(4849:JASDAQ) エン・ジャパン 2014年3月期業績レポート

2014/06/18

enjapan

今回のポイント

・14/3期は売上高が前期比23.5%の増収、経常利益が同31.9%の増益。売上面は、企業の求人ニーズが旺盛であったことから、主力の「[en]社会人の転職情報」の求人広告及び子会社のエンワールド・ジャパンが好調だったことに加え、今期から新規に複数子会社の連結を開始したことも寄与した。利益面では、人件費及び広告宣伝費中心に費用が増加したものの、増収により吸収し、増益となった。14/3期の1株当たりの配当は期初予定である期末21.5円から3円増配し24.5円となる見込み。

・15/3期の会社計画は、前期比14.6%の増収、同5.9%の経常増益。売上面は、新卒サイトの運営終了に伴う減少があるものの、エン・ジャパンの中途採用領域及びエンワールド・ジャパンを中心に拡大を目指す。海外はベトナムの子会社が通期で寄与するほか、タイの子会社の連結がスタートする。利益面は、人件費、広告宣伝費を中心に費用が増加するものの、増収効果と海外子会社の収益改善を見込む。前期は一過性の為替差益が発生しているため、増収率に比べて経常利益の増益率が低いが、営業利益では14.8%の増益。15/3期の1株当たりの配当は、前期末から4円増配の28.5円の予定。

・13年7月に人材・組織体制を整え本格的にサービスを開始した「[en]PARTNER」は、14/3期に一定の売上高を上げており、成長ポテンシャルの高さが確認された。しかし、同社ではインフラ面や人材の育成に課題が残ったと分析している。今後、大手の人材紹介会社といかに差別化を図っていくのか、成長加速に向けた新たな取り組みが注目される。

会社概要

「人材採用・入社後活躍」を支援する企業として、採用事業のほか、顧客企業の社員に対する集合型研修サービスを中心とした教育・評価事業も展開。創業以来、「独自性」、「社会正義性」、「収益性」という考え方を背景に求職者に徹底的に尽くすというスタンスを貫いてきたことで優位性を確立。現在は、更なる成長を実現すべく人材紹介サービスと海外展開を推進している。より組織・事業にフィットした人材の採用から、入社後の活躍・定着までを一貫して実現するサービスを提供することで継続的な成長につなげていく考え。グループは、同社の他、連結子会社11社、持分法適用非連結子会社1社等。

ビジネスモデル
<求人情報サイト>
企業に対して求人広告を企画・提案。同社の営業員が求人企業を取材し、その情報をもとに同社のコピーライターが求人原稿を制作した後、求人サイトに求人原稿を掲載。
掲載課金型求人広告:求人広告を掲載した際に「広告掲載料」が発生。
成功報酬型求人広告:求人広告を掲載し、当社求人サイトを通じて人材採用できた際に「成功報酬料」が発生。
<人材紹介>
求職者のこれまでのキャリアや転職意向を確認し、今後のキャリアプランに沿った求人を紹介。企業に対しては採用ニーズにマッチしていると思われる人材を紹介。紹介した人材が入社した際に「成功報酬料」が発生。報酬料は概ね年収の30%。
同社の特徴と強み
① 求職者視点の求人広告
同社は、「求職者の視点に立った情報」を提供することに徹底的にこだわっている。独自取材による「正直」で「詳細」な求人広告は、「仕事を大切に、転職は慎重に。」というプロモーションにおけるコピーに象徴されるように、安易な転職はしてほしくないという考え方のもとに制作している。
② インターネットを最大限に活用しつつ、きめ細やかな対応も実現
転職の不安を払拭するため、同社はきめ細かなサポートを実施。転職全般の疑問や不安に回答する「メール転職相談」、WEB履歴書の添削を行う「レジュメコーチ」、採用面接官が重視するポイントを事前にメールでアドバイスする「面接アドバイス」、また、入社時期や年収といった希望を、当社スタッフが企業に対して代理で打診・調整し、メールで求職者に伝える「希望条件打診サービス」などは、同社独自の転職サポート。忙しい中で効率よく転職活動を行うことができるのもインターネットならではのメリットであり、求職者のニーズに即した転職支援を実現。
③ 求職者と求人企業の高いフィッティング率
「[en]社会人の転職情報」は、求職者満足度98.0%(2012年2月調査)、企業満足度92.5%(2011年12月調査)という高い評価を得ている。高い評価の背景には、「求職者視点」と「情報の質」に徹底的にこだわった求人広告と、同社のサイトを通じて入社した求職者の入社後の活躍と高い定着率が背景にあると思われる。
④ 500万人を超える会員
同社は、約500万人を超える会員(※2014年3月現在「[en]社会人の転職情報」、「エン転職コンサルタント」、「[en]ウィメンズワーク」、「[en]派遣のお仕事情報」、「[en]チャレンジ!はた☆らく」合計)を有している。また、これまでに採用を手伝った企業は延べ5万社以上にのぼる。 同社のサービスに対する満足度と高い知名度によって獲得した会員と取引企業の数は、事業における大きなアドバンテージとなる。
2014年3月期決算
売上高は23.5%増、経常利益は31.9%増益

売上高は前期比23.5%増の167億55百万円(約31.9億円増)。企業の求人ニーズが旺盛であったことから、主力の「[en]社会人の転職情報」の求人広告及び子会社のエンワールド・ジャパンが好調だったことに加え、今期から新規に複数子会社の連結を開始したことも寄与した。
利益面では、人員の増加や積極的なプロモーション活動により費用(売上原価+販管費)が同23.5%増加したものの、売上高の増加により吸収し、営業利益は同23.6%増加した。この他、為替差益1億67百万円や投資事業組合運用益70百万円の計上などにより経常利益が同31.9%増加、[en]学生の就職情報サイトの運営終了に伴う特別損失があったものの、投資有価証券売却益20億30百万円の計上により純利益は80.4%増加した。
14/3期の1株当たりの配当は期初予定である期末21.5円から3円増配し24.5円となる見込み。

中途採用事業

当事業には、「[en]社会人の転職情報」、「エン転職コンサルタント」、「[en]派遣のお仕事情報」、「[en]チャレンジ!はた☆らく」、
「[en]ウィメンズワーク」、EWJ社、海外子会社、中途関連その他(適性テスト等)の収益が計上されている。
「[en]社会人の転職情報」及びEWJ社をけん引役に、売上高が148億27百万円と前期比26.2%増加した。人件費やプロモーション費用が増加したものの、費用(売上原価+販管費)の増加も同26.1%の増加にとどまりセグメント利益は34億41百万円と同26.5%増加した。

商品別では、「[en]社会人の転職情報」は、企業の採用ニーズが旺盛であったこと、新規顧客への拡販が進んだこと等から、求人広告が前期を上回る掲載件数となったほか単価も上昇した。また、人材紹介サービス「[en]PARTNER」は、四半期毎の入社人数及び売上高が大幅に増加した。この結果、「[en]社会人の転職情報」は前期を上回る結果となった。
この他、「エン転職コンサルタント」は、人材紹介マーケットが改善傾向にあることや、新規顧客の人材紹介会社への拡販が進み、掲載社数が増加し前期比増収となった。「[en]派遣のお仕事情報」は、企業の派遣社員採用のニーズが高い状態が続いたことにより、顧客である派遣会社からの受注が増加したことや新規営業の強化により新規掲載社数が増加し、同増収となった。「[en]チャレンジ!はた☆らく」は減収となったが、販売系職員のニーズが高かったこと等から計画を上回る売上となった。[en]ウィメンズワーク」も、特に大手の派遣会社のニーズが増加傾向であることから、着実に売上を伸ばした。

グローバル企業向けにバイリンガル人材の人材紹介を手掛けるEWJ社は、顧客であるグローバル企業の人材採用意欲が高かったこと、人員の増強と戦力化が着実に進んだこと等から前期を上回る売上となった。業種では、特にBtoC領域、金融、IT、不動産、メディカルの人材採用ニーズが高かった。
また、今期から海外子会社を連結対象としたため、その業績が新たに加わった。自社で拠点を立ち上げた国の進捗が遅れたこと、欧州が景気悪化の影響を受けたことから、売上高は計画未達となったものの、コストの見直し等により営業損失は計画を下回った。
13年4月にNavigos Group(ベトナム)、12月にCapstone Group(タイ)を買収した。

新卒採用事業

当事業には、「[en]学生の就職情報」、新卒関連その他(適性テスト等)の収益が計上されている。
売上高は前期比9.3%減の13億46百万円、セグメント利益は33百万円(前期は1億33百万円の利益)の損失となった。平成27年3月卒業予定学生向けの「[en]学生の就職情報2015」の積極的なプロモーションを強化したことで、会員数及び掲載企業1社あたりの応募数は前年を上回ったものの、競合との競争が激化したことから、受注が予定通り進まなかった。費用の増加(広告宣伝費・販売促進費は、前期の1億39百万円から2億56百万円へ増加)もセグメント損失に影響した。
新卒採用の環境変化や競争激化による単価の下落などに対応するため、現大学4年生の就職活動が終了する15年3月末をもって「[en]学生の就職情報」のサイト運営を終了。今後は、ビジネスモデルを転換し、新たな規格に基づいた新卒採用・就職活動支援サービスを展開する方針。サイトの保守運営費、減価償却費など約3.6億円を特別損失として14/3期に計上。

教育評価事業

当事業には、人事制度コンサルティング、定額制研修サービス「エンカレッジ」、適性テスト、子会社であるシーベースの収益が計上されている。
売上高は前期比15.0%増の6億36百万円、セグメント利益は同103.6%増の1億32百万円となった。定額制研修サービス「エンカレッジ」は、顧客企業向けに効果的な利用を促進する施策を強化したこと等から、リピート率が向上した。更に、新たに大阪での展開が進んだこと等により、会員企業数も増加した。また、今期から新たに連結対象になったシーベースの業績は、エン・ジャパングループのノウハウ移管が奏功し、計画を上回る業績となった。

当期末の総資産は前期末比42億69百万円増の227億33百万円。資産の部で現金及び預金や有価証券が増加したこと、連結範囲の変更に伴う子会社株式の取得により無形固定資産でのれんが増加したことが主な要因。一方、負債・純資産の部では、未払法人税や未払金が増加したこと、当期純利益の増加により利益剰余金が増加したことなどが主な要因。総資産の約53%を現預金が、約70%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。自己資本比率も約75.0%と、高水準を維持している。

CFの面から見ると、当期純利益の増加などにより営業CFのプラスが拡大したものの、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出などにより投資CFがマイナスとなったことから、フリーCFの黒字額が縮小した。ストックオプションの行使による株式発行による収入などから財務CFの赤字額は縮小した。

今後の成長戦略と2014年3月期の振り返り

今後の強化ポイントとして、①人材紹介サービスの強化、②アジアにおいて海外展開を推進の2つを掲げている。

(1)人材紹介サービスの強化

リーマンショック後に大きく落ち込んだ企業の採用ニーズは回復基調が続いており、アベノミクス効果も加わって足元は活況を呈している。しかし、企業の採用ニーズは二極化が進んでおり、企業が将来のコア人材として期待するポジションや人材が不足している職種などは、厳選採用が進んでいる。候補人材と面談し、スキルに加えて考え方や人柄なども含めたマッチングが可能な人材紹介の需要は今後も堅調に推移するとみており、子会社のEWJ社とともにエン・ジャパン本体の人材紹介サービス「[en]PARTNER」を強化していく方針。
14/3期は、注力商品を成功報酬型求人広告(SSS)から人材紹介サービス「[en]PARTNER」への転換を目指し、① 組織・人事体制の整備、② 最低ラインの成約売上高確保、③ 認知度向上のためのプロモーション実施などの取り組みを行ったが、来期以降の成長の基盤を作ることができたと同社では評価している。

(2)アジアにおいて海外展開を推進

同社は、アジアにおいてM&Aによる積極的な海外展開を推進している。2010年にグローバル企業向けに人材紹介を行っているエンワールド・ジャパンを子会社化して以降、海外展開を積極的に進めている。2011年9月 シンガポール、2012年4月 香港、2012年12月 韓国において「en world」ブランドで人材紹介サービスを開始。また、2012年6月にオーストラリアで人材紹介・人材派遣を行っているcalibrate、2013年4月にベトナムNO.1の求人サイト及び人材紹介を展開しているNavigos Group、同年12月にタイの人材紹介会社 Capstone Groupを買収した。 また、14/3期から海外子会社も新規連結化した。今後もアジア太平洋地域は経済成長が見込まれ、人材採用ニーズも高まることが予想される。また採用活動もボーダーレス化すると思われる。こういった動きに対応するための基盤を早期に構築するべく、引き続き海外展開を推進していく方針。
14/3期は、海外展開の拡大が進展したものの、業績面に課題が残る内容になったと同社では評価している。
なお、14年6月にインドの人材紹介会社 New Era India Consultancyの買収を発表している。時期は未定だが、新規に連結化する見込み。

2015年3月期業績予想
前期比14.6%の増収、同5.9%の経常増益予想

15/3期の会社計画は、売上高が前期比14.6%増の192億円、経常利益が同5.9%増の39億70百万円。
消費増税による国内経済への影響や新興国の経済成長鈍化が懸念されるものの、企業の人材採用ニーズは引き続き堅調に推移すると同社では見ている。こうした中、売上面では、新卒サイト終了に伴う減少があるものの、エン・ジャパンの中途採用領域及びEWJ社を中心に拡大を目指す。また、海外はベトナム子会社が通期で寄与するほか、新規にタイの子会社の連結が開始される。
利益面では、人件費、広告宣伝費・販売促進費を中心にコストが増加するものの、売上高の増加による吸収や海外子会社の収益改善等による増益を目指す。売上総利益率は、1.9ポイント上昇の90.4%、売上高販管費率は1.8ポイント悪化の69.8%の前提で、営業利益は前期比14.8%増の39億50百万円となる予想。また、経常利益の増益率が低下するのは前期に為替差益が発生した反動であり、当期純利益が減益となるのは前期に投資有価証券売却益を計上した反動。
1株当たりの配当は、前期末から4円増配の28.5円の予定。

15/3期はNavigos GroupとCapstone GroupのP/Lが通期で計上される。

新卒サイトの運営終了に伴い、15/3期より旧採用関連の2事業を統合し、「採用事業」に変更。

15/3期より、掲載課金型求人広告及びSH広告を「求人広告」へ、「[en]PARTNER」及び「SSS」を「人材紹介」へ区分する。

今後の注目点
14年3月の雇用データを見ると、厚生労働省発表の国内有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.02ポイント上昇の1.07倍と、07年6月(1.07倍)に並ぶ6年9ヶ月ぶりの高い水準となった。前月比16ヶ月連続で改善するなど、同社の事業環境にも追い風が吹いており、引き続き中途採用領域やEWJ社の業績拡大が予想される。一方で、好調な中途採用領域とは裏腹に、業界環境の激化と就職活動手法の多様化から新卒採用領域では苦戦を強いられている。こうした中、大手との激しい競合を継続することを止め、新卒採用向けの「[en]学生の就職情報」サイトの運営を早期に終了する決断を行ったことは、きわめて評価が高い。好調な業界環境に甘えることなく、来たるべき業界の落ち込みに備え、企業体質を強化したいというマネジメントの強い意志の表れと言えよう。
こうした体質改善の取り組みが代表的な守りの戦略とすれば、当面の同社の代表的な攻めの戦略は人材紹介サービス「[en]PARTNER」の成長加速と海外子会社の収益改善を伴う拡大と言えよう。まず、「[en]PARTNER」は、13年7月に人材・組織体制を整え本格的にサービスを開始した事業であるが、前期に既に数億円の売上規模にまで拡大した。しかし、同社ではインフラ面や人材の育成に課題が残ったと分析しており、今後の各種戦略いかんで更に成長が加速するとの期待が大きい。特に、大手の人材紹介会社といかに差別化を図っていくのか今後の新たな取り組みに注目したい。また、海外子会社においては、アジア圏での積極的なM&Aと自社による立ち上げにより一定の基盤が構築された。しかし、海外子会社は、前期に8百万円の営業赤字となるなど、収益化が遅れている。今期同社は、積極的な新規進出よりも海外子会社の収益力向上を目標としている。過去有言実行を推し進めてきたマネジメントであり、今後の海外子会社の収益状況の変化にも注目していきたい。
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