(8912:東証2部) エリアクエスト 2015年6月期第1四半期業績レポート

2014/12/10

AreaQuest

今回のポイント
・テナント誘致力、問題解決力、そしてビル管理能力の三拍子揃ったPM(プロパティマネジメント:不動産の維持・管理を行う業務) サービスを提供。「テナントの繁栄なくして、ビルの繁栄なし」と言う清原社長の方針の下、借主・貸主の双方へ徹底サービス。サブリース(物件を借り上げて転貸)やビル管理・メンテナンス等のストック収入型ビジネスをけん引役に業績拡大が続いている。サブリースはキャッシュ・フローの改善にも寄与し、実質無借金。11月1日付けで東証2部に市場変更となった。

・15/6期1Q(7-9月)は前年同期比28.6%の増収、同63.9%の経常増益。都心主要駅の駅前一等地にターゲットを絞ったサブリースをけん引役に売上高が増加。営業部門の強化等で人件費を中心に販管費が増加したものの、売上の増加で吸収。営業利益が45百万円と同68.2%増加した。

・上期及び通期の業績予想に変更はなかった。上期予想(前年同期比18.0%の増収、同103.4%の経常増益)に対する進捗率は、売上高54.1%、営業利益50.3%、経常利益49.1%。通期では前期比11.8%の増収、同80.2%の経常増益を見込むが、業績予想は前期末のサブリース等の契約状況を根拠とし不確実性を排除した保守的なもの。

会社概要

“ビルコンシェルジェ”を標榜。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)を中心に売買仲介や契約更新・契約管理等も手掛ける「ストック収入型ビジネス」と、テナント誘致等の「成功報酬型ビジネス」を展開。グループは、グループマネジメントが中心の同社の他、テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス、ビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティングの連結子会社2社。「エリアクエスト」と言う社名には、「地域に根差して(エリア)、不動産の価値を追求する(クエスト)」と言う思いが込められている。

国道16号線内でテナント誘致に強いビル管理サービスを提供!貸主・借主に徹底サービス
【沿革】

創業者である清原雅人氏(1991年4月、明治大学法学部卒業)が野村證券(株)を経て、1998年4月に友人と起業。2000年1月に独立してエリアリンク(株)を設立し、01年3月に社名を(株)エリアクエストに変更した。データベースマーケティング重視の営業でテナント誘致を中心とした成功報酬型ビジネスを拡大させ、会社設立からわずか3年1か月で(03年2月)東証マザーズに株式を上場。不動産ファンドの資金流入で不動産業界が活況を呈する中、国道16号線内(東京、神奈川、千葉、埼玉)の商業施設にフォーカスした営業戦略が奏功し、上場後も順調に業績を拡大させ04/6期には経常利益が4億円を超えた。
欧米の不動産市況の減速、米国サブプライムローン問題の顕在化、そしてリーマン・ショックへと続き世界経済が急速に悪化し、その影響が国内の景気や不動産市況にも波及して同社の業績も急角度で下降線をたどった。このため、07/6期以降はグループをあげてのコスト削減と収益構造改革を進め、不動産市況の影響を受けやすい成功報酬型ビジネスから、安定した収益が見込めるストック収入型ビジネスへのシフトを進め、安定成長が可能な収益構造への転換を図った。

2000年1月 会社設立テナント誘致事業開始
2003年2月 東京証券取引所マザーズ上場
2003年3月 ビル管理事業開始
2006年6月 赤字転落
2007年7月 更新及び契約管理事業開始
2011年5月 サブリース事業、パノラマクリーニング開始
2012年6月 黒字化
2014年6月 3期連続増収増益
【業績回復への転機となったパノラマクリーニング】

会社設立から3年で東証マザーズに上場した同社だが、当時はトラブル防止・解決やテナントとの各種折衝を含めたテナント誘致等(現在の成功報酬型ビジネス)が売上のほぼ100%を占めており、現在、ストック収入型ビジネスとして力を入れているビル管理・サブリースや更新及び契約管理は積極的な営業を行っていなかった。しかし、リーマン・ショック以降の景気悪化で仲介等の市場が急速にシュリンクし、同社の業績も悪化。このため、事業の軸足をストック収入型ビジネスに移し経営の立て直しを図った。
持ち前の営業力に加え、11/6期下期に導入した「パノラマクリーニング」がビルオーナー等から高評価を得て契約獲得が加速。損益分岐点の引き下げに向けた取り組みも成果をあげ、12/6期には通期の営業損益が黒字転換した。
「パノラマクリーニング」とは、清原社長が自ら作成したビル清掃業務における作業指示と結果報告のシステム。「パノラマクリーニング」に基づく丁寧な清掃作業と詳細な業務報告がビルオーナー等から高い評価を得ている。

また、清掃にとどまらず、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、貸主側共通の悩み事の解決や対応した事に加え、漏水を含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等に対しても、連絡を受ければ即時対応(問題が発生すればいち早く駆けつけ)で臨んだ事がビルオーナー等の更なる評価につながり、同社が物件を借り上げて転貸するサブリース物件の獲得につながっていった。

下請工事会社の対応を一本化し、漏水含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等への即時対応
営業面での支障など2次的被害の発生を防ぎ、借主の満足度向上はもちろん、貸主の満足度も向上
サブリース物件の獲得とテナントの確保
同社の収益基盤の安定化
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。同社は繰越損失の影響で税負担が軽い上、14/6期は特別利益の計上による利益の押し上げもあり、ROEが25.40%となったが、特別利益の計上がなくても、10%以上のROEを確保できたものと思われる。
同社ビジネスの成否を左右するのは人材である。このため、大きな設備投資を必要としない一方で、限界利益率が高い。加えて、サブリースの拡大によるファイナンス効果(他人資本である長期預り保証金の獲得)で、業容拡大による資金需要の一部を賄う事ができており、この結果、12/6期以降、ROEの改善が続いている。

サブリースやビル管理等を手掛ける上場企業と比較すると、同社の利益率(税負担がほとんど発生していない事を考慮した上で)や資産効率の高さと共に、厳しい外部環境に負けない業績モーメンタムの強さを感じる。倉庫、住宅、店舗等の建物一棟をサブリースするロジコム(8938)は、12/3期以降、中規模倉庫の中途解約が続き空室率が下がらず苦戦が続いている(当期純利益が経常利益を上回る状態が続いているためROEは実態を表していないが)。このため、空室リスクの低い主要駅の駅前立地のビルの1階にターゲットを絞ってサブリースを拡大させているエリアクエストとはROEを構成する3要素の差が顕著だ。

ビル管理の分野では、(株)サンシャインシティを筆頭株主とし、警備、清掃、設備管理を結合した総合管理サービスを志向するアール・エス・シー(4664)及び大丸・松坂屋の店舗管理を主力とする白青舎(9736)の中堅2社と比べてみたが、エリアクエストのROEが期を追う毎に改善しているのに対して、2社は顧客の価格引き下げ要求と受注競争の激化でROEが低下化傾向にある(アール・エス・シーの13/3期及び14/3期は、ほとんど税負担が発生していない)。

中期事業計画

順調に拡大しているサブリースをけん引役に業容を拡大させていく考えで、当面の目標として18/6期に売上高19億61百万円、経常利益4億49百万円の達成を掲げている。具体的には、パノラマクリーニングとトラブルに対してリーズナブルな価格で迅速に対応できる強みを生かしてメンテナンス物件を獲得し、これをサブリースにつなげ、ストック収入型ビジネスを拡大させていく。一方、成功報酬型ビジネスについては徐々に収益の拡大ペースが加速していくとみているが、マンパワーの制約に加え、足元、マクロの景況感の改善が成功報酬型ビジネスの事業環境の改善につながっていない事を踏まえて慎重な見通しだ。

(2)事業環境

80年代後半から90年代初めにかけてのバブル期に竣工したビルが20年を経過し、エアコンの故障や水漏れ等、トラブルが増えてくる築年数に入ってきた。しかし、「トラブルに対して、リーズナブルな価格で迅速に対応してくれるサービス会社が少ない」と言うのが、ビルオーナー等の悩み。この悩みこそ、同社にとって、大きなビジネスチャンスだ。

けん引役として期待のかかるサブリースの特徴は、ターゲットを1日の乗降客数が3万人以上の駅に絞り、駅周辺の物件で1階部分に限定している事。サブリースは空室リスクを伴うが、同社は、人の流れが多い一等地(乗降客の多い駅周辺)に絞り込む事と、客付けで同社が強みを持つ小売業等に人気の1階部分に限定する事で、リスクの顕在化確率を極小化している。解約が発生しても、概ね1カ月程度で次のテナントが決まっていると言う(テナントが解約する場合は、6か月前までに同社に連絡する必要がある)。

サブリース物件を18/6期末までに300件規模に

サブリースは、14/6期売上高の約1/2、同売上総利益の1/3以上を稼ぎ出す規模に成長しており、足元のサブリース件数は約90件。営業力の強さを背景に、14/6期の新規獲得件数は過去2期間の累計獲得件数を上回る実績を上げており、1件当たりの規模も拡大しており、中期事業計画の18/6期末までに300件規模に拡大させたい考えだ。

ちなみに、90件のサブリース物件は、ほとんどが主要駅の駅前一等地に立地するビルの1階で、他社がうらやむような質の高さだ。ビルコンシェルジュとして、誠心誠意で取り組んだ成果でビルオーナー等との信頼関係構築が進んでいる事がその背景にある。ポイントは、営業マンの努力、上場企業としての信用力、実質無借金経営の健全な財務体質、そして案件毎にきめ細かく実施される清原社長のトップセールスの4点である。

成果をあげているリノベーションの提案

また、地域特性や立地に応じて物件の用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりするリノベーションの提案を合わせ行っている事もサブリース物件の獲得につながっている。その際に必要となるリフォーム費用、或いは高熱水道関係の修繕や新たな敷設費用は同社が負担する(同社は先行投資を織り込んだ収益性を基に提案を行っている)。このため、オーナー等は初期投資をする事無く安定的に収益を売る事ができる。

2015年6月期第1四半期決算
前年同期比28.6%の増収、同63.9%の経常増益

サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)等の「ストック収入型ビジネス」をけん引役に売上高が3億47百万円と前年同期比28.6%増加。営業部門の強化等で人件費を中心に販管費が増加したものの、売上の増加で吸収して営業利益が45百万円と同68.2%増加した。四半期純利益が減少したのは、投資有価証券売却益が減少したため。

「ストック収入型ビジネス」による契約の積み上げで売上高・経常利益共にきれいな右肩上がりのグラフを描いている。第1四半期末の長期預り保証金が増加している事から、15/6期に入ってもサブリース契約の獲得は順調と思われる。このため、来期の見通しも明るい。

第1四半期末の総資産は13億12百万円と期末に比べて50百万円増加した。第1四半期のポイントは、(株)まや商会の株式売却とこれに伴い借地権がなくなった事(無形固定資産の減少)、サブリース案件の初期投資の資金としての短期借入金の積み増し、サブリース物件の増加による長期預り保証金の増加、更には、同社の役員、顧問及び従業員を対象とした第三者割当による自己株式の処分、の4点。短期借入金の積み増しと長期預り保証金の増加等で自己資本比率は47.0%と前期末に比べて低下したが、自己株式の処分による資金調達で銀行借り入れを最小限にとどめた事で、0.3ポイントのわずかな低下にとどまった。

2015年6月期業績予想
業績予想に変更はなく、通期で前期比11.8%の増収、同80.2%の経常増益

上期及び通期の業績績予想に変更はなかった。ストック収入型ビジネスをけん引役に売上高が増加し、増収効果で営業利益率が5.6ポイント改善する見込み。もっとも、業績予想は、前期末のサブリース等の契約状況を根拠とし不確実性を排除した保守的なものだ。

尚、上期予想は下記の通りで、上期予想に対する進捗率は、売上高54.1%、営業利益50.3%、経常利益49.1%。

(2)東京証券取引所2部市場に市場変更

11月1日付けで東京証券取引所2部市場に市場変更となった。同社は2003年2月に東証マザーズに株式を上場し、米国サブプライムローン問題の波及やリーマン・ショック後の景気悪化等による厳しい経営環境を乗り越えて業容を拡大させてきた。今回の東証2部への市場変更を機に更なる経営基盤の強化と業容の拡大に取り組んでいく考え。

今後の注目点
10月末に、自己株式1,502,900株(発行済の持株比率6.7%)を、同社の役員、顧問及び従業員に第三者割当方式で割り当てた。保有する自己株式を有効活用して経営執行責任の明確化や更なる業績貢献の意欲向上を図ると共に、将来にわたる安定株主の確保につなげる事が目的だ。サブリースの好調で前向きな資金需要が増加しており、今回調達した約1億75百万円が有効活用されるものと思われる。(株)まや商会の株式売却も、資産を有効活用して好調なサブリースに経営資源を集中させたい会社側の意向がうかがえる。
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