(6908:JASDAQ) イリソ電子工業 2014年3月期業績レポート

2014/06/18

Iriso

今回のポイント
・配線基板同士を接続するコネクタを開発、製造、販売。主力製品「可動 B to BR」コネクタを始め、高付加価値商品を有する。売上の約80%が車載向け。電気自動車、ハイブリッド自動車の普及でビジネスチャンス拡大。早期から海外進出に積極的で、売上、生産共に海外が中心。

・14/3期の売上高は前期比32.5%増収の328億円で初の300億円台乗せ。主力の車載市場が国内外で引き続き好調。他部門も好調で全市場2ケタの増収。販管費も増加したが、円安メリット、合理化効果、増収効果などにより粗利率が5%近く改善したこともあり、営業利益は56億35百万円と大きく増加した。売上、利益ともに過去最高を更新した。

・15/3期の売上高は前期比6.6%増加の350億円。車載市場、特にカーエレクトロニクス分野にこれまで以上に注力する。インダストリアル分野もグローバルな展開を目指す。コスト低減にも引き続き注力し、営業利益も2ケタ増を計画。ただ為替の設定は多少堅めで、経常利益は前期比マイナスと計画。配当は前期と同じく40円/株を予定している。

・4月の状況は、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減を懸念していたが、実際には大変順調な滑り出しとなっているという。為替による上振れの可能性も含め、まず第1四半期決算を注目したい。

会社概要

配線基板同士を接続するコネクタを開発、製造、販売。顧客の作業効率を格段に向上させる主力製品「可動 B to B®」コネクタを始め、高付加価値商品を有する。売上の約80%が車載向けで、国産自動車メーカー及び海外の主要メーカー全てに同社コネクタは搭載されている。電気自動車、ハイブリッド自動車の普及でビジネスチャンス拡大。早期から海外進出に積極的で、売上、生産共に海外が中心。

【沿革】

1966年に、佐藤 定雄 会長が創業。TVや音響製品などの普及に伴い、ハンダで接続するのではなく、着脱が自由なコネクタの需要が増大し、付加価値機能を備えたピン製品を開発し、コネクタ分野へ本格進出。1980年代には現在の主力事業である車載分野に参入し、高付加価値製品「B to B®」を投入。セット時の芯ズレを吸収するという独自の機構が評価され、高いシェアを獲得。
顧客ニーズに対応し、早期より海外進出を積極化。
社名の「イリソ」は『初めて受注をいただいたお客様が埼玉県入間郡「入曽村」(現在の埼玉県狭山市)にあったことから、そのご恩と感動を忘れないために入曽(イリソ)の地名を当社の社名と致しました。』(同社WEBサイトより)との由来による。

【経営理念】

-未来に続く架け橋として-
人の心を尊重し、豊かな価値を創り、社会貢献に努める。

【事業内容】
<コネクタとは?>

電子回路や光通信において配線基板同士を接続するために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。

同社は、用途に応じた様々なコネクタを製造しているが、その中でも代表的な製品が、同社が登録商標を持っている「B to B®コネクタ」(ボード・トゥ・ボード コネクタ)。

B to Bコネクタとは、基板と基板を直接接続することができるコネクタで、垂直接続、平行接続、水平接続などの組み合わせで、様々な接続が可能となる。
そのB to Bコネクタの中でも、接続部分が数ミリ可動する「遊び」が設定されている「可動 B to B®」コネクタは同社の独自性が発揮されている製品。

通常のコネクタは遊びが無いため、接続する際にソケット側とプラグ側にズレが無いよう作業しないと接続できないため、作業効率が悪くなる。
これに対して可動コネクタは、遊びがあるため、ある程度ずれた状態で接続作業を行っても問題なく接続できる。

また、可動コネクタは、通常片側のみが可動することが常識だったが、同社では顧客からの「両側が動けば、より作業効率が向上する」との声に基づき、ソケットとプラグの両方が可動する両側可動(ダブルフローティング)コネクタも開発した。衝撃に強く、顧客の組み立て作業の効率化が図れる製品として高い評価を受けている。
加えて、組み立て作業時のみでなく、可動部分が自動車走行中の振動、衝撃を吸収するため、自動車搭載時にもその性能が大いに発揮される製品だ。

この他にも、以下の様なコネクタをラインアップしている。

○FPC/FFCコネクタ

FPC基板やFFCケーブルの接続に開発されたコネクタの総称。コネクタの挿入時にほとんど力を加えずにFPC/FFCのロックが可能なタイプや、軽い力で挿入可能なタイプがある。

○I/Fコネクタ

I/Fとはインターフェースの略。機器間の信号の接続を行うコネクタの事で、I/O(インプット/アウトプット)コネクタとも呼ばれる。カーナビ、PCなど様々な機器の側面(裏・表面)に装着され、機器への電源供給、音声・映像信号データ等の入出力を行う。

○P/H

線材をカット加工したピン(電導体)をハウジング(樹脂材でできた絶縁体)で支えたプラグ(オス側)コネクタの基本形であり、様々な分野・機器の内部接続(基板間接続)に使用されている。横から見ると、生け花の花止め「けんざん」のように見えるのが特長。メス側はソケットと呼ばれる。

○コンプレッションコネクタ

コンタクトのスプリング圧を利用した脱着コンセプトを採用したコネクタ。省スペース化にも貢献。モバイル機器の内部接続、クレドール等に使用されている。

<事業分野別動向>
主力の車載分野における同社の主要な直接顧客は、Tier 1と呼ばれる自動車メーカーに部品を納入する大手自動車部品メーカー。顧客を通じ、全ての国産メーカー及び、主要な海外メーカーの殆どに同社の製品は搭載されている。
車載分野は、顧客の要望に基づいて製造するカスタム品が多く、高い付加価値を生んでいる。
また自動車メーカー各社は、品質や安全性に対し極めて高い基準を部品メーカーに要求している。同社では早い段階から車載分野に進出しており、永年に渡る納入実績は同社製品の優秀さを証明している。
今後、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)の普及に伴い、電気系統の重要性が増す。また安全性ニーズの高まりを受けて、車間距離を測るミリ波レーダーやカメラの搭載も進み、使用される電子部品数およびコネクタ数は飛躍的に増加することが確実。
加えて、これまではどちらかといえばカーAV、カーナビ等、車室周りの電子部品に使用されるコネクタが多数だったが、これからは、駆動部分(モーター等)に使われる高電圧、高出力に対応する電子部品への進出も期待でき、ビジネスチャンスが拡大すると、同社では考えている。
コンシューマー分野は汎用品が多く、構造もそう複雑ではないため価格競争になりやすい。
インダストリアル分野は、車載分野で培ってきた技術力、ノウハウを活かすことができるため、まだ規模は小さいが今後の成長が見込まれる。
【今後の販売及び生産戦略】

沿革にあるように、創業12年後の1978年にはシンガポールに子会社を設立し、海外での生産、販売をスタートさせている。
まだ実績もさほど大きくない段階ではあったが、顧客企業の海外展開に伴い進出することで顧客との関係を強化することを目的として投資を行った。その狙い通り順調に事業は拡大し、結果として、その後の国内における取引拡大にも結び付けることができた。長年に渡って蓄積したマネジメントノウハウ、実績をベースに、今後も業績拡大のためにはより一段の海外展開強化が必要と考えている。

現在、売上高の約70%、生産の約80%を海外で行っているが、今後の販売および生産に関し以下の様な戦略を進めていく。

◎販売戦略

日本、欧米、中華、ASEANの四極体制での販売を更に強化する。
現在、ドイツおよびアメリカに技術者が駐在しているが、新たに、韓国およびシンガポールにも技術者を駐在させるほか、今はアメリカ拠点がカバーしている南米地域には将来的に拠点設立を視野に、ASEAN、インドにも注力し、新興国需要の取り込みを図る。
技術と販売が一体となってのグローバル販売体制を構築する。

課題としては、海外現地企業との取引拡大。そのためには優秀なローカルスタッフの採用、育成が必要であり、Global規模での人事交流、研修にも着手している。

◎生産戦略

現在、以下4つのプロジェクトを進行させている。

①原価低減プロジェクト

コスト競争力を強化する。

②BCP構築プロジェクト

BCPとはBusiness Continuity Planの略で、日本語では、事業継続計画。
災害や事故など不測の事態を想定して、事業継続の視点から対応策をまとめたもので、危機発生の際、重要業務への影響を最小限に抑え、仮に中断しても可及的速やかに復旧・再開できるようにあらかじめ策定しておく行動計画のことを言う。
茨城、上海、ベトナム、フィリピンの4工場での生産体制にBCPを組み込んでいく。

③ベトナム拡大プロジェクト

上記4工場の内、2017年をめどにベトナム工場の生産比率をアップさせる。
限界利益率の極大化を図る。

④生産合理化プロジェクト

材料費、固定費の内容を見直し、コスト構造の低減を図る。

これらのプロジェクトを通じて、
「原価低減の実現を通じたモノ作り競争力の確保」
「生産品質の同一化を通じたモノ作り量産体制の維持」
「顧客クレームの撲滅を通じたモノ作りの信頼性の向上」

同社の14/3期のROEは16.1%と高水準。大きな特別利益の計上があった訳でもなく、レバレッジも低く、本業の収益性が高まった事が要因だ。
総資産回転率のもう一段の改善(1倍台)があればさらにROEという観点からの魅力が高まると考えられる。

2014年3月期決算概要
車載市場中心に全市場2桁増収。大幅増益で売上・利益ともに過去最高を更新

売上高は前期比32.5%増収の328億円で初の300億円台となった。主力の車載市場が海外で引き続き好調。国内も堅調だった。コンシューマー、インダストアルも好調で全市場2ケタの増収となった。販管費も2桁増加したが、円安メリット、合理化効果、増収効果などにより粗利率が5%近く改善したこともあり、営業利益は56億35百万円と大きく増加した。
売上、利益ともに過去最高を更新した。

車載市場は米国、中国を中心に引き続き好調で海外は45.9%の増収。国内も同7.6%と堅調。欧州も持ち直した。
製品別では主力のカーナビ、カーオーディオ、クラスター向けの他に、ミリ波レーダーなど安全性を高める製品向けが大きく伸びた。
コンシューマー市場は、プリンター向けが引き続き好調なのに加え、新発売のゲーム機向けコネクタも好調だった。ゲーム機向けを除いても前年を上回った。
インダストリアルは、産業機器およびLED照明向けが堅調に推移した。今期はよりスピードを上げて拡大させていく。
全市場において前年同期比プラスとなった。
売上高の内外構成比率は、通期で20.4%:79.6%となった。
製品別でも、全ての製品が前年同期比でプラスとなった。

現預金増等で流動資産は前期末比40億円増加した。固定資産も同4億円増加し、資産合計は同45億円増加した。
短期有利子負債の減少などで流動負債は同9億円減少。固定負債はほほ前年と同水準で、負債合計は同8億円減少した。
純資産は、利益準備金増などで同54億円の増加。この結果、自己資本比率は80.2%と前期より5.4%上昇した。

利益増などで営業CF、フリーCFともプラス幅は大きく拡大した。短期借入金の減少で財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは18億円の増加。

設備投資は期初予定より約7億円増加した。うち為替要因が2億円。
これに伴い、減価償却も計画より2億円増加した。

年間1円の各為替レート変動による売上、利益の影響は以上の通りで、USDに換算すると、1円の変動により売上高(年間)で274百万円、営業利益(年間)では75百万円変動する。
今後も、ヘッジなどの手段も用いて為替変動に強い企業体質を目指していく。
売上高の通貨構成比は、円21.5%、USD40.7%、€17.0%、RMB20.8%。営業利益では円22.8%、USD33.7%、RMB43.5%。€は営業損失だった。

2015年3月期業績見通し
車載市場に引き続き注力し増収・増益を計画

売上高は前期比6.6%増加の350億円。車載市場、特にカーエレクトロニクス分野にこれまで以上に注力する。
インダストリアル分野もグローバルな展開を目指す。
コスト低減にも引き続き注力し、営業利益も2ケタ増を計画している。
ただ為替前提は多少堅めに設定しており、経常利益は前期比マイナスと計画。

設備投資額は前期を4億円上回る2,885百万円。増産化など生産体制の充実、省人化など収益力強化のための合理化投資に加え、カーエレクトロニクス分野での事業を拡大するには製品保証やトレーサビリティーといった体制の充実が必要なため、環境関係にも投資を行う。
減価償却も前期を上回る3,016百万円を計画している。

配当は前期と変わらず40円/株の予定。予想配当性向は10.2%

(2)今後の方向性

決算説明会では特に詳細な説明は無かったが、以下の3点を中心に事業を運営していく。

1.車載市場の深耕
大きな広がりが見込まれる同市場において、インフォテインメント、安全系、EV/HV化への対応などをこれまで以上に進め、強みであるコア技術「B to B」を活かして、搭載数の拡大を目指す。
耐震性、耐熱性と言った性能をさらに引き上げ、世界中のカーメーカーへの供給を目標とする。
製品保証、トレーサビリティーなど信頼させるものづくりのための体制を充実させる。
そのために、現在の企業規模と比べれば比較的充実している海外販売ネットワークを更に充実させる必要があると考えている。
車載市場の拡大の間に、インダストリアル市場を次の収益の柱とすべく育成する。
2.社内体制の整備
中期的には売上高500億円を目指しているが、そのためのインフラ整備を進めていく。
海外生産体制および販売力の増強、ローカルスタッフ及びセールスエンジニアの拡充などがポイント。
3.体質強化の継続
収益構造の継続的な見直しを進める。
最適な生産体制をめざし、生産方式自体も世代交代を図る。また、積極的な合理化投資や労務費の削減も進め、キャッシュ・フローの更なる改善も図る。
今後の注目点

大幅な増収・増益で過去最高の売上・利益を更新した前期に対し、今期は1ケタ台の増収、営業利益こそ2ケタ増益なものの、経常利益は減益という計画だ。投資増に伴う減価償却の増加もあるが、為替の前提が1USD=95.00円とかなり堅めとなっていることが大きな要因だ。
現状の102円程度で推移すれば、売上・利益ともに上振れることとなるので、為替動向を継続してウォッチする必要がある。
また、今期に入り4月の状況は、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減を懸念していたが、実際には大変順調な滑り出しとなっているという事で、第1四半期の決算が注目される。

この表でわかるように、売上規模では14社中8番と中堅ながら、売上高営業利益率は業界トップのヒロセ電機に次いで2位という高収益体質であるが、今後もさらに収益性の向上を目指す同社の取組みを注視していきたい。

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