(2183:東証1部) リニカル 2014年3月期第2四半期業績レポート

2013/12/11

今回のポイント

・14/3第2四半期は前年同期比1.0%の減収、同41.4%の経常減益。売上面では、CSO事業は営業活動の強化により新規案件の受託に成功したことから増加した一方、CRO事業は同じく営業活動の強化により当第2四半期(3ヶ月)は前年の第2四半期(3ヶ月)を上回ったものの、第1四半期の減収が影響し微減となった。利益面では、CRO事業、CSO事業共に先行して積極的に人員の採用と教育を行っていることから人材募集費ならびに人件費が先行したことが影響した。

・14/3期は期初に計画した前期比12.0%の増収、同14.6%の経常増益から修正なし。既存プロジェクトの増員と新規案件の受注で8期連続の増収を見込む。CRAの増員やグローバル展開で原価・販管費は増加するものの同14.7%の営業増益。3期連続の最高益更新が見込まれる。配当も14円の期末配当予定を据え置き。

・業界環境が好転する中、今後、人員面のボトルネックは発生しないのか?或いは、近年の攻めの先行投資(人員増強と教育の強化)が実を結び、成長力が加速してくるのか?先行投資の成果が注目される。更に、創薬ファンドの活用など、同社の中期的な業績の柱のひとつと期待される創薬支援事業の具体的な戦略にも注目したい。

会社概要
臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、CSO(Contract Sales Organization:医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後{以下製販後という}臨床研究・調査の受託)事業を手掛ける。
CRO事業では、治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズIII)における「モニタリング業務」に特化している事が特徴。また、統合失調症、うつ病、アルツハイマー等の中枢神経系(Central Nervous System :CNS)領域やがん領域といった難易度の高い領域に注力する事で他社との差別化を図っている(これに対して、生活習慣病等の領域は差別化が難しく受託競争が激しい)。一方、CSO事業では、特定の疾患領域にフォーカスすると共にCRO事業で培ったノウハウを活かし、プロダクトマーケティング業務や市販後データの企画・収集業務の受託を手掛けており、MR派遣が中心の他社のCSO事業と一線を画している。
主な取引先は、武田薬品工業グループ、第一三共、大塚製薬、塩野義製薬、田辺三菱製薬、小野薬品工業等国内主要製薬会社。尚、第II相試験は安全性及び有効性・用法・用量を調べるために実施され、この結果を基に第III相試験において、実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する。 

【沿革】

2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO.,LTDとLINICAL KOREA CO.,LTDを設立。

【業務内容】

事業セグメントは、主力のCRO事業とCSO事業に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ95.3%、4.7%。CRO事業は「モニタリング業務」に特化しており、これに付随する「品質管理業務」や「コンサルティング業務」も手掛ける。一方、CSO事業は、プロダクトマーケティング業務や製販後データの企画・収集業務の受託を手掛け、MR派遣を中心とする他社と差別化を図っている。

【強み】
(1)難易度が高く競争相手が少ないがん領域や中枢神経系領域のモニタリング業務に強み

難易度が高く競争相手が少ないがん領域や中枢神経系領域のモニタリング業務に強みを有する。例えば、がん領域であれば、薬の副作用によるものか、がんの進行によるものか、安全性評価が難しく、中枢神経系領域であれば、例えばアルツハイマー病の患者は問診等による薬の有効性評価が難しいため、モニタリングでは高度な対応が必用とされる。この他、急性疾患や特定疾患(いわゆる難病)と呼ばれる領域も難易度が高い分野で、がん領域や中枢神経系領域と共に新薬開発が活発だ(しかし、対応できるCROは限られる)。一方、生活習慣病の治験は患者の状態が比較的安定しており、有効性評価についても比較的容易であるため、難易度は低い(例えば、糖尿病では血糖値の測定データの収集が中心)。
新薬の開発トレンドは生活習慣病から治療満足度が低いがん領域や中枢神経系領域にシフトしているが、上記の通り、がん領域では安全性情報の取り扱いが難しく、中枢神経系領域では有効性評価の標準化が難しい。このため、これまでは製薬会社が社内で対応していたが、近年、こうした難易度の高い領域でもアウトソーシングされるケースが増えている。同社にとって、中枢神経系領域は会社設立時からの注力分野であり、がん領域は2年前にアストラゼネカのイレッサ開発メンバーを迎え受注活動を本格化した。13年10月25日現在受注残高48億31百万円に対して、がん領域は16億73百万円(構成比34.6%)、中枢神経領域は14億12百万円(同29.2%)と、がん・中枢神経領域を合わせて受注残高の6割強を占める。

(2)高い収益性

有効性確認や安全性確認といった臨床の現場での高い業務遂行力に加え、CRO業務全般での知識・技術水準の高さも同社の強みである。同社が手掛ける案件の逸脱率は非常に低く抑えられており、また、症例の組み入れやデータの回収期間を含め、全案件の8割程度は実施期間の短縮に成功している。同社は難易度の高い分野で高品質・短納期を実現しているため適正価格での受注が可能であり、スケールメリットのハンデを補って、高い利益率を実現している。
収益力の源泉となるのがCRAの質だが、同社CRAの質の高さを示す一例として、GCPパスポート認定試験の合格率をあげる事ができる。GCPパスポート認定試験とは、国際共同治験に対応できる人材の育成を目的にした試験で、日本臨床試験研究会が実施している。なお、同社では受験資格を得た社員はすべて受験をしており、合格率の他社比較でも突出した合格率であることがわかる。

経営戦略
①高品質・短納期・適正価格の浸透と継続的な成長によるリニカルブランドの確立、②がん/中枢などのさらなる強化、CRA270名体制とグローバル体制の整備によるCRO事業の強化・拡充、③リエゾン業務、製販後研究・調査・グローバル対応などの強化によるCSO事業の強化・拡充、④計画立案・申請審査対応、助成金・ファンドの活用などの創薬支援事業の育成が経営戦略の柱。 

(1)CRO事業

CRO事業は第II相試験、第III相試験における「モニタリング業務」に特化し、また、がん領域や中枢神経系領域といった難易度の高い領域で評価を得ている。引き続き高難易度領域で実績の積み上げを図ると共に、事業の拡大に向けCRAを増員していく(早期270名体制の確立)。

また、厚生労働省が力を入れている日本主導型国際共同治験に対応するべく、治験の多国間実施体制の整備にも力を入れる。この一環として、2013年5月に、LINICAL TAIWAN CO., LTD.(台湾台北市、資本金1千万台湾ドル)、及びLINICAL KOREA CO., LTD.(韓国ソウル特別市、資本金5億ウォン)を設立(いずれも100%出資)。11月にはLINICAL KOREA CO.,LTD.による韓国CROのP-pro.Korea CO.,Ltd.の株式取得による子会社化を発表した。今後、欧州にも拠点を設け(現在、欧州CROに関する情報収集を行っている)、2008年7月に設立したLINICAL USA INC.(米国加州)と共に、日+米・欧・亜のグローバル体制を早期に確立したい考え。

グローバル展開に併せて、アジア人を対象にしたグローバル採用も進めており、母国語、日本語、英語のできるAsian CRAを採用し、日本品質のサービスと教育研修を実施している。当初はGlobal Studyのサポート業務が中心となるが、中期的にはAsian Studyのコアスタッフとしての役割を担う人材の育成につなげ、Asian Studyのモニタリング受託や日本発POC(proof of concept:概念実証)試験のモニタリングといった顧客ニーズに応えていく(新設した台湾と韓国の子会社が、これら人材の受け皿となる)。

(2)CSO事業

他社が手掛けるMRの派遣サービスとは一線を画し、同社が主体となって業務を進める受託サービス型のCSO事業を志向している。具体的には、特定の疾患領域やエリアで経験豊富なMRを採用し、CRO事業部で蓄積したノウハウを活用する事で専門性の高い業務を受託し差別化を図っていく考えで、現在、プロダクトマーケティング業務と製販後データの企画・収集業務の受託が2本柱。今後は、これら2事業の強化に加え、市場拡大が期待できる臨床研究のグローバル案件等の受託事業を第3の事業として育成していく。
尚、13/3期は医師主導臨床研究の受託に成功し、セグメント損益が黒字転換する原動力となった。

(3)創薬支援事業(新規事業の育成)

短期業績に影響の少ない新薬開発スキーム、アジア諸国のドラックラグ化合物の積極的な開発、更には開発計画作成から申請までのワンストップ委託といった昨今のニーズへの対応を念頭に創薬支援事業を育成していく。このため、治験実施計画書作成、データ回収以降の業務を含む案件の戦略的な受託と経験の拡充に取り組むとともに、助成金/創薬ファンドの活用による早期段階に限定した化合物の自社開発の検討を行う。

2014年3月期第2四半期決算
前年同期比1.0%の減収、同41.4%の経常減益

売上高は前年同期比1.0%減の17億6百万円、経常利益は同41.4%減の3億6百万円となった。
売上面では、CSO事業は営業活動の強化により新規案件の受託に成功したことから増加した一方、CRO事業は同じく営業活動の強化により当第2四半期(3ヶ月)は前年の第2四半期(3ヶ月)を上回ったものの、第1四半期の減収が影響して減少した。
利益面では、CRO事業、CSO事業共に、先行して新卒ならびに経験のある中途を増員したため、原価人件費ならびに販管費の人材募集費が増加した影響により減少した。売上総利益率が38.9%と前年同期比9.0ポイント悪化したことに加え、販管費が55百万円増加したため、営業利益が3億8百万円と同41.3%減少した。
期初の会社予想の段階で、期ズレと失注の影響を考慮し、保守的な会社計画としていたことから、第2四半期の実績は売上・利益とも期初の会社計画を上回った。

CRO事業、CSO事業共に、1年から3年の受託契約期間において、契約に従い毎月売上が発生する(受託総額が毎月案分計上される)。受注残高は、既に契約締結済みの受託業務の受注金額の残高である。このため、今後1年から3年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。
第2四半期末の受注残高は、前期末(2013年3月)に比べ、10.0%減少した。しかし、第2四半期末と2013年10月25日との比較では、同13.0%増加している。アウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景に足元の受注環境は良好であり、既存・新規顧客からの受託案件の打診も多いことから、今後受注は増加基調の定着が予想される。同社では、CRAの増員などにより、受託体制の強化を図る計画。

2013年9月末の総資産は前年同期末比1億88百万円減の24億53百万円。総資産の減少は未払い法人税等の支払いに伴い現預金が減少したことが主な要因。また、税金等調整前四半期純利益の減少や売上債権の増加などからフリーCFが赤字となったものの、実質無借金で流動比率も高く財務体質は健全であり、自己資本比率も64.6%と引き続き高い。

2014年3月期業績予想
前期比12.0%の増収、同14.6%の経常増益予想。8期連続増収、3期連続過去最高益更新を見込む

第2四半期決算を終え、期初の業績予想を据え置き。
売上高は前期比12.0%増の40億31百万円。一部受託内定案件の期ズレを想定するなど慎重な予想となったものの、既存プロジェクトの増員と新規案件の受注で吸収し8期連続の増収を見込む。利益面では、CRAの増員やグローバル展開に伴い原価・販売費が増加するものの、増収効果で吸収し営業利益は11億51百万円と同14.7%増加の予想。3期連続の最高益更新が見込まれる。
配当も1株当たり期末14円の予定を据え置き。

今後の注目点
同社が属するCRO業界とCSO業界は、医薬品開発・販売のアウトソーシング化や国際共同治験の増加を背景として、市場規模は緩やかに拡大している。但し、顧客の製薬会社も薬価引き下げや新薬開発の難易度の上昇、国際競争の激化等から、より費用対効果の高いアウトソーシング先を求めており、自社に経験・ノウハウを持たない疾患領域の新薬開発実績を有するCROに委託するなど、アウトソーシングの目的が変化してきている。こうした動きは、がんやCNSなど開発品目が増えている難易度の高い領域を含め、質の高い治験を迅速に実施できる会社との信頼が厚い同社へ恩恵をもたらすものと推測される。また、臨床研究でのデータ改ざんが大きな問題となっており、今後同社がCSO事業で手掛ける製販後臨床研究関連業務のアウトソーシング化が加速する可能性が高い。同社を取り巻く事業環境は明るく、さらに需要を取り込むためには優秀な人材の採用と教育を加速できるかが鍵となる。今第2四半期は、先行投資負担により減益を余儀なくされたものの、好調な受注を反映して今下期は増益転換が予想される。来期以降もこうした先行投資によるコストの増加と売上増加による利益の増加との綱引きが業績動向を左右するものと思われる。また、増加する国際共同治験を日本以外の市場でも取り込めるかが中長期的成長の鍵となる。同社は、海外子会社設立、グローバル人材の採用・育成、M&Aにも積極的な先行投資を行っており、今後の成果が注目される。更に、創薬ファンドの活用による創薬支援事業については、中長期的な事業戦略であり収益に貢献するには時間を要する可能性があるが、同社創業者世代のもつノウハウを若い世代に継承しつつ実績を重ね、同社が自ら自社開発を手掛ける体力をつけた暁には業績の柱のひとつとして期待されるものと考える。
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