(4282:東証1部) イーピーエス 2014年9月期上期業績レポート

2014/06/18

EPS

今回のポイント
・14/9期上期は前年同期比8.9%の増収、同20.7%の経常増益。国内事業、海外事業共に売上が増加。利益面では、体制整備の途上にある海外事業が損失を計上した他、人材投資で国内CRO事業の利益も減少したが、国内SMO事業及び国内CSO事業の収益改善で吸収した。受注高は国内CRO事業や国内SMO事業を中心に同21.7%増、受注残高は前年同期末比14.1%増。

・通期業績予想に変更はなく、前期比9.0%の増収、同17.2%の経常増益。先行投資とのれん償却で海外事業が損失を計上するものの、国内3事業の回復で吸収。SMO事業の利益が同2.2倍、CSO事業の利益が同3.5倍に拡大する他、CRO事業も通期では利益が増加する。配当は1株当たり10円の期末配当を予定。13年4月及び14年4月の株式分割を考慮した配当金は、13/9期、14/9期共に年18円(上期末8円、期末10円)となる。

・同社は今後の事業展開のテーマとして次の5点を掲げている。①国内CROとSMOで「No.1」を確実に目指す、②国内CSOではリーディングカンパニーを目指す、③GR事業はアジア・パシフィックでのリーディングカンパニーを目指す、④中国の益新事業を新たな成長エンジンとする、そして⑤BPOにより効率化の推進を図る。この5つのテーマに取り組む事で年率10%の売上成長を実現して、18/9期に連結売上高600~750億円をあげ、12~13%の利益率を確保したい考え。

会社概要

「価値あるソリューションの創出を通じて、健康産業の発展に貢献します」を企業理念に掲げ、医薬品や医療機器等の開発に関わる業務を様々な角度からサポートしている。国内で展開する、CRO(Contract Research Organization:臨床試験に関連して製薬会社を支援)、SMO(Site Management Organization:臨床試験に関連して医療機関を支援)、及びCSO(MR派遣)の3事業を収益基盤に、医薬品メーカーのグローバル治験(治験:新薬開発のための臨床試験)に対応するべくGlobal Research(グローバル・リサーチ、以下GR) 事業を育成中。また、日中のヘルスケア産業の懸け橋としての機能を担う新規事業(益新事業)の育成にも取り組んでいる。

【事業セグメントとイーピーエス・グループ】

事業セグメントは、CRO(医薬品開発業務受託機関)事業、SMO(治療施設支援機関)事業、CSO(医薬品販売業務受託機関)事業の国内3事業と、海外の臨床試験に関わるGR事業及び日中のヘルスケア産業の懸け橋としての機能を担う益新事業の海外2事業に分かれる。

グループマネジメント

同社は14/9期を「グループ経営元年」と位置付け、取り組み課題として「各事業セグメントにおける自主経営」と「グループ横断的な機能の明確化と実行」を掲げている。同社グループが創業20年を超え(1991年5月、(株)エプス東京として事業をスタート)、業界そのものもステージの転換期に来ている事を踏まえ、組織改革と運営改革にスピードアップしながら取り組んでいく考え。

この一環として、13年10月1日付で、イーピーエス(株)社内にあったGlobal Research 事業部門をEPS インターナショナル(株)として、中国事業部門をEPS益新(株)として、それぞれ分離独立させた(「中国事業」は「益新事業」に名称も変更)。これによりイーピーエス(株)本体は、国内CRO事業の事業会社としての機能が9割、グループ管理機能が1割の企業に生まれ変わった。一方、EPS インターナショナル(株)は明確な責任と権限の下で医薬品メーカーのグローバル治験に対応できる組織づくりに取り組み、
EPS益新(株)は日中ヘルスケア産業のかけ橋として期待がかかる益新事業を統括していく。

この他、コントラクトMR(CMR)と電話を活用したディテーリングサービスを融合させた新たなサービスを創出・提案するべく、(株)メディカルラインと(株)ファーマネットワークを統合して(株)EP ファーマラインを設立した他、中国の蘇州(オフショア)で臨床試験のデータマネジメント等を手掛けていた益新健康科技服務(蘇州)有限公司の位置付けを明確にするため、BPO事業という新たな事業セグメントを設けた。また、13年12月には、国内ヘルスケア関連企業向けBPO 事業の営業強化及び促進を念頭にEPI(株)を設立した。これによりグループ全体のコスト競争力を高め、業務効率を高めていく。

グループ管理センター

EPSは、各事業セグメントにコーポレート機能を提供すると共に、グループの経営を横断的に管理する。

CRO事業本部

国内CRO事業の機能を担う。国内CRO事業全般を管理するCRO管理センター、モニタリング業務を管理する臨床開発事業部、データマネジメント業務を管理する臨床情報事業部が、それぞれの業務を管理。この他、事業本部直轄の臨床研究推進センターが臨床研究への対応を進める。

各事業セグメントは明確化された責任と権限に従い自主経営を進めるが、イーピーエス(株)による統括の下でグループ横断的な案件にも取り組み、グループシナジーを追求していく。
グループ管理センター(Group Administration Center:GAC)の設置

グループ管理センターは、イーピーエス(株)内の組織として設置され、グループ総務・財務・人事企画、グループマーケティング・IR、セグメント運営支援等、グループレベルでのコーポレート機能を提供する。事業レベルでの意思決定は各事業セグメントに委ねられるが、グループ横断的な案件に対してはイニシアチブをとっていく。尚、厳イーピーエス(株)会長がセンター長を務め、田代同社長及び折橋同取締役が副センター長を務める。

(株)イーピービズによるシェアードサービス実施

(株)イーピービズは、イーピーエス(株)及び各事業セグメントに対して、集中購買サービス、教育研修サービス、総務・経理・人事事務サービス、不動産サブリース、監査サービスといった事務的サービスの業務支援を行う。これにより、各事業セグメントがそれぞれの事業に専念できる環境を整備すると共に、グループ全体での間接業務を効率化する。尚、折橋イーピーエス(株)取締役が社長を務める。

【益新事業の事業コンセプト - 日中のヘルスケア産業を専門商社としてつなぐ -】

益新事業の、キーワードは、「日中」、「ヘルスケア産業」、「専門商社」の3つ。「日中」は、このビジネスを日本と中国をつなぐビジネスとして行う事を意味し、「ヘルスケア産業」は、健康食品、人間ドックや介護といった医療サービス等、幅広い領域を指し、「日中をつなぐもの」、或いは、「具体的に何をつなぐのか」を意味する。そして、「専門商社」とは「日中」をつなぐための手段であり、メーカーではなく、ヘルスケアを専門領域とする商社として事業を行う事を意味する。

中国では10年後に60歳以上の人口が3億人になるとの統計もあり、中国の少子高齢化社会と技術先進国である日本のノウハウとを結び付ける事が益新事業のコンセプト(加えてヘルスケア産業は同社グループの強みを活かす事ができる)。日中間におけるヘルスケア産業の格差は大きく(厳会長の肌感覚では、自動車産業等よりもはるかに大きい)、日本が持つ技術、商品、サービスの優位性も明らかだが、現状ではそれが活かされていない(言い換えると、益新事業のポテンシャルは極めて大きい)。

事業形態

益新事業では、医療機器事業、医薬品事業、及び周辺サポート事業を手掛け、コンサルテーション(これまでもCROの付随サービスとして多くの相談に乗ってきたが、今後はフィービジネスとして対応する)、プロジェクト(商品)ベースでの協業、マイナー出資、メジャー出資の4つの事業形態を想定している。益新事業の収益の柱と位置づけているのが医療機器事業で、14/9期の益新事業は36億円の売上を見込んでいるが、そのほとんどは医療機器事業によるもの。自社開発のX線撮影装置(デジタルレントゲン検査機)を日本企業からOEM調達して、画像フィルムと共に販売している。一方、医薬品事業は、マイナー出資により日本のシーズを元にした創薬(喘息薬、てんかん薬)やジェネリック薬品の開発(中国では、数量ベースで90%がジェネリック薬品)に取り組んでいる他、健康ポータルサイト「家庭医生在線」(17%出資)への出資等、医薬品の周辺にも展開している。

医療機器事業は議決権の過半を保有し、益通(蘇州)による販売と益通(南通)による製造を二本柱とし、製造から販売までの一貫体制を目指している。一方、医薬品事業は、あくまでも商社ビジネスとして、マイナー出資に徹する(状況に応じてキャピタルゲインを追求)。また、周辺サポート事業は、臨床試験関連のソフト開発、人材育成のための学校、物流等で中国へ進出する日本企業を支援する。

2014年9月期上期決算
前年同期比8.9%の増収、同20.7%の経常増益

売上高は前年同期比8.9%増の198億52百万円。モニタリング業務を中心に国内CRO事業の売上が同9.8%増加した他、大型案件の寄与で国内SMO事業の売上も同13.0%増加。海外事業も、M&A効果でGlobal Research事業が同31.9%増、医療機器販売の増加で益新事業が同89.8%増と、円高の修正もあり大きく伸びた。

営業利益は同10.5%増の19億23百万円。人員増強等の先行投資で国内CRO事業の利益が減少した他、M&A実施後の体制整備の途上にある事や為替の影響等でGlobal Research事業の損失も増加したが、大型案件の寄与とコスト削減で国内SMO事業の収益性が大幅に改善した他、医薬品関連コールセンター業務の効率化で国内CSO事業の利益も増加。利益計上に至らなかったものの、益新事業の損益も改善した。
為替差損の減少による営業外損益の改善や特別損失の計上が無かった事等で四半期純利益は8億96百万円と同33.4%増加した(前年同期は、投資有価証券評価損1億61百万円や事業構造改革費用74百万円を特別損失に計上した)。

予想の比較では、売上の上振れに加え、プロジェクト管理の徹底や業務の効率化等で国内3事業(CRO、SMO、CSO)事業の利益が予想を大きく上回った。

【国内事業 3事業の全てで、売上高・利益が予想を上回る着地】
国内CRO事業

売上高は前年同期比9.8%増の116億40百万円となり、期初予想を5.1%上回る着地。一方、セグメント利益は市販後調査の競争激化等で16億81百万円と同10.2%減少したものの、モニタリング業務の順調な進捗と原価コントロールにより、期初予想を53.7%上回った。
業務別では、前期から受託している低採算プロジェクトの利益率向上を優先したデータマネジメント業務の売上が減少したものの、モニタリング業務が堅調に推移し、売上・利益共に期初予想を超過。臨床研究、医師主導治験、及び医療機器の支援業務の売上も増加した。この他、派遣型CRO業務の利益が予想を大幅に上回った他、医薬・医療系IT関連業務の売上・利益も予想を上回る着地。

国内SMO事業

売上高は前年同期比13.0%増の31億66百万円、セグメント利益は同738.8%増の4億75百万円。2012年から2013年にかけて厚生労働省に提出された治験届けが減少した影響で厳しい事業環境となったが、強みを有するがん領域が同4%強増加した他、提案型営業の強化等で整形外科領域での大型案件の取り込みも進んだ。利益面では、売上高の増加と効率的な人員配置による稼働率の向上で売上総利益が大幅に増加。一方、経費の適正使用を進めた事で販管費は小幅な伸びにとどまった。

国内CSO事業

売上高は前年同期比2.6%増の28億59百万円、セグメント利益は同271.3%増の1億20百万円となり、いずれも期初予想を上回った。2社合併後の体制整備の途上にあるが、医薬品関連コールセンター業務において、人件費の変動費化や業務効率化が進んだ事で収益性が改善した。

【海外事業 体制整備の途上にあり、Global Research 事業、益新事業共に利益計上に至らず】
Global Research 事業

売上高は前年同期比31.9%増の10億70百万円、セグメント損失1億58百万円(前年同期は1百万円の損失)。前期に子会社化したGCRC(現:EPS Global Research,Pte.Ltd.)及びその子会社の寄与で売上が増加したものの、コスト削減が途上にある上、為替レートの変動もマイナスに働き、損失が増加した。

益新事業

売上高は前年同期比89.8%増の15億77百万円、セグメント損失1億72百万円。当事業は、医療機器事業、医薬品事業、及び周辺サポート事業の3事業で構成されており、この上期は医療機器事業において、益通(蘇州)医療技術有限公司が扱うデジタルレントゲン検査機や画像フィルム等の販売が増加した(医療機器事業は黒字)。ただ、日本国内から益新事業全体の管理及びサポートを行うEPS益新(株)と現地における事業の統括を行う益新(中国)有限公司による体制整備の途上にあり、利益計上に至らなかった。

データマネジメントの受注が減少したが、通常、同社がモニタリング業務を行った案件はデータマネジメント業務も同社が実施する。このため、足元のモニタリング業務の受注好調が、いずれデータマネジメント業務の受注に反映されてくる見込み。

上期末の総資産は前期末に比べて33億76百万円増の337億円。業容の拡大に伴う売上債権・仕入債務の増加や日揮ファーマサービス(株)の子会社化に伴うのれんの増加(9億83百万円→14億78百万円)等が総資産増加の主な要因。自己資本比率は52.9%。

CFの面では、利益の増加や税金費用の減少等で25億09百万円の営業CFを確保し、M&A等による投資CFのマイナスをカバーした(フリーCFは2億41百万円の黒字)。

2014年9月期業績予想
通期業績予想に変更はなく、前期比9.0%の増収、同17.2%の経常増益

大型案件の受注による収益性の改善で国内CRO事業の売上・利益が増加する他、国内SMO事業も提案型営業の推進や生産性の向上により成長路線へ回帰。国内CSO事業は2社の合併による業務効率化等で収益性が改善する。一方、海外事業は売上が増加するものの、先行投資に加え、のれん償却費(Global Research 40百万円、益新80百万円)も負担となり、損失計上が見込まれる。

配当は1株当たり10円の期末配当を予定している。13年4月に1株を2株に、14年4月に1株を100株に分割しており、これを考慮した1株当たり配当金は、13/9期、14/9期共に年18円(上期末8円、期末10円)となる。
同社は、急速な市場環境の変化に対応するための財務基盤の充実を勘案しつつ安定的な成果配分を行う事を基本としており、配当については、配当性向目標を30%目途に実施していく考え。

(2)セグメント別の見通しと取り組み
国内CRO事業

売上高232億33百万円(前期比11.0%増)、セグメント利益34億69百万円(同17.1%増)。モニタリング業務での大型案件の受注等による収益性の改善で売上高・利益が増加する見込み。
モニタリング業務におけるリソースの確保とデータマネジメント業務におけるプロジェクト管理の強化による不採算プロジェクト削減が取り組み課題。また、子会社化した (株)EPSアソシエイトについては、損益の改善ペースを上げて収益化の早期実現を目指す。

国内SMO事業

売上高65億円(前期比14.0%増)、セグメント利益9億円(同125.0%増)。提案型営業の推進で大型案件の受注拡大に取り組む一方、プロジェクトの進捗管理を強化して、品質を確保しつつ、症例登録のスピードアップを図る。また、大学病院やがんセンター等、支援要請を受けているがん領域施設への支援を拡大すると共に、がん領域経験CRCの育成強化で、強みであるがん領域への対応力に磨きをかける。

国内CSO事業

売上高57億円(前期比0.6%増)、セグメント利益1億07百万円(同256.7%増)。合併効果による業務効率化等で収益性が改善する。
2社合併の特徴を活かしたコールセンターサービスとMR活動を融合させた新サービスの提案により、高付加価値化や他社との差別化を図る。また、事業基盤を強化するべく、組織固めと効率的な業務体制の整備を進めると共に、リソースが不足しているCMRや医療機器向け事業拡大のための要員を確保するべく採用を強化する。

Global Research 事業

売上高25億円(前期比41.3%増)、セグメント損失40百万円。M&A効果で売上が増加するものの、拠点拡充等の先行投資負担やのれんの償却で利益計上には至らない見込み。M&Aに機動的に対応しつつエリアカバレッジの充実と組織固めを進めると共に、日本及びアジアでの営業を強化する。

益新事業

売上高36億円(前期比17.1%増)、セグメント損失51百万円。先行的投資負担やのれんの償却に加え、開発権売却等の一時的な要因がなくなるため損失が見込まれる。医療機器事業において販売強化と現地生産体制の立ち上げを進めると共に、医薬品事業におけるJV(ジョイント・ベンチャー)によるプラットフォーム化を進める。また、投資とリターンの管理を強化して専門商社モデルの確立に取り組む。

今後の注目点
同社は今後の事業展開のテーマとして次の5点を掲げている。① 国内CROとSMOで「No.1」を確実に目指す、② 国内CSOではリーディングカンパニーを目指す、③ GR事業はアジア・パシフィックでのリーディングカンパニーを目指す、④ 中国の益新事業を新たな成長エンジンとする、そして ⑤ BPOにより効率化の推進を図る。
GR事業は、現在、先行投資の段階にあり利益計上に至っていないが、医薬品メーカーのグローバルな開発戦略に対応するためは、日本で受注するにしても、日本以外での対応力を強化しておく必要がある。このため、CRO事業を展開する上で海外の強化は避けて通る事ができない。同社は、先ずアジアで事業エリアを拡大していく考えだ(中国、台湾、香港、韓国、シンガポール、タイ、シンガポール等)。また、益新事業は、ヘルスケア産業の拡大余地が極めて大きい中国と、この分野で、高い技術、商品、及びサービス力を有する日本をつなぐ事業であり、そのポテンシャルは大きく、創業者である厳会長の思い入れも強い事業である。
将来展望としては、上記の5つのテーマに取り組む事で、18/9期に600~750億円の売上高を達成し(平均売上高成長率10%)、12~13%の利益率を確保したい考え。
株式会社インベストメントブリッジ
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