(2146:JASDAQ) UTホールディングス 2014年3月期業績レポート

2014/06/04

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今回のポイント
・14/3期は前期比10.5%の増収、同26.3%の経常増益となり、5期連続の増収・増益。大型案件の解約があったものの、M&A効果、顧客工場数の増加と既存顧客内でのシェア拡大による稼働技術職社員数の増加で主力の製造派遣の売上が増加。案件の選別や単価の高い自動車関連分野の構成比上昇で収益性の改善も進んだ。また4Q(1-3月)の営業利益は目標としていた過去最高の7億円をほぼ達成。通期ベースで営業利益30億円の基盤もできた。

・15/3期予想は前期比4.0%の増収、同34.5%の経常増益。利益の伸びは大きいが、予想の前提は保守的。売上高は前期4Q(1-3月)の水準(81億円)が続く事を想定しており、利益面では、具体的な案件はないものの、大型案件の解約を想定し営業利益予想を25億円(前期4Qは約7億円)にとどめた。配当は未定。同社は総還元性向50%以上を目処に株主への還元を実施していく考え。

・常用雇用者が社員全体の70%を超え、クオリティとコンプライアンスに優る同社にとって、15年4月に予定されている改正労働者派遣法の施行は追い風だ。同法の施行をにらみ、前倒しで派遣ニーズが顕在化していると言う。収益性が高く、かつシェアアップの余地が大きい事業所(顧客工場)数が既に中期経営計画の目標としている400ヵ所を超えている事もあり、15/3期は中期経営計画(売上高370億円、営業利益30億円、経常利益29億円)に沿った着地になる可能性が高い。

会社概要

高度な分野に特化した製造派遣・請負事業を中心に、設計/建設技術者派遣事業(正社員派遣)、アウトプレースメント(再就職支援)事業も展開。新規の顧客開拓力と業界No.1の従業員定着率を強みに、順調に稼動数を伸ばしている。同社自身は純粋持株会社としてグループを統括し、実際のサービス提供は連結子会社7社が担う。

13年7月1日にパナソニックバッテリーエンジニアリング(株)の発行済株式400株のうち81%にあたる324株を取得し連結子会社化し、商号をUTパベック(株)に変更した。残る76株(発行済株式総数の19%)については、14 年7月1日に取得する予定。
パナソニックバッテリーエンジニアリング(株)はパナソニック(株)の100%子会社で、電池材料分析・評価・解析事業、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業、及び派遣事業等を手がけていた。今回の買収では、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業及び派遣事業が対象となり、買収対象事業は年商約30億円(12/3期は売上高が42億06百万円、営業利益1億32百万円)。

【事業内容】

事業セグメントは、アウトソーシング事業の単一セグメント。製造派遣・請負を中心に、設計開発技術者派遣を手掛けており、建設技術者派遣及びアウトプレースメント事業を育成中。10/3期は半導体・電子部品分野の売上が全体の91.2%を占めていたが、リーマン・ショック以降、幅広い分野で受注活動を展開しており、継続的に半導体・電子部品分野の比率が低下している。
14/3期は、半導体・電子部品分野が42.4%に低下し、次いでパナソニックバッテリーエンジニアリング(株)を子会社化した効果もあり、環境・エネルギー分野(太陽電池・2次電池等)が25.8%、以下、自動車関連分野14.1%、住宅分野9.4%、その他8.4%。

中期的な目標として、電池を中心に環境・エネルギー30%以上、自動車関連20%程度としており、半導体向けについては、現在の売上水準を維持しつつ40%以下に引き下げたい考え。

主な製造派遣分野と取引先

半導体・電子分野     ソニー、東芝、パナソニック
環境・エネルギー分野   パナソニック、日立マクセル
自動車関連分野      アイシン精機、ダイハツ工業
住宅関連         LIXIL

拡大余地大きい自動車分野

ここ数年は、自民党政権下での規制緩和政策を受けて、特に自動車関連分野からの需要が強い。自動車関連分野に就業している契約社員及び派遣社員は合計約15万人で比率は、契約社員:派遣社員=12:3。もともと、3:12だったが、民主党政権による規制強化で比率が逆転した。15年4月に施行される予定の改正労働者派遣法(14年3月に閣議決定済み)によって、契約社員から派遣社員へ大きくシフトしていくとみられている
尚、労働契約法では、5年以上、契約社員を使った場合、正社員と同じ扱いにする必要がある⇒企業負担の増加。このため、契約期間の満了等を機に契約社員から派遣社員へ転換していくとみられている。

【差別化 従業員の定着率No.1】

同社は、取引先と従業員を2大カスタマーとして位置付けており、従業員に対しては、福利厚生に加え、教育訓練制度、評価制度、エントリー制度(幹部社員への登用制度、立候補)、更にはESOP(Employee Stock Ownership Plan:株式給付信託)の導入等で従業員と会社の一体感を醸成する事で定着率を高め、業界で最も低い離職率を実現している。

ESOPでは、同社グループの派遣・請負職場で働く従業員に、勤続や成果に応じてポイントを付与し、退職時に累積したポイントに相当する同社株式を給付する。
【事業環境と同業他社】

政権交代による労働者派遣法の規制緩和や、メーカー各社における「雇用構造改革」等、アウトソーシング業界を取り巻く環境変化は良好。メーカーの製造部門や開発部門に対してアウトソーシングサービスを提供する上場企業としては、同社の他、トラスト・テック(2154)、アウトソーシング(2427)、ワールドインテック(2429)等を上げる事ができ、各社の業績も順調に拡大している。

収益性の高さ(15/3期予想営業利益率:7.8%)と資本効率の良さ(ROE:32.2%)が同社の特徴。PBRが同業他社を大きく上回るのは、高いROEを反映しているため。一方、予想PERがトラスト・テックやアウトソーシングを下回る事から、株価は再評価の余地がありそうだ。

2154 (株)トラスト・テック

研究開発における技術分野の派遣、請負、業務委託を手掛ける技術者派遣・請負・委託事業(13/6期売上構成比62.6%)と子会社の事業領域で製造工程業務等の請負・受託を手掛ける製造請負・受託・派遣事業(13/6期売上構成比47%)が2本柱。開発・設計(上流)から製造・流通(下流)まで一気通貫のサービスを提供する事で「技術」と「製造」の事業間シナジーを追求している。この他、障がい者雇用促進事業(同0.0%)、及び不動産賃貸事業(同0.3%)。

2427 (株)アウトソーシング

工場製造ラインへの人材派遣・請負の製造系アウトソーシング(13/12期売上構成比46%)と輸送用機器に特化した設計・開発及び実験・評価工程における技術系生産アウトソーシングサービスの技術系アウトソーシング(同36%)が二本柱。この他、海外同15%、その他同3%。東海、関東を地盤に全国に展開。

2429 (株)ワールドインテック

製造・物流系の人材派遣・業務請負及び人材紹介のファクトリー事業(13/12期売上構成比33%)、技術者派遣・SI受託のテクノ事業(同11%)、及び研究者派遣及びCRO(臨床試験受託)のR&D事業(同7%)の3事業を手掛ける事で、研究開発(R&D事業)⇒ 設計開発・生産技術(テクノ事業) ⇒ 製造・物流(ファクトリー事業)の一貫体制をとる。この他、テレマーケティング・保険・携帯ショップ運営等の情報通信事業(同23%)、マンション開発販売の不動産(同15%)、その他(同10%)。

2014年3月期決算
前期比10.5%の増収、同26.4%の経常増益

売上高は前期比10.5%増の307億79百万円。大型案件の解約があったものの、M&A効果、顧客工場数の増加と既存顧客内でのシェア拡大による稼働技術職社員数の増加で主力の製造派遣の売上が増加した。期末の技術職社員数は前期末に比べて947名増の7,768名。大口案件の解約等の影響で計画していた期末8,000名に届かなかったものの、新規採用は計画通りに進んだ。また、採算を重視して案件(事業所=顧客工場)の選別を進めたものの、顧客工場数も413工場と同18工場増加した。

利益面では、低収益案件から撤退する一方、単価の高い自動車関連分野の構成比が上昇する等、収益性の高い案件の獲得が進んだ事で売上総利益率が1.5ポイント改善。人件費や採用費を中心にした販管費の増加を吸収して営業利益は18億24百万円と同23.8%増加した。当期純利益が同1.3%の増加にとどまったのは、検討していた新規事業(ヘルスケア関連)の立ち上げを見送った事に伴う子会社清算損等で特別損失4億22百万円を計上したため。

配当は実質0.5円増配の13.5円

配当は1株当たり13.5円の期末配当を予定(配当性向56.3%)。13年7月1日を効力発生日として、1株を200株に分割しているため実質0.5円の増配。

第4四半期の営業利益は目標としていた過去最高の7億円をほぼ達成。通期ベースの営業利益は28億円になる計算で、営業利益30億円の基盤ができた。

期末総資産は前期末に比べて25億52百万円増の120億58百万円。M&Aの実施や従来からの事業の拡大で総資産の伸びが大きくなったが、シンプルで流動性に富んだ財政状態が維持されている。営業CF及びフリーCFは共に黒字。ただ、グループ企業の増加や業容拡大に伴う運転資金の増加に対応するべく、長期借入金を積み増した。
自己資本比率は25.7%、ROEは32.2%。

2015年3月期業績予想
前期比4.0%の増収、同34.5%の経常増益予想

14/3期第4四半期の実績をベースにした保守的な予想となった。売上高は前期比4.0%増の320億円を予想しており、14/3期第4四半期の売上(81億円)水準が続く事を想定。旺盛な人材需要と採用強化による稼働技術職社員数の増加を織り込まなかった。また、利益面では、具体的な案件はないものの、大型案件の解約を想定する等で営業利益予想を25億円にとどめた。

(2)各事業部門の取組み
製造派遣部門

地域特化戦略を推進する。この一環として、全国を5ブロックに分け、各ブロックに営業、採用、管理を設置し、それぞれのブロックで一連のオペレーションが完結する組織に改めた。旺盛な人材需要に応えるべく、営業は地域に特化した営業活動を強化して、取引先のシェアUPを図る(トップシェアを狙う)。一方、採用は確度の高い効率的な採用活動に取り組み、全社で月間500名(各ブロックで従来月間70名程度だった採用数を同100名に引き上げる)の採用を目指すと共に、地域内での職場を確保する事で求職者や地域のニーズに応えていく。尚、月間300名程度の退職者が発生するが、上記採用目標を達成できれば、同200名の純増となる。通期では2,400名の純増となり、50億円程度の増収要因となる。

また、今後は既存顧客内でのインハウスシェアの引き上げを図る事で売上を増やしていく。新たな顧客工場を開拓した場合、営業、採用、監督等、数名のスタッフを配置する必要があり、オペレーションを軌道に乗せるまでの先行投資期間の負担も大きい。半導体分野以外へ領域を拡大して以降、顧客工場数が飛躍的に増加した結果、領域拡大前は1工場30~50名だった派遣技術者数が、現在20名程度に小規模化している。既存顧客内でのシェアアップを図る事で収益性の改善を図りながら、売上を増やしていく考えだ。

エンジニア部門

開発・設計エンジニアに加え、建設エンジニアの派遣部門を創設した。製造派遣分門に続く利益創出部門とするべく、早期の基盤構築に取り組む考えで、利益率を重視して、売上の増加と売上増に見合った利益の獲得を目指す。14年4月に新卒240名が入社したが、15年4月は400名の入社を目標に新卒採用活動を進める。採用増に対応して未経験者育成配属スキームを拡充し、早期の戦力化を図る。

建設エンジニアとは施工監理技術者(現場監督)の事で、国土交通大臣から指定試験機関の指定を受けている一般財団法人建設業振興基金による検定試験に合格する必要がある。施工監理技術者の派遣事業は(株)夢真(JASDAQ:2362)の他、未上場会社1社が手掛けている模様。復興需要に加え、再開発関連や景気回復による建設投資の増加で施工監理技術者は絶対数が不足しており、中途採用が難しいため、新卒を採用して育成していく必要がある。新規の学卒者の確保が事業拡大のポイントとなっている。
尚、15/3期は4月入社の新卒240名に加え、中途採用での入社もあり、1Q末までに270~280名の戦力増となる見込みで、マンパワーが前期比ほぼ倍増する。15/3期は売上高30億円、営業利益3億50百万円の社内目標を掲げている。

再就職支援部門

企業業績の回復で単純なリストラは減少傾向にあるが、雇用流動化の動きは継続しており、グループ外出向のニーズが増えている。このため、雇用流動化を支援する事で需給調整機能の役割を担うべく、グループ外出向支援サービスを切り口とした営業を強化する。

(3)コミットメント

今期の配当は未定だが、同社は利益成長と株主還元を重視しており、「EPS成長率30%以上(3ヵ年計画の平均成長率)」及び「総還元性向50%以上(13/3期第2四半期に配当性向30%から変更)」をコミットメントしている。

・EPS成長率 30%以上(3ヵ年計画の平均成長率)
・総還元性向 50%以上(2013年3月期 第2四半期に配当性向30%から変更)

EPS成長率 = 今期EPS÷前期EPS
総還元性向 = (配当総額+自社株買い総額)÷税引き後当期純利益

(4)労働者派遣法改正の動き

14年3月に閣議決定された労働者派遣法改正案が、国会での決議を経て15年4月に施行される予定だ。改正労働者派遣法の施行により、企業は派遣が使いやすくなり、派遣社員も働きやすくなる。言い換えると、労働力の流動化が一段と進む一方で、派遣社員の就労も安定する。改正案の主なポイントは次の通り。

(1)専門26業務の区分をなくし派遣期間の上限を「業務」から「人」へ
(2)常用雇用された人は派遣先で期限なく働く事が可能に
(3)有期雇用された人は派遣先で最長3年働く事が可能に
(4)派遣元に対し計画的な教育訓練、キャリアコンサルティングを義務付け

尚、常用雇用社員が全体の70%を占める同社は(2)の恩恵が特に大きい。

【中期経営計画(14/3期~16/3期) - 質量共に「日本一の請負会社」を目指して -】

中期経営計画の基本戦略は、①既存顧客シェアの拡大、②既存顧客ニーズの深掘り、及び③正社員派遣の横展開の3点。長期的な目標として掲げている「営業利益100億円、稼働数20,000名」の達成に向けた基盤整備に取り組む。既存顧客シェアの拡大により利益生産性の向上と安定成長を実現すると共に、アウトプレースメントや建設技術者派遣等の新規事業を中心に既存顧客ニーズの深掘りと正社員派遣の横展開を進める事で、製造派遣・請負以外で営業利益の1/3を稼ぎ出せる体制を構築する。

【基本戦略の概要】
①既存顧客シェアの拡大(製造派遣事業)

顧客基盤が拡大・強化されリスク分散が進んだ事から、今後は新規顧客工場数の開拓よりも、約400の既存顧客工場のインハウスシェアの引き上げに力を入れていく。ちなみに、領域拡大前の11/3期第1四半期は顧客工場数が93工場で、そのアウトソーシング活用の総計は13,738名。同社のインハスウシェアは31%だった。一方、現在の約400工場のアウトソーシング活用の総計は47,400名で、同社シェアは14%にとどまる。インハスウシェアの引き上げによる稼働数の増加は、収益性改善にもつながる。

②既存顧客ニーズの深掘り(再就職支援事業)

再就職支援サービス市場はリクルートとパソナの寡占市場で、両社が約2/3の市場シェアを有する。ただ、両社共に都市部でのホワイトカラー向けのサービスが中心。これに対して、UTキャリア(株)は、地方製造工場向けに特化する事で大手2社との差別化に成功している。再就職先の斡旋でUTホールディングス・グループの顧客や営業基盤を活用できる事が、何よりの強みだ。

③正社員派遣の横展開

同社は強みである正社員派遣について、製造業以外への横展開を進めていく考え。その第1弾となるのが、建設技術者及び設計開発者である。建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によると、12年度は18兆円だった建設公共投資額が13年度は20.2兆円に拡大する見込み。復興需要に加え、「国土強靱化基本法」の施行や景気回復による民間建築投資の増加等が重なり、逼迫している建設業界の労働力不足が更に進むと見られている。このため、外部労働力活用ニーズの高まりが予想され、アウトソーシング各社にとってはビジネスチャンスである。

今後の注目点
15年4月の改正労働者派遣法の施行により、企業は派遣社員を使いやすくなる。既に派遣ニーズが顕在化しており、同社は15/3期の売上高として320億円を予想しているが、実際には売上換算で350~370億円程度の需要があるようだ。仮に15/3期の売上高を350億円、売上総利益率を前14/3期第4四半期並みの19%、販管費を前14/3期第4四半期実績(9億円)の4倍とすると、売上総利益66.5億円、販管費36億円となり、営業利益は30億円を超える計算だ。つまり、中期経営計画の利益目標を達成できる事になる。
課題は人材の確保であり、首都圏ではパート・バイトの確保すら難しい状況だ。同社の顧客工場がある地方でも採用コストは上昇しているが、同社は正社員としての採用であり、しかも、ESOPも含めて福利厚生が充実しているため求職者にとっては魅力的。このため、人材の確保と言っても、いかに効率良く人材を確保するか、である。15/3期の一人当たりの採用コストとして、14/3期の9.4万円を上回る10万円を予定しているが、採用効率の向上に向けた取り組みを進めていく考え。ブロック制の導入は、この一環である。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
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