(8860:東証1部) フジ住宅 2015年3月期第3四半期業績レポート

2015/03/04

Fuji

今回のポイント
・15/3期第3四半期は前年同期比8.7%の減収、同38.6%の経常減益。売上面では、前期末の高水準の受注残が寄与した土地有効活用セグメントなどが増加したものの、消費税増税前の駆け込み需要の反動減により分譲住宅セグメントなどが減少した。利益面でも、売上が増加した土地有効活用セグメントや賃貸及び管理セグメントで増加したものの、供給の抑制により新築分譲マンションが減少した分譲住宅セグメントや利益率の高い新築建売住宅が減少した住宅流通セグメントなどで減少した。一方、販売状況を示す受注契約高は中古住宅や個人投資家向け一棟売賃貸アパートなどの受注増加が寄与し同1.8%増加。売上高の先行指標となる12月末の受注契約残高も前年同月末比3.2%増加した。・15/3期の会社予想は、前期比7.4%の減収、同24.0%の経常減益の期初予想を据え置き。15/3期第3四半期累計期間の実績では、売上・利益ともに期初の会社計画を上回ったものの、消費税増税後の住宅需要の全般的な落ち込み傾向の継続や円安による建築資材の高騰などの影響を考慮している。配当も前期と同じ1株当たり年26円の期初の予想(上期末13円、期末13円)を据え置き。

・自由設計住宅の第3四半期累計期間の受注契約高が増加に転じてきている。同社は今後新築分譲一戸建住宅の販売拡大を図るべく、前期の後半に優良な、たな卸資産の積み増しを実施した。同社の今期受注は、これらの販売が本格化する年後半以降、大きく伸びる計画となっている。第3四半期に入り、新築分譲一戸建住宅の販売が増加してきたものと推測されるが、第4四半期に目標とする高水準の受注計画を達成できるのか、今後の新築分譲一戸建住宅の販売動向が注目される。

会社概要

地盤である大阪府下全域の他、兵庫県一部(阪神間)・和歌山県北部地域で、戸建分譲・中古住宅等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。また、中古住宅の改装販売、金融機関とタイアップした土地有効活用事業や個人投資家向けの賃貸アパート販売事業、賃貸・管理事業、注文住宅事業も事業の柱である。
販売代理や戸建住宅から派生した各事業が独自のノウハウを持ち、他の事業部門を相互に補完する(相乗効果)、単なる住宅の分譲会社ではなく地域や時代の住宅に関するあらゆるニーズに対応できる機能を備えていることが「住まいのトータルクリエイター」である同社の特長である。地域密着型経営の特長を活かし、顧客に顔を向けた「売りっ放し」、「建てっ放し」のない顧客満足度の高い住宅づくりを目指している。

(1)事業内容
分譲住宅事業(14/3期売上構成比48.0%)

戸建とマンションの分譲を手掛けており、「自由設計方式」と「街づくり」を特徴とする戸建では、用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築。マンション分譲は地価上昇とその後の供給過剰・需要低下に伴う事業リスクの高まりを予見し05年春に事業を停止したが、リーマン・ショック後の地価の下落と分譲マンション市場の需給改善を踏まえて12年2月に再開。駅近の利便性の高い立地等、物件を厳選した1次取得者向けの価格訴求力のある分譲マンション販売を特徴とする。

住宅流通事業(同 31.4%)

「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売及び新築建売住宅の販売に係る収益が計上されている。エリア毎に住まい探しの情報拠点となる「おうち館」や、仕入・販売の拠点となる「フジホームバンク」を設けており、中古住宅では地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォーム業者の育成やマニュアル化等、独自のノウハウを強みとする。一方、新築建売住宅では、泉州地区(泉佐野、熊取、貝塚、岸和田中心)で小規模分譲地を開発し手頃な価格の建売住宅を販売。当事業は分譲住宅事業でカバーできない低価格ゾーンをカバーしている。

土地有効活用事業(同 8.4%)

賃貸住宅等の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸アパートの収益が計上されている。建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力のある木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。飛び込みによる営業活動は行っておらず、金融機関や既契約者からの紹介、及びリピートを中心に案件を獲得。また、個人投資家向け一棟売賃貸アパートでは、1棟当たり1億円前後の賃貸アパートが中心。資金運用手段として根強い需要がある。

賃貸及び管理事業(同 11.2%)

100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、賃貸住宅の建築請負や個人投資家向け一棟売賃貸アパートの他、分譲マンションの販売等との相乗効果も高い事業。

注文住宅事業(同 0.9%)

市況の影響を受けにくい非不動産販売事業育成の一環として、戸建住宅の新築や建替えを請負うといった事業を行っている。会社の第5の柱として展開中。

(2)同社の強み
住まいのあらゆるニーズに対応できる住まいのトータルクリエーターであること

土地の仕入れ・許認可の取得・設計・建築・販売の一貫体勢を備えた戸建住宅事業で築き上げたノウハウを基盤に、中古住宅販売、土地有効活用、個人投資家向け賃貸アパート販売、賃貸及び管理の幅広い事業を、相乗効果を図りながら展開。地域密着型経営の特長を活かしながら各事業で独自のノウハウを蓄積し、優良な物件を適正な価格で提供するとともに、居住者が安心して、長く、豊かに暮らすことができるよう、きめ細やかなアフターサービスを提供。

市況にあわせて、注力事業を変化させる柔軟性の高い経営体質であること

市場の大きな変動によって、不動産販売は大きく影響を受けやすい。また、その時々の事業により、好不況の影響を受ける度合いが異なる。同社は、市況にあわせて注力する事業を柔軟に変更し、財務体質の強化を図ることによって、景気に左右されにくく、着実に利益を伸ばすことのできる経営体質を確立している。

自由設計やリフォームなど、顧客ニーズに積極的に対応し、売れる住まいを提供していること

市場リサーチの結果や購入後の評価を踏まえて、広くて厚い顧客層のニーズをとらえる不動産およびサービスを提供。近年関心の高まる住まいの「安全性」については、基礎や柱などの構造強化策を講じ、安心の住まいを提供。更に、外観・間取り・設備・庭づくりなど、顧客の希望に沿った自在な設計プランに対応する「わがまま自由設計」を販売している。また中古不動産市場においてはリフォーム付きマンションの販売を推進するなど、付加価値の高い街づくり・住まいづくりによって、販売戸数の増加、売上の増加につなげている。

2015年3月期第3四半期決算
前年同期比8.7%の減収、同38.6%の経常減益

売上高は前年同期比8.7%減の544億24百万円。前期末の高水準の受注残が寄与した土地有効活用セグメントなどが増加したものの、消費税増税前の駆け込み需要の反動減により新規分譲マンションの引渡しが減少した分譲住宅セグメントなどが減少した。中古住宅の仕入・販売が順調に推移したことなどにより、売上高は期初計画を上回った。一方、販売状況を示す受注契約高は、供給の抑制により新築分譲マンションが減少した分譲住宅セグメントで減少したものの、中古住宅の受注が増加した住宅流通セグメントや個人投資家向け一棟売賃貸アパートの販売が好調に推移した土地有効活用セグメントなどで増加し、同1.8%増加した。また、売上高の先行指標となる12月末の受契約残高も、中古住宅や個人投資家向け一棟売賃貸アパートの好調な販売を受けて、前年同月末比3.2%増加した。
経常利益は、前年同期比38.6%減の23億63百万円。新築分譲マンションが減少した分譲住宅セグメントや利益率の高い新築建売住宅が減少した住宅流通セグメントなどにおいて減少したものの、売上が増加した土地有効活用セグメントや賃貸及び管理セグメントにおいて増加した。売上総利益率は同0.7ポイント低下。売上が減少する中、販管費が前年同期比微増となったことから、営業利益は同38.5%減の24億19百万円となった。
15/3期第3四半期累計期間の業績は、売上・利益ともに期初の会社計画を大きく上回っている。

分譲住宅セグメントの売上高は前年同期比34.5%減の181億64百万円、セグメント利益は同67.0減の9億49百万円。売上及び利益の減少は、自由設計住宅と分譲マンションの減少が影響した。また、受注契約高は、自由設計住宅が今四半期累計439戸(前年同期は413戸)、分譲マンションが今四半期累計215戸(前年同期は347戸)となり、224億円33百万円と同9.6%減少。受注契約残高も同242億30百万円と同8.1%減少した。

住宅流通セグメント売上高は前年同期比1.9%減の185億92百万円、セグメント利益は同29.6%減の4億65百万円。売上及び利益の減少は、利益率の高い新築建売住宅の販売が減少したことが影響。中古住宅の仕入れが回復傾向となった中古住宅の受注契約戸数が993戸(前年同期は930戸)と増加し、住宅流通セグメントの受注契約高は189億39百万円と同4.1%増加。受注契約残高は中古住宅の増加が寄与し、27億89百万円と同12.9%増加した。

土地有効活用セグメントの売上高は前年同期比80.1%増の94億13百万円、セグメント利益も同85.3%増の9億75百万円。売上及び利益の増加は、前期末の高水準の受注残の案件引渡しが順調に進んだもの。個人投資家向け一棟売賃貸アパートの販売が好調に推移し、受注契約高は123億33百万円と同29.6%増。受注契約残高も個人投資家向け一棟売賃貸アパートが増加し139億14百万円と同30.7%増加した。

上記の他、賃貸及び管理事業セグメントは、土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加したことや中古住宅アセット事業による中古賃貸物件の増加により売上高が78億79百万と前年同期比9.9%増加し、セグメント利益も7億18万円と同47.0%増加した。また、立ち上げ期にある注文住宅事業は、売上高が3億74百万円と同27.5%減少したものの、前期に実施した集客効果が望めない住宅展示場の閉鎖整理による収益性の改善からセグメント利益は28百万円と同181.1%増加した。

2014年12月末の総資産は923億63百万円と前期末比65億円増加した。資産サイドではたな卸資産の増加51億66百万円や有形固定資産の増加16億14百万円が、負債サイドでは長期借入金の増加54億12百万円が主な増加要因。たな卸資産の主な内訳と金額は、販売用不動産193.5億円(前期末174.4億円)、仕掛販売用不動産170.2億円(同132.4億円)、開発用不動産348.5億円(同353.8億円)。有利子負債は74億08百万の増加。2014年12月末の自己資本比率は27.1%と前期末から1.2%の低下。

2015年3月期業績予想
前期比7.4%の減収、同24.0%の経常減益予想

15/3期の会社予想は、売上高が前期比7.4%減の800億円、経常利益が同24.0%減の43億円の期初予想を据え置き。15/3期第3四半期累計期間は、売上・利益ともに期初の会社計画を上回ったものの、消費税増税後の住宅需要の全般的な落ち込み傾向の継続や円安による建築資材の高騰などの影響を考慮している。
売上面では、2013年10月以降の消費税増税の駆け込み需要の反動により、戸建住宅の売上戸数が減少する見込み。また、マンション建築にかかる労務費・材料費の高騰により、適正利益の確保が困難となることから、マンション供給を大幅に抑制する計画となっている。一方、前期の受注水準が高かった土地有効活用セグメントは大幅に増加する見込み。
利益面でも、売上高が増加する土地有効活用セグメントが大幅な増益となるものの、売上高が減少する分譲住宅セグメントの減益幅が大きくなる予想。また、仕入単価上昇の影響を考慮し、住宅流通セグメントの利益率が悪化する計画となっている。
配当も、前期と同じ1株当たり年26円(上期末13円、期末13円)の期初予想から変更なし。

15/3期第3四半期累計期間は、期初の会社予想に対し、売上面、利益面ともに上回った。今第3四半期累計期間の連結売上高実績544億24百万円に、14/12月末の受注契約残高うち、当期売上予定の183億6百万円を加えた727億30百万円(通期目標の90.9%)がほぼ確実に今期の売上に計上される見込み。これに、今後大きなブレのない1月以降の賃貸及び管理の売上24億20百万円を加えた売上は、通期目標の93.9%となる。通期目標との差額である48億50百万円(通期目標の6.1%)は、1月以降の受注のうち今期売上に計上される予定の建売・中古住宅及び分譲マンションの販売額となる。
会社計画の達成に向け順調に推移しているものの、同社では消費税増税後の住宅需要の全般的な落ち込み傾向の継続や円安による建築資材の高騰などの影響を慎重にみている。

15/3期第3四半期の受注は、会社計画を若干下回ったものの概ね会社計画並みとなった。

今後の注目点
消費税増税の反動減の影響が残る厳しい環境下であったものの、同社の第3四半期累計期間の業績は、期初の会社計画に対し売上で11.1%、経常利益で27.7%上回る好調な決算となった。期初計画に対し中古住宅の仕入・販売や個人投資家向け一棟売賃貸アパートの販売が好調に推移したことが寄与した。また、販売状況を示す第3四半期累計期間の受注契約高も中古住宅や個人投資家向け一棟売賃貸アパートなどの受注増加が寄与し前年同期比1.8%増加した。売上高の先行指標となる12月末の受注契約残高も前年同月末比3.2%増加するなど、今後の業績回復を期待させる内容となった。中古住宅と個人投資家向け一棟売賃貸アパートの好調の陰で目立たないものの、第3四半期累計期間の自由設計住宅の受注契約高が増加に転じてきたことに注目すべきであろう。同社は今後新築分譲一戸建住宅の販売拡大を図るべく、前期の後半に優良なたな卸資産の積み増しを実施した。同社の今期受注は、これらの販売が本格化する年後半以降、大きく伸びる計画となっている。第3四半期に入り、新築分譲一戸建住宅の販売が増加してきているものと推測されるが、第4四半期において目標とする高水準の受注計画を達成できるのか、今後の新築分譲一戸建住宅の販売動向が注目される。
また、今回消費税増税が先送りとなる一方、2017年4月からの10%への増税がほぼ確実となった。これにより、8%への消費税増税で一時的に落ち込んだ国内景気に回復感が出てくることや、10%への引き上げ前に前倒しで住宅需要が喚起されることが予想され、同社の属する住宅業界も今後徐々に回復傾向が強まるものと期待される。こうした中、円安やマンション建築にかかる労務費・材料費の高騰にも一服感が出てきている。適正利潤の確保が困難となったとの判断により現在供給を大幅に抑制している分譲マンションであるが、供給拡大の時期が近づいているものと予想される。新築分譲マンションの供給拡大の動きにも引き続き注目していきたい。
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