(3031:東証マザーズ) ラクーン 2015年4月期第1四半期業績レポート

2014/09/17

raccoon

今回のポイント
・15/4期1Qの売上高は前年同期比5.7%増加の490百万円。当期より「Paid事業」をEC事業から切り離し3セグメントとなったが、各セグメント共に増収となった。主力の「スーパーデリバリー」は流通額、会員小売店数、出展企業数ともに前期末を上回っている。粗利率は約2%上昇した。売掛債権保証事業において引き続き、営業力強化のために人員を増加したことで人件費が増加したものの、その他の販管費は全般的に低水準で推移した結果、営業利益以下大幅な増益となった。なお、この四半期より「スーパーデリバリー」の売上高及び売上原価の会計方針を変更している。営業利益以下に変更は無い。

・15/4期通期の業績予想は、上記理由により売上高を修正したが、実質的な変化があったものではなく利益予想に変更は無い。売掛債権保証事業が引き続き好調なのに加え、スーパーデリバリーの底入れ、Paid事業の拡大で増収を見込んでいる。一方、人員増に伴う販管費の増加の他、スーパーデリバリーの伸長度合および新サービス「COREC」の立ち上がりがどの程度なのかという不確定要素もあり、増益率は前期を下回ると見ている。
配当は現時点では未定だが、特別利益などは考慮しないベースで配当性向20%を目途に実施する考え。

・今期も他社との大きな違いである、「質」を重視したマーケットプレイス構築に注力しており、それが会員小売店、出展企業数の着実な増加に繋がっているようだ。また、「Paid事業」を新しいセグメントとして切り出したことからも、同事業が順調に育っていることが証明された。第1四半期の通期予想に対する進捗率を見ると、概ね巡航速度で進んでいると見られる。次回第2四半期決算説明会では既存事業の進捗に加え、新サービス「COREC」の立ち上がり状況に注目したい。

会社概要

中小企業間の取引を便利でスムーズに行うためのサービスを提供する企業として、インターネット上でBtoB(企業間電子商取引)市場である「スーパーデリバリー」というWebサイトを運営している。
「スーパーデリバリー」は、アパレル、雑貨を中心にメーカー、インポーター等の出展企業の取扱う商品を、全国の中小規模小売店に販売している。
2014年7月末での会員小売店数 41707店舗(前期末比1266店舗増)、出展企業数980社(同32社増)、商材掲載数451702点(同1413点減)となっている。

また、2010年11月に売掛債権保証事業を行っている(株)トラスト&グロースを子会社化。これによって中小企業間決済事業を新たな事業ドメインと位置づけし、本格的に取組を開始し、更に2011年10月から、企業間取引を安心かつスムーズにする後払い決済サービス「Paid(ペイド)」の提供を開始している。2014年3月からは、第4番目のサービスとして、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツール「COREC(コレック)」の提供を開始した。

【経営理念】

経営理念を「企業活動を効率化し便利にする」に刷新した。企業間取引に関し、これまで培ってきた情報と決済に関するノウハウを活かし、企業活動を効率化し便利にする仕組みを今後も提案していくというビジョンを表している。

小方社長は創業後、企業としての方向性をしっかり定め、経営者としてやっていく決意を固めるまでは安易に人を増やすべきではないという考えから従業員を一人も雇用せず、自分一人で同社を運営してきたが、方向性と決意が定まった2000年に初めて正社員30名を採用した。
当時の日本のEC業界は、米国に先例がある訳でもなく、自らがゼロから作り上げていかなければならない黎明期であったが、この最初のメンバーが中心となって、日本のBtoB ECを作り上げてきた。
同社においては、EC専門家の彼らが最大の経営資源であると小方社長は考えている。
今後、新しいビジネスモデルを創造していくにあたり、企業領域を明確にしていく必要性があると考え、経営理念を刷新することとした。
重要なポイントは以下の2点。

①事業領域の明確化の必要性

既存事業とのシナジーは特に意識しないが、同社のコア・コンピタンスであるノウハウを活用しながら、「中小企業向けBtoBインフラ」であること、「ECと決済の専門知識」を活かすものであること、に事業領域を絞りこむ。

②企業間取引のインフラサービス企業としての総合サービス化への転換

存在して当たり前のインフラとなるべく、今回の新サービス「COREC」に続き、第5、第6、第7と制限を設けず、新サービスを提供し続け、これまで以上に、よりインフラサービス業へと進化していく。

【事業内容】

「EC事業」、「Paid事業」、「売掛債権保証事業」の3セグメントで構成されている。

(1)「EC事業」

「スーパーデリバリー」はファッション・雑貨業界のメーカーと小売店が出会い、継続して取引を行うことができるBtoB(企業間取引)サイトである。サイトを利用することで、これまで取引のできなかったメーカーと小売店に新たな取引機会が生まれ、さらに新商品の紹介や受発注のやりとりも効率化される。また、代金はスーパーデリバリーが小売店から回収し、メーカーへまとめて支払うことから、未回収リスクのない取引の実現が可能となる。
加えて、「スーパーデリバリー」では「送料おトク便」に対応している企業であれば、複数企業からの仕入れでもまとめて1回分の送料600円(税抜)での仕入れが可能。更に、商品代金が20000円(税抜)以上で送料無料となるなど、「スーパーデリバリー」の活用により仕入れの幅が圧倒的に広がる。

スーパーデリバリーに参加するためには、同社の審査をパスする必要がある。
この点、同業他社の中には「数=取引量の拡大」を最優先とし、ネット小売店を中心に緩い審査基準で加盟店を数多く集める事に注力しているところもあるが、同社の場合は、「質」と「数」のバランスを重視するため小売店に関しては、ネット小売店ではなく、実際に店舗を運営している小売店であるか?などを中心に審査を行っている。
また、サプライヤーに関しても、質の高さを重視している。スーパーデリバリーの立ち上げ当初は質の高い、ブランドを確立したサプライヤーは、他のそうでないサプライヤーと共に並べられるのを嫌がり、参加を拒むケースもあったが、現在では他のサプライヤーの質も高い事が理解され、そうしたことは無くなっている。小売店にとっても、質の高いサプライヤーと取引出来る点が大きなメリットとなっている。
BtoC取引と異なり、BtoB取引は、取引量を拡大させるためには、リピート取引を如何にして拡大させるかがカギとなるため、マーケットのクオリティ向上が最も重要であると同社は考えており、この点が同業他社との大きな違いの一つとなっている。

また、同社はEC企業ではあるが、他社が、ECのマーケットプレイスを開設・運営するシステム会社という側面が極めて強いのに対し、同社はただ単にそれにとどまらず、アパレル・雑貨を中心とした商品知識、業界知識がきわめて豊富な点も、他社との違いとなっている。
「スーパーデリバリー」の収益は、出展企業から得る出展基本料(月額4万円)、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)、出展企業からのシステム利用料(会員小売店に卸した商品代金の10%)の3つから成っている。

2014年3月には、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツールサービス「COREC(コレック)」を同事業内でスタートさせた。

(2)Paid事業

「Paid」は企業間取引の非効率な管理プロセスや内在する信用リスクを解消する決済サービス。
Paidを利用することで、バイヤーはすべての加盟企業と締め支払いで取引が可能となり、効率的にかつ運転資金にゆとりを持った取引が実現できる。サプライヤーは登録するバイヤーと代金未回収のリスクや請求督促の手間なく決済ができ、効率的かつ安全で顧客に喜ばれる取引が可能となる。

(3)「売掛債権保証事業」

「売掛債権保証事業」は、11年4月期第3四半期から子会社化した(株)トラスト&グロースにおいて行っている事業である。「T&G売掛保証サービス」は、取引先が倒産した場合に、あらかじめ保証を掛けておけば、保証の枠の中で同社が損害分を代わって支払いするサービス。審査に際して、取引先に対する直接的なヒアリングや取引先からの申し込みなどは一切必要がない。独自の与信判断により90%以上の高い承認率を実現し、審査依頼から2営業日程度で回答も得られる。更に、顧客の商習慣に合わせた保証内容のカスタマイズが可能と利便性も高い。
2014年7月末の保証残高は4226百万円(前期末比9.8%減)となっている。

2015年4月期第1四半期決算概要
3セグメントとも好調。粗利率上昇、販管費増低水準で大幅増益。

売上高は前年同期比5.7%増加の490百万円。当期より「Paid事業」をEC事業から切り離し3セグメントとなったが、各セグメント共に増収となった。主力の「スーパーデリバリー」は流通額、会員小売店数、出展企業数ともに前期末を上回っている。粗利率は約2%上昇した。
売掛債権保証事業において引き続き、営業力強化のために人員を増加したことで人件費が増加したものの、その他の販管費は全般的に低水準で推移した結果、営業利益以下大幅な増益となった。

◎EC事業

売上高は前年同期比2.1%増の375百万円。セグメント利益は同14.0%増の34百万円。

<取組み>

主力事業「スーパーデリバリー」においては、「質の高さ」を出展企業、会員小売店が共に評価するようになった結果、横這い状況にあった購入者数、客単価、1社当たりの販売額は前期より上向きつつあり、再び拡大に向かうベースが出来てきたと考えている。
そこで、今期も質の高い会員小売店及び出展企業を獲得した上で、客単価や稼働率の向上を図り、両者の継続した取引を拡大することで流通額を増加させていくことに引き続き注力している。
前期より営業とMDが一体となって出展企業の獲得を進めているが、その効果が現れ始めており、新規出展企業数は増加傾向にある。MDが営業活動を行うことで、「スーパーデリバリー」に対する信頼性、ブランド価値が向上し、その結果、会員小売店からのニーズの高い出展企業の獲得増加に繋がっている。
*MD:「スーパーデリバリー」で流通するアパレル・雑貨商品の専門知識を持ったマーチャンダイザー)
また、2014年7月8日より、出展企業向けの商品管理画面をリニューアルした。インターフェイスの変更や在庫連動機能の追加等、出展企業が「スーパーデリバリー」で販売する商品を登録する際の作業負担を軽減することで、商材掲載数を増加させることを目的としている。
前期3月下旬よりサービス提供を開始した「COREC」は、引き続き知名度の向上及びユーザー(サプライヤーとバイヤー)の獲得に注力するとともに、ユーザビリティ向上のために機能の追加を順次行った。2014年7月末の「COREC」ユーザー数は759社となった。
◎Paid事業

売上高は前年同期比27.3%増の59百万円。セグメント損失は7百万円(前年同期は13百万円の損失)。

<取組み>

「Paid」の取引高は順調に増加し、連結売上高に占める「Paid」売上高の重要性は今後ますます増大すると見込まれることから、EC事業から切り離し「Paid事業」として新たにセグメント区分を追加した。
2015年4月期第1四半期の取引高は前年同期比25.5%増の、2326百万円となった。2011年10月のサービス開始以来、赤字が継続しているが、取引高は順調に増加し、赤字幅も縮小している。
引き続き加盟企業の獲得を積極的に進めている。印刷業や食品業等、アパレル・雑貨以外の業界の利用が増加していることからアパレル・雑貨以外の業界への対応を強化している。
「Paid」は、「スーパーデリバリー」の出展企業と会員小売店間の決済を行い蓄積したノウハウ・経験をもとに開発にいたったサービスであるという経緯から、サービス開始当初は、「スーパーデリバリー」で取り扱っているアパレル・雑貨業界の取引が中心だった。だが、「Paid」は業界に縛られることなく企業間で広く活用できる決済サービスであることが徐々に認知されてきており、「Paid」を利用する加盟企業とPaidメンバーの業界の幅が広がっている。
さらに、営業に依存することなく事業拡大できる体制を構築していくため、マーケティング業務を中心とした人員の増加を行った。これにより人件費が増加し「Paid」の黒字化は若干遅れる結果となったが、今後の事業規模拡大のための先行投資であり、利益に与える影響は一時的なものであると認識している。なお、増加人員は、主に「スーパーデリバリー」からの異動であるため、連結業績に与える影響は軽微とのこと。
◎売掛債権保証事業

売上高は前期比22.4%増加の501百万円。セグメント利益は同62.3%増の19百万円。

<取組み>

引き続きネット広告の梃入れ等を含めた営業力強化に取り組むことで保証残高の拡大を図った。
しかし、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要後の反動減と代理店施策の変更により、保証残高は前期末比9.8%減少の4226百万円となった。
ただ、新規クライアントの獲得が順調であるため、保証残高の低下は一時的であると認識している。
成長余地はまだまだ大きいと考えており、事業拡大に注力していく。

現預金の増加、売掛金の減少等で流動資産は88百万円減少し、資産合計も57百万円減少の3171百万円となった。
買掛金減少等で流動負債は97百万円減少し、負債合計も67百万円減少の1616百万円となった。純資産は利益剰余金の増加等で10百万円増加の1555百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より1.2%上昇の49.0%となった。

(4)トピックス
◎会計方針の変更「売上高を純額表示へ」

これまで、「スーパーデリバリー」において売上原価に計上していた商品仕入高について、当四半期より、売上高と相殺して表示する方法「純額表示」に変更した。

<理由・背景>
同社は、Paid事業の確立及び売掛債権保証事業の重要性が増したことを契機に、企業間取引を効率化するためのインフラサービス事業としての総合サービス化を進める中で、「スーパーデリバリー」の役割、機能及び位置付けの見直しを行った。
すると、在庫リスクを持たない「スーパーデリバリー」事業自体が負担する信用リスクは、Paid事業の確立及び売掛債権保証事業のノウハウの利用を通じて軽減されており、「スーパーデリバリー」は企業間取引を効率化するためのインフラの提供としての機能が中心となってきていることから、流通額自体の多寡を示すこれまでの総額表示ではなく、インフラサービス利用料を示す純額表示額を「スーパーデリバリー」のインフラサービスに係る売上高として表示する方が、経営成績をより適切に表示すると判断した。

また、この変更に伴い、従来販管費に計上していたシステムに関する償却費、決済手数料及びその他の「スーパーデリバリー」運営関連費用を「スーパーデリバリー」の利用料に対応する売上原価項目としている。
この変更は、「スーパーデリバリー」がインフラサービス利用料として売上計上することに併せて対応する売上原価を見直した結果、「スーパーデリバリー」のインフラの提供機能に直接関連する費用を売上原価とすることが経営成績をより適切に表示すると判断したことによるものである。

この会計方針の変更は遡及適用され、2014年4月期第1四半期及び2014年4月期については遡及適用後の連結財務諸表となっている。
また、この変更に伴う表示方法の変更も反映させており、2014年4月期第1四半期及び2014年4月期については組替後の連結財務諸表となっている。

この結果、遡及適用を行う前と比べて、2014年4月期第1四半期の売上高は1982百万円、売上原価は1944百万円、売上総利益は37百万円減少しているが、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益への影響はない。また、2014年4月期の期首純資産への累積的影響額はない。

2015年4月期業績予想
不透明感はあるものの今期も増収・増益を継続

前述のように「スーパーデリバリー」の売上表示を純額表示としたため、2014年6月に公表した通期売上高予想を変更したが、利益面での変更は無い。
売掛債権保証事業が引き続き好調なのに加え、スーパーデリバリーの底入れ、Paid事業の拡大で増収を見込んでいる。一方、人員増に伴う販管費の増加の他、スーパーデリバリーの伸長度合および新サービス「COREC」の立ち上がりがどの程度なのかという不確定要素もあり、増益率は前期を下回ると見ている。
配当は現時点では未定だが、特別利益などは考慮しないベースで配当性向20%を目途に実施する考え。

今後の注目点
今期も他社との大きな違いである、「質」を重視したマーケットプレイス構築に注力しており、それが会員小売店、出展企業数の着実な増加に繋がっているようだ。また、「Paid事業」を新しいセグメントとして切り出したことからも、同事業が順調に育っていることが証明された。
第1四半期の通期予想に対する進捗率を見ると、概ね巡航速度で進んでいると見られる。
次回第2四半期決算説明会では既存事業の進捗に加え、新サービス「COREC」の立ち上がり状況に注目したい。
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