(3667:東証1部) enish 2014年12月期業績レポート

2015/03/04

enish

今回のポイント
・14/12期は前期比2.6%の減収、同86.0%の経常減益。ブラウザゲームからネイティブゲームへのシフトを進めており、その端境期となった事で売上が減少。次期にリリースを予定しているタイトル(2015年タイトル)の開発費の増加や当期にリリースしたネイティブゲームの広告宣伝費が負担となり、営業利益が同86.6%減少した(同社は開発費を資産計上せず、発生した期に費用計上している)。・15/12期は前期比31.7%の増収、同98.3%の経常増益予想。2Qから3Qにかけて新規6タイトルのリリースを予定している。新規タイトルの寄与に加え、前期に投入したネイティブゲーム3タイトルのチューニングも一巡し売上高が85億円と同31.7%増加。次期リリース分も含めた新規タイトルの開発費を中心に増加する先行投資負担を吸収して営業利益が3億円と同101.1%増加する見込み。

・14/12期は厳しい決算となったが、同社は「ネイティブアプリの経験値を得たことは非常に大きい」と総括している。今後、この経験値がどのように活かされていくか注目されるが、先ずは、15/12期に計画通り6タイトルをリリースすると共に、業績予想を確実に達成する事が必要だ。それができれば、成長軌道への回帰が鮮明となり、来16/12期以降の展望が開けてくる。

会社概要

レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの開発会社。14年3月には実質的創業者である安徳孝平(アントク コウヘイ)氏が代表取締役社長に就任。ブラウザアプリの収益性を維持しつつ、ネイティブアプリでヒットを創出し、国内とアジアを中心にしたグローバル配信で業容拡大を図っていく考え。
尚、ネイティブアプリとは端末にダウンロードして楽しむアプリで、主にスマートフォン向けに提供されている。一方、ブラウザアプリはダウンロードせず、GREE、mixi、Mobage等のプラットフォームにアクセスしてブラウザ上で楽しむ。いずれも、アプリは無料だが、アプリを進める上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ブラウザアプリでは、ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。

【事業内容】

事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント(ゲームはアプリのカテゴリーの一つ)。ブラウザアプリを収益基盤にネイティブアプリを強化している。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等を購入すると課金が発生する。ブラウザアプリの場合、ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。また、ゲーム内で提携企業の広告を展開するO2O(Online to Offline)事業を育成中である(提携先企業は販売促進の一環として同社のゲームを活用)。

【沿革】
【主要タイトル】
【成長戦略】

ロングセラーとして安定した収益が期待できるブラウザゲームを収益基盤として、ネイティブゲーム、グローバル展開(アジア及び英語圏)、更にはO2O事業へと事業を拡大させていく考え。14/12期はネイティブゲーム3タイトルをリリースすると共に、採用・教育に力を入れネイティブゲームの開発体制を強化した。また、グローバル展開に向けた取り組みとして、韓国、中国、タイに拠点を設置して配信準備を進めた。
15/12期は海外での開発体制の強化・充実を図りつつ、アジア及び英語圏への展開を進める。また、16/12期以降のO2O事業の本格展開に向け、国内外でネイティブゲームユーザの組織化とその活性化にも取り組む。

14/12期はブラウザゲームからネイティブゲームへの端境期となった事で売上が減少する中、次期以降のリリース分を中心にしたネイティブゲームの開発費増や期中にリリースしたネイティブゲームの広告宣伝費等の先行投資が負担となった。上記要因分析の観点から言えば、開発費及び広告宣伝費等の先行投資負担により売上高当期純利益率が悪化し、売上の減少で総資産回転率も悪化した。一方、レバレッジの低下は未払法人税等の減少によるもの。同社は、流動性に富み、かつ、長期的な安定性にも優れた財務体質を有する(流動比率519.6%、固定比率25.5%、自己資本比率82.9%)。
尚、15/12期の業績が会社予想通りであれば、ROEは5~6%程度に回復するものと思われる。

2014年12月期決算
前期比2.6%の減収、同86.0%の経常減益

2月4日に業績予想を修正しており(売上高64億52百万円、営業・経常利益1億40百万円、当期純利益20百万円)、この修正予想に沿った着地となった。

ブラウザゲームからネイティブゲームへのシフトを進めており、14/12期はその端境期となった事で売上が64億52百万円と前期比2.6%減少した。ネイティブゲームについては、5タイトルの開発を完了し、うち3タイトルをリリース。一方、既存のブラウザゲームは、「ぼくのレストランⅡ」や「ガルショ☆」と言ったシミュレーションゲームが堅調に推移したものの、「ドラゴンタクティクス」(カードバトルゲーム)が大きく落ち込んだ他、「魁!!男塾」(同)も苦戦した。尚、足元では、「ドラゴンタクティクス」、「魁!!男塾」共に売上に底打ち感が出ている。

営業利益は同86.6%減の1億49百万円。2015年タイトル(15/12期リリース)の開発費等で原価率が78.9%と12.3ポイント上昇し、売上原価が50億92百万円と同15.5%増加。人員増強に伴う人件費の増加や期中にリリースしたネイティブゲームの広告宣伝費等で販管費も12億11百万円と同9.7%増加した。

第4四半期は開発費や広告宣伝費の増加で1億38百万円の経常損失

ネイティブゲームでは、第2四半期に「ぼくのレストラン3」及び「バハムートクライシス」を、第3四半期に「千年の巨神」を、それぞれリリース。いずれも想定通りの立ち上がりとなった。一方、ブラウザゲームは主要タイトルが第2四半期に落ち込んだが、その後の運用体制の再構築が成果をあげ、第3四半期以降、「ぼくのレストランⅡ」や「ガルショ☆」が前四半期比増収に転じ、「ドラゴンタクティクス」、「魁!!男塾」共に売上に底打ち感が出ている。

四半期売上高は第2四半期に落ち込んだものの、第3四半期には前四半期比で増収に転じ第4四半期は第3四半期比で3.7%の増収となったが、2015年タイトルにかかる開発費(労務費、外注費)の増加やブラウザゲームの回復による支払手数料の増加で売上原価が同8.9%増加。ネイティブゲーム「千年の巨神」を中心にした広告宣伝費の増加や海外展開関連での支払手数料の増加等で販管費も同66.1%増加した。

期末従業員数は195名(うち業務委託等17名)。内訳は、エンジニア26%、デザイナ35%、ディレクタ25%、管理等17%。ブラウザゲームからネイティブゲームへのシフトなど人員の効率的配置がほぼ完了した。引き続き、厳選しつつも、採用を継続していく考え。

法人税・消費税や配当の支払い等による現預金の減少で期末総資産は34億55百万円と前期末に比べて5億67百万円減少した。

2015年12月期業績予想
前期比31.7%の増収、同98.3%の経常増益

第2四半期後半から第3四半期前半にかけて(6月、7月、8月)、新規6タイトルのリリースを予定している。これら新規タイトルの寄与に加え、前期に投入したネイティブゲーム3タイトルのチューニングも一巡し、売上高が85億円と同31.7%増加する見込み。利益面では、新規タイトルの開発費を中心に先行投資負担が増加するものの、これを吸収して営業利益が3億円と同101.1%増加する見込み。海外でも「千年の巨神」を含む6タイトルのリリースを予定しているが、売上・利益共に業績予想には織り込んでいない。

尚、上期は新規タイトルの先行投資により営業損失となるものの、下期は新規タイトルが業績に寄与する事で損益が改善する。ブラウザゲーム、ネイティブゲームの比率は、上期90:10、下期40:60を想定している。また、広告宣伝費は1タイトル数千万円を予定しているが、CPA(Cost Per Acquisition:ユーザの獲得コスト)を見ながら機動的に投下していく。

(2)15/12期の基本戦略

既存タイトルを収益基盤として、新規ネイティブゲームの投入で売上・利益の上積みを図る。また、韓国で「千年の巨神」をリリースすると共に、中国、香港、台湾、タイ等で、拠点整備等、パブリッシングの準備を進める。

既存タイトル  収益基盤の維持
ブラウザゲーム

売上の漸減は止むを得ないものの、安定運用体制の下で減少を最小限に留める(主要4タイトルの前期第4四半期の合計売上高は第3四半期比で2%の減少にとどまった)。コストダウンを図りつつ、安定した運用を行っていくために、ブラウザゲームは提携先に運用を委託する(前期末までに移行作業がほぼ完了している)。もっとも、重要な機能は同社がコントロールする他、クオリティチェックや委託先と毎月のレビューも実施していく。

ネイティブゲーム

前期に得た経験値を活かすべく、引き続きチューニングに取り組んでいく。「千年の巨神」については、従来のコンピュータとの対戦に加え、ユーザ同士が対戦する「PvP(Player versus Player)」や「モンスタースキルスロットシステム」を追加する他、イベントの多様化等でコンテンツ消費のコントロール対策も実施していく。「ぼくのレストラン3」については、動作速度、イベントを含めたゲームボリュームを改善中で、期中に大幅なリニューアルを実施する。14/12期にi OS版を先行してリリースした「バハムートクライシス」は、2015年1月にAndroid版をリリースし、現在、PvP、GvG等の機能を追加してブラッシュアップを行っている。

「千年の巨神」の国内外での展開

前期にリリースした国内に加え、海外での展開も進めていく。国内では、より長期にわたって楽しめるゲームにするために、①メインストーリー等のコンテンツの継続的追加、②スキル育成システムの追加等による育成システム全体の改善、③PvP、RAID(他のユーザとチームを結成しての戦闘)、イベントなど育成したキャラクターの活用の場の創出、といった改善策を施す。
一方、海外では、この春に韓国でのリリースを予定している。

新規ネイティブタイトル

15/12期中のリリースに向け、現在、6タイトルの開発が進められている。内容は、男性向け(ミッドコア)4タイトル、女性向け(ライト)2タイトル。男性向けでは、個性溢れるキャラクターが戦うリアルタイム・タクティカルRPGとして、グローバル市場でメジャーなジャンルを狙ってデザインされた「Valiant Soul」、剣と魔法のファンタジー世界を描く、王道RPGとして、リアルタイム共闘や自由度の高いキャラメイク等、長期間にわたり楽しむ事ができる(やり込める)要素を満載した「Project 3」(仮)等を予定しており、女性向けでは、着せ替え機能等を備えたアバター系ファッションゲーム、農園系の育成シミュレーションゲームを予定している。

また、内製・共同開発タイトルとは別にパブリッシング事業も計画しており、第1弾として韓国メーカーの開発による作品で、「くにおくん」の世界を描く横スクロールアクションゲーム「熱血硬派くにおくん」(IPゲーム)を予定している。

パイプライン実行への取り組み

「社内のネイティブゲーム開発体制の整備」と「開発プロセスの効率化」に取り組んでいる。「社内のネイティブゲーム開発体制の整備」では、ブラウザの運営を外部に委託し人材をネイティブにシフトさせた事でネイティブ対応の人員比率が8割に達した。また、「開発プロセスの効率化」では、クオリティを担保しつつリリース遅延を回避するべく、開発の進行管理を行うプロジェクトマネジメントの専門職を各開発チームに設置した。進捗状況をモニタリングして、マイルストーンに沿った開発を主導していく。

取材メモ

今、同社は大きな転換期を迎えている。(株)インベストメントブリッジでは、決算説明会後に14/12期の反省と15/12期の展望について、高木和成執行役員管理本部長にお話を伺った。

【ネイティブゲーム3タイトルの開発と運用を通して得た貴重な経験値】

ブラウザゲームとネイティブゲームの違いは、素人目にはブラウザ(サーバ)上で動かすか、ダウンロードして端末上で動かすか、の違いであり、いずれも携帯端末等の通信機器で楽しむゲームに変わりない。しかし、「開発と運用の両面で、ブラウザゲームにない技術とノウハウが必要」と言う。

具体的には、「ブラウザゲームがサーバサイドの開発だけで済むのに対して、ネイティブゲームはサーバサイドと端末(クライアント)サイドの開発が必要となり、動作速度(ローディングの時間)やクライアントサイドのリソース(CPUへの負荷やメモリ消費)に配慮する必要がある」。このため、「機能を含めて細部にまでこだわって作り込むのはいいのだが、動作速度やクライアントサイドのリソース消費との微妙なバランスが崩れるとユーザに評価されない」と言う。
また、「ネイティブゲームのユーザは想定以上にゲームの消費速度が速い」と言う。このため、「ブラウザゲームの時のように、KPI(重要業績評価指標)の分析を踏まえてステージやイベントの追加をしていては間に合わず、リリース時にどこまで作りこめるかがポイントになる」ようだ。

ちなみに、ブラウザゲームの開発費が30~50百万円程度と言われているのに対して、ネイティブゲームは2億円程度と言われており、開発費は約5倍の差がある(同社にとって資金面での対応力は問題ではないが)。

【当面、残存者利益が享受できるブラウザゲーム市場だが、中期的にはネイティブゲームでの収益基盤の確立が必須】

「現状のブラウザゲーム市場は新たなタイトルの投入も少なく、一部のタイトルは残存者利益を享受している」と言う。ブラウザゲームのアバター機能(ネイティブゲームにはない)を評価する女性ユーザは多く、同社のシミュレーション系やアバター系のブラウザゲームが女性ユーザに根強い人気がある理由の一つにもなっているようだ。しかし、「ブラウザゲームはプラットフォームへの登録が必要等、ゲームを開始するに当たり手間もかかるため、新規のユーザはネイティブゲームに流れており、長期的には不透明感が強い」、「このため、事業の軸足をブラウザゲームからネイティブゲームへシフトさせる必要がある」と言う。

幸い、「ここにきてエンジニアなど技術者の流動化が進んでおり、ネイティブゲームの開発を始めた頃に比べると、優秀な技術者が採用しやすくなっている」と言う。元来、技術者は、自らの感性を大切にして、作りたいものを自由に作る事へのこだわりが強いが、ゲーム会社各社でネイティブゲームの開発環境の整備が進み、開発の場所を選択する余地が広がった事が要因のようだ。

取材を終えて  - (株)インベストメントブリッジの所感 -

苦労した14/12期ではあったが、同社はリリースしたネイティブゲーム3タイトルの開発と運用を通して貴重な経験値を得る事ができた。加えて、ブラウザゲームの新たな運用体制も含めて、開発・運用の両面で社内体制が整備された事と技術者の採用環境が改善した事で、ネイティブゲームの開発体制の整備・充実も進んだ(6ラインの開発体制を確立)。

ブラウザゲームで他社が真似できないロングセラーを有していた事と、ブラウザゲームからネイティブゲームへの市場の移行初期にIPO(株式新規公開)と言う大きなイベントが重なったため、ネイティブゲームへの対応で出遅れた面は否定できないが、IPOにより成長のための資金を取り込み、ここにきて開発・運用体制も整った。こうした中、現在のネイティブゲーム市場には同社が強みを有するシミュレーション系やアバター系のゲームで実績のある企業は見当たらない。反転攻勢のための好材料がそろってきたようだ。

ネイティブゲーム市場に足場を築き、シミュレーション系やアバター系のゲームで確実に収益をあげつつ、RPG系やバトル系で大きなヒットを狙う独自のビジネスモデルを確立できれば、同社の潜在成長力と市場での注目度が一段と高まるだろう。グローバル展開やO2O事業の進捗と共に注目していきたい。

今後の注目点
14/12期は厳しい決算となったが、①当面の収益基盤となるブラウザゲームの短期間での立て直しに成功、②ネイティブゲーム3タイトルのリリース、③海外配信及びパブリッシングの準備の進展、と個々の課題や取り組みにおいて一応の成果を残す事ができた。
その上で、同社は「ネイティブゲームの経験値を得たことは非常に大きい」と14/12期を総括している。今後、この経験値がどのように活かされていくか注目されるが、先ずは、15/12期に計画通り6タイトルをリリースすると共に、業績予想を確実に達成する事が必要だ。それができれば、成長軌道への回帰が鮮明となり、来16/12期以降の展望が開けてこよう。
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