(2931:東証マザーズ) ユーグレナ 2014年9月期第2四半期業績レポート

2014/06/25

eugulena

今回のポイント
・世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を成功させたバイオテクノロジー企業。ミドリムシの優れた特性を活かし、食品を皮切りに、化粧品、化成品、飼料、燃料など事業分野を拡大。ヘルスケア事業における自社製品の高い利益率と安定したキャッシュ・フロー創出力、有名企業、大学との提携による強力な研究開発体制などが特徴。バイオジェット燃料実用化に向けたコスト低減の過程で、他分野の製品化を進め、ヘルスケア事業の収益性をより高めることができる点も特色。

・14/9期 2Qの売上高は前年同期比75.8%増の14億53百万円。主力製品「ユーグレナ・ファームの緑汁」の販売が、好調に推移。中でもECサイトや電話による直接販売が急速に伸びており、粗利率向上。広告宣伝、研究開発など増加の中でも営業利益は約4割増加。

・14/9通期見通しに変更は無い。直接販売を中心にヘルスケア事業の順調な拡大を見込んでいる。利益計上は下半期偏重となっている。

・利益計上に加え、トップラインを着実に伸ばすことが出来る収益構造となっている点が、他の大多数のバイオベンチャーにはない大きな特長、強み。「ミドリムシを使ったジェット機の燃料開発に取り組んでいる会社」という側面のみに注目してしまうと、真の姿を大きく見誤る。株価変動率の高さは避けがたいが、ヘルスケア事業の成長性、バイオジェット燃料事業の進捗度合い、双方を注目していきたい。

会社概要

世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を成功させたバイオテクノロジー企業。ミドリムシの優れた特性を活かし、食品を皮切りに、化粧品、化成品、飼料、燃料など事業分野の拡大を進めている。ヘルスケア事業における自社製品の高い収益率と安定したキャッシュ・フロー創出力、有名企業、大学との提携による強力な研究開発体制などが特徴。グループは同社及びミドリムシ培養を行う子会社八重山殖産(株)と、奈良先端科学技術大学院の教授8名を中心に設立された株式会社植物ハイテックの計3社。

【沿革】

創業者である出雲社長は、東京大学に在籍中の1998年、学外活動の一環で発展途上国のひとつであるバングラデシュを訪れ、そこで飢餓、貧困問題と出会う。バングラデシュは、炭水化物はあるものの、多くの人々が、人間として必要な栄養素であるタンパク質、ミネラル、ビタミンが足りていない現状だった。その時飢餓、貧困の解決を強く意識した出雲社長は、農学部に転部後、豊富な栄養素を有するミドリムシの存在を知る。飢餓、食料問題の解決、二酸化炭素削減による地球温暖化防止にとどまらないミドリムシ活用の将来性を確信した出雲社長は、様々な困難を乗り越え、2005年12月に世界初の屋外大量培養に成功する。その成功を皮切りに、ミドリムシ食品の販売を開始すると共に、バイオジェット燃料の開発を目指した有力企業や大学との研究開発体制を相次いで構築。ヘルスケア事業の急速な立ち上がりの中、2012年12月に東証マザーズに上場した。2013年にはミドリムシ生産委託先の八重山殖産(株)を完全子会社化し、研究開発及び生産体制の拡充を進めている。

【経営理念・ビジョン】

同社のWEBサイト内の「企業情報」ページには、ここに挙げた「経営理念」、「企業ビジョン」の他、「another future.~ミドリムシが地球を救う~」と題し、「僕らの武器はミドリムシ。環境問題、食料問題、エネルギー問題、健康問題・・・。
この星の困難を一気に乗り越えてくれるかもしれない生物。僕らの意思は簡単だ。この無限の可能性とともに新しい未来をつくること。」で締めくくられる「スローガン」、事業や人生に向かい合う度胸の有無を問いかける「5 GUTS」など、他社には中々見ることがない「企業の想い」が豊富に掲げられている。
また、このレポートでは詳細には触れるスペースはないが、出雲社長の著書『僕はミドリムシで世界を救う事に決めました。東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』を読むと、出雲社長を始めとした創業メンバーが、ミドリムシの可能性に確信を持ち、互いを尊敬しあい、ビジネスに邁進していく様子が臨場感一杯に記されている。そしてその底流にあるものは当然の事だが、ミドリムシで地球を救うという「想い」であることが良く分かる。

例えば、なぜ同社が世界で初めてミドリムシの屋外大量培養を成功させることができたのか?
取締役 研究開発担当の鈴木健吾氏の長年に渡る研究の積み重ねや才能に負うところも大きいが、それに加えて、大阪府立大学の中野教授を始めとしたミドリムシを長年研究してきた各大学や研究機関が行ってきたデータの集積を行う事が出来たことがポイントだった。しかし、通常は学内に蓄積されて外に出難いこれらのデータを、オープンにして貰えるよう全国の研究者を巻き込んでいくことができたのは、出雲社長らの「若さ」、「想い」が大きな力となった事は間違いないだろう。加えて、前掲書にもある通り、そうした想いを受入れ、積極的に全国のユーグレナ研究者に協力を呼びかけた中野教授の心意気も見逃すことはできない。
「事業とミドリムシに対する想い」は投資家として是非知っておくべき同社の重要な構成要素といえるだろう。

【事業内容】
① ミドリムシとは?

「ミドリムシ」は藻類、中でも特に小さい微細藻類の一種で、体長わずか約0.05mm。
5億年以上前に誕生した生物で、1660年代にオランダの科学者で「微生物学の父」とも呼ばれるレーウェンフックによって発見された。その後、様々な研究が重ねられる中で、以下の様な特性を備えていることが判明。今後の人間社会を大きく変革するユーグレナの可能性に同社はいち早く注目し、事業化に取り組んでいる。

植物と動物両方の特性を持つ。
藻類でありながら植物と動物双方の特性を持つユニークな生物である。
植物として光合成を行い、栄養分を体内に備える。
ビタミンなど栄養素の生産効率は稲の約80倍とも言われている。また、大気中の約1,000倍という高濃度の二酸化炭素の中でも成長していける適正能力を持つ。
「二酸化炭素を炭水化物等に固定化して酸素をつくる」能力も高いため、温室効果ガスの一種である二酸化炭素削減、地球温暖化対策に有望と期待されている。
動物として豊富な栄養素を備えている。
一方、動物としての性質も備えていることから、植物産出のビタミンに加え、ミネラル、アミノ酸の他、DHA、EPA、アラキドン酸、リノレン酸といった不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素を備えており、人間に必要な栄養素の大半を、ユーグレナは含んでいる。こうした性質から、普段の食生活で不足しがちな栄養を補う栄養補助食品やサプリメントとして有効なことに加え、発展途上国など、炭水化物ではなくビタミンやミネラルが不足している国々の栄養失調解決に向けた食料援助の素材としても有用。
また、このように豊富な栄養素を含んでいることから、人間の食用にとどまらず、動植物の成長を助ける飼料、肥料としても利用価値が高いと同社では考えている。
高い栄養消化率
通常、植物の細胞は細胞膜の周りを細胞壁が覆っている。植物細胞が有する栄養素を効果的に消化吸収するにはこの細胞壁を分解するためのセルラーゼという酵素が必要だが、人間は保有していないため植物細胞からの栄養素の消化効率は低い。しかし、ユーグレナには通常、植物にあるはずの細胞壁がなく、細胞を覆っているのは細胞膜のみであるため、効率的な消化が可能である。
ミドリムシのみが持つ特殊な天然物質「パラミロン」
ミドリムシ特有の成分として、β-1,3-グルカンの高分子体である特殊な天然物質「パラミロン」がある。食物繊維の一種である「パラミロン」の表面には無数の小さな穴(ミクロホール)が開いており、プリン体などの不要物を取り込む。そして、食べても消化されにくいため、こうした不要物を体外へ排出する効果を持つ。
同社では、ミドリムシを摂取することでプリン体の吸収を抑制し、尿酸値を下げる効果があることについて「パラミロンのプリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤」という関連特許を取得している。また、後述のように、大腸がん抑制効果、床ずれの予防・改善効果、免疫バランス調整機能などについて研究を進めている
バイオ燃料としての優位性、有効性
植物、藻類などから作り出されるバイオ燃料は、石油などの化石燃料と違って資源が枯渇する心配が少ない。また、化石燃料は燃焼させると新たに二酸化炭素が排出されるが、バイオ燃料は原料となる植物、藻類が成長する際に二酸化炭素を一旦固定し、燃焼時に固定化された二酸化炭素を燃料として排出するため、全体で見れば理論上二酸化炭素の排出量はプラス・マイナスゼロ(カーボンオフセット)となる。このため、地球温暖化の防止に効果があると考えられている。ミドリムシは、光合成によって二酸化炭素を固定して成長する時、油脂分を作り出しており、これがバイオ燃料の原料として利用可能。特にユーグレナから抽出・精製されたオイルは軽質であるため、他の微細藻類に比べてもジェット燃料に適していることが分かっている。
また、他のバイオ燃料、中でもトウモロコシやサトウキビ等の安い穀物を発酵・濾過してアルコール(エタノール)を作り出し、乗用車・小型トラック用のガソリンを代替するバイオマスアルコール燃料も既に実用化されているが、これらは「食料との競合性」という課題が残る。ミドリムシは畑を転用する必要が無いため食料との競合は起こり難い。
他にもさまざまな活躍の場
他にも、乳酸菌の活性化、水質改善など、ミドリムシは様々な働きを持つと考えられており、同社では、スローガンにあるように、無限に広がるミドリムシの力で、新しい地球の未来「another future.」を創り出すことを目指している。
② 事業セグメント

現時点での同社の事業セグメントは「ヘルスケア事業」と「エネルギー・環境事業」の2つ。

◎概要

ミドリムシを利用した食品、機能性食品、化粧品などを自社商品、OEM、粉末原料などの形態で販売している。
自社商品はミドリムシを利用した青汁タイプの「ユーグレナ・ファームの緑汁」を中心に、自社のWEBサイトなどの通販にて販売している。
OEM提供では、サプリメントや化粧品を顧客企業の要望に合わせた製品として供給している。
粉末原料販売は、伊藤忠商事(株)が販売を担当。

現時点ではOEMの比率が直販を上回っているが、今後は直販を大きく伸ばしていく方針。
WEBサイトによる直販体制は2012年5月から本格スタートしたが、紙媒体およびWEB広告のマーケティングデータの収集、分析、検証もほぼ終了し、有効かつ的確な広告宣伝を行ってユーザーを大量に取り込むことのできる体制が整った。

「ミドリムシ」という名前のユニークさに加え、ヘルスケア事業のブランド価値を高める様々な取り組みを通じ、メディアへの露出が増大。数多くのメディアで取り上げられている。

◎概要

温室効果ガス排出量削減が世界的課題となる中、二酸化炭素を排出する化石燃料を大量に使用する航空会社にとっても、その本格的な対応が求められるようになっている。
そうした中、2009年に日本航空と全日本空輸がジェット燃料供給大手の新日本石油株式会社(現:JX日鉱日石エネルギー)にバイオジェット燃料の開発を要望。これを受け、2009年9月より新日本石油株式会社(現:JX日鉱日石エネルギー)及び株式会社日立プラントテクノロジー(現:日立製作所)と共同で、ミドリムシを原料としたバイオジェット燃料の製造に関する研究を開始した。2018年の技術確立、2020年の実用化を目指している。

◎バイオジェット燃料を取り巻く動き
航空機の代替燃料は、CO2削減の観点から、バイオ燃料が唯一の選択肢
2008年から2009年にかけ様々な試験飛行が行われ、バイオジェット燃料の技術的信頼性を立証
航空機が飛行する運航条件に即し、航空燃料には厳しい基準が課せられている。
バイオジェット燃料にも同等の基準が課せられ、これらの基準に適合することで使用可能になる。
環境負荷軽減の観点から世界各国で様々な取り組みが行われ、国家規模のプロジェクトも。

(日本航空:2012年9月 航空バイオジェット燃料の動向「過去、現在、未来」より引用)

世界的に様々な原料の可能性が検討されているが、日本では藻類を原料とする研究開発が先行している。2012年5月には「微細藻類燃料開発推進協議会」が設立され、同社研究グループ以外にも、数社が参加しているが、同社は以下の理由から、微細藻類がバイオ燃料に適しており、なかでもミドリムシが優れていると考えている。

① 微細藻類は農業と競合しない
既存作物の畑作地を非食用植物の農地に転用すると間接的に食料生産に影響を与えるが、微細藻類は農耕に適さない土地での生産が可能であり、農業と競合し難い。

② 微細藻類は工業生産が可能
微細藻類は、生体の触媒を使って物質の合成や分解を行う反応器であるバイオリアクターや培養プールでの大量培養が可能であり、効率的かつ安定的な工業生産が可能。

③ 微細藻類は単位面積当たりの生産性が高い
微細藻類は単位面積当たりの生産性が高いため、他の作物と比べて所要面積が少なくなる。カメリナやジャトロファといった他の植物性バイオ燃料に比べると、同量の油を生産するための必要面積は、1/30~1/40で済む。

④ ミドリムシに含有する油脂は微細藻類の中でもジェット燃料に適した炭素構造を持っている
ジェット燃料に使用される灯油の脂肪酸は炭素数9~15。多くの微細藻類の体内で生成される油脂の脂肪酸は炭素数16以上だが、ミドリムシの体内で生成される脂肪酸は炭素数14をピークとして12~16を多く含んでおり、藻類の中でもジェット燃料に適している。

◎バイオジェット燃料開発プロジェクト

現在、バイオジェット燃料の実用化に向けて、同社では以下のプロジェクトに参加している。

このうちNEDOの研究は主としてミドリムシの増殖速度を向上させるための研究で、最初のテーマにおいては屋内大型設備において、一平方メートル当たり・一日当たり38gの培養および油脂含有量30%という目標を達成した。現在は開発期間2年間の延長が決定し、屋外での新たな生産性目標の達成に向けた研究を進めている。
後者のテーマに関しては2014年3月に政府支援は終了し、研究開発はパートナー等と継続していく。
一方、JSTの研究では、ユーグレナが光合成によって大量に生産する、バイオディーゼル燃料としての利用が期待されるワックスエステルの醗酵経路とその調節機構の解明、および関連有用遺伝子による形質転換技術を用いて、より高い光合成活性を持ち、ワックスエステルの高生産が可能な「スーパーユーグレナ」作出のための基盤技術の確立を目指している。つまり、より効率的に、より大量のバイオネット燃料の原材料となる油脂を作り出すユーグレナを培養しようというもの。これも後述のように、着実に成果が積み上がっている。

ジェット燃料の市場規模について正確な統計は見つけることが出来なかったが、弊社では以下のデータから、約1兆円と推計した。
*国内ジェット燃料油生産量 平成23年 12,909千キロリットル(経済産業省 資源・エネルギー統計年報)
*民間航空機用航空燃料(JET A-1) 単価85.5円/リットル(平成24年4月 千葉市における入札結果)

強みと特徴
「バイオテクノロジー企業」である同社の最大の特徴は、その研究開発体制
◎オープン・イノベーションにより単独では実現できない技術開発を実現

2005年、同社は世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功した。
多くの研究者が長年研究してきたにも拘らず、なぜ同社が世界で初めて実現できたのか?
その一つの解は、同社が自社の力のみに頼らず、他の大学や研究機関のデータ、技術、アイデアを巻き込んで革新的なアウトプットを生み出す「オープン・イノベーション」を志向、実現することができたことにある。
同じミドリムシの研究でも、各大学はそれぞれが得意分野を持っている。同社はゲートキーパーの立ち位置で、各大学が得意とする研究分野について研究を依頼し、その知見を同社が集約し事業化を実施することで、単独では実現できない技術開発を実現している。

◎事業化を実現するための有力企業とのアライアンス

多くの有力企業と積極的にアライアンスを組んでいる点も特徴的だ。
事業化を実現するためにはバイオマスの原料開発だけではなく、実際にマーケットに近い企業と共同研究を実施する必要があることから、技術開発だけに留まらない事業開発を目指している。
今後も、アプリケーションに応じて様々な企業との共同研究を進めていく。

また、原料販売申請、販売体制構築面でのパートナーである伊藤忠商事との提携は、立ち上がったばかりの同社の信頼性を向上させる上での大きな契機だった。
他にも、ヘルスケア事業の拡大に最も必要なマーケティングを展開するため電通とも資本提携を行っている。

基本的事業戦略
1.「バイオマスの5F」に基づくコスト低減戦略

同社の事業戦略を見る上で最も重要なのが「バイオマスの5F」というコンセプトだ。

これは、食料(Food)、繊維(Fiber)、飼料(Feed)、肥料(Fertilizer)、燃料(Fuel)の頭文字をとったもので、バイオマスの用途を、上から付加価値の高い順、もしくは重量単価が高い順に並べたもの。
元々は、“付加価値の高い利用法が、付加価値の低い利用法より優先されるべき”という考え方を表したものだが、同社では、ミドリムシの実用化に向け、「5F」の付加価値という点に着目して事業戦略を構築している。

つまり、付加価値の高いものから低いものに順次参入していくと共に、最も付加価値の低い=最も低コストで生産しなければならない燃料にターゲットを定めて、生産コストの低減を進めていくものだ。
同社の研究開発の主眼は、「微細藻株の改変・育種」、「培養方法の改善」などだが、これらは全て生産コスト低減のためである。
創業以来現在まで、2回の大きな技術革新によって生産コストを下げてきたが、今後も培養技術の向上と生産設備の大型化を通じて更なる生産コストの低減を図り、バイオジェット燃料の実用化を目指している。

この「バイオジェット燃料実用化に向けたコスト低減への取組み」が同社の今後の収益状況を占う大きな鍵になる。

「5F」のコンセプトに従って、バイオジェット燃料をターゲットとしたコスト削減が可能な段階に進めば、その上に位置する4つのFは全て、当然利益を確保できる状況にあり、現在既に事業が軌道に乗っている食品、化粧品といったヘルスケア事業の収益性は更に高まることとなる。
また、仮にバイオジェット燃料のコスト削減が計画通り進まなかったとしても、その前段階である食糧・繊維・飼料・肥料分野では収益性を向上させることが出来ているので、同社の場合は、コスト削減のための研究開発投資は「掛け捨て」、「All or Nothing」となるものではない。

今後は、直販比率の向上に伴うヘルスケア事業の一層の成長によって安定したキャッシュ・フローを生み出し、エネルギー・環境事業へ投資。燃料が収益に貢献する段階では、既に食品、化粧品、飼料、化成品といった分野も大きく成長していると見ている。

2.その他の取組み

「Food」、「Fuel」以外の分野では、現在、「Fiber 」、「Feed」、「形質転換」について注力している。
同社の取組みや市場環境についてまとめてみた。

①「Fiber(繊維)」

製品としては、「化粧品」、「その他化成品」を指す。
化粧品としては、ミドリムシ粉末を加水分解したエキス「リジューナ(Rejuna)」を活用した化粧品を既に製品として販売している。リジューナは、紫外線(UV)に対する防御力の強化、若々しい肌作りに大きな影響を及ぼす皮膚線維芽細胞の増殖効果、美肌作りに重要な要素と言われるコラーゲンの合成促進といった働きを持つことがわかっている。
加えて、2014年3月からは、自社化粧品ブランド「B.C.A.D.(ビー・シー・エー・ディー)」の販売を開始した。その他化成品については、前述の「パラミロン」の機能を活かした化成品の研究開発を進めている。

総合マーケティングを行う(株)富士経済による機能性化粧品動向調査(2011年)によると、スキンケア市場 2,000億円、アンチエイジング市場 600億円ということであり、大きな市場が控えている。

②「Feed(飼料)」

2013年12月20日より、「ユーグレナ・ファームのドッグフード」の発売が始まった。
一般社団法人ペットフード協会の調べによると、平成23年度の用途別出荷額は、犬用 1,425億円、猫用 1,096億、観賞魚用 47億円となっており、出荷総額は2,643億円と、こちらも大きな市場が形成されている。

また、日本における家畜用飼料の現状を見てみると、飼料の内、タンパク質を多く含み肉用牛や豚、鶏の短時間での肥育、莫大な産乳・産卵に欠かせないとされる「濃厚飼料」は国土条件などの制約から飼料向けの穀類の生産が国内では難しいため、自給率は平成23年度で12%と極めて低い。農林水産省は国内畜産経営安定の観点から、国産飼料に立脚した畜産の確立が必要という観点から、濃厚飼料自給率を2015年度までに14%に引き上げるという目標を掲げている。(引用:農林水産省「飼料自給力・自給率の向上に向けた取組」など)
豊富な栄養素を有するユーグレナが活躍する場となることも考えられる。

③形質転換については、前出の「バイオジェット燃料開発プログラム」を参照。

業績概要及び見通し
ヘルスケア事業が順調に拡大。直接販売の成長で粗利率は4%上昇

売上高は前年同期比75.8%増収の14億53百万円。ヘルスケア事業の主力製品である「緑汁」の販売が、積極的な認知度向上策の展開もあり、好調に推移した。中でも同社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」や電話による直接販売が急速に伸びており、粗利率向上に繋がっている。
同社では、「売上毎期30%成長、粗利率50%以上維持」を目標とし、粗利益を可能な範囲で広告宣伝、研究開発などの投資に振り向けることを基本戦略としているが、そうした中でも営業利益は約4割増加した。公募増資に伴う株式交付費の発生、前年同期にあった負ののれん発生益が無くなったこと等により、経常利益、四半期純利益は減少した。

ヘルスケア事業のセグメント利益率は、2014年9月期第2四半期で21.5%となっている。

公募増資等による現預金増や投資有価証券増で総資産は前期末に比べ90億円増加した。一方負債は投資有価証券の約定金額12億円を未払金に計上したこと等により同12億円増加。純資産は公募に伴う資本金、資本準備金増で77億円増加した。この結果、自己資本比率は前期末の78.2%から約5%上昇し、83.6%となった。

営業CFはまだ水準は低いもののプラス幅は拡大している。公募増資による収入77億円で財務CFは大幅なプラス。

業績予想に変更はない。ヘルスケア事業の成長で5割増収。利益は広告宣伝、研究開発へ積極投資。

業績予想に変更は無い。積極的かつ効果的な広告宣伝活動を実施し、直接販売を中心にヘルスケア事業の順調な拡大を見込んでいる。一方、直販比率拡大に伴い粗利率は上昇するが、利益は広告宣伝及び研究開発に積極的に投資する。上半期実績の通期予想に対する進捗率は表の通りで、利益計上は下半期偏重となっている。

会社側では、現在の株価バリュエーション等からは投資家は目先の利益では無く、中長期のより大きい利益獲得を期待していると考えられるため、毎期適切な投資を継続していくことを重視している。もちろん健全な営業キャッシュ・フローを投資家に示す必要があるという事も認識している。

各セグメントの進捗
【1.ヘルスケア事業】
<直接販売の拡大>
粗利率が高く成長の果実を享受しやすい自社製品(食品、化粧品)の販売強化に引き続き注力。中でも、「緑汁」を中心とした月額3,000円以上の中価格帯商品のネットや電話を通じた直接販売の拡大に積極的に取組んでいる。
同社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」の顧客数は順調に拡大している。2014年4月の月間購入者は17,617人。そのうち毎月自動的に購入・配送を選択している定期購入者は13,093人で、24カ月連続純増となったが、早期の2万人突破を目指している。
こうした中、直接販売による食品の売上は前年同期の4倍に急拡大し、売上構成比は20%を突破した。これに伴い、総売上高に対する粗利率も今上期59.8%と、前年同期の55.8%、前下期の53.9%から着実に上昇している。
<認知度向上施策>
「ミドリムシを当たり前に」をテーマに、ナショナルブランドとの共同商品開発を行っている。前期の、「ファミリーレストラン・デニーズでのミドリムシ入りハンバーグ御膳提供」、「ユーグレナ入りヨーグルトのコンビニ、量販店での販売」、「UHA味覚糖との『ユーグレナのど飴』の共同開発」に続き、イトーヨーカ堂と「ミドリムシカラダに委員会」プロジェクトを発足させた。
これは全国のイトーヨーカ堂165店舗において、大手食品メーカー8社と共同開発した9商品を販売するもので2014年4月15日から販売がスタートした。他社からの問い合わせも多数あり、今後の実施も検討している。
認知度向上のため「ユーグレナ・ファームの緑汁」動画プロモーションも開始した。著名クリエーター 井上涼氏作成の動画プロモーションをWEBおよび熊本県のTVで展開している。TVについては、反応を見つつ他県への展開も考えている。
<自社ブランド商品の拡充>
新たな収益の柱とすべく自社ブランド飲料「飲むユーグレナ/飲むミドリムシ」の販売を開始した。同社ECサイトの他、イトーヨーカ堂165店舗、ナチュラルローソン105店舗での販売を予定している。初の試みとして、東日本では「飲むユーグレナ」、西日本では「飲むミドリムシ」と、同じ商品ながら別の商品名を採用した。
自社化粧品ブランドもリリースした。ブランド名は「B.C.A.D.」。紀元前を意味する「B.C.」と紀元後を意味する「A.D.」を組み合わせたもので、5億年前から地球に存在するミドリムシと、現代の同社による最先端技術(世界初の屋外大量培養技術)の出会いによって生まれた商品という事を意味する。
ラインアップは洗顔、化粧水、美容液、クリームなどで価格帯は3,000円から7,000円。TV通販「ショップチャネル」、百貨店、美容室、エステサロンWEBサイトで3月より販売を開始した。先行して食品も扱っていた「ショップチャネル」では初回、出展全商品が完売したという事で順調なスタートとなっている。下期からの業績数値への反映を見込んでいる。
<海外戦略の進捗>
前回のレポートでも触れたが、海外市場開拓に向けても体制を構築中である。メインターゲットはどちらも巨大市場が見込まれる東アジア・中国と、東南アジアのイスラム国。
「ミドリムシ」の、中国で食品事業を展開するのに必要な「新食品原料(※)」としての登録が完了した。これにより、中国全土でミドリムシを使用した食品を販売する事が可能となったため、資本提携先である伊藤忠商事(株)と連携してOEM供給先開拓の準備を進めている。
中国では、近年健康食品市場が拡大しており、中国保健協会は市場規模が2015 年まで毎年10%以上の成長を示すとの予測を発表している。
(※)新食品原料:中国国内で食習慣のないものや新技術による食品原料などを販売する際は、「新食品原料」として審査を受け、中国衛生部による審査を経て、登録の認可を取得する事が必要になる。
インドネシア、バングラデシュなどアジアのイスラム国家において必要な「ハラール認証(※)」も取得が完了。これにより、60兆円とも推測されるイスラム圏のハラール食品市場への参入が可能となる。

2014年4月からはバングラデシュで小学校児童を対象としたミドリムシ入りクッキーの配布などを行う「ユーグレナGENKIプログラム」を開始した。創業のきっかけとなったバングラデシュの母子を中心とした栄養改善を進めていく。

(※)ハラール:イスラム法の下では豚肉を食べることは禁じられているが、その他の食品でも加工や調理に関して一定の作法が要求される。この作法が遵守された食品が「ハラール」と呼ばれる。
<国内食品事業のビジネスモデルの転換について>

同社では、国内におけるミドリムシ食品市場を2018年までに300億円まで拡大させるという目標を掲げているが、この市場創出と売上、利益の拡大を目指して、従来のOEM販売中心のビジネスモデルから、直接販売および自社流通(自社ブランド商品の他社ルートでの販売)中心のモデルへの転換に取り組んでいる。

現在の売上構成を見ると、約60社のOEM販売先を通じたOEM販売が最も大きい。この60社は、それぞれの商品名で、それぞれの広告宣伝を行い、それぞれのカスタマーサービスを購入者に提供している。
購入者の立場からすると、原材料は同じミドリムシであるのに、異なった製品名で販売されていることになり、大変わかりにくい。また、取り扱っているOEM先が劣悪なカスタマーサービスを提供するようなことがあれば、ミドリムシのブランド力そのものが毀損する恐れがあるほか、値下げ競争が起こる可能性もある。

資金力が小さく、信用力も低かった頃はOEM戦略が適切であったが、現在のステージではOEM販売を中心に据える必要性は小さくなったため、OEM先の中でも売上規模の大きい上位数社には従来通りOEM製品を供給する一方、残りのOEM先には、自社製品を取り扱ってもらうよう交渉を行っており、進捗は順調ということだ。

このビジネスモデルの転換により、同社はダイレクトマーケティングを中心とした「自社チャネル」を通して、チャネル属性や価格帯、機能性に合わせた「適切な商品群」を、「統一されたマーケティング戦略」の下でユーザーに提供することとなる。このモデル転換によって売上の拡大と利益率の向上を実現し、2018年には国内ヘルスケア事業のみでの「売上高 150億円、営業利益30億円以上」達成を目指している。

【2.エネルギー・環境事業】
<進捗状況>
2014年4月東京大学アントレプレナープラザ内にあった中央研究所を、横浜新技術創造館リーディングベンチャープラザに移転した。研究スペースが倍増したことに加え、隣接する、植物生理学において先端の研究を行っている「理化学研究所 植物科学研究センター」と包括共同研究協定を締結したことで、研究開発体制が一段と強化された。
ユーグレナが有する特有成分である「パラミロン」に関し、高度培養生産技術の開発のほか、大腸がん抑制効果、床ずれの予防・改善効果、免疫バランス調整機能などについて研究を進めている。
バイオジェット燃料の技術確立に関しては、目標とする2018年に向けて研究開発は順調に進んでいる。公募増資による資金調達が完了し、2014年からは要素技術の検証に着手している。
より高い光合成活性を持ち、燃料の原料となるワックスエステルを高生産できる「スーパーユーグレナ」作出のための基礎技術の確立をJSTのプロジェクトで進めている。また、2013年11月に完全子会社化した(株)植物ハイテック研究所においては、「ユーグレナの形質転換による光合成能力、油脂生産性の向上」、「ユーグレナの形質転換によるユーグレナの新たな有用物質生産手法の確立」に向けた研究開発を行っている。
バイオジェット燃料プロジェクトは、2018年の技術確立、2020年の実用化に向けて、現在は、屋外中規模の培養装置での培養を中心とした要素技術の開発を行っている。2014年からは、一貫生産システム(1,000~100,000㎡想定)を構築し、半連続培養も含めた要素技術が想定通りにワークするのか実証を進める段階にあり、当初計画通りの進捗という事だ。今回実施した調達資金の一部をこの要素技術実証に充当する。
<2018年までの技術開発ロードマップ>
これまで2回の大きな技術革新によってミドリムシの生産コストの低減を実現してきた同社は、今後は現在のコストを更に半減させるために、今回の調達資金などを投入して、生産設備のスケールアップ、最終的な目標コストに向けた100万㎡規模の大型設備での培養が可能な技術開発を進めていく。
そうした生産コスト低減の過程で、燃料開発投資の対象となる形質転換技術、大量培養技術、抽出技術、精製技術といった各種技術からから生み出される、「スーパーユーグレナ」、「低コストユーグレナ」、「ワックスエステル」、「パラミロン」、「油」など燃料研究の過程で創出される物質は、飼料、食品、化粧品材料、医療用素材、化成品用油、工業用潤滑油といった分野での応用が可能と考えられているが、現時点までにも、ペットフードや自社化粧品の市場投入に結び付いており、開発及び製品化のプロセスは順調に進捗している。今後も、2018年よりも前の段階でのバイオプラスチックやバイオフィルムといった製品の実用化を目指していく。
企業理念の実現のために

沿革でも触れたように、同社設立の原点には、出雲社長がバングラデシュ訪問時に決意した、「飢餓、貧困からの解放」という使命感があるが、この使命、理念を実現するための活動にも同社は積極的で、そのバングラデシュにおいて「ユーグレナGENKIプログラム」というプロジェクトをスタートさせた。

これは、バングラデシュの子供達の栄養失調を無くすために、栄養豊富なミドリムシ入りクッキーを配布するというもので、2014年4月からスタートした。
まず手始めにバングラデシュの首都ダッカにあるNGO運営の小学校5校、2,000人の生徒に1日1食、年間合計約60万食を配布するが、今後、より多くの子供たちに配布することを目指している。

このマークの入った同社製品および協賛企業製品を日本の消費者が購入すると、一商品につき10円を同社と協賛企業が負担し、原料のユーグレナと共に、その資金を現地のクッキー工場に提供。製造されたユーグレナ入りクッキーを給食として小学生に配布する。

10円は、バングラデシュの子供たちに特に不足している栄養素1日分が提供可能なユーグレナクッキー1食分となるため、ユーグレナ製品の購入者が増えれば増えるほど、それに応じてクッキー配布対象の子供の数も増加する事となる。
また、これと並行して同社ダッカオフィスとダッカ大学が共同で小学校に対する栄養教育を行うと同時に、ユーグレナ入りクッキーの効果測定を行い、実証データの収集も行う。

今後の注目点
下記の表は、株式市場でバイオ関連銘柄と呼ばれている主要企業の一覧である。
概して日本のバイオベンチャー企業の収益力には疑問符が付きがちだが、協和発酵キリン、タカラバイオといった大企業グループに属する企業を除けば、バイオベンチャーでありながらも、しっかりと利益を計上できている企業は同社を含め、多くはない。
また、自社製品の直接販売の構成比が急速に高まる中、粗利率も着実に上昇。広告宣伝及び販売促進の一段の強化を通じて、増収スピードが高まるという好循環が続いている。
利益計上に加え、トップラインを着実に伸ばすことが出来る収益構造となっている点も、他のバイオベンチャーにはない大きな特長、強みである。

このレポートで繰り返し触れているが、同社を「ミドリムシを使ったジェット機の燃料開発に取り組んでいる会社」という側面のみに注目し、「バイオジェット燃料開発の成否が同社の今後を占う最重要ポイント」と理解してしまうと、同社の姿を大きく見誤る。

ユーグレナ大量培養のコストを低下させていく過程で、ユーグレナの持つ多様な性質を5F分野で製品化し、世の中に提供していくことが出来るという、他に類を見ないベンチャー企業であるという点を改めて強調しておきたい。
「現在地球が抱えている様々な問題をミドリムシで解決する」という同社の企業理念やビジョン、「ユーグレナGENKIプログラム」への取組みを見れば、バイオジェット燃料開発は同社が目標としているアウトプットのone of themであることが明らかだ。

PERの高さに起因する株価変動率の高さは避けがたいが、ヘルスケア事業の成長性、バイオジェット燃料事業の進捗度合い、双方を注目していきたい。

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