(7707:JASDAQ) プレシジョン・システム・サイエンス 2014年6月期上期業績レポート

2014/04/09

pss

今回のポイント

・遺伝子診断は、これまで研究室や検査センター等、ラボでの臨床研究が中心だったが、市場規模がはるかに大きい臨床診断(バイオ診断)市場が立ち上がってきた。同社は、こうした事業環境の変化をとらえるべく、現在進行中の中期事業計画において臨床診断分野の装置及び試薬・消耗品事業の育成・強化に取り組んでいる。

・中期的には、有力なOEMパートナーを有する臨床研究分野を安定収益源に、臨床診断分野を成長ドライバーとして業容拡大を図っていく考え。また、現在建設中の「大館試薬センター」(秋田県大館市)を拠点に試薬・消耗品の一段の強化を図る事で、装置への依存度を引き下げていく。

・14/6期上期は前年同期比2.1%の減収、2億23百万円の営業損失(前年同期は1億21百万円の損失)。円安を追い風に輸出採算が改善したものの、新製品の開発及び事業化に向けた人件費や研究開発費等が負担となった。ただ、下期は開発プロジェクト2案件の寄与で前年同期比増収に転じ(17.8%増)、営業損益がほぼ均衡する見込み(26百万円の損失)。通期では前期比8.2%の増収、2億50百万円の営業損失を見込む(前期は1億26百万円の損失)。しかしながら、有価証券売却益による特別利益を計上しており、当期純利益の黒字化(前期は1,014百万円)並びに配当を実施する見込み。

会社概要

血液や毛髪等の検体から自動的にDNA(デオキシリボ核酸)を取り出す自動抽出装置でトップシェア。特許技術である「Magtration®(マグトレーション)技術」(後述)を基盤に、「遺伝子関連情報の有効活用による社会貢献」を目指している。グループは、同社の他、欧州子会社(PSS E)及び米国子会社(PSS USA)を中心とする連結子会社7社。

【ビジネスモデル - 海外OEM向け販売中心のファブレスメーカー -】

ファブレスメーカーとして、OEM(相手先ブランドによる供給)を中心に、欧米子会社を通じた自社販売も含め、ワールドワイドに事業展開している。生産は日本とドイツで行っており、主力のDNA抽出装置は受注生産を基本として機種毎に複数の外注先を利用。海外規格や量産にも対応できるメーカー、単品の受注開発を得意とするメーカー、更にはソフトウエア開発会社等と友好関係を構築している。一方、OEM先には、スイスの医薬品大手ロシュ(Roche)グループ、分子生物学の研究用自動化装置や試薬の開発・販売を手掛ける独キアゲン(Qiagen)グループ、生化学や血液学検査の(株)LSIメディエンス、米ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社、米ベックマン・コールター(BECKMAN COULTER)社、米ナノストリング(NanoString Technologies)社等の有力企業が名を連ねる。

【売上高構成 - 各種装置46%、試薬・消耗品・メンテナンス関連31%、受託製造等23%(13/6期) -】

13/6期のセグメント別売上構成は、DNA自動抽出装置等46%、試薬・消耗品類23%、メンテナンス関連7%、受託製造等23%。試薬はあらかじめ必要量が分注されたプレパック試薬カートリッジとなっており、操作前の煩雑な分注作業が不要。主要なOEM先は自社で試薬を製造販売しているが、プラスチック消耗品類は同社から購入する契約となっている。取引先別では、ロッシュグループ向けとキアゲングループ向けが全体の44%弱。また、輸出が69%を占め、国別では、日本30.5%、米国25.1%、ドイツ44.3%。

【沿革 - 「バイオテクノロジー」と「ものづくり」の融合により社会に貢献 -】

1985年7月、理化学機器(臨床検査機器)の保守メンテナンスを目的に東京都板橋区に設立され、89年2月に自社製品として、分注装置、希釈装置、洗浄装置等の製造販売を開始。91年2月には千葉県松戸市に松戸研究所を設置し、臨床検査自動化システムの研究開発を受託した。コア・コンピタンスであるMagtration®技術は、この研究開発の過程で生まれたので、95年6月に日本・米国・欧州等で特許を出願(その後、世界30カ国で約80件の特許を取得)。同年10月には同技術を利用したDNA自動抽出装置を製品化した。96年8月には東洋紡績(株)とDNA自動抽出装置等に関するOEM契約を締結し、その後、2000年にかけて、ロシュグループ、キアゲングループへとOEM先を拡大。01年2月に大証ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ市場)に株式を上場した。

上場後は、米国、欧州に子会社を設立し、OEM先を広げて業容を拡大。08年以降は、臨床診断市場へとシフトするべく、バイオ企業との連携強化に取り組んだ。具体的には、08年4月にベルギー Diagenode SA、(株)ニッポンジーン(東京都千代田区)とエピジェネティクス(遺伝子発現に関する研究分野)用自動化システムの開発で提携し、09年9月に米国の臨床検査センターである ARUPラボラトリーズと販売及び保守契約を締結した(この他、11年:DiaSorin社とのLAMP法による分子診断装置の開発、12年:アボット社と自動細菌検査システム向け全自動前処理装置の開発等)。
また、09年9月には価格競争力も含め製造面を強化するべく日本パルスモーター(株)と提携すると共に、その子会社で製造委託先だったエヌピーエス(株)を持分法適用会社化した(12年7月に株式買い増しにより連結子会社化)。

【コア・コンピタンス - マグトレーション(Magtration®)技術 -】

微小磁性体を利用したDNA抽出技術であるマグトレーション技術は、遺伝子解析、たんぱく質解析、免疫解析等、いわゆるDNA解析の入り口で利用される。「DNA解析で利用される」と言うと難しく聞こえるが、身近な例では、健康診断等での血液検査や尿検査、輸血ウィルス検出、新型インフルエンザなど感染症の判定等を挙げる事ができ、警察の鑑識(DNA鑑定)にも不可欠だ。また、09年春の新型インフルエンザ流行の時はウィルス感染の判定にDNAが使われたが、その際、世界保健機関(WHO)の診断ガイドラインで同社がOEM供給するDNA抽出・精製装置の一つが紹介された。

「Magtration®」とは「磁石によるふるい分け」という意味を表す”Magnetic Filtration”を縮めた造語で、DNAを吸着する磁性粒子の反応を自動化するために開発された同社の独自技術。研究分野、実用分野を問わず、DNAを利用するには細胞(血液等の検体)からDNAを取り出す必要があり、それまでも磁性粒子を用いた抽出が行われていたが、手作業のため時間を要した上、粒子の捕獲効率や次工程での再懸濁効率が悪く、クロスコンタミネーション(サンプル間の混合)等の問題もあった。しかし、マグトレーション技術の開発で、自動化による作業時間の短縮はもちろん、捕獲効率や再懸濁効率が改善され、クロスコンタミネーション等の問題も解決された。

マグトレーション技術の特徴

・装置の機械構造がシンプルで、製造に関して特殊技術を必要としない
・手作業で2~3時間を要した抽出作業が10~30分程度で完了
・1本の使い捨てチップで1検体の抽出作業が完了するためクロスコンタミネーションが発生しない
・数μl(マイクロリットル=1リットルの百万分の1)というごく微量な溶液にも対応可能
・DNA、RNA、mRNA(メッセンジャーRNA)、Plasmid(特定の細菌に存在する冠状二本鎖DNA)など抽出対象物が多様
・反応工程を自在に設定できるため、どの様な試薬にも対応可能で汎用性が高い

【臨床研究や臨床診断で使用される同社の装置及び試薬・消耗品】

同社の製品は、研究室や検査センター等のラボで使用されるラボ(臨床研究)分野向け製品と、実際の医療現場で使用される臨床診断(バイオ診断)分野向け製品に分かれる。

(1)ラボ(臨床研究)分野向け製品

主力のDNA自動抽出装置はロシュグループ、キアゲングループを中心とした有力なOEM先を有し需要は総じて安定している。装置で使われる試薬やプラスチック消耗品の製造・販売も手掛けており、試薬は抽出用試薬を自社ブランドで展開し、プラスチック消耗品はOEM先に供給。また、抽出だけでなく、抽出・精製に至るまでの複雑な前処理工程を自動化する装置の開発にも取り組んでいる。

(2)臨床診断分野向け製品

POCT市場(後述)における免疫診断装置と試薬・消耗品の売上を軸に展開し、敗血症診断のための前処理自動化装置、感染症や投薬前診断分野等で使われる遺伝子診断装置、及びこれらの全自動診断装置で使用する抽出試薬を開発し、製造・販売を行っていく予定。

POCT(Point of care testing)免疫診断装置

心臓疾患に関係したマーカー数種類の同時測定が可能で、厚労省、欧州CE-IVD、米国FDAの認可承認を取得済み。ワールドワイドな販売展開で、毎年安定した販売を続けている。
POCT検査とは、患者の身辺での検査の事で、病院での「ベッドサイド検査」、「臨床現場即時検査」等とも呼ばれている。

【実績 累計1万台以上のDNA自動抽出装置を世界のOEM企業へ納入】

DNA自動抽出装置を世界のOEM企業へ納入しており、累計1万台以上の供給実績を有する。献血時等に実施されるNAT検査(核酸増幅検査:Nucleic acid amplification tests。エイズウイルス検査)の精度向上と検査効率の改善に貢献した他、新型インフルエンザの流行時にはWHO新型インフルエンザ検査ガイドラインにも明示された。また、警察科学捜査において犯行現場に残された遺留品からの犯人特定に使われるDNA鑑定でも実績は豊富。
DNA抽出分野以外では、心筋疾患の診断分野(LSIメディエンス向けOEM)や遺伝子のシーケンサー前処理分野(ライフテクノロジーズ社向けOEM)で利用が始まり、現在、利用分野が拡大中である。

(1)NAT検査での実績:PSSマグトレーション+ロッシュPCR

現在、同製品の稼働は終了しているが、最盛期には年間約500万検体の処理数を誇り、誤差は0.00034%と従来の抗体検査の誤差0.5%を大きく下回った。また、NAT検査の精度向上と検査効率の改善に寄与し、輸血後の血清肝炎の発症率が劇的に低下した。

(2)WHO新型インフルエンザ検査ガイドライン

WHO新型インフルエンザ検査ガイドラインに同社のOEM製品が明示され、DNA抽出装置の標準機として認知されている。現在、世界の病院で利用され、世界シェアは50%(同社推計)。

(3)警察科学捜査におけるDNA鑑定

2012年は10年前の約87倍に達する約26万件数に及ぶDNA鑑定を実施、冤罪事件(足利事件や東電社員殺害事件)解決の手がかりとなった他、東日本大震災での身元特定にも使われた。誤差は4.7兆人に1人の割合(導入当初は1千人に1.2人)。

Magtration® System 6GCは6検体の、Magtration® System 12GCは12検体の同時処理が可能。共に卓上型のコンパクトな仕様で、抽出操作は専用のICカードと試薬、消耗品をセットするだけ。ICカードには、目的に応じた動作があらかじめ書き込まれており、DNA抽出、RNA抽出、Plasmid抽出等を全自動で行う事ができる。

(同社Webサイトより)

中期事業計画

遺伝子診断は、これまで研究室や検査センター等、ラボでの臨床研究が中心だったが、市場規模がはるかに大きい臨床診断(バイオ診断)が立ち上がってきた。同社は、こうした事業環境の変化をとらえるべく、現在進行中の中期事業計画において臨床診断分野の装置及び試薬・消耗品事業の育成・強化に取り組んでいる。

事業展開のポイント

・ラボ自動化(臨床研究)分野から臨床診断分野へ本格展開
・当中期事業計画後を見据えた臨床診断用試薬・消耗品の育成

(1)製品戦略
ラボ(臨床研究)自動化分野

研究室や検査センター等、ラボの自動化に対する取り組みを進めていく。具体的には、主力のDNA自動抽出装置の強化に加え、今後の有望領域であるDNAシーケンサー(DNAの塩基配列解析装置)分野やエピジェネティクス分野(後述)の製品開発を進め、16/6期を目途に新製品の売上を全体の25%程度に高めたい考え。
尚、エピジェネティックスとは後天的な遺伝子の働きの変化に関する分野で、iPS細胞、がん、老化、脳機能など多くの領域で応用されている。例えば、iPS細胞は神経細胞、肝臓細胞等、その機能や外観が全く異なる細胞へと分化できるが、その正常な分化にはエピジェネティクスの制御が重要であると考えられている。また、がんの発症、細胞の老化等にも深くかかわる重要な研究テーマとなっている。

臨床診断分野

遺伝子レベルの分析を応用した全自動診断装置、全自動解析装置、全自動前処理装置及び、試薬・消耗品を医療の現場に供給していく。特に小病院やクリニック等のPOCT市場に注目しており、心臓疾患に関係したマーカー数種類の同時測定が可能なPOCT免疫診断装置は、厚労省、欧州CE-IVD、米国FDAの認可承認を取得し、ワールドワイドな販売展開で実績をあげている。また、全自動遺伝子解析装置「geneLEAD」の開発を終え、自社ブランドで販売している他、アボット(Abbott)社向けの敗血症前処理装置(敗血症サンプル前処理装置)の開発も進めている。
尚、アボット(Abbott)社向けについては、2012年3月に自動細菌検査システム「PLEX-ID™」向け全自動前処理装置の開発製造契約を締結し、現在、開発中。加えて、2機種目の開発契約も既に締結している(2013年6月に、PCR産物精製を行なう脱塩装置の開発契約を締結)。

(2)中期事業計画の進捗状況

①ロッシュグループと次世代シーケンサー向け全自動前処理装置に関して開発契約を締結(2013年9月24日)
②アメリカ学会(SLAS2014)の講演にて、全自動遺伝子診断装置「geneLEAD」をアピール(2014年1月27日)
③試薬開発製造拠点として大館試薬センターの建設(2014年夏、完成見込み)

①ロッシュグループと次世代シーケンサー向け全自動前処理装置に関して開発契約を締結(2013年9月24日)

2013年9月に、ロッシュグループと、同グループの次世代シーケンサーである「GS Junior」向け全自動前処理装置の開発・製造に関する独占契約を締結した。PSSは自社製品として全自動前処理装置を供給し、「GS Junior」の利用促進に協力する。

シーケンサー市場は、ロシュ、ライフテクノロジー、イルミナ社の3社のほぼ寡占状態で、このうちロシュ及びライフテクノロジーはPSSのOEM供給先。
②アメリカ学会(SLAS2014)の講演にて、全自動遺伝子診断装置「geneLEAD」をアピール(2014年1月27日)
全自動遺伝子検査システム「geneLEAD」について

Simple、Compact、Easy Maintenanceと言う「Magtartion®+α」の技術コンセプトの下で開発が進められている全自動遺伝子検査システム「geneLEAD」は、ガン治療における投薬前診断やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等の病院感染症予防等に使われる。小病院やクリニックをターゲットとしており、PSSは、感度、機能、品質、及び価格面での競争力を武器に、OEM供給と自社ブランドで展開していく考え。

既にエリテック(ELITech)社と共同開発及び販売・供給契約を締結している(2013年4月12日プレスリリース)他、LGライフサイエンス社とも供給・販売契約を締結しており(2013年8月8日プレスリリース)、エリテック社との契約では、「geneLEAD」がヒト体外診断市場に向けに投入され、エリテック社が提供する幅広い遺伝子診断試薬(診断工程で使われる試薬)への適合が期待されている。また、LGライフサイエンス社との契約では、NAT検査(核酸増幅検査Nucleic acid Amplification Tests)の前処理用遺伝子解析装置としての役割を担う。両契約共に抽出工程で使われる試薬はPSSが自社の開発製品を供給する。

アメリカ学会(SLAS2014)での講演と出展(2014年1月27日)

14年1月18日~22日にかけて米国サンディエゴで開催されたSociety for Laboratory Automation(SLAS2014)において、現在開発中の全自動遺伝子診断装置「geneLEAD」について講演を行った。「全自動かつ自由度の高い遺伝子検査システム」をアピールした事が奏功し、多くの参加者から各々の遺伝子研究テーマに関する診断システム自動化についての引き合いを受ける事ができた。特にシステムの自由度の高さが参加者の興味を引いたようだ。こうしたシステムは特定の試験専用がもっぱらだが、「geneLEAD」は遺伝子研究のための多様な試験にフレキシブルに対応できる。このため、少量多品種の試験をこなさなければいけない規模の小さいラボからも高い評価を得たようだ。

③試薬開発製造拠点として大館試薬センターの建設(2014年夏、完成見込み)
PSSの試薬戦略のステップ

先ず、PSSの自動化システム向けに、人、ウィルス、バクテリアを対象にした遺伝子測定試薬と抽出試薬を製品化し販売拡大を図る。次に、「geneLEAD」用抽出試薬をエリテック社の販売ルートに乗せグローバル展開を図り、試薬ビジネスの成長モデルを確立する。この後に、試薬の開発・製造拠点を整備して本格的に臨床診断試薬事業を本格化させる考えで、自社オリジナル試薬の開発・製造拠点となる製造子会社エヌピーエス(株)内に「大館試薬センター」(秋田県大館市)を建設中である。装置、試薬、消耗品の3要素をインテグレートした事業展開を進め、世界各国の薬事法準拠による許認可も取得する。

大館試薬センターの建設

来夏の完成を目指して、製造子会社エヌピーエス(株)内に「大館試薬センター」(秋田県大館市)を建設中である。この事業は2013年9月に秋田県から「企業立地促進助成事業」として認定を受けており、設備投資額の20%について補助金を受ける(総投資額4億28百万円を予定しており、このうち設備投資額は3億円以上となる見込み)。

各検査分野に自社技術の集大成となる全自動化装置を投入し、自社オリジナル試薬及び専用消耗品をワンセットで提供していく。

2014年6月期上期決算

前年同期比2.1%の減収、2億23百万円の営業損失

売上高は前年同期比2.1%減の19億07百万円。DNA自動抽出装置を中心にキアゲングループ向けが増加した他、ナノストリング社向けやライフテクノロジーズ社向けも増加。アボット(Abbott)社向けに開発を進めている臨床診断用の検体前処理装置に関して、開発進捗見合いの売上を計上した。一方、ロシュグループ向けは、前年同期に次世代シーケンサー(DNA等の塩基配列解析装置)の前処理装置の開発契約に伴う手数料収入が計上された反動で売上が減少。グループ外企業からの受託製造の受注減で子会社エヌピーエス(株)の売上も減少した。

利益面では、円安を追い風に輸出採算が改善し売上総利益が6億87百万円と同12.9%増加したものの、新製品の開発及び事業化に向けた人件費(人員増)、研究開発費、及び特許関連費用の増加が負担となり2億23百万円の営業損失となった。ただ、消費税等の還付や助成金収入の増加で営業外損益が改善。投資有価証券売却益38億22百万円を特別利益に計上した事で12億89百万円の四半期純利益を確保した。投資有価証券売却益の発生は、同社グループが50%を出資している連結子会社(ベンチャーファンド「バイオコンテンツ投資事業有限責任組合」)によるもので、投資先だった(株)リプロセルの株式上場に伴い保有していたリプロセル株式を売却した。

(2)セグメント別(製品区分別)動向
DNA自動抽出装置等 ラボ(研究室)向け自動化装置、臨床診断装置

売上高が11億44百万円と前年同期比7.3%増加したものの、前年同期にロシュグループからの手数料収入を計上した反動と開発費を中心にした営業費用の増加が負担となり(11億24百万円、同16.1%増)、セグメント利益は19百万円と同80.2%減少した。
「ラボ(研究室)向け自動化装置」は、344台の出荷と開発売上の計上で売上高が8億75百万円と同1.9%増加したものの、営業費用が8億10百万円と同12.9%増加。前年同期はロシュグループからの手数料収入が計上されていた事もあり、利益は64百万円と同54.0%減少した。
一方、「臨床診断装置」は173台の出荷と開発売上の計上で売上高が2億68百万円と同29.4%増加したものの、45百万円のセグメント損失(前年同期は42百万円の損失)。予想以上の開発コストの増加で営業費用が3億14百万円と同25.5%増加した事が響いた。

尚、「ラボ(研究室)向け自動化装置」は、ロシュグループやキアゲングループに供給しているDNA自動抽出装置を中心とし、「臨床診断装置」には、(株)LSIメディエンスに供給している免疫化学発光測定装置やアボットグループ向けに開発を進めている臨床診断用の検体前処理装置等がある。

試薬・消耗品、メンテナンス関連、受託製造、その他

試薬・消耗品及びメンテナンス関連の売上は装置の累計出荷台数に応じて増加する性質がある。主要なOEM先は自社で試薬を製造販売し、メンテナンス対応もしているが、プラスチック消耗品類及びスペアパーツは同社から購入する契約となっている。一方、受託製造は子会社で同社グループの製造部門を担うエヌピーエス(株)の事業領域。一定の稼働率を維持するためグループ外企業から医療機器等の製造を受託している。この上期は新規案件の進捗の遅れと既存製品の販売減で売上が減少したものの、コスト削減でセグメント利益が増加した。

その他には、PSSキャピタル(株)とベンチャーファンドであるバイオコンテンツ投資事業有限責任組合の収益、及びその投資先であるPaGE Sciense(株)の収益が計上されている。

上期末の総資産は前期末に比べて34億51百万円減の80億37百万円。同社グループで50%を出資しているベンチャーファンド「バイオコンテンツ投資事業有限責任組合」による株式売却が、資産、負債、及び純資産の主な増減要因。借方では、売却に伴い投資有価証券が減少する一方、現預金が増加。貸方では、売却益の計上による四半期純利益の増加で未払法人税等(59百万円→7億29百万円)が増加する一方、その他有価証券評価差額金(13億41百万円→0)や少数株主持分(33億17→3億44百万円)が減少した。

2014年6月期業績予想
下期は開発プロジェクト2案件の寄与で前年同期比17.8%の増収

アボット社向けの臨床診断用検体前処理装置(2機種)及びエリテック社向けの全自動遺伝子診断装置「geneLEAD(DNA抽出試薬を含む)」の寄与で前年同期比17.8%の増収。上記2案件の開発コストを中心にした売上原価の増加に加え、今後の事業展開に備えた人員増や開発費及び特許関連費用の増加で販管費も増加するが、営業損益は26百万円の損失にとどまる見込み。

通期予想に変更はなく、前期比8.2%の増収ながら、2億50百万円の営業損失

売上高は前期比8.2%増の43億60百万円。2件の開発プロジェクトの寄与で通期では3期連続の増収が見込まれる。
営業損益は2億50百万円の損失。開発案件で発生する追加コストについてはエヌピーエス(株)や提携先協力工場の製造原価低減で吸収できる見込みだが、今後の事業展開に備えた人員増や開発費及び特許関連費用の増加が負担となる。ただ、投資有価証券売却益の計上で12億円の当期純利益を確保できる見込み。為替の前提は、1ユーロ=137.01円、1ドル=98.96円。

配当は1株当たり15円の期末配当を予定しており、14年1月に実施した1:200の株式分割を考慮すると、実質的には700円増配の3,000円。同社は、配当と内部留保のバランスをとりながら株主還元を行っていく考えで、当面の間、連結配当性向20%を一つの目安として配当を実施していく考え。

今後の注目点
今後、バイオ(遺伝子)診断市場の中心が、従来の研究用途から、より市場規模の大きい臨床診断用途へと変わっていく。この動向を踏まえて、同社は3ヶ年の中期事業計画を策定し、現在、その取り組みを進めている。上期決算は先行投資が負担となったものの、新製品の上市に向けた開発活動、試薬事業への本格的参入に向けた大館試薬センターの設立、臨床診断現場での利用のための許認可(FDA、IVD規格等)対応といった取り組みについては、計画通りに進んでいる事が確認できた。アボット社向けの臨床診断用検体前処理装置とエリテック社向けの全自動遺伝子診断装置「geneLEAD」及びDNA抽出試薬の売上計上で下期に計画通りの着地ができれば、来期以降の見通しが一段と明るさを増してこよう。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

コラム&レポート Pick Up