(3034:東証1部) クオール 2015年3月期第3四半期業績レポート

2015/02/18

QOL

今回のポイント
・15/3期3Q(累計)は前年同期比13.3%の増収、同59.7%の営業増益。増収要因は前期下期以降の新店及び新規取得子会社の寄与や、LAWSON事業の好調で調剤事業の売上が同13.0%増加。CSO(Contract Sales Organization)事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)を牽引役に関連事業の売上も同16.1%と伸びた。増益要因は医薬品入札制度の実施、聖域なきコスト削減、ジェネリック医薬品の拡大、更には利益率の高い関連事業の収益拡大等が挙げられる。・通期予想は前期比11.7%の増収、同75.7%の営業増益。通期業績予想に変更はなかったが、進捗率は売上高75.5%、営業利益82.2%、経常利益82.5%、純利益91.6%と順調。収益性重視の観点から通期の出店計画は41店舗(LAWSON事業10店舗)にとどまるが、M&Aには機動的に対応していく考え。配当は1株当たり期末10円を予定(年18円)。

・同社の通期業績は、4Q(1-3月)に決定する医薬品の仕入価格の結果いかんで大きく変動する事があったが、本来の商習慣への回帰を目指す医薬品入札制度を導入した効果で、今期は大きな波乱なく着地できる見込み。売上・利益共に順調に進捗しており、特に利益面では上振れ期待もあるが、来期に向けた先行投資(CMR(Contract Medical Representative)の前倒し採用)を優先する可能性があろう。来期は一段の事業拡大が期待できよう。

会社概要

首都圏を中心に、調剤薬局を全国に展開。医療機関とのマンツーマン体制を基本とする事で調剤薬局間の無駄な顧客獲得競争を排除してきた。近年は面分業強化の観点から新業態店舗の開発にも取り組んでおり、現在、(株)ローソンとの資本業務提携による「コンビニエンスストア(以下、CVS:Convenience Store)併設型調剤薬局」(調剤薬局とCVSの融合)、家電量販店大手の(株)ビックカメラとの連携による出店、更にはJR西日本グループとの業務提携による駅ナカ調剤薬局「駅クオール薬局」といったプロジェクトが進行中。また、子会社を通してCSO事業、治験事業等の関連事業も手掛ける。
事業セグメントは、調剤事業と関連事業に分かれ、14/3期は調剤事業の売上が全体の90.4%を占めた。調剤事業はクオール(株)等が手掛ける調剤薬局の経営が中心だが、CVS併設型調剤薬局における物販の収益も含まれている。一方、関連事業は、アポプラスステーション(株)のCSO事業、クオールRD(株)の治験支援事業、メディカルクオール(株)の出版関連事業からなる。

【沿革】

1992年10月   創業 兜町に1号店を出店
2006年 4月   大阪証券取引所「ヘラクレス」(現JASDAQ)上場
2008年12月   ローソンと業務提携
2010年 6月   CVS併設店舗1号店(東京都港区城山トラストタワー)
2011年12月   東証2部上場
2012年 8月   JR西日本デイリーサービスネットと業務提携
2012年 8月   ローソンと資本提携
2012年10月   アポプラスステーションを子会社化
2012年12月   東証1部上場
2014年 7月   ココカラファインと業務提携

【流通改革】 - 収益力強化に向けた取り組み -

2014年3月、調剤薬局・ドラッグストア16社と共に、医薬品卸会社へ医薬品の競争入札を行う医薬品調達機構を立ち上げた。医薬品調達機構は、医薬品を5つのカテゴリーに分け、このうち新薬創出加算品、特許品、及び長期収載品の3カテゴリーについて、カテゴリー別に事前に各社へ購入予定価格を通知、その価格に対して一般競争入札を行う。残りの後発医薬品、エッセンシャルドラッグ(その国の保険医療に最低限必要な医薬品)は従来通り、各々が仕入先と交渉する。これまで同社はすべての医薬品を一括購入していたため、値引き率には限界があったが、15/3期より、先述の入札制度により、適正かつ公正な価格での交渉・妥結が可能となり、利益率の改善につながっている。

尚、一般的には調剤薬局が処方箋を1枚処理した場合、処方箋単価が調剤薬局の収入となり、処方箋単価の約25%が技術料で残り約75%が薬剤料として売上計上される。技術料は100%粗利となるが、薬剤料は医薬品の仕入原価を差し引いた残り(薬価差益)が粗利となる。

新しい市場を開拓するパイオニア(上席執行役員 山岸 匠氏 ブリッジサロン講演より)

2年前からMR・薬剤師・看護師等の派遣、医療用医薬品や特定保健用食品等の治験といった新規事業の育成に積極的に取り組んでいる。中村社長の方針として、新規事業は調剤事業の営業利益率(5%程度)を上回る事を条件としているため、育成中の事業はいずれも利益率が高い事が特徴。現在、新規事業で最も期待されているのが、アポプラスステーション(株)が手掛けるCSO事業を中心とした派遣事業である。同事業は一般的に営業利益率が15~20%と高い。派遣事業で利益を下支えしつつ、調剤事業でトップラインを伸ばしていく収益モデルが中期的なイメージだ。

当面の数値目標として、売上高3,000億円、営業利益240億円を掲げており、売上高3,000億円の内訳は、調剤事業が2,400億円、関連事業が600億円。調剤事業では、1,000店舗体制の構築を念頭にクオール薬局の新規出店に加え、M&Aや異業種との連携も積極的に進めていく。一方、関連事業の中核を担うのはCSO事業を中心とした派遣事業である。利益率の想定は、調剤事業5%、関連事業20%を想定しており、営業利益240億円の内訳は、それぞれ120億円ずつ。

クオール薬局の特徴

「処方箋は病院の近くで処理するもの」と言う固定観念が強いため、処方箋を受け取った患者が自ら薬局を選ぶ事は稀で、病院等の近くの薬局(門前薬局)を利用するケースが一般的であった。このため、調剤薬局は大病院など大手医療機関の門前に店舗を構え、好立地を活かした店舗運営を志向してきた。これに対して、同社は多くの医療機関と1対1の密接な関係(処方元医療機関の医師との強固な信頼関係)を構築するマンツーマン薬局と、幅広く処方箋を応需する面対応の店舗展開を志向してきた。
2010年以降は面対応強化の一環として異業種との連携にも力を入れており、2010年ローソンと提携し調剤薬局を併設したCVS運営を行っている他、駅前の好立地に店舗展開し高い集客力を誇るビックカメラとの連携や、JR西日本グループとの提携による駅構内での店舗展開を進めている(近年では利便性を重視して、自宅の近くや買い物のついで、或いは通勤・通学の途中で薬局を利用するケースが増えているため、面対応戦略に追い風が吹いていると言える)。

【調剤市場の動向】 - 安定成長市場。調剤大手にはシェアアップのチャンスも -

調剤薬局は全国に約5万7千件あり、CVSとほぼ同数。同社が創業した1992年には14%程度だった医薬分業比率は、現在、約70%にまで高まっている。
院外処方箋の増加と高齢化で調剤市場は年率3%~8%の成長が続いており、現在の市場は約7兆円。しかし、大手チェーン薬局10社の売上高は約7,000億円にとどまり、シェアは約10%(業界トップ約2.5%、クオール約1.5%)。大きなシェアを有するマーケットリーダーは存在しない。しかし、医療費の抑制に取り組む国策の下、薬価・調剤報酬の改定や消費税率の引き上げ(消費税は患者に転嫁できない)で中小薬局の経営は圧迫され、M&Aが活発化している。このため、今後、大手チェーン薬局による寡占が進んでいくとみられている(分業率が100%に達した場合の市場規模は推定で約10兆円超。寡占化が進み大手チェーン薬局のシェアが過半を超えると予想されている)。

【クオールの戦略】
(1)能動的に選択される調剤薬局へ

患者は、自分にあった医療機関を能動的に選択するが、調剤薬局については、医療機関の近隣等で受動的に選択している。このため同社は“能動的に選択される調剤薬局”となるべく、出店、クオールカード、処方せん送信アプリ、更には薬剤師の質の向上と薬局の機能強化等、様々な取り組みを進めている。

出店については、LAWSON(CVS)、ビックカメラ(家電量販店)、JR西日本グループ(鉄道)、といった知名度の高い異業種企業との連携を進め、多様なチャネルによる利便性の向上を図っている。また、処方箋と一緒に提示する事で患者の過去の処方情報等が照会できるクオールカードが会員の囲い込みに一役買っている他(会員数は2015年1月末現在112.3万人)、スマートフォン用の「処方せん送信アプリ」も好評だ。「処方せん送信アプリ」とは、患者が処方箋をスマートフォンのカメラで撮影し、同社の薬局にメール送信できるアプリケーション。患者は会社帰りや買物の途中等、都合のよい時間に薬を受け取る事ができるため、薬局での待ち時間の短縮が可能(患者の利便性向上)。門前から面への流れを後押しする効果やクオールカードとの相乗効果も期待されている。「処方せん送信アプリ」への対応は、2013年10月のビックカメラ内のクオール薬局4店舗(有楽町店、新宿東口店、名古屋駅西店、札幌店)を皮切りに、同年11月にはナチュラルローソンクオール薬局4店舗、駅クオール薬局JR大阪店等へ広がり、その後、CVS併設型調剤薬局やクオール薬局の一部店舗に拡大。2015年2月現在、全国170店舗にネットワークが広がり、将来は全店舗に拡大する可能性。

処方箋の電子化に商機!  - 処方箋の流れに変化が -

処方箋の電子化に向けた動きが本格化しており、早ければ2015年中に始動する見込みだ。紙媒体の処方箋の場合、医療機関の近くにある門前薬局を選択するケースがほとんどだが、電子処方箋になると利便性で薬局を選ぶ傾向が高まるとみられている。言い換えると、調剤薬局は利便性の高さで選ばれる時代を迎えつつある訳で、異業種との連携やIT戦略で他社に先駆けて利便性向上に必要な面展開を進めてきた同社は大きなアドバンテージを有すると言える。現在、移動体通信キャリア大手とクオールカードや処方せん送信アプリの機能を一体化したスマートフォン用アプリの開発も進めており、準備万端整えて処方箋の電子化を迎える考え。

(2)高度先進医療への対応等、質の高い薬剤師の育成  - クオール認定薬剤師制度2,592名取得 -

高度先進医療の進展によって、外来での抗がん剤治療等も年々増加しており、調剤薬局にも高い専門性を持った薬剤師が求められている。このため、同社では、疾患別に病態から治療までを学ぶ「QOL(クオール)認定薬剤師制度」を設け、高度な専門知識を持った薬剤師の育成に力を入れている。2013年度にはがん認定薬剤師制度を開始し(50名が認定を受けた)、2014年度からは「認知症認定薬剤師」も新設された。求められる医療ニーズに応じて専門性の高い薬剤師を育成する事で競合他社との差別化を図っていく考えだ。

(3)社会貢献活動

収益拡大(経済的価値の追求)とバランスを取りつつ、社会的価値の追及にも取り組んでいく考え。この一環として、スチューデント・シティやメイク・ア・ウィシュ オブ ジャパンへの賛同、エコキャップ収集活動、ベルマークの収集・寄付、更には薬物乱用防止教室の実施といった取り組みを進めている。

スチューデント・シティへの賛同

小学生向け体験型経済教育プログラム「スチューデント・シティ」に参加し、実在の「調剤薬局」を模したブースを出店している。ブースでは、子供達が実際の薬局と同じような業務を疑似体験する事で、共存社会の意味や市民としての自覚等を身をもって学習する事ができる。
尚、「スチューデント・シティ」とは、学校の中に「街」を再現して、子どもたち(小学校五年生)がそこでの体験を通じて社会と自分との関わり、経済の仕組み、お金とは何か、仕事とは何か等の社会的自立力を育む事を目的としており、公益社団法人ジュニア・アチーブメント日本が中心となり、進められている(公益社団法人ジュニア・アチーブメント日本Webサイトより)。

メイク・ア・ウィシュ オブ ジャパンへの賛同

「メイク・ア・ウィッシュ」とは難病の子供達に生きる力や病気と闘う勇気をもってもらおうと1980年に米国で生まれたボランティア団体。日本では1992年に設立され、これまで多くの子ども達の夢をかなえてきた。同社は、この主旨に賛同し、社内や薬局内への募金箱の設置、オリジナルグッズの購入、各種イベントへの参加等、グループをあげて「メイク・ア・ウィッシュ」の活動を支援している。

エコキャップ収集活動

エコキャップ収集活動とは、“ペットボトルのキャップをはずして集め「再資源化」し、焼却処分によって生じる「CO2の削減」、キャップの再資源化で得た売却益をもって「発展途上国の子どもたちにワクチンを贈る」” と言う3つのテーマをシンボルフレーズとした活動(エコキャップ推進協会Webサイトより抜粋)。同社は、これまでに500万個を超えるキャップを寄付しており、ワクチンにすると約5,800名分、CO2の削減量では約36,000kgになる(2014年2月現在)。

ベルマークの収集・寄付

各店舗・事務所に設置箱を設けベルマークを収集している。患者の協力も得る等で、集まったベルマークはそれぞれの店舗が近隣の小学校等に寄付しており、地域社会に貢献している。2008年から2012年までの約5年間で150,314点の寄付を行った。

薬物乱用防止教室

薬物乱用防止教室では、未成年の飲酒・喫煙の害、シンナーや違法ドラッグは、「法律に禁止されているからダメ」というのではなく、「それはどれだけ身体に悪い影響を及ぼすか」という薬学的根拠を持った内容を、分かりやすく噛み砕いて説明する。これは全国各地の小中学校で同社の薬剤師が行っている学校薬剤師としての活動の一環であり、今後も地域住民・地域の子供達のために、正しい薬の知識や健康に関する情報を積極的に伝えていく考え。

2015年3月期第3四半期決算
前年同期比13.3%の増収、同59.7%の営業増益

売上高は前年同期比13.3%増の851億99百万円。前期下期以降の新店及び新規取得子会社の寄与や、第三世代となるヘルスケアCVSによる店舗展開を進めるLAWSON事業の好調で調剤事業の売上が同13.0%増加。CSO事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)を牽引役に関連事業の売上も同16.1%増加した。

営業利益は同59.7%増の30億42百万円。2014年4月に実施された薬価・調剤報酬改定の影響や消費税の負担増に加え、調剤事業における新卒123名の入社及びM&Aによる人員増やアポプラスステーション(株)のCMR増員等で人件費が増加したものの、医薬品の入札制度の実施、聖域なきコスト削減、ジェネリック医薬品の推進、更には収益性の高い関連事業の拡大等、様々な取り組みが成果をあげた。

第3四半期末の従業員数は正社員3,474人(前期末3,301人)、臨時雇用者1,760人(同1,528人)。正社員に含まれる薬剤師1,497人(同1,431人)。

尚、前期までは医薬品の仕入価格交渉の妥結が第4四半期だったため、第3四半期までは想定した薬価差益を基に利益を算出していたが、流通改革に取り組んだ事で今期は第2四半期に通期の医薬品仕入価格交渉が妥結した。

調剤事業

売上高769億06百万円(前年同期比13.0%増)、営業利益31億58百万円(同24.7%増加)。処方箋応需枚数が前年同期比14.4%増加、処方箋単価は薬価改定やジェネリック医薬品を積極的に推進した影響により同0.5%減少したが、調剤売上高(薬剤料+技術料)は685億14百万円と同13.8%増加した。

第3四半期末のグループ店舗数は直営店530店舗(前年同期末482店舗)、フランチャイズ店2店舗(同1店舗)の計532店舗(同483店舗)。新規出店15店舗(前期31店舗)及び子会社化による取得10店舗(同29店舗)の計25店舗(前年同期末は事業譲受による取得3店舗を含め63店舗)の出店を行う一方、売店9店舗を含む13店舗(同18店舗)を閉店した。新規出店では、ジェネリック医薬品の推進やセルフメディケーション等の取り組み強化を念頭に、ドラッグストア機能を持ち合せたヘルスケアCVS併設型店舗「ローソンクオール薬局港北新横浜二丁目店」を出店した他、JR西日本グループとの提携第2弾・第3弾となる「駅クオール薬局JR新大阪店」と「駅クオール薬局JR尼崎店」等を出店した。

関連事業

CSO事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)の寄与で、売上高が82億92百万円と前年同期比16.1%増加し、営業利益が6億22百万円と同5.4倍に拡大した。

第3四半期末の総資産は業容の拡大を背景に612億93百万円と前期末に比べて73億89百万円増加した。借方では、売上債権、無形固定資産(のれんが31億84百万円増加)等が増加。貸方では、資金需要に対応するべく長期借入金を積み増した。流動比率103.9%(前期末94.8%)、固定比率165.4%(同175.2%)、自己資本比率32.4%(同31.6%)。

2015年3月期業績予想
通期業績予想に変更はなく、前期比11.7%の増収、同75.7%の営業増益

通期業績予想に変更はなかったが、進捗率は売上高75.5%、営業利益82.2%、経常利益82.5%、純利益91.6%と順調。収益性重視の観点から通期の出店計画は41店舗(LAWSON事業10店舗)にとどまるが、M&Aには機動的に対応していく考え。配当は1株当たり期末10円を予定(年18円)。

今後の注目点
これまで同社の通期業績は、医薬品の仕入価格交渉の長期化とその結果いかんで大きく変動する事があったが、本来の商習慣への回帰を目指す医薬品入札制度を導入した効果で、今期は大きな波乱なく着地できる見込み。売上・利益共に順調に進捗しており、特に利益面では上振れ期待もあるが、来期に向けた先行投資(CMRの前倒し採用)を優先する可能性が高い。CMRの増員で来期も引き続きCSO事業の好調が続くものと思われる。また、調剤事業の見通しも明るい。なぜなら、コンシューマーの生活動向の変化と認知度の向上を背景に調剤薬局が利便性の高さで選ばれる時代を迎えつつあるからだ。異業種との連携とIT戦略で他社に先駆けて利便性向上に必要な面展開を進めてきた同社はアドバンテージを有する。
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