(3034:東証1部) クオール 2014年3月期第3四半期業績レポート

2014/02/26

QOL

今回のポイント
・14/3期3Q(累計)は前年同期比36.4%の増収、同11.8%の営業増益。既存店の好調と新規出店及びM&A効果で、主力の調剤事業の売上が同30.3%増加。CSO(※1)事業を営むアポプラスステーション(株)を牽引役に非調剤事業の売上も同2.5倍に拡大した。薬剤師やCMR(※2)等への先行投資負担を売上の増加で吸収した。

・通期業績予想に変更はなく、前年同期比30.2%の増収、同24.4%の営業増益。非調剤事業が黒字転換する他、立地の選定や店舗オペレーションでノウハウの蓄積が進んだローソン事業の収益改善も見込まれ、営業利益が過去最高を更新する見込み。期末配当は、東証1部指定替えに伴う1株当たり2円の記念配当を落とした普通配当10円を予定(年18円)。

・長期目標は連結売上高3,000億円。積極的なM&Aに加え、業界トップクラスの採用力を活かし、自社開発による新規出店や異業種連携による出店を行うことで主力の調剤事業の成長を加速していく。また、子会社アポプラスステーション(株)のオペレーションの軌道化で事業の拡大と収益性の改善が進むCSO事業を中心に非調剤事業を育成拡大していく。

※1 CSO(Contract Sales Organization):医薬品販売業務受託機関
※2 CMR:Contract Medical Representativeの略で、CSO企業に所属しながら、派遣または請負の形でCSO企業の契約先である製薬企業で医薬情報担当者として就業する者
会社概要

首都圏を中心に、調剤薬局を全国に展開。医療機関とのマンツーマン体制を堅持する事で調剤薬局間の無駄な顧客獲得競争を排除してきた。ただ、近年では面分業強化の観点から新業態店舗の開発にも取り組んでおり、現在、(株)ローソンとの資本業務提携による「ローソン+クオール薬局」(調剤薬局とコンビニの融合)、家電販売大手(株)ビックカメラとの連携による出店、更にはJR西日本グループとの業務提携による駅型調剤薬局「駅クオール薬局」といったプロジェクトが進行中。また、子会社を通してCSO事業、教育サポート事業、売店事業などの非調剤事業も手掛ける。

【事業セグメントとクオールグループ】

事業は調剤事業と非調剤事業に分かれ、2013年3月期は調剤事業の売上が全体の93.6%を占めた。各事業の概要は次の通り。

調剤事業

クオール(株)等が手掛ける調剤薬局の経営が中心だが、ローソン併設店における物販の収益も含まれている。2013年12月末現在のフランチャイズ1店舗を含めたグループ店舗数は483店舗。

非調剤事業

アポプラスステーション(株)のCSO事業、クオールRD(株)(※)の治験事業、クオールアカデミー(株)の教育サポート事業、メディカルクオール(株)の出版関連事業、メディコ(株)の売店事業が当セグメントに含まれる。
※クオールRD(株):(株)イービーエムズと(株)エスカルラボラトリーズが2013年10月に合併

【調剤市場】

2012年の医薬分業率は66.1%(同社資料より)。近年、分業率の上昇ピッチが鈍化しているものの、調剤市場は年率3~8%での成長が続いており、2014年4月と2015年10月に予定されている消費税率の引き上げも追い風となる(※)。加えて、調剤市場は、現状ではマーケットリーダーのいない市場だが、今後、同社を含む大手チェーン薬局による寡占化が進むと見られている。

6.6兆円の巨大市場だが、マーケットリーダー不在

調剤市場は6.6兆円の市場規模を誇り、年率3~8%のペースで成長を続けている。ただ、他の多くの市場のようにマーケットリーダーと呼ばれるシェア10%以上の大手がない。大手の一角を占める同社のシェアが1.2%(市場4位)程度で、トップでも2.3~2.4%に過ぎず、同社を含めたチェーン薬局上位10社の売上高を合算しても約6,600億円と市場全体の10%に満たない。

大手チェーン薬局には大きなビジネスチャンス

残る約6兆円は中小の調剤薬局の市場だが、その大半は、現在のオーナー1代で築いた家族経営的な店舗(薬局)が多く、後継者難が共通の悩みだ。加えて、患者には消費税を転嫁できないため、2014年4月以降の税率引き上げが経営の圧迫要因となる。このため、今後、店舗売却や廃業等の動きが活発化してくる可能性が高い。買い手となる大手チェーン薬局には大きなビジネスチャンスであり、売り手の増加で、現在高騰している調剤薬局の買収価格も下落する可能性が高い。また、買収で発生する「のれん」の償却についても、その必要性が議論されており、この面からも買収コストの低減が現実味を増している。

仮に医薬分業率が100%となった場合、その時の調剤市場は現在の1.5倍の約10兆円とみられている。大手による寡占化も進んでいるものと思われ、同社にとって大きなビジネスチャンスである。

※ 消費税率の引き上げによる分業率の上昇

医療機関も仕入時には消費税を負担しているが、処方に際しては消費税を患者に転嫁できないため、消費税率の引き上げは院外処方の経済的メリットを高める。このため、消費税率の引き上げを機に医療機関が医薬分業を更に進めると見られている。

【クオールの戦略 - 調剤事業と非調剤事業の両輪で新しい価値を創出 -】

積極的なM&Aと異業種との連携で主力の調剤事業の拡大を図ると共に、2本目の柱として非調剤事業の中核を担うCSO事業の育成で収益性を高めていく考え。

(1)調剤事業
マンツーマン薬局の展開

一般的に調剤薬局は大手医療機関の門前に複数の薬局が店舗を構え、好立地を活かして店舗運営を行うことが多い。これに対して、同社は、中小クリニックとの関係を強化して、医療機関と1対1で密接な関係を構築していくマンツーマン薬局を基本としている。マンツーマン薬局は、市場調査を含めた店舗展開力を必要とするものの、地代や賃料を抑える事ができるため、その分、ITを含めたオペレーション効率の改善に向けた投資や待合室の充実等への投資を厚くできる。

異業種との提携

処方箋を受け取った患者が自ら薬局を選ぶ事はほとんどなく、病院等の近くの薬局(門前薬局)を利用するケースが一般的だ。しかし、実際は、自宅の近くや、買い物のついで、或いは、通勤・通学の途中で利用できる薬局があれば、その方が便利な事は言うまでもない。実際、同社が電通を通して実施している市場調査でも、上記を裏付ける結果が出ていると言う。

こうした観点から、同社が他社に先駆けて着手したのが異業種との連携である。現在、ローソン、ビックカメラ、JR西日本グループと連携しており、2010年8月に1号店を出店したローソン併設店は既に35店舗を数え、認知度の向上に伴い収益も改善しつつある。また、ビックカメラとの連携では、4店舗(有楽町、新宿、名古屋、札幌)を展開しており、第1号店の有楽町店では、現在、3,000以上の医療機関から、月間1,000枚を超える処方箋を受け付けている。さらに、JR西日本グループとの連携では、1日81万人以上の乗降客のあるJR大阪駅構内に出店し、「駅の救急箱」をコンセプトに朝7時から夜10時まで年中無休で営業している。2013年4月の開局だが、すでに頭痛薬でトップシェアの第一三共ヘルスケアのロキソニンS(市販薬へのスイッチOTC)は、全国No.1の販売実績を誇っている。

異業種との連携による新たな市場開拓の取り組みは始まったばかりだが、既に「認知されれば、処方箋が集まる」事を実証しており、同社は今後の事業展開に自信を深めている。規制緩和を受けて参入してきた、コンビニ、ドラッグストア、スーパー等、異業種との競争激化が予想される中、同社は薬剤師の採用力と充実した教育制度を強みに異業種の活力を取り込んでいく考え。

※ 「処方せん送信」アプリの提供
患者が処方箋をスマートフォンのカメラで撮影し、同社の薬局にメールで送信できるアプリケーション「処方せん送信」アプリの提供を開始した。メールを受けた薬局は薬の出来上がる時間を患者に連絡する事で、患者は会社帰りや買物の途中等、都合のよい時間に薬を受け取る事ができるため、薬局での待ち時間を短縮できる。「処方せん送信」アプリは、2013年10月にビックカメラ内のクオール薬局4店舗(有楽町店、新宿東口店、名古屋駅西店、札幌店)で運用を開始し、2013年11月にナチュラルローソンクオール薬局4店舗、駅クオール薬局JR大阪店等を追加。その後、ローソン併設店やクオール薬局の一部店舗にネットワークを広げた。同社では「今後は利用者の声を聞き、より良い仕組みに進化させていきたい」としている。

「処方せん送信」アプリは、患者の利便性向上はもちろん、門前から面への流れを後押しする効果や、クオールカードとの相乗効果も期待できる。

※ クオールカード

処方箋と一緒に提示することで患者の過去の処方情報などが照会できるサービス
会員数は62万人を突破。(2014年1月末現在)

また、調剤事業では、疾患別に病態から治療までを学ぶ「クオール認定薬剤師制度」を設け、高度な専門知識を持った薬剤師の育成にも力を入れている。当初は、代表的な13疾患からスタートし、初年度の11年度には525名を認定。近年、抗がん剤などの院外処方箋が増加傾向にある中、薬剤師がどこまで理解の上で服薬指導を行っているのかという医師の不安に応えるため、高度先進医療に対応する薬剤師の育成を念頭に、13年度にはがん認定薬剤師制度を開始した。今後は肺がん、精神疾患も追加していく予定。また、同制度を活かして、一般的疾患、がん等の高度先進医療、糖尿病等の慢性疾患といった疾患領域別の薬局の出店や薬剤師の配置も検討中である。求められる医療ニーズに応じて適切な人員配置、質の高い医療サービスを届ける事で競合他社との差別化を図る考えだ。

(2)非調剤事業

現在、非調剤事業では、アポプラスステーション(株)のCSO事業やクオールRD(株)の治験事業を中心に、教育サポート事業、出版関連事業、売店事業を手掛けている。
現在製薬メーカーでは、新薬開発の競争激化や正社員MRのコスト増でBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング:事業部門の一部業務委託)需要が増加している。このため、同社は非調剤事業を通して、製薬メーカーのBPO需要の取り込みに力を入れていく。非調剤事業の中核を担うアポプラスステーションでは、早期からこの変化に対応し、受注増加でCMRを前倒しで採用しており、今後は1,000名体制を目指していく。
また、収益性の高さも非調剤事業の特徴だ。調剤事業は店舗の整備や薬剤師の確保・教育の負担が大きい上、薬価など国の規制を受け、2年に一度の薬価改定もある。このため、セグメント(営業)利益率は5%程度にとどまるが、非調剤事業は20%程度の利益率が見込めると言う。

【売上高3,000億円構想】

質・量共に業界No.1を目指し、クオールグループの企業価値の最大化を図り、売上高を3,000億円に引き上げたい考え。

売上高3,000億円の内訳は、調剤事業2,400億円、非調剤事業600億円。営業利益は240億円を見込んでおり、内訳は、利益率5%を想定している調剤事業のセグメント利益(営業利益)が120億円、一方、非調剤事業は利益率20%を想定しており、セグメント利益は120億円。調剤事業は出店とM&Aでトップラインを伸ばし、非調剤事業で収益性を高めていく考えだ。

2014年3月期第3四半期決算
前年同期比36.4%の増収、同11.8%の営業増益

売上高は前年同期比36.4%増の751億88百万円。既存店の好調と新規出店及びM&A効果で、主力の調剤事業の売上が同30.3%増加。アポプラスステーション(株)が手掛けるCSO事業を牽引役に非調剤事業の売上も同2.5倍に拡大した。

利益面では、店舗数の増加に加え、調剤事業における薬剤仕入等の売上原価の増加及び新卒薬剤師(264名)を含めた人材確保と人材教育により、営業費用が732億83百万円と同37.2%増加したものの、増収効果で吸収。営業利益は19億05百万円と同11.8%増加した。保険解約返戻金の増加や補助金収入の計上等で営業外損益が改善した他、税負担の減少もあり(10億50百万円→9億48百万円)、四半期純利益は9億06百万円と同41.7%増加した。

調剤事業

売上高680億45百万円(前年同期比30.3%増)、セグメント利益25億31百万円(同0.7%増)。既存店が堅調に推移する中、新規出店やM&A効果もあり売上が大きく伸びた。当期及び次期以降の新規出店計画及び事業拡大に備え、新卒薬剤師を含めた人材確保と人材教育を計画通り進めたため営業費用の伸びも大きくなったが、前年同期を上回る利益を確保した。

調剤事業売上高からその他売上等を除いた調剤売上高(薬剤料売上+技術料売上)は同24.0%増の601億90百万円。内訳は、既存店213億45百万円(同14.1%増)、新店26億68百万円(同55.4%増)、M&A等361億76百万円(同28.6%増)。処方箋応需枚数が同17.6%増加する中、大型店舗の押し上げ効果等もあり、処方箋単価も同5.4%上昇した。

第3四半期末の店舗数は2013年3月期末(438店舗)に比べて63店舗増の483店舗(直営店482店舗、フランチャイズ店1店舗)。第3四半期累計期間の出店は、新規出店31店舗、子会社化による取得29店舗、及び事業譲受による取得3店舗の計63店舗。一方、閉店や事業譲渡による減少が18店舗あった。

非調剤事業

売上高71億42百万円(前年同期比145.3%増)、セグメント利益1億15百万円(前年同期は55百万円の損失)。アポプラスステーション(株)が手掛けるCSO事業を牽引役に売上が増加。CSO事業の拡大に向けたCMRの増員によるコスト増を吸収してセグメント損益が黒字転換した。

第3四半期末の総資産は前期末に比べて92億82百万円増の500億72百万円。新規出店やM&Aで売上債権、たな卸資産、有形固定資産、及び無形固定資産(「のれん」が40億円強増加)が増加。長期借入金の積み増し、社債の発行、及び公募増資(約34億円を調達)による資金調達でM&A等の必要資金を賄った。ネットD/Eレシオ(※)は0.51倍と2013年3月期の0.58倍に比べ改善している。自己資本比率は前期末比2.2ポイント上昇の34.2%。

※ ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金)/自己資本
企業財務の安全性を見る指標の1つ。一般に1倍を下回ると財務が安定しているとされる。
2014年3月期業績予想
通期業績予想に変更はなく、前年同期比30.2%の増収、同24.4%の営業増益

売上高が当面の目標だった1,000億円台に到達する見込み。内訳は、調剤事業で900億円、非調剤事業で100億円。利益面では、組織改編や構造改革効果でCSO事業を手掛けるアポプラスステーション(株)の業績がV字回復し、非調剤事業が黒字転換する見込み。立地の選定や店舗オペレーションでノウハウの蓄積が進んだローソン事業の収益改善も進み、営業利益が過去最高を更新する見込み。

期末配当は、東証1部指定替えに伴う1株当たり2円の記念配当を落とした普通配当10円を予定している(第2四半期末配当8円と合わせて年18円)。同社は利益配分に当たって、「安定的な成長を確保するための内部留保資金を充分に考慮しつつ、連結業績及び配当性向等も総合的に勘案して、株主の期待に応えていく事」を基本方針としている。

今後の注目点
調剤事業、非調剤事業共に順調に拡大しており、会社側では、今期の売上高1,000億円突破に自信を持っているようだ。調剤事業での薬剤師と非調剤事業でのCMRの積極採用で販管費の伸びも大きくなっているが、売上の増加で吸収できている。特に薬剤師は、出店目的に加え、派遣ニーズにも応えるべく、毎期200名前後の採用を行っている。現在、同社は年商50億円規模のチェーン薬局数社の派遣要請に応えているが、薬剤師派遣は、当面の収益貢献だけでなく、長期的には派遣先企業との関係の緊密化がM&Aに発展していく可能性も秘めている。業界トップクラスの薬剤師採用力が長期的な視点からの投資にも活かされている訳だ。
調剤市場は年率3~8%の成長を続けている事に加え、消費税率の引き上げが市場拡大やM&Aの増加につながる可能性もある。こうした追い風に加え、薬剤師の採用力と異業種との連携が成果をあげ始める等、潜在成長力を高める努力が実を結びつつある。非調剤事業も、中核を担うCSO事業が軌道に乗り黒転している。今後も調剤事業と非調剤事業の両輪で売上と収益を伸ばし、外部環境の変化にも対応していく考え。この1月から少額投資非課税制度(NISA)がスタートした。年間100万円の限度額(投資枠)があるものの、NISA口座で保有する株式は譲渡益や配当収入が非課税となる。同社は事業拡大による株価上昇期待に加え、配当利回りも3%と高いため、非課税のメリットが大きい。また、株価600円として、NISA口座の100万円枠で1,600株購入できるため、値嵩株を数株購入するよりも、株価上昇時のレバレッジも期待できる。同社はNISAを活用した投資に適した企業の一つと考えて良いのではないだろうか。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
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