(4718:東証1部) 早稲田アカデミー 2015年3月期上期業績レポート

2014/12/03

Waseda-ac

今回のポイント
・15/3期上期は前年同期比3.8%の増収、同2.9%の経常減益。小学部、中学部、高校部の全学部で生徒数が増加した事に加え、上半期の最大イベントである夏期合宿の参加者が過去最高を更新した。新校舎の開設や既存校舎の増床等、塾生の受け入れ態勢整備に向けた先行投資が負担となり営業利益が同2.4%減少したものの、ほぼ予想に沿った着地。費用統制は機能している。

・下期は売上の増加で売上原価を中心にした営業費用の増加を吸収して前期比増益に転じる見込み。新規開校は上期の2校舎に加え、下期は8校舎を予定しており、従業員研修や校舎に対する支援・指導を強化して塾生の獲得につなげる考え。通期では前期比4.7%の増収、同16.8%の経常増益を見込む。塾生数(期中平均)は前期比4.1%増加する見込み。1株当たり20円の期末配当を予定している(中間配当10円と合わせて年30円)。

・同社は、「合格実績戦略の下、首都圏全域で現在の2倍近い校舎数の展開が可能」と考えており、従来、5校程度だった年間の新規出校を、15/3期以降は、個別指導や英語教育への対応強化も含めて10校程度に引き上げて成長を加速させる考え。上期決算で塾生獲得が計画通りに進んでいる事が確認できた。成長戦略が順調に進捗しているようだ。

会社概要

「本気でやる子を育てる」という教育理念の下、小学1年生から高校3年生までを対象に進学学習指導を行っており、首都圏の難関私立中高入試においてトップクラスの合格実績を誇る。また、進学学習指導業務で培ったノウハウを活かし、社会人向け教育研修や自社で開発した教育コンテンツ等の外部販売を手掛けている他、子会社(株)野田学園が医歯薬系大学受験指導を行う「野田クルゼ」を運営。14年10月末現在の校舎数は野田クルゼ2校を含む147校。

【事業内容】

事業は教育関連事業と不動産賃貸事業に分かれるが、教育関連事業が売上高・営業利益共に99%以上を占めている。教育関連事業では、同社が小学1年生から高校3年生までを対象とした進学学習指導を行っており、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)において直営方式で校舎を展開。子会社(株)野田学園が「野田クルゼ」のブランドで、医歯薬系専門の大学受験予備校の経営を行っている。また、「生きた英語を身につける」ための新たなプログラムを開発・運用するブランドとして「早稲田アカデミーIBS」を開設して英語教育に力を入れている他、進学学習指導業務で培ったノウハウを活用した社会人対象の教育研修や自社で開発した教育コンテンツの外部販売等も手掛けている。一方、不動産賃貸事業(売上構成比0.5%)では、同社が保有する住居用・事業用不動産物件を一般顧客に賃貸すると共に、(株)野田学園に対して、校舎物件の一部を転貸している。

【ポジショニング】

同社は、年商が100億円を超える学習塾運営上場企業を対象とした売上ランキングで4位に位置する。差別化の成否で学習塾各社の明暗が分かれる中、同社は難関校への圧倒的な合格実績を裏付けとするブランド力で差別化に成功し存在感を発揮している。なお、これまでは事業拡大に向けた先行投資をしてきたことにより利益率向上が課題となっているが、費用統制の取組みにより、来期以降は収益性の改善余地が大きい。

成長戦略

全国的には学齢人口(6~15歳)の減少が進行しているが、同社が直営展開している首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)では緩やかながら増加傾向を示している。こうした中、同社は、“合格実績戦略”の下での既存事業の強化に加え(普遍的価値あるもの「志望校合格」の追求)、多様化する顧客ニーズへ対応するべくグローバル人材の育成に向けた受験英語に留まらない生きた英語を身につける最先端の英語教育、個別指導とFC展開に強みを持つ(株)明光ネットワークジャパンとの提携による「早稲田アカデミー個別進学館」の展開、更には教師力養成塾e-講座を中心とした教員研修事業といった新たな教育ビジネス事業の創出に取り組み、これまでに培ってきた経営資産を活かすと共に収益の多様化を図っていく考え。

【合格実績戦略】

「合格実績伸長 ⇒ ブランド力向上 ⇒ 集客力向上」という難関校への圧倒的合格実績が生み出す好循環により収益拡大を図る。
合格実績を伸ばすポイントは、教育システム、学習する空間づくり、競争原理、及び研修・人事制度の4つ。教育システムとは完成された教材やカリキュラムに裏打ちされたもので、学習する空間づくりとは生徒のやる気を引き出すクラス運営のノウハウ。また、生徒が競争し、切磋琢磨できる環境を提供する事で競争原理が生まれ合格実績の伸長につながるが、いずれも優秀で情熱ある講師の育成が不可欠である。
同社はこの4つのポイントを基盤に「普通の学力の子を鍛えて難関校へ導く」システムを確立しており、2013年度の高校入試では、偏差値70以上が必要とされる、開成、国立附属、早慶附属高に進学した塾生の約5割が、中学1年時には偏差値40~50台だったと言う。もちろん、有名私立校だけでなく、都県立トップ高校、国立大附属中高、難関大学等、幅広い志望校ニーズに対応し様々な学校への合格実績№1を視野に合格実績戦略を推進していく。

「合格実績」という一目でわかる差別化により、高いブランド力と他社の追随を許さない圧倒的な優位性を確立している。特に地盤である首都圏では早慶ブランドの効果が大きく、早慶附属高合格者数No.1の達成(01年入試)以降、集客力の向上が著しく、この13年間で売上高が3.5倍に拡大した。

合格実績戦略の下、コア事業に集中し、進学塾としてのトップブランド確立に注力していく。御三家中学、難関高校、東大合格の実績を伸ばせる教育意識や所得水準の高いエリアを中心に毎期10校から11校の新規出校を続けると共に人材の育成に注力する事で、年率5~6%の売上成長を目指している(既存校の2%~3%成長+新規出校)。売上規模の拡大効果や広告宣伝費の効率化に加え、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の活用を推進するための社内プロジェクトを立ち上げ、利益創出と経営管理の合理化を目的に、営業領域にとどまらず、幅広い領域で課題に取り組み収益性の改善も図る。

2015年3月期上期決算
前年同期比2.4%の営業減益ながら、ほぼ予想に沿った着地

売上高は前年同期比3.8%増の94億61百万円。小学部、中学部、高校部の全学部で生徒数が増加した事に加え、上半期の最大イベントである夏期合宿の参加者が11,500人を超え、過去最高を更新した。一方、営業利益は3億22百万円と同2.4%減少。新校の開設や既存校の増床に伴う地代家賃(同4.4%増)・支払手数料の増加や合宿費・販売促進費の増加等で売上原価が同5.7%増と売上の伸びを上回った事が要因。ブランディング効果を勘案した媒体及び宣伝手法の見直しによる広告宣伝費の減少等で販管費が減少したもののカバーできなかった。もっとも、費用統制は機能しており、売上原価の増加は想定の範囲内にとどまり、営業利益は予想に沿った着地。固定資産除却損及び同売却損の計上で経常利益及び当期純利益の振れが営業利益よりも大きくなったが、法人税等調整額の減少(45百万円→16百万円)で四半期純利益は同6.7%増加した。

塾生数及び校舎数

上期の期中平均塾生数は前年同期比2.6%増の29,872人。小学部13,367人(同2.5%増)、中学部13,352人(同2.4%増)、高卒生を含む高校部3,153人(同3.6%増)、と全学部で順調に増加。会社別では、早稲田アカデミーが同2.4%増、高校部のみの野田学園が同22.1%増(190人→232人)。前期から力を入れている小学4年生・5年生や中学部が順調に増加した他、現役高校生対象の大学受験専門校舎「Success(サクセス)18」を中心に高校1・3年生も増加した。

上期末の校舎数は野田クルゼ2校舎を含む147校(前年同期末140校舎)。小中学生対象の集団指導校舎「早稲田アカデミー 青砥校」及び個別指導校舎「早稲田アカデミー個別進学館 西日暮里校」の2校舎を7月に開校した他、グローバル人材育成にも繋がる新たな英語教育を提供するブランド“IBS”の新教場として「IBS国立ラボ」を9月に新設。いずれも、順調に集客が進んでいる。

会社別業績

(株)早稲田アカデミーは集客が順調だったが、先行投資的な売上原価増加で利益が減少した。一方、医歯薬系大学受験指導を行う「野田クルゼ」を運営する子会社(株)野田学園は、通塾生の満足度向上に向けた取り組みやWebサイト等の問い合わせツールを充実させた効果等で、収益・合格実績の両面で寄与が大きい高3生(同30.6%増)及び高卒生(同32.6%増)が大幅に増加。また、継続的な費用統制の効果で利益率も向上しており、売上・利益の両面でグループ業績に貢献できる体制が整ってきた。ブランド力の向上を図るべく、難関国立医学部必勝講座も立ち上げた。
尚、(株)野田学園の売上高には、学生寮(中野ヴィレッジ)の売上が含まれている。

上期末の総資産は前期末に比べて6億16百万円増の116億24百万円。業容拡大で総資産が増加したものの、大幅に増加したキャッシュ・フローを活かした有利子負債の削減等、健全な財政状態の維持に向けた取り組みを並行して進めた。
借方では、塾生増加に伴い営業未収入金が増加した他、新校の開校や既存校の増床で差入保証金(投資その他)が増加。一方、借地権の売却で無形固定資産が減少した。貸方では、既存校の塾生が増加したことに加え、7月に開校した「早稲田アカデミー 青砥校」及び個別指導校舎「早稲田アカデミー個別進学館 西日暮里校」、9月に新設した「IBS国立ラボ」の受講生集客が順調に進んだ事で前受金が増加した。
上期末の自己資本比率は前期末に比べて2.4ポイント低下の51.7%。

塾生の獲得が順調に進んだ事による前受金の大幅な増加等で営業CFの黒字がほぼ倍増した事に加え、定期預金の解約や無形固定資産の売却で投資CFの黒字も増加し、12億92百万円のフリーCFを確保。有利子負債削減を進めつつ、下期以降の事業拡大に向け手元資金を積み増した。

2015年3月期業績予想
業績予想に変更はなく、通期で前期比4.7%の増収、同16.8%の経常増益予想

下期は8校舎の開校を予定しており、従業員研修、校舎に対する支援・指導を強化し、入学案内どおりのサービスをより高いレベルで実践する事で塾生の獲得につなげる考え。売上の増加で売上原価を中心にした営業費用の増加を吸収して前年同期比増益に転じる。
通期では10校舎の新規開校を予定しており、塾生数(期中平均)は前期比4.1%の増加を見込む。配当は1株当たり20円の期末配当を予定しており、中間配当10円と合わせて年30円となる見込み。

売上原価は同5.0%増の146億23百万円。クラス設置の統制等、運営の効率化に努める事で労務費の伸びを抑えるものの、新校・増床及び移転に伴う地代家賃の増加(同4.5%増)やオリジナル教材や学習指導管理ツール作成に伴う原材料費の増加(同5.9%増)が見込まれる。一方、販管費は同2.0%の増の40億31百万円。大学受験部の新設に伴う人件費の増加(同5.5%増)や塾生募集に向けた販売促進費などのその他経費が増加(同5.9%増)するものの、費用対効果を勘案した宣伝媒体の見直しに伴い広告宣伝費が減少する(同4.2%減)他、消耗品費等の営業に直接影響しない経費節減を徹底する。

塾生数

塾生数(期中平均)は前期比4.1%増の30,900人を見込んでおり、内訳は、小学部14,247(同5.2%増)、中学部13,466人(同2.7%増)、高校部3,187人(同5.1%増)。会社別では、早稲田アカデミー(個別)が同4.0%増、野田学園(221人)が同13.3%増。

新規出校は10校舎を予定

新規出校は、集団指導6校舎(早稲田アカデミー4校舎、ExiV1校舎、Success18校舎)、個別指導4校舎(早稲田アカデミー個別進学館4校舎)の計10校舎を予定しており、期末校舎数は野田学園の2校舎を含め155校舎となる見込み。

(2)英語教育と教員研修事業の進捗状況

コア事業で培った教育ノウハウとブランド力を活かして新たな需要も取り込むべく、英語教育事業と教員研修事業(学校・同業者向け事業)の拡大を図っている。

英語教育の進捗状況
<取り巻く環境の変化>

国際競争力の向上を念頭に政府がグローバル人材の育成・強化に向けた取り組みを進める中、一部の大学が独自にグローバル化・多様化への対応を強化する等、英語教育を取り巻く環境が大きく変化している。
2013年12月に文部科学省が発表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」によると、高校卒業段階で、英検2級~準1級、TOEFL iBT 57点程度の英語力を目標に、2018年(平成30年)から英語が小学5年生・6年生の正式な教科となり、中学校では基本的に英語の授業が全て英語で行われるようになる。更に、高校の英語においては、英語で授業が行われる事に加え、発表・討論・交渉等の高度な言語活動を養成していく計画。いずれの取り組みも、2014年から環境の整備が進められている。また、大学入試においても、私立大学の一部が(上智大、立教大、中央大、関西大学等)、2015年(平成27年)から検定試験 “TEAP” のスコアを出願資格として採用する計画である他、大学入試センター試験においても、入試までに複数回チャレンジできる検定試験のスコア採用が検討されている。

<IBSブランドの展開>

こうした国や大学による英語教育改革の流れを受けて、今後、大学・高校、更には中学入試における英語の激変が見込まれる。同社は、「変化を見据えた指導力やカリキュラムを有する企業が生き残る事ができる」との考えから、2012年4月に東大・医学部・ハーバードに一番近い小学生たちの英語塾「早稲田アカデミーIBS」(Primary Course)を開設して小学校低学年向けの英語講座を開始し、その後、高校生を対象とした「早稲田アカデミーIBS 東大受験生のためのハーバード併願コース」、更には、集団指導校舎における新たな英語教育として、小学校高学年を対象とした「発話力」育成を中心に英語の4技能(読む、聞く、書く、話す)を養成する 「Dual Express ENGLISH」、海外の大学受験を視野に入れAll Englishで授業を行う中学・高校生対象の「TW Booster(トップウィン ブースター)」、と講座・コースを拡充すると共に内容のブラッシュアップに努めている。

<国立ラボ新規開設>

これまでは、「Primary Course」と「東大受験生のためのハーバード併願コース」の早稲田アカデミーIBSの2コースを早稲田アカデミーIBS御茶ノ水(東京都千代田区)において実施し、「Dual Express ENGLISH」及び「TW Booster」については、早稲田アカデミー及びSuccess18の校舎において実施してきたが、新たに「IBS国立ラボ」(東京都国立市)を開設し、2014年9月に「Dual Express ENGLISH」の小学5年生・6年生を対象としたコースと中学1年生・2年生コース(中学1年生・2年生向けのコース新設)の2コースを開講した。その後は年長から小学4年生を対象にした「早稲田アカデミーIBS Primary Course」を、小学1年生から小学4年生を対象にした「Dual Express ENGLISH」(小学1年生から小学4年生向けのコース新設)を、それぞれ順次開講する予定だ。

教員研修事業の進捗状況

教員志望者や現役教員を対象に、同社の講師研修ノウハウを凝縮した実践的な授業技術を伝授する「教師力養成塾」を、Webを活用して自宅や遠隔地でも受講できる「教師力養成塾e-講座」にリニューアルし、13年7月にグランドオープンした。同事業は公教育機関からも注目されてきたが(首都圏外の県の教育委員会から公立小・中学校の学力向上対策に関するアドバイザーを受任する等の実績を有していた)、15/3期は公教育の現場で相次いで実績があがっている。

2014年4月~
東京都足立区の小中学校教員研修で同社の教師力養成塾e-講座を導入
都内公立小学校や教育委員会から教員研修を受託
2014年6月~
大阪市教育委員会より中学校教員対象の「教員スキルアップ講座」を受託
2014年10月~
大阪府教育センターと公立高校教員対象の「校内研修」を協働実施(大阪府立佐野高校にて校内研修実施)

尚、「教師力養成塾e-講座」は、同社が長年培ってきた“子供のやる気を引き出す”授業ノウハウを映像に凝縮したもので、1チャプター約5分、通勤中や校務の隙間時間を使い自主的・効率良く・繰り返し学ぶ事ができる。また、定着度の向上を図るべく、ベテランインストラクターによる実践トレーニング(スクーリング)と学習効果を確認するための検定も用意されている。

今後の注目点
同社は、「合格実績戦略の下、首都圏全域で現在の2倍近い校舎数の展開が可能」と考えており、従来、5校程度だった年間の新規開校を、個別指導(14/3期末6校舎→15/3期末10校舎)や英語教育への対応強化も含めて10校程度に引き上げて成長を加速させる考え。この一環として、14/3期は7校舎(集団指導5校舎、個別指導2校舎)に増やし、15/3期は更に3校舎増の10校舎(集団指導6校舎、個別指導4校舎)を計画している。上期は英語教育の強化も含めた新規開校のための先行投資で前年同期比減益となったが、塾生の獲得や新規開校準備が計画通りに進んでいる事が確認できた。また、英語教育で成果があがっている事や、学習塾展開でのノウハウを活かした教員研修事業も公教育の現場で広がりを見せている事から、新たな教育ビジネス事業の創出も順調なようだ。投資家の成長期待を高めるために、今期は業績予想を確実に達成して中期計画の達成に向けた歩みを進めたいところだ。
株式会社インベストメントブリッジ
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個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
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