(SGX) シンガポール取引所 2014年6月期第2四半期業績レポート

2014/04/16

sgx

今回のポイント

・シンガポールに本拠地を置く投資持株会社。売買、受渡、資金決済、預託というサービスを一貫して提供しており、アジアを代表する中心的な決済機関でもある。上場企業の約4割が外国企業という、世界的にも有数の国際的な取引所。「Asian Gateway」として、株式、デリバティブ、債券、コモディティなど、アジアの幅広い金融商品を売買できる「ワンストップ」の取引所。高ROE、高配当性向と株主に対する意識の高さも大きな特徴。

・2014年度2Q(10-12月)は、デリバティブ部門が好調だったが、証券部門が減収で全体では増収・微減益。上期比較では増収・増益。新たに6通貨の為替先物を開始するなど、商品ラインアップの強化を進めた。配当は予定通り4セントとすると発表した。

・2013年度において有利子負債はゼロ。レバレッジも2.02倍(自己資本比率49.5%)と決して高くない中で、約40%のROEを実現する高収益体質(売上高当期純利益率46.6%)は大きな魅力だ。加えて、9割にも達する配当性向および現在の株価における配当利回りの高さも、投資家としては見逃せない。

会社概要
【概要】

シンガポール取引所(以下、SGX)は、シンガポールに本拠地を置く投資持株会社。
売買、受渡、資金決済、預託というサービスを一貫して提供しており、アジアを代表する中心的な決済機関でもある。
取引所の規模としては世界第6位。上場企業数は約770で、シンガポール国内企業にとどまらず、中国、インド、日本、台湾を含み上場企業の約4割が外国企業という、世界的にも有数の国際的な取引所。
事業は大きく分けて、「証券」、「デリバティブ」、「その他」の3セグメントから構成されている。
「Asian Gateway」として、株式、デリバティブ、債券、コモディティなど、アジアの幅広い金融商品を売買できる「ワンストップ」の取引所である点が大きな特徴。

【沿革】

アジアで初めて完全に電子化しいわゆる場立ちを無くしたシンガポール証券取引所と、アジアで最大のデリバティブ取引所の一つで、1989年、1992年、1993年、1998年には、1999年にInternational Financing Review誌から「今年のデリバティブ取引所」に選ばれ、1999年にはAsset magazine誌から「アジアのベスト・デリバティブ取引所」に選ばれたシンガポール国際金融取引所が1999年に合併。2000年SGXに上場した。
直近の主な動向としては、「2011年10月、アジアFX先物の店頭取引のための決済機構を設立」、「2012年1月、投資家教育強化のためのポータルサイト「My Gateway」を開設」、「2012年6月、シカゴ及びロンドンに売買のための接続拠点開設」、「2013年4月、中国金融先物取引所とデリバティブ市場発展のため協議」などがあげられる。

【CEOプロフィール】

Magnus Böcker 氏は、2009年12月1日、SGXのCEOに就任。
就任以前2008~2009年にはNASDAQ OMXのプレジデントを務める。OMX(ノルウェー取引所)の創設を先導したのち、NASDAQとOMXの合併においても主導的な役割を果たした。
OMX在任中は、CFO、COO、テクノロジー部門のプレジデントなどを歴任後、2003年にOMX ABのCEOに就任した。Böcker 氏のリーダーシップの下、OMXは取引所のための技術ソリューション、決済機構および保証金管理の機能などを提供する世界最大のプロバイダーとなった。
現在、シンガポールの銀行・金融協会の審議員を務めている他、シンガポール経営大学のSim Kee Boon Institute for Financial Economicsの顧問会議メンバーでもある。

【市場環境】
①アジア市場の成長

アジア開発銀行の調査(2013年12月発表)によると、日本を除くアジアのGDP成長率は、東南アジア、南アジアを中心に2012年に対し2013年はややスローダウンしたものの、2014年は2013年を上回る見通しとなっている。
中国は2ケタには及ばないが、公共投資を主因に7%台で相対的に最も高い成長が予想される。インドは輸出の回復、工業製品および農産物が伸びる。ASEANは、フィリピンの台風被害、タイの政情不安などから2012年に比べ2013年の成長率は大きく下回ったが、2014年は輸出が引き続き好調なシンガポールを中心に、緩やかな回復を予想している。主要先進国景気も、好調な米国を牽引役に回復に向かうが、成長率の高さという点ではアジアが先進国を大きく上回っている。

米国FRBの量的金融緩和の段階的縮小の新興市場に与える影響にも注意が必要だが、中長期的に見れば成長率の高いアジア市場への資金流入は今後も増大すると考えられ、「Asian Gateway」としての同社の重要性はますます高まるものと思われる。

②シンガポールの優位性:健全な財政状況、シンガポールドル動向、地理的アドバンテージ

下表のように、シンガポールは、S&Pのsovereign ratingにおいてアジアで数少ない「AAA」付与国。
また、アジア経済の成長性、信用力の高さ等を背景に、S$(シンガポールドル)はUS$(アメリカドル)に対して安定的に推移しており、投資資金流入という観点から大きなアドバンテージとなっている。

 *出所:S&P Website(http://www.standardandpoors.com 2014年2月22日時点)

加えて、シンガポールは地理的優位性も有している。同社は、40億人を有するアジア市場に概ね7時間以内でアクセスできるという点を記している。

③国際的な金融センター

シンガポールを特徴づけるもう一つのポイントが「国際的な金融センター」であること。フォーチュン500に選ばれている国際的大企業の約3割がアジア太平洋本社をシンガポールに置いているほか、アジア最大の機関投資家の本拠地となっているおり、主要機関投資家の運用資産合計は1.8兆US$にのぼる。(いずれも同社資料より)

【事業内容】

セグメントとしては、以下の5つに分かれているが、どの事業も証券ないしデリバティブに関連したものであるため、大きく分けて「証券70%、デリバティブ30%」という事業構成となっている。

証券部門

売上構成比34.8%(2014年2Q累計)
株式、インベストメントトラスト、債券、ETF、ワラントなどの取引および決済を行っている。

デリバティブ

売上構成比29.9%(同)
中国、インド、インドネシア、日本、シンガポール、台湾を対象としたアジアデリバディブの取引および決済を行っているほか、OTC(相対)の商品及び金融デリバティブの決済も行っている。

マーケットデータおよび接続

売上構成比11.0%(同)
マーケットユーザーに対し、市場価格やその他情報を販売及び提供している。また、証券市場、デリバティブ市場における取引および決済プラットフォームへのアクセス、接続料を会員から収受している。

預託サービス

売上構成比13.9%(同)
SGX上場の証券及び未上場証券の受渡しおよびカストディサービスを行っている。

発行者向けサービス

売上構成比10.3%(同)
グローバルファンドを探している企業向けに、株式及び債券による資金調達プラットフォームを提供している。

強みと特徴
①アジアの成長を取り込むアジア投資の玄関口

アジアは短期的にも中長期的にも最も高い成長が見込まれる地域である。
中でも、中国・インド・ASEANは「アジア成長トライアングル」と呼ばれ、人口の大きさから経済規模及び成長率の高さで特に注目されている。
シンガポールはそのトライアングルに囲まれたアジア経済の要衝ともいえる。

同社は、株式、デリバティブ、ETF、コモディティ、債券、REITなど、アジアの幅広い金融商品に投資できる「ワンストップ」取引所であり、自らをアジアの成長を取り込むアジア投資の玄関口「Asian Gateway」と位置付けている。

世界でも有数の国際的な取引所

国際的な取引所として、同社は海外に本拠を持つ多くのグローバル企業からの信頼を獲得してきた。
上場企業の約40%が海外企業という世界的にも有数の国際的な取引所で、20か国以上300以上の国際企業がSGXに上場している。外国企業のうち、約7割が中国、約2割が東南アジアとなっているが、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の企業も上場している。

②高いROE、配当性向 ~株主に対する意識の高さ~

同社のROEおよび配当性向は高水準で推移しており、株主に対する意識の高さが窺える。
同社は四半期ごとに年間4回配当を実施しているが、2014年度の配当政策として、四半期ごと基本配当4セントを支払う事を予定している。
加えて、年間配当額については、(a)年間の税引き後利益の80%、(b)一株当たり16セントのうち、いずれか高い方以上とすることを目標としている。

前2013年度は、1~3Qに基本配当4セントを実施し、最終4Qは基本配当4セントに変動配当12セントを加えた16セントの配当を実施。結果として年間配当額は2012年度を1セント/株上回る28セント/株とし、配当性向は89%となった。今年度も同様の配当政策が予想される。

2014年度第2四半期決算概要
(1)グループ業績
デリバティブ部門は好調だったが、証券部門が減収で増収・微減益。
上期(7-12月)比較では増収・増益。
配当は予定通り4セントとすると発表した。(前年同期と変わらず)
Magnus Böcker 氏(CEO)のコメント
デリバティブ部門が引き続き成長し売上構成比は32%となった。
一方、証券部門は個人投資家、機関投資家ともに売買参加が低調で、減収となった。
この四半期において、オーストラリアドル、インドルピー、日本円、韓国ウォン、シンガポールドル、米国ドルの先物取引をスタートさせ、新たな資産クラスである外国為替に対する商品ラインアップを拡大させた。
また、SGXは当社の清算や決済に関する仕組みが、最新かつより望まれる国際的標準に準拠しているとの査定をIMFから受けた。
加えて、米国当局がデリバティブ決済機関として認めたアジアで初めての決済機関となった。
<証券市場部門>

2014年度第2四半期(10-12月)の売上高は前年同期比13%減収の5,220万S$。
合計売買代金及び、日々の平均売買代金はそれぞれ641億S$、10億S$で、前年同期に比べ18%減、19%減。
全取引に占める売買代金150万S$以下の取引の比率が58%から64%に高まった反面、大口の取引の比率が低下した。
売買低下による減収はあったが、平均決済手数料は3.2ベーシスポイントと6%増加した。

<デリバティブ部門>

売上高は前年同期比16%増収の5,250万S$だった。初めて証券部門の売上高を上回った。

株式と商品に関するデリバティブ商品売上は13%増加の3,670万S$。FTSE China A50先物、日経225先物およびオプション、鉄鉱石スワップなどが好調だった。合計の取引量は18%増加の2,630万件で、1取引当たりの平均手数料は1.40S$だった。(前年同期は1.44S$)

SGX SICOM ゴム先物に対する関心が引き続き高まっており、取引量のマーケットシェアは53%、建玉のマーケットシェアは40%増加した。
この先物は20年前のスタート以来、ゴム価格の国際的ベンチマークとなっており、ゴム生産者の物理的な取引のためと同時に、主要な国際的タイヤメーカーも重要視している。

2013年11月に、新たに、SGX-PSE MSCI フィリピン指数先物、SGX MSCI タイ指数先物、SGX MSCI インド指数先物の3つのアジア株価指数先物の取引をスタートした。
これにより既存の株式デリバティブと合わせ、より広範囲に亘ってアジアの重要な成長市場にアクセスできる機会を投資家に提供できるようになった。

また同じく11月、オーストラリアドル、インドルピー、日本円、韓国ウォン、シンガポールドル、米国ドルの先物取引をスタートさせた。SGXのアジア外為先物の利用者は、為替と株式のリスクを同じ決済機関で管理することが出来るようになり、業務及び資金効率を最大化させることができる。

<マーケットデータおよび接続部門>

売上高は前年同期比3%増加の1,930万S$となった。
マーケットデータの売上は前年同期と同水準の880万S$。接続の売上は4%増加の1,050万S$だった。
接続の売上増加はCo-Location事業が引き続き成長したため。
12月に、トムソン・ロイターと共同でシンガポールドル債券の指数の公表を開始した。

<預託サービス>

売上高は前年同期比7%増加の2,330万S$。
証券受渡売上は10%増加の1,760万S$。預託管理売上は4%増加の160万S$だった。

<発行者向けサービス>

売上高は前年同期比6%増加の1,690万S$。
上場売上は11%増加の1,010万S$。上場手数料の改定が寄与した。
第2四半期に合計9銘柄が上場し、14億S$を調達した。(前年同期は8銘柄8億S$)
セカンダリー株式ファンドの調達額は、前年同期比べ5%減少の12億S$だった。

債券の上場は前年同期の92銘柄、調達額397億に対し、144銘柄、337億S$となった。
企業アクション売上高は前年と変わらずの680万S$だった。

(2)今後の見通し

SGXは今後の見通しを以下の様に考えている。

世界経済は緩やかな回復の兆しを見せている。SGXは新商品やサービスへの投資、国際的な供給網の拡大、規制及びリスクマネジメント体制の強化を継続して行っていく。
2014年度の販管費は2013年度の3億S$から増加し、3.2億S$から3.3億S$の間になるだろう。以前公表したように、技術関係の設備投資が3,500万S$~4,000万S$になると思われる。
また今下期には、業務活性化、効率性の追求、顧客サービス強化に向けた体制作りのために、3,500万S$~4,000万S$の設備投資を計画している。
今後の注目点
同社の注目点に一つは何と言ってもROEおよび配当性向の高さだ。
2013年度において有利子負債はゼロ。レバレッジも2.02倍(自己資本比率49.5%)と決して高くない中で、約40%のROEを実現する主因である高収益体質(売上高当期純利益率46.6%)は大きな魅力だ。
加えて、最低80%の配当性向および現在の株価における配当利回りの高さも、投資家としては見逃せない。

また、本文中で触れているが、同社の特徴としてSGX上場企業、アジアETF、デリバティブ、アジアREITといったアジアの成長へのアクセスを可能にする豊富な商品ラインアップがある。SGXのみを投資対象とするのではなく、その上場銘柄や商品も投資対象として検討してみることは、アジアの成長を取り込むと共に、リスク分散の観点から日本の個人投資家にとっても有用なことと思われる。

世界における市場間競争はますます激しくなると予想されるが、「Asian Gateway」を標榜する同社がどんな施策でこの競争に立ち向かうのか注目していきたい。

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