(4205:東証1部) 日本ゼオン 2015年3月期第2四半期業績レポート

2014/12/10

ZEON

今回のポイント
・15/3期2Qの売上高は前年同期比50億円増収の1,533億円。光学フィルム等の数量増および円安のプラス効果があった一方、エラストマー素材の海外市況が軟調で、光学フィルムも値下げ圧力が強まった。営業利益は同22億円減の145億円。数量要因、為替要因は寄与したものの、価格要因により減益となった。前年同期よりも為替差益が縮小したため経常利益は同26億円減少の155億円。四半期純利益も減益となった。

・15/3通期予想に変更は無い。売上高は前期比4.6%増の3,100億円。営業利益は同23.2%減の250億円。
売上、利益とも通期予想に対する進捗は順調だが、エラストマー素材部門の市況、中小型向けフィルム動向、急速に進行する円安等、現時点ではその影響が予想し難しいため、もう少し目途が立ってから再度検討するということだ。配当は、1円増配の14円/株を計画。5期連続の増配を予定している。予想配当性向は18.7%。

・業績予想の変更にまでは至らなかったものの、前回レポートの本項目で言及した中小型向け光学フィルムの動向は、想定以上の戻りとなっているということで、第1四半期実績の第2四半期(累計)および通期予想に対する進捗率と合わせ、まずは順調な出足となったようだ。次回レポートでは光学フィルムの動向に加え、「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅡ」の進捗について報告したい。

会社概要

自動車部品やタイヤに使用される合成ゴムや、医療用手袋等に使用される合成ラテックスを始めとして、世界的な高シェア製品を多数保有する石油化学メーカー。独創的な技術開発力とそれを生み出す研究開発体制、高い収益性などが強み。
自動車部品、タイヤ、ゴム手袋、紙おむつ、携帯電話、液晶テレビ、香水など身の回りにある多種多様な製品に同社が製造する製品(素材)が使用されている。
グループは、同社および子会社57社、関連会社10社で構成されており、世界17か国に生産、販売拠点を有している。

【社名と経営ビジョン】

「ゼオ」(Geo)はギリシャ語で大地、「エオン」(Eon)は永遠を意味し、その合成語「ゼオン」には「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味が込められており、世界に誇り得る独創的技術によって、地球環境と人類の繁栄に貢献することを経営理念として掲げている。
(設立時は資本及び技術提携先であった米国B.F.グッドリッチ社の塩化ビニル樹脂製品の商標「Geon」を取って社名としていたが、1970年の資本関係解消を機に表記を「Zeon」と改めた。)

【沿革】

同社は、日本軽金属、古河電工、横浜ゴムの古河系3社の共同出資により、米国B.F.グッドリッチ社との提携による塩化ビニル樹脂製造技術の導入を前提として、1950年4月に設立された。
1951年にB.F.グッドリッチ社が35%の株式を取得し、技術及び資本の全面提携が成立し、翌1952年に日本で初めて塩化ビニル樹脂の量産を開始した。
1959年にはB.F.グッドリッチ社から合成ゴム製造技術を導入し、日本で初めて量産を開始。タイヤを中心とした自動車向け需要の増大に対応してし、生産設備を拡大していく。
1965年にはC4留分からブタジエン(合成ゴムの主原料)を効率よく製造する同社の独自技術であるGPB(ゼオンプロセスオブブタジエン)法による生産を開始した。
B.F.グッドリッチ社が事業の中核を塩化ビニル樹脂事業にシフトするのに伴い、特殊合成ゴム事業を譲り受け、1970年資本提携も解消へ。これに伴い1971年に英文社名をGeonからZeonに変更した。
同じく1971年にはC5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを抽出する独自技術GPI(ゼオンプロセスオブイソプレン)法を開発し生産を開始。

1980年代に入り、合成ゴムに加えて、フォトレジストなどの情報材料、合成香料、メディカル分野など新規事業への展開を積極化させていく。
1984年、現在では世界シェアトップとなった水素化ニトリルゴムZetpol®を高岡工場で生産開始。
1990年、GPI法によって抽出、合成された高機能材料事業の主要製品であるシクロオレフィンポリマーZEONEX® を水島工場で生産開始。
1993年、電子材料事業で中国に進出した。
1999年にはゼオン・ケミカルズ(米国、現 連結子会社)が、グッドイヤーから特殊ゴム事業を買収し、特殊ゴム分野で世界トップメーカーとなる布石を打つ。

2000年、水島工場での塩化ビニル樹脂生産を打ち切り、創業事業の塩化ビニル樹脂事業から撤退した。
2002年にLCD用光学フィルムゼオノアフィルム®を上市。
2010年ゼオン・ケミカルズ・シンガポール、2011年ゼオンコリアを設立し、グローバル生産・販売体制を一段と強化している。
2013年3月、(株)トウペのTOBを終了。同年8月完全子会社化した。
2013年9月、シンガポールでスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の工場が完成し、商業運転を開始。

【事業内容】

同社の主要製品は、原油を蒸留分離して得られるナフサを熱して抽出される炭素数の異なる様々な抽出物を原材料としている。
ナフサを熱すると、順次、一酸化炭素ガス(C1)、エチレン(C2)、プロピレン(C3)が抽出される。
同社は、プロピレン(C3)を抽出した後のC4留分から独自開発のGPB法によって抽出したブタジエンや、その後のC5留分からGPI法によって抽出したイソプレン・モノマー(IPM)ハイボイル・モノマー(HB)ジンクロペンタジエン(DCPD)ブチン-2等を原材料に加工を行い、合成ゴム、合成ラテックスを始めとした各種素材を生産している。

生産した素材そのものを顧客に販売する素材型ビジネスが中心の「エラストマー素材事業」、素材を同社において一次加工し顧客に販売する部材型ビジネスが中心の「高機能材料事業」、「その他の事業」がある。

<エラストマー素材事業>

「エラストマー」とは、「ゴムのように弾性に富む高分子化合物の総称」(三省堂 大辞林より)で、合成ゴムがその代表例である。
沿革にあるように同社は1959年に日本で初めて合成ゴムの量産を開始しており、同事業は会社の基盤を支える事業である。
内訳としては大きく、合成ゴム事業、合成ラテックス事業、化成品事業(石油樹脂、熱可朔性樹脂)に分類される。

①合成ゴム事業

<製品例:タイヤ>

世界トップクラスの品質を誇るタイヤ用合成ゴムを、世界の主要タイヤメーカーに納入している。製造している合成ゴムの種類には、耐摩耗性・耐老化性・機械的強度特性に優れるスチレンブタジエンゴム(SBR)、弾性・摩耗性・低温特性のバランスに優れるブタジエンゴム(BR)、天然ゴムとほぼ同様の特性をもち品質安定性に優れるイソプレンゴム(IR)等がある。
今後はSBRの特性を更に改良した低燃費タイヤ用のS-SBRの需要が急速に拡大すると見込んでおり、これに対応した供給能力増のため、シンガポール工場が2013年9月に稼働を開始。これによって供給能力は、現状の年間5.5万トンから第一期2013年9月にプラス3~4万トン、第二期2016年前半にさらにプラス3~4万トンと二段階で増強されることになる。

自動車エンジンにおいては、ラジエターホース、フューエルホース、タイミングベルト、オイルシールなどの各部品において耐油性、耐熱老化性に優れた特殊合成ゴムが用いられている。
世界No.1の特殊合成ゴムメーカーである同社はその品質の高さを評価されており、自動車用特殊合成ゴムの中で高いシェアを有している。中でも、タイミングベルト用の水素化ニトリルゴムZetpol®は耐熱性、耐油性、機械的強度特性に優れており、世界シェア約70%を占めている。

また従来品の性能を大きく向上させたZetpol®の新製品を開発した。
これは従来製品比で+15℃も耐熱性を改善させたもので、従来のシール・ガスケット部品の長寿命化に対応できるだけでなく、次世代バイオ燃料を用いたエンジン向けにも需要が拡大すると見込んでいる。さらに、押出加工性が良好であることからホース用途にも展開が広がってきた。顧客の評価も上々で、高価なゴムの代替材を中心として、国内、アジア、欧米で採用が進んでいる。
このZetpol®の新製品は、2012年11月に川崎工場で商業運転が始まり、2013年度より本格稼働を開始した。

②合成ラテックス事業
合成ラテックスとは、合成ゴムを水中に分散させた液状ゴムのことで、ゴム手袋をはじめ、紙加工、繊維処理、接着剤、塗料、化粧パフ等に使用される。
化粧用パフ用ラテックスは90%近いシェアとなっている。
③化成品事業
C5留分から製品化を行う同社独自のGPI法により粘着テープ・ホットメルト接着剤用素材、トラフィックペイント用バインダー等、幅広い製品化を行っている。
<高機能材料事業>

「高度情報化社会の実現」、「省エネ・蓄エネ・創エネ」、「QOL(生活の質)向上」を目指した研究開発を進めており、自社製造の高機能素材を用いた「情報用部材」、「エナジー用部材」、「メディカルデバイス」を重点3事業分野と位置付けている。

①情報用部材

GPI法によってC5留分から抽出、合成されたシクロオレフィンポリマーは、独自技術で開発した熱可塑性プラスチックで、製品としてZEONEX® とZEONOR®がある。

ZEZEONEX®は優れた光学特性を活かして、携帯電話に搭載されているカメラの小型レンズのほかプリンター、光ピックアップ、ミラーといった光学部品に使用されている。
ZEONOR®は高透明性や転写性、耐熱性等を活かし、透明汎用エンプラとして、導光板や自動車部品、容器、ディスクなどの幅広い分野で使用されている。

シクロオレフィンポリマーから、世界初の溶融押出製法で開発された光学フィルムがゼオノアフィルム®で、液晶テレビやスマートフォン、タブレット端末のディスプレイに使用されているほか、今後はデジタルサイネージなど幅広い用途での利用が期待されている。

また、同社では世界で初めて「斜め延伸位相差フィルム」を開発し、生産している。
従来の3Dテレビは画面に対し両目が水平な状態であれば立体画像が認識できるが、水平でないと画面が暗く見えたり立体画像が不鮮明であった。これに対し、このフィルムは3DTVの視野角を大きく広げることにより、斜めから見た場合でも鮮明に立体画像が認識できる。
有機ELの光反射防止フィルムとしての採用も進んでおり、今後も中小型用フラットパネルディスプレイ向けの需要拡大が見込まれることから、高岡および氷見の2工場(合計 年間生産 1,500万㎡)に加えて、福井県敦賀市に新工場が2013年10月に完成した。

他にも、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ用途に代表される、電子デバイス向け塗布型有機絶縁材料ZEOCOAT®がある。
ZEOCOAT®は、透明性が高く、吸水性が非常に低いほか、膜からガス成分を発生しにくいためディスプレイの画質と信頼性の向上を同時に達成することができる。
今後、液晶に比べ薄く成型できる有機ELディスプレイ向けに拡販を積極的に進めるとともに、新しい半導体を用いた薄膜トランジスタやフレキシブルディスプレイ用の絶縁材料での採用を目指している。

②エナジー用部材

リチウムイオン電池用材料として正極及び負極、機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー、シール剤を供給している。

現在、リチウムイオン電池は携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源として広く使用されている。
また、スマートフォンの急速な普及により、その高容量化は強く求められている。
さらに、軽量・小型でありながら、大きなエネルギーを蓄えられることから、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車向け、スマートグリッドなどの産業電源向けの採用も始まっているが、一方で、高温下で使用した場合、寿命が低下しやすいといった課題があった。

同社は、リチウムイオン電池バインダーの高機能化を進め、正極用バインダーとして寿命の低下抑制に大きく貢献する機能性バインダーの開発に成功し、また、リチウムイオン電池の蓄電容量を従来比5~15%上げられる負極用バインダーの製品化にも成功した。
正極・負極・機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー及びシール剤はリチウムイオン電池の「安全性」、「寿命」、「電池容量アップ」に寄与し、ハイブリッドカーの普及に貢献するものと考えている。

リチウムイオン電池の将来性に注目し、早くから取り組んできた同社では、エナジー用部材事業の2020年のありたい姿として、「リチウムイオン電池バインダー市場でのトップシェアを維持」するとともに、急速充電など自動車用途でのニーズに応えた新しい材料機能の普及拡大や次世代の新しい電池の実現に向けた機能性材料の提案ができることを目指している。

③メディカルデバイス

メディカルデバイス市場は、景気の影響が少なく、また日本における高齢化の進行と新興国の市場拡大で成長が見込まれる一方、医療機器の製造・販売会社に対する法的要件が厳格であるほか、薬事承認申請作業が必要で、医療従事者との関係作りが不可欠であること等から参入障壁が高く、魅力的な市場であると同社では考えている。
同社は、1974年に人工腎臓の開発を開始したのを皮切りにメディカルデバイス事業を積極的に推進し、1989年に子会社ゼオンメディカル株式会社を設立し、同社グループ内で開発・製造・販売・薬事のすべての分野における対応が可能な体制を構築している。
消化器系製品では、胆道結石除去用の差別化製品である「オフセットバルーンカテーテル」、国産初の胆管カバードステント「ゼオステントカバード」、また循環器系製品では、心筋梗塞時等に心臓の拍動を補助するデバイスとして、世界最細径の「ゼメックス IABPバルーンプラス」など、豊富な開発実績を有している。

現在注力しているのが、胆道結石による痛みからの解放につなげる結石除去デバイスである。
同社の開発製品であるゼメックスクラッシャーカテーテル、ゼメックスバスケットカテーテルNT、ゼメックス胆石除去バルーンカテーテルBなど、巨大結石から胆泥・胆砂まであらゆる胆道結石を除去できるデバイスをラインアップしており、結石除去デバイス全体で50%のシェア獲得を目指す。

④化学品事業

C5留分より得られる原料を活用して食品・香粧品用の合成香料や、特徴ある溶剤及び植物調整剤などの特殊化学品を扱っている。
グリーン系の合成香料では世界一のシェアを有している他、医農薬中間体の原料やフロン代替用途などの溶剤・洗浄剤・ウレタン発泡剤及び機能性エーテル溶剤など、幅広い産業分野に特徴ある製品を供給している。

【高機能新規素材開発例 ~カーボンナノチューブ(CNT)~】

積極的な研究開発によって様々な新素材を世の中に送り出してきた同社だが、今後大きな成長が期待されるのが「単層CNT」だ。

①単層CNTとは?

1993年、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研) ナノチューブ応用研究センター長の飯島 澄夫博士によって世界で初めて蜂の巣上の炭素原子が網目のように結び付いた、筒状分子構造の物質が発見され、「カーボンナノチューブ(CNT)」と命名された。
その構造により、単層CNTと多層CNTに大きく分類できる。多層CNTは比較的生産が容易であることから国内外において実用化への応用開発が推進されている。

一方、単層CNTは、
「鋼の20倍の強度」、「銅の10倍の熱伝導性」、「アルミの半分の密度」、「シリコンの10倍の電子移動度」など、「軽量かつ高強度でありながら高い柔軟性を持つ」、「電気や熱伝導性が極めて高い」といった、多層CNTを上回る優れた特性を持つ。
例えば、リチウムイオン電池の導電助剤への展開、高い伸縮性や強度を持つことから、電子ペーパーや超薄型タッチパネル用の透明導電膜のほか、放熱材料への利用なども考えられている。また、広帯域の光を吸収できる特性があるため、電磁波吸収材としての実用化研究も進んでおり、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、構造材料分野、高機能材料分野等、幅広い場面での応用が見込まれている。

しかし、現在の単層CNTは、不純物が多く、且つ生産性が低いために、製造コストが高く1g当たり数万~数十万円もしているのが大きな課題であった。

②同社の取組み&位置づけ

このような背景の中、低炭素社会の実現というグローバルな社会的要請に応え、日本で発見された数多くの優れた特性を持つ単層CNTを応用した新製品を世界に先駆けて事業化、工業化するための技術の確立に取り組む事を目的として、2010年5月、産総研と同社、日本電気(株)、東レ(株)、帝人(株)、住友精密工業(株)、の5社1法人によって「技術組合 単層カーボンナノチューブ融合新材料開発機構」が設立された。

同社と産総研が、「スーパーグロース法」という2004年に産総研 畠博士らによって開発された合成技術をベースにして、産総研のつくばセンター敷地内に2010年12月に開設した実証プラントで量産化に向けた研究開発および供給(2011年4月から、産総研より量産品のサンプル供給を開始)を担当し、複合材料の用途開発を上記の研究組合が進めている。
産総研 ナノチューブ応用研究センターが量産化のためのパートナーに同社を選定したのは、同社の荒川公平氏(前取締役常務執行役員)がCNT研究開発者として豊富な実績と成果を有していた事が大きな理由だということだ。
また、同組合の理事長が同社会長の古河 直純氏であることからもわかるように、単層CNT実用化プロジェクトにおける同社の重要性は大変大きなものである。

③今後の展開

スーパーグロース法を基にした量産化技術はほぼ確立したという事だ。
現在、つくばの実証プラントでは一日600gの生産を行っているが、量産体制構築のため、2014年5月、徳山工場内に生産設備を建設する事を決定した。2015年下期の量産開始を目指している。
単層CNTの量産化技術を確立しているのは世界でも同社のみであり、上記の研究組合に限らず、国内外約100社から問い合わせが来ており、順次サンプル出荷を行っており、同社自らも他社に対し用途提案も行っている。
一方、単層CNTは、ナノ材の一種でありそのサイズが極めて小さい事、形状が繊維状であることから化学的な特性以外に、サイズや形状によって生体への侵入などによる影響があるのではないかという懸念も指摘されている。
現在、産総研を中心に評価手法の標準化、OECDのエンドポイント測定等の取組みが進められており、国際標準化、法規制化が順次行われると考えられている。

<その他の事業>

ジンクロペンタジエンを原料とした反応射出成形法(RIM成形法)による大型成形品やRIM配合液を取り扱っている。

特長・強み
1.世界トップクラスの独創的な技術開発力

C4留分からブタジエンを製造するGPB法は戦後の日本化学史上トップクラスの技術開発であり、アメリカ、韓国を始め世界19か国49プラントに技術供与している。
また、C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法も同社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。

この2つの技術に代表される独創的な技術開発力が同社の大きな強みであり、世界的に高く評価されており、国内外で数々の賞を受賞している。
技術関係では、GPB法、GPI法はもちろんのこと、1960年から現在までに48の賞を、環境・安全関係では1982年から現在までに26の賞を受賞している。

2.高い利益率

同業の化学メーカーの中では下のグラフの様に、売上規模では下位に属するが利益率は上位にあり、その収益性の高さは注目される。

同社は製品開発に際し、汎用品ではなく同社ならではのニッチで差別化が可能な製品の供給を志向している。
また抽出技術と合成技術に優れているため、例えばゴムであれば顧客の要望に合わせた分子構造の合成ゴムの製造が可能だ。
特にGPI法は同社のみが保有する技術であるため、C5留分を使って製造される原材料は他社が真似のできない差別化が図られている。こうした点が高い収益性に繋がっている。

3.世界的な高シェア

Zetpol®、ZEONEX®、ZEONOR®に代表される同社の独創的技術から生み出された様々な製品は、世界的に高いシェアを獲得している。
これ以外にも、化粧品や食品フレーバーに使用されるリーフアルコール、懸濁重合法で製造したプリンター用重合法トナー、半導体製造用エッチングガスZEORORA®なども「世界No.1」製品となっている。

4.独創的な技術を生み出し続ける研究開発体制

「特定の得意分野で独創的技術を開発し、世界一事業を創出して社会に貢献する。」との基本理念に基づき、研究開発に取り組んでいる。
主要研究拠点は神奈川県川崎市にある「総合開発センター」だが、製造現場に近いところで研究開発を行うことが効率的であるとの考えから、高岡工場に精密光学研究所およびメディカル研究所を、米沢工場に化学品研究拠点を設立した。また海外では、米国および英国に研究グループを有している。

研究員は現状に満足することなく、適度な危機感を保ちつつ、研究にあたっているということだ。また会社も加点主義に基づく評価を行い、スピードと独創性を重視している。
R&D費について従来は対売上高比を基準としていたが、安定的な研究開発を継続していくため、今後は年間120億円程度を目途に投資を行っていく考えだ。

2015年3月期第2四半期決算概要
光学フィルムは好調な一方、海外市況軟調などを主因に増収・減益

売上高は前年同期比50億円増収の1,533億円。光学フィルム等の数量増要因が+66億円、約5%の円安による為替要因+22億円があった一方、エラストマー素材の海外市況が軟調だったことに加え、TV用光学フィルムの値下げ圧力により価格要因は-38億円となった。
営業利益は同22億円減の145億円。数量要因+3億円、為替要因+22億円があったものの、価格要因が-38億円、と大きく、減益となった。前年同期よりも為替差益が7億円縮小したため経常利益は同26億円減少の155億円。四半期純利益も減益となった。

増収・減益となった。営業利益率は前年同期の11.6%から2.0%下落の9.5%。
合成ゴムの販売数量は、汎用ゴムが国内同-2%、輸出が同-8%とともに減少。国内でタイヤ向け販売が低調だったことに加え、海外市況悪化で輸出が減少した。一方特殊ゴムは同+4%。国内、輸出、海外子会社ともに堅調だった。
特殊ゴムの構成比は数量ベースで34%(前年同期32%)、金額ベースで57%(同54%)といずれも上昇した。
ラテックスは低価格製品が伸びたため、販売数量は横這いながらも減収。化成品は、石油樹脂が堅調に加え、タイの増設プラントが寄与して販売数量、売上ともに堅調だった。
海外市況の悪化、原材料高、シンガポール工場の減価償却費7億円増加などで営業利益は同16%の減益だった。

増収・減益となった。営業利益率は前年同期の16.4%から3.7%下落の12.7%。
高機能ケミカル部門の売上高増減率の内訳は、化学品が前年同期比10%増、電子材料が同4%減、電池材料が同19%増だった一方、トナーは同14%減少した。
高機能樹脂部門では、光学フィルムが同14%増、COP樹脂が同11%増だった。
光学フィルムの販売数量は同23%の増加。テレビ向け、中小型向けともに堅調だった。
ただ数量は増加したものの価格低下により営業利益は16%減少した。

増収・増益だった。営業利益率は前年同期の2.8%から1.4%上昇の4.1%。
子会社の商事部門 東京材料株式会社の取扱高が増加した。

前年同期比では増収・減益であったが、直前期比では増収・増益となった。
売上高は数量要因40億円増に対し、価格要因、為替要因がそれぞれマイナス2億円、マイナス1億円であった。
営業利益については、数量要因+15億円、原価要因+6億円に対し、価格要因マイナス2億円、為替要因マイナス1億円となり、前期1Q、2Qの水準まで回復した。

資本的支出の中心はテレビ向け光学フィルム、シンガポール工場第2期、徳山工場のカーボンナノチューブ用設備等で、上期の進捗率は43%となっている。
減価償却費の進捗は41%、研究開発費は49%。

売上増で現預金、売上債権、棚卸資産が増加し流動資産は131億円増加。有形固定資産は設備投資が116億円増加した一方、減価償却が89億円増加して1億円の増加。投資有価証券増で投資その他の資産が44億円増加して、総資産は174億円増加した。買入債務の増加などで負債合計は88億円増加した。純資産は、利益剰余金増加などで85億円の増加。この結果自己資本比率は47.9%と前期末と同水準だった。有利子負債は24億円減少した。

2015年3月期業績予想
増収・減益の業績予想に変更無し。

業績予想に変更は無い。売上高は前期比4.6%増の3,100億円。営業利益は同23.2%減の250億円。
エラストマー素材部門では、海外市況が当初想定以上に悪化している。一方高機能材料部門では、前第4四半期に始まった中小型向け光学フィルムの調整が長引くと見ていたものの、現時点では予想以上の戻りとなっている。
通期予想に対する進捗は特に利益面で順調だが、エラストマー素材部門の市況が先行き不透明であること、中小型向けフィルムも第4四半期(1-3月)に弱含む可能性があることに加え、急速に進行している円安の影響についても、現時点では予想が難しいため、今回は修正を行わず、もう少し目途が立ってから再度検討するということだ。
配当は、1円増配の14円/株を計画。5期連続の増配を予定している。予想配当性向は18.7%。

「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅡ」の進捗状況

田中社長が、「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅡ」の進捗状況について説明を行った。

①「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅡ」(2015年3月期~2017年3月期)について
◎コンセプト
世界的な環境としては「グローバル化:新興国市場の成長」、「ITトレンド:情報社会の進化と拡がり」、「環境・エネルギー:サスティナビリティ重視」の中、人口減少、低成長経済の継続、電力コストの高止まりにより、日本の国際競争力は低下せざるを得ないと認識している。そうした環境下、前計画の総括・反省を踏まえ、「新中期経営計画 SZ-20 PhaseⅡ」を策定した。企業理念、CSR基本方針をベースに、スピード・対話・社会貢献という重要な価値観や仲間との信頼というゼオンらしさを重視し、この計画の実行によって企業価値の向上を図る。
◎SZ-20 PhaseⅡの位置付け
2020年のありたい姿の実現及び数値目標「連結売上高5,000億円」の実現に向けた第2段階と位置付け、海外工場の稼働、工程の安定化、高機能材料事業の売上拡大を推進する。
2020年のありたい姿として掲げている「化学の力で未来を今日にするZEON」は不変だが、今回の計画はその実現に向けて会社を「変える」ことに重点を置いている。従来のやり方・考え方を抜本的に見直し、根本的に会社を「変える」3か年とする。
◎エラストマー素材事業
◆シンガポール工場 S-SBRの進捗状況
低燃費タイヤ用のS-SBRに対する需要が急速に拡大すると見込んで、供給能力増のために建設したシンガポール工場が2013年9月に稼働を開始した。シンガポール工場は主力4製品の量産を担い、徳山工場からの生産移管が終了した。主要ユーザーへの出荷が本格化している。
徳山工場は特殊グレード品の量産や新製品の試作から立上げ、量産を行うパイロットプラントと位置付ける。
需要増に対応し、第2系列の増設を決定した。2016年1月完成、同年4月商業生産を開始する計画だ。
◆Zetpol®耐熱性向上グレードの進捗状況
高機能化する自動車材料への対応として、バイオディーゼル耐性に優れたZetpol®の拡大を目指し、現在川崎工場内に設けた新規設備で商業生産を行っている。
潤滑油周りのシールやガスケットへの採用が始まっている。
◆Nipol® ARアクリルゴムの進捗状況
トウペを事業統合したことにより世界のアクリルゴムにおけるグループシェアは30%となった。
川崎工場、総合開発センター、倉敷工場、ケンタッキー工場、ケンタッキー研究所と、グローバルでの生産及び研究体制を確立した。現在はこれまでにない特徴ある新製品のコンセプト(超耐熱グレード、二次加硫不要グレード、加硫速度調整グレード等)の検証が市場で進んでいる。
低燃費志向によるターボシステム搭載車拡大に伴い、アクリルゴム製の耐熱ホースの採用拡大が見込まれており、新製品の開発・市場投入によって他社との差別化を図る考えだ。
◆事業構造改革の進捗状況
国内におけるエチレン生産は縮小に向かっており、ブタジエンの調達はますます難しくなっている。
一方当社は様々な合成ゴム製品において世界的に高い生産能力を有しており、この能力を活かし原料調達環境への対応、生産体制の見直しなどを進め、継続して最適生産体制の構築を目指す。
◆手袋用NBRラテックス
医療現場などでの衛生および安全性意識の向上から手袋の需要が拡大している。加えて、作業性や更なる安全性向上の要求から、より薄くても簡単に破れない高い強度も要求されている。
そうしたニーズに対応し同社では第1世代のNipol® LX550Lに次いで、次世代薄膜高強度手袋用NBRラテックスとして第2世代であるNipol® LX560を開発し2014年、6月30日にプレスリリースを行った。これは、手袋薄膜0.055mmにおいても欧米規格で規定される破断引張強度(6N以上)を満たすものである。
更に第3世代の開発に着手している。
◆ポリイソプレンゴムエマルジョン(E-IR)
手術用手袋素材に使用されている合成ゴムの一種「ポリイソプレンゴムエマルジョン(E-IR)」は、天然ゴムによる蛋白アレルギー問題が発生しないため、ここ数年および今後も年率10%以上の高い成長が見込まれる。
当社は2013年10月に現有設備の増強を完了し、2014年は年間500トンまで販売を拡大させる。
市場環境を見定め、2020年へ向け更なる設備増強や工場新設を検討する。
◆C5ケミカル事業の海外展開
C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法は当社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。
このイソプレン抽出技術を活用し、海外で事業化を進める。用途としては、アジアを中心に需要拡大が予想され、年率5~6%の成長が見込まれる粘着テープを始めとして、エラスティックフィルム、トラフィックペイント向け等を想定している。
また、薄膜化、低臭気化、前工程不要という特徴を持つエラスティックフィルムを用いて、年率6%程度の成長が見込まれる紙オムツなど新規用途の拡大を目指す。
◎高機能材料事業
◆基本戦略
C5留分の総合利用による差別化素材を出発点とし、高度情報化社会の実現、省エネ・蓄エネ・創エネ、QOL(生活の質)向上をテーマに、「情報用部材」、「エナジー用部材」、「メディカルデバイス」の重点3事業分野において製品開発を進める。
◆情報部材:ゼオノアフィルム®
FPD(フラットパネルディスプレイ)市場においては、大画面化に伴う面積市場の拡大とオープンセルという完成品前の半製品取引が拡大しているが、こうした状況は、低吸湿性、耐熱性、寸法安定性というゼオノアフィルム®の特長を活かすことができるものである。
液晶テレビ用位相差フィルムの生産能力増強を前倒しし、量産を2015年2月から開始することとした。(当初予定は2015年4月)
また、中小型向け光学フィルムに関しては、視野角補償、反射防止、サングラスリーダブルなど、より見易い画面作りに向けた用途開発を進めている。
◆情報部材:実装用・電子用
窒化膜用新規エッチングガスの開発を進めている。
これは、より緻密な半導体製造を行うための実装技術をサポートするもので、IBMとの共同研究開発の成果の一つである
◆エナジー用部材
リチウムイオン電池市場はPC中心から自動車にその用途が広がり市場は成長を続けている。当社の電池材料売上は製品群の拡大と共に、市場成長および当初計画を上回るスピードで順調に拡大している。
バインダー事業で技術をリードしてきた知見を活かし、高容量化を可能にしている。
◆メディカルデバイス
前期までの実績は緩やかな伸びにとどまっていたが、「SZ-20 PhaseⅡ」では高い成長を見込んでいる。
2014年7月には「石流しオフセットバルーンカテーテル」を上市した。
◆カーボンナノチューブ
スーパーグロース法により生産される「スーパーグロースカーボンナノチューブ」は、長さ、高純度、炭素系繊維物質で最大の表面積など、多くの差別化特性を有している。
前述のようにカーボンナノチューブ(CNT)事業について当社は大きなアドバンテージを有しているが、市場ニーズに対応するため、産総研の量産実証プラントで得られた技術を活用してスーパーグロース法で得られる高品位な単層カーボンナノチューブを生産する設備を徳山工場内に建設する事を2014年5月15日、決定・発表した。2015年下期の量産開始を目指す。
2020年の売上高目標5,000億円にはCNT事業は織り込んでいないが、ゴム部材の高機能化など既存事業との融合や新規事業の強化及び創出を通じて達成に向けて大きく貢献すると期待している。
◎コスト競争力の向上

コスト競争力の向上も大きな目標である。
トップダウンによる「ダイセル式生産革新手法」を進めると共に、「ZΣ活動」というボトムアップによるコストダウン活動を継続する。
「ZΣ活動」により、毎期年間50~60億円程度のコストダウンを実現する。

◎風土育成

「2020年のありたい姿」実現のためには、そのための企業風土が不可欠であり、「見える化」をベースにそうした風土を育成する。
そのためには以下の3点が重要と考えている。

「SZ-20」と同様、「SZ-20 PhaseⅡ」においても、2020年のありたい姿における「連結売上高 5,000億円、連結営業利益率10%」を掲げている。

事業戦略及び社内活動の推進に加え、「スピード」、「対話」、「社会貢献」という価値観を、今までもこれからも大事にし、仲間との信頼関係の下、目標実現に向かって進んでいく。

今後の注目点
急速に進行する円安が同社業績に与える影響は、仮に下期110円/USDであれば営業利益を30億円、115円/USDであれば40億円以上押し上げる要因になるということだが、現時点では他の要素も含め不透明要因が多いため修正は見送った。ただ、通期予想に対する進捗率から見ても上方修正の余地は大きいと会社側は考えている。来年1月下旬の第3四半期決算発表を注目したい。一方、シンガポール工場の第2期増設の決定は中期的な業績拡大に寄与することになるだろう。量産開始が現実的になってきたカーボンナノチューブの進捗と共に大いに注目したい。
<付属:Fact Sheet>
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

コラム&レポート Pick Up