(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ 2015年3月期第2四半期業績レポート

2014/12/17

SANGETSU

今回のポイント
・壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など商品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。中期経営計画において資本コストを上回るROEの早期実現を掲げる。・15/3期2Qの売上高は前年同期比4.4%増の639億円。営業強化や新見本帳の発行、リフォーム・非住宅分野への注力などが奏功。セグメント別でも全セグメントで増収。販売価格改定で売上総利益も増加したが、構造改革及び基盤整備費用や給与改定により販管費が同7.5%増加し、営業利益は同4.4%減少。

・15/3期通期売上高は前期比0.8%増の1,330億円を計画。消費税増税の駆け込み需要の反動で今下期は減収となるが通期では若干の増収を見込んでいる。上期と同様に、事業基盤整備施策に基づく事務所や物流設備の新設、改修など販管費を積み増すため営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ同18.5%、18.7%、19.4%減少。配当は前期と同じく75.00円/株の予定。予想配当性向は64.9%。

・2014年を「第3の創業」と位置付け、新しいステージに立つ同社の今後のビジョンや方向性を示すため、「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」を策定した。目標を「事業体制の再整備と強化を進め、将来の成長のための仕込みを行い、サンゲツの次のステージを切り拓く3年間」としている。

・今後は安全性と収益の拡大に加え、バランスシートの効率化や資本コストを意識した経営への転換が必要と考え、資本コストを上回るROEの早期実現に向けた資本政策を実施することを発表した。3年間の連結総還元性向を平均100%以上、3~5年間で自己資本の100億円~200億円の圧縮、機動的な自己株式の取得及び増配の検討・実行を掲げる。

・今回発表した資本政策は、大きな反響を呼んだようだが、本文中でも触れたように、ROE8~10%を実現するためには資本政策に加えて、マージン(売上高当期純利益率)の改善も必要になると思われる。そうした意味で、事業基盤の整備と共に、リフォーム(住宅/非住宅)分野での拡販、非住宅分野向け商品の強化を中心とした既存事業の着実な強化が最も重要となるだろう。「中期経営計画 Next Stage Plan G」の進捗を引き続き注目していきたい。

会社概要

壁紙、カーペット、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。中期経営計画において資本コストを上回るROEの早期実現を掲げる。

【沿革】

1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社サンゲツとして株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。

【会社理念など】

社是「誠実」を掲げ、以下の「サンゲツ三則」をモットーに、インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与する事を理念としている。

【市場環境】
◎概観

同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。

一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。
同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数はリーマンショック前の水準にまで達していないのに対し、同社売上高は2000年頃の水準にまで回復している。

これは、民間住宅以外に、非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。

国土交通省発表の建設投資の推移によれば、民間住宅投資に比べ、民間非住宅建築投資は、金額は民間住宅投資よりも低いものの、2000年レベル近辺まで上昇している。また、新設の事務所および店舗の床面積も15,000千m2に近づくところまで回復している。
また、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2014年10月22日発表)によれば、民間非住宅建築投資の対前年度伸び率は2013年度の11.1%増(見込み)に次ぎ、2014年度(見通し)7.6%増、2015年度(見通し)2.4%増と、緩やかな回復傾向が続くと予想されている。

少子高齢化・人口減少の進行で住宅着工戸数は長期的には減少傾向にあり厳しい状況であろうが、2020年の東京オリンピックを控え、民間非住宅市場の開拓に関しては良好な市場環境が当面は続くものと考えられる。

◎同業他社

インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の3社が上げられる。

営業利益率は4社中最高である一方、ROEは4社中3番目となっている。PBRが1倍を下回る要因の一つでもあり、中期経営計画で示したROE改善策の進捗に注目したい。

【事業内容】

壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。

①「インテリア事業」
(2014年3月期 売上高 113,181百万円、営業利益 8,842百万円)

商品数は約13,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約5,000点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見品帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で50~55%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。
商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。

◎営業体制

名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、55か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として6か所のショールームを有している。

最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。

そのため、同社では見本帳、TVCM、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約400名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。

主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。

◎物流体制

全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・九州はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.13%(約70点程度)となっている。
内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。
仕入先は約100社と広範囲に亘っている。

②「エクステリア事業」
(2014年3月期 売上高 15,018百万円、営業利益 556百万円)

2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。

③「照明事業」
(2014年3月期 売上高 3,820百万円、営業損失 435百万円)

2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。

2014年3月期のROEは4.6%と東証1部および卸売業界の平均を大きく下回った水準にとどまっている。
後述のように中期経営計画に基づく資本政策を発表し、「資本コストを上回るROEの早期実現と、中長期的にはより高いROE水準(8~10%)の達成を目指す。」と述べている。
具体的には、「2014年度下期より最短3年間、最長5年間で自己資本の金額を2014年3月末比で100億円~200億円の圧縮を目指す。」ということであるが、2017~2019年度の目標としているROE 8~10%を達成するためには、資本政策の実施と同時に、売上高当期純利益率の一段の向上も必要となるだろう。

特徴と強み
①安定した収益を生み出すビジネスモデル

同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。
また、商品数13,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。

②各種商品で高いシェア

業界最大手の同社は主力商品で以下の様な高いシェアを有している。

③「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」

同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。
先々代の社長時代からサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約20名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。
商品ラインアップは他社には例を見ない約13,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する28種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。

「届ける」

先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
1ロール50mの壁紙があり、30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。

「提案する」

同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約400名で、業界最大である。
全国63拠点で前述のような、提案営業を展開している。
6か所のショールームには64名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが51名おり、その提案力も業界最高水準となっている。

2015年3月期第2四半期決算概要
営業強化で増収も販管費増で減益。

売上高は前年同期比4.4%増の639億円。設計・施主への営業強化や新見本帳の発行、リフォーム・非住宅分野への注力などでインテリア事業の全エレメント(壁紙・床材・カーテンなど商材種別)で増収だった。セグメント別でも全セグメント増収。
原油高騰による仕入れ価格上昇を受け販売価格の改定を実施したことにより、売上総利益は同4.7%増加したが、構造改革及び基盤整備費用や給与改定により販管費が同7.5%増加したため営業利益は同4.4%減少した。社員寮などの保有不動産売却を前提とした減損損失や固定資産除却損により四半期純利益は同19.9%の減少となった。

ただ売上増および売上総利益率改善が予想を上回ったため、利益も期初計画を上回った。
組織体制強化のための人件費増、取引増に伴う物流費や見本帳発刊費用、国内外の出張費用の増加など構造的要因によるコスト増7.5億円に対し、特別報奨金、組織体制構築に伴う準備費用、事務所・物流設備の改装・修繕、ITシステムの再構築費用、減損損失など一時的要因によるコスト増は11.1億円であり、構造的要因によるコスト増のみであれば、前期並みの利益であった。

<壁装材>
収益性改善に向け、低価格の量産品より中級価格帯の一般品への転換促進を提案するTVCMを放映した。また、これに合わせて、新たな主力見本帳を発刊した。新設住宅着工戸数の落ち込みなどで数量が減少する環境ではあったが、値上げを実行し、増収を達成するとともに市場シェアも堅持することができた。原材料費などの高騰により低下していた利益率は7月以降改善傾向にある。

<床材>
住宅・事務所・商業・教育・医療・介護など様々な施設で幅広い分野に使用される床材の営業活動強化のため、営業体制見直しを実施した。また、これに合わせ、2つの主力見本帳を発刊した。増収達成とともに、新見本帳での価格政策の見直しと一部商品の2014年9月1日からの値上げにより、利益率も改善した。

<カーテン>
見本帳戦略・商品開発・プロモーション展開を抜本的に見直し、営業との連携を拡大することにより、商品提案力を強化した。2013年10月に発刊した見本帳の価格政策の見直しにより、売上も拡大した。半期ベースでは価格体系を改めた2002年9月以来の大幅増となった。

<販管費>
取引拡大と新規物流設備の稼働開始に伴い物流費が増加したほか、中期経営計画に沿って、事務所・物流設備の見直しを実行し、修繕・改善費用が増加した。人材強化のため、人件費・研修費を増額した。

②エクステリア事業

主力分野であるフェンスに加えて、カーポートやサンルーム分野の売上が前年同期に比べ増加した。2013年に立ち上げた自社ブランドにエクステリア分野の新商品をラインアップした。関東地区での事業展開の新たな足掛かりとして横浜支店を開設した。関東地区での売上は前年同期比1.4倍と着実に拡大している。

③照明事業

安定的収益基盤の確立が課題であるため各種施策を実施した。経営ガバナンスの改善、社員のモチベーション向上に取り組むと同時に、商品数の削減を進め、在庫管理を強化した。事業対象を「非住宅」と明確にした上で、更に注力すべき分野、商品の絞り込みを進めている。売上総利益拡大と2014年2月の積雪被害に対する保険金受け取りにより黒字に転換した。

現預金、有価証券、たな卸資産の増加などで流動資産は前期末に比べ90億円増加。一方、投資有価証券の減少で投資その他の資産が同100億円減少し、固定資産は同106億円減少。資産合計は同15億円減少して1,443億33百万円となった。
仕入債務の減少等で、流動負債が同33億円減少し、負債合計も同28億円減少し、231億86百万円となった。
純資産は利益剰余金増加で同12億円増加し、1,211億47百万円。
自己資本比率は前期末に比べ1.7%上昇の83.9%となった。

営業CFは利益の減少、たな卸資産の増加などによりプラス幅が減少。投資CFは投資有価証券取得の減少等でプラスに転じた。フリーCFはプラス幅が拡大した。
財務CFおよびキャッシュポジションは前年同期と大きな変化は無かった。

2015年3月期業績見通し
業績予想を上方修正。増収・減益の見込み

前述の通り上期の売上高は非住宅分野の伸長などから期初予想を上回った。下半期は厳しい状況が予想されるものの、通期売上高は期初予想を上回る見込みであり、利益面についても、事業体制の再整備に伴う販売管理費の増加、減損損失の計上などの減益要因があるものの、売上高の増収見込みにより、営業利益、経常利益は期初予想を上回る見込みであるため、業績を上方修正した。

通期売上高は前期比0.8%増の1,330億円。前下期にあった消費税増税の駆け込み需要の反動で今下期は減収となるが通期では若干の増収を見込んでいる。上期と同様に、事業基盤整備施策に基づく事務所や物流設備の改善のための本格的な費用や、中期経営計画に基づく種々のコンサルフィーや新見本帳発刊に伴うコストなど販管費を積み増すため営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ同18.5%、18.7%、19.4%減少する。
配当は前期と同じく75.00円/株の予定。予想配当性向は64.9%。

各セグメントとも売上高は前期実績を上回る。インテリア事業では、顧客・需要分野・商品に応じ、よりきめ細かな営業手法や商品開発を行い、収益の改善、シェアの維持を図る。山田照明の安定・継続的な収益基盤の確立、サングリーンの関東地区での事業拡大を着実に実行する。

中期経営計画 Next Stage Plan G

2014年を「第3の創業」と位置付け、新しいステージに立つ同社の今後のビジョンや方向性を示すため、「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」を策定した。
同計画の目標を、「事業体制の再整備と強化を進め、将来の成長のための仕込みを行い、サンゲツの次のステージを切り拓く3年間」としている。

これに加え、「4)創業以来の理念・社是・考えの継承」の4つを具体的な施策として掲げ進めて行く。

3)ステークホルダーの評価向上

これまで同社は、継続的な企業価値向上が株主への利益貢献の基本であるとの認識のもと、安定的な配当を継続的に実施してきた。(過去5年間合計の配当性向実績は70%を超えている。)
また、売上高、収益性などを重視し、バランスシートについては安全性を優先した経営を行ってきた。
しかし、昨今の国内資本市場の流れを鑑み、今後は安全性と収益の拡大に加え、バランスシートの効率化や資本コストを意識した経営への転換が必要と認識しており、以下のような資本政策を実施することを2014年11月7日に発表した。

中期的成長のための投資はもちろん必要で、また景気変動に対応した体力を温存しておく必要もあるが、ここ数年内で大規模なM&A等、大型投資を行う可能性は低いと考えている。また、規模の拡大や収益性を高めるために現在のファブレス経営から「製造部門」の保有へ転換する事も長期的にはあり得るが、その場合でも、ここ数年間はマイノリティ出資やパートナーシップ強化など、実力を蓄える時期であり、その意味でも多額の手元資金は不要であるため、株主への還元を積極化する事とした。
ただ、株価のボラティリティを上げることは同社にとっても株主にとっても利益が無いので、一時的ではなく「継続的な株主還元」が重要であるとの考えから期間を最短3年間、最長5年間と設定した。

将来の成長のための基盤整備に先行投資を行いつつ、史上最高益の更新を目指す。

インテリアは、既存事業においてリニューアルや大規模改修、病院や介護関連施設への注力を進めると共に、高付加価値商品へのシフトやカーテン事業の売上回復を見込んでいる。
新規事業や海外事業は仕込みの時期であるため、販管費のみを見込んでいる。
エクステリア事業は限定的な拡大を前提としており、照明事業は安定的な事業基盤の確立を優先するステージであり、収益の拡大は見込んでいない。

◎2017~2019年度 目標
この中期経営計画をベースに、次の中期経営計画の最終2020年3月期には、「新規事業・海外事業・連結会社での本格的な収益の実現」、「インテリア事業収益の着実な拡大」、「新たな資本政策の導入」により、「ROE 8~10%の達成」を目標としている。

安田正介社長に聞く

安田社長は1950年3月生まれで現在64才。一橋大学経済学部卒業後、三菱商事株式会社に入社。2004年4月に就任した執行役員機能化学品本部長時にサンゲツが取引先となった。その後、三菱商事(株)の常務執行役員を経て、2012年6月に(株)サンゲツ社外取締役就任。2014年6月、同社初の創業家以外の代表取締役社長に就任した。
安田社長に、社長就任の背景・ミッション、中期経営計画のポイント、企業理念の浸透・継承のための取組みなどを聞いた。

<社長就任の背景と社長のミッション>
1953年の株式会社化以来、創業家4人のリーダーシップで運営されてきた同社だが、創業家メンバーの高齢化も進み、また時代も大きく変化する中、「サンゲツが生き残るためには変わらなければならない。」という現会長らの危機意識から社長を託された。
経営トップのリーダーシップはもちろん重要だが、一方で私は「社員一人一人の現場に経営がある。」と考えている。
そう考える私のミッションとは、中期経営計画「Next Stage Plan G」で、「社員が経営を担う真の上場企業として発展を目指す。」と掲げているように、社員の意識改革を進め、社員がより責任を自覚し仕事に取り組む会社に発展させる事だ。また従業員を含めた全てのステークホルダーとの関係性を重視しサンゲツを新しいステージで成長する会社に作り上げていく。
当社の社員については、前職時代からある程度知っていたが、社長に就任して各部署の社員と様々な対話をしてみると、「非常に真面目」というのが一番の感想。仕事に対する熱意も非常に高いものがある。
ただ一方で真面目さの裏返しで、言葉は悪いが「生意気さ」が無い。要求されたことはきっちりこなすが、言われなくてもやるとか、言われた以上の事をやってしまうとか、良い意味でのずるさ、奇想天外な破天荒さといった、ビジネスの現場ではある程度必要なそうした側面をもっと持って欲しいと感じている。
<中期経営計画について>
「社員が経営を担う体制作り」を進める上で社員のレベルアップは欠かせない。社員の意欲を向上させるような人事制度導入の準備を進めている。
インテリア事業は床面積の大きな「非住宅市場」の攻略を引き続き進める。また、「賃貸・リフォーム市場」も、比較的高価な壁紙が使用される事、2~3年で張替が行われること等から重要な市場であるため営業を強化していきたい。
エクステリア事業はM&Aによる「エリア拡大」及び「取扱い商品数拡大」の効果は出ているが、まだシナジーが不明確なので更に知恵を絞る必要がある。照明事業も固定費をカバーするところまでトップラインが伸ばせず苦戦しているが、インテリアとのシナジーは明確かつ大きい。現に羽田空港の新ターミナルにおいて共同提案の結果、床材はサンゲツ、照明は山田照明が受注することができた。ターゲットを特注住宅や非住宅に絞り込んでこうした共同受注を進めて行く。
海外事業展開の基盤作りはこの中期経営計画の大きな柱。日本の内装材の競争力は高く、利益率は国内より高いため、大きな拡大余地がある。現在まだ4億円程度しかない海外売上を将来的には50億円程度まで引き上げたい。
そのためには「ブランド」構築が課題だ。現在の事業は顧客からの発注を受ける単なる受注ビジネスであり、ブランド構築という観点からの戦略は不在。7月に設立した海外事業部の下、ビジネスモデルを含めたブランド戦略を立案、推進する。時間はかかると思うが着実に進めて行く。
対象市場は現在検討中。
今回の資本政策の転換は、決して現在の株主だけでなく、今後当社株式に投資してくれる株主からの評価も高めたいと考えてのものなので、継続的に還元を行う事を最も重視した。
<企業理念の継承・浸透について>
中期経営計画で触れている「社是:誠実」、「サンゲツ三則」は創業家メンバーが語り継いできた当社の大事な理念。この考え方を今後も継承・浸透させていく。
ただ、これまではトップの指示が細か過ぎ、社員が受け身になってしまうという傾向もあったと思う。
こうした理念やビジョンはやはり社員一人一人が成功や失敗を経験した上で身に付いていくもの。社員自らが主人公になってビジネスに取り組んでいきやすい環境を作ることが経営者として重要だと考えている。
社長に就任して約半年だが、「サンゲツは変わらなければならない」という想いは様々な機会を通じて社員に伝えている。
また、社員同士のコミュニケーションをより円滑にするため、「コミュニケーション支援制度」を新設した。これは、他部署との情報交換やコミュニケーションを図るための飲食であれば会社が一定程度金銭支援するというもの。担当役員が同席する機会も多く、上下・横の意思疎通を図ることができている。
<投資家へのメッセージ>
当社はインテリア業界最大手企業ということで、この業界の中で安定した存在であるため、ビジネス以外に外部との係わりを深める必要も少なく、積極的な対話をしてこなかった。
ただ一方でインテリア業界は、発言力が小さく、発信力も弱い業界であり、今後当社を更に発展・成長させるためには、こうした状況を変革し、外部の様々なステークホルダーと対話を進めて理解を深めてもらうのと同時に、彼らの期待に応えなければならないと考えている。
また、当社の大きな強みであるビジネスモデルを更に磨き上げるためには、株主との対話を今後はよりしっかりと進めて行かなければならない。
中長期的な時間軸で安定したリターンの向上を株主に提供するような施策を実施していくので、是非当社に対する理解を深め、応援していただきたい。
今後の注目点
今回発表した資本政策は、大きな反響を呼んだようだが、本文中でも触れたように、ROE8~10%を実現するためには資本政策に加えて、マージン(売上高当期純利益率)の改善も必要になると思われる。
そうした意味で、新規事業や海外事業も期待したいが、やはり時間軸から見れば、事業基盤の整備と共に、リフォーム(住宅/非住宅)分野での拡販、非住宅分野向け商品の強化を中心とした既存事業の着実な強化が重要となるだろう。「中期経営計画 Next Stage Plan G」の進捗を引き続き注目していきたい。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
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