加で同1億38百万円増加の16億84百万円となった。
この結果、自己資本比率は前期末より1.8%上昇し、49.6%となった。

(4)トピックス
◎新規開業小売店を支援するためスーパーデリバリーの掛売り決済の上限額を引上げ

2015年2月より小売店に対する開業支援サービス(開業時の仕入れサポート)の一環として、新規開業小売店の掛売り決済の初回与信限度額を従来の30万円から70万円へ増額した。

スーパーデリバリーでは、仕入環境向上のために複数の決済方法を導入している。現在、クレジットカード、信販、掛売り決済、代金引換便による決済を利用することができるが、掛売り決済は、B to B 取引における商習慣として定着しており、小売店にとって親和性および利便性の高い決済方法であることから、同社としても積極的に導入を推進しており、今期66.2%が掛売り決済で取引されている。

これまでは与信上での不確定要素を考慮し、新規開業小売店が新たに会員小売店となった場合の掛売り決済の与信限度額の付与は一律上限30万円としていた。ただ、新規開業小売店はオープンに向けた準備期間中に、通常の会員小売店に比べて幅広く、大量に仕入れを行う傾向があることから顧客からは「限度額不足」という声が多く寄せられており、顧客サービス拡充の観点から上限額を引き上げることとした。

今回の上限額引き上げにより、仕入ニーズの高い新規開業小売店の会員数増加及び客単価向上が期待できる。
加えて新規開業の段階から、スーパーデリバリーで仕入をしてもらうことで、スーパーデリバリーがメインの仕入先のポジショニングを確保する可能性が高くなり、その後の安定した継続取引に繋がっていくことで中長期的に流通額の増加へ寄与することも期待している。

◎売掛債権を流動化

2015年年2月12日開催の取締役会において、Paid事業の売掛債権の流動化を実施することを決議した。
2015年3月から実施。

Paid事業の規模をさらに拡大していくためには、幅広い業種の加盟企業を取り込んでいくことが重要となる。
ただ、B to B取引は、業種や規模ごとに商慣習が異なる場合も多く、取引代金の回収・支払いのサイクルも多種多様で、代金を回収する前に支払いが必要なケースも見られ、幅広い業種の加盟企業を積極的に取り込んでいくためには、ある程度余裕のある運転資金を確保する環境が必要だった。

今回の売掛債権流動化スキームの導入により、毎月、決済期日到来前に売掛債権に該当する資金の調達を行うことができるため、今後は今まで以上に積極的に多種多様な業種を加盟企業としてPaid に取り込み、取引高を増加させ、事業規模の拡大加速を図っていく。

なお、今回、Paid事業の売掛債権の流動化は株式会社りそな銀行との取組みにより実施し、流動化による資金調達額は当初6億円程度を予定している。
また、この流動化は信託受益権方式による実施。信託受益権は優先受益権と劣後受益権に分かれ、ともにSPC(特別目的会社)への売却を通じて資金調達の対象とし、優先受益権部分については売掛金の売却として、劣後受益権部分については借入金として会計処理を行う。
そのため、同額の資金を借入金により調達した場合に比べて自己資本比率等の財務数値は悪化しない。

◎自己株式の取得を決議

2015年2月25日、株主への利益還元を通じて資本効率の向上を図るとともに、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を行う事を目的として、自己株式の取得を行うことを取締役会で決議した。

2015年2月28日までに東京証券取引所における市場買い付けにより、20,000株(14,261,400円)を取得している。

2015年4月期業績予想
業績及び配当予想を上方修正。小幅増収ながらも2ケタ増益予想

2015年1月15日、通期業績見通しおよび配当予想を上方修正した。
売掛債権保証事業の保証残高が2014年11月時点で50億円を超え、その後も順調に積み上がっており、売上高が堅調に推移していることから、売上高予想を業績予想上限数値20億50百万円とした。
利益面では、「スーパーデリバリー」のコスト構造改革が順調に進んだことに加え、売掛債権保証事業において保証履行が想定よりも少なく売上原価が予想を下回り、営業利益、経常利益、当期純利益ともに予想上限値を上回る見通し。EPS予想は34.17円となった。(前回予想は24.81円~26.52円)
これに伴い、配当予想も前回予想の5.30円/株から1.50円/株増額の6.80円/株へ修正した。予想配当性向は19.9%。

今後の注目点
前回のレポートで「過去4期の上期進捗率(実績ベース)は、概ね40%前後であるが、今期は既に50%(対予想ベース)を超えている。」と書いたが、第3四半期に入っても引き続き好調で上方修正を行った。年度末を含む同社第4四半期にどの程度の上積みが可能か期待したい。
また、Paid事業の単月黒字化達成は、同社業績に与えるインパクトが大きいため、いつ頃となるかにも注目したい。
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ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
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