(2146:JASDAQ) UTホールディングス 2014年3月期上期業績レポート

2013/12/11

今回のポイント

・14/3期上期は前年同期比2.3%の増収、同23.0%の経常増益。自動車関連で人材需要の取り込みが進んだ事に加え、M&A効果もあり稼働人数が過去最高を更新。低収益事業所からの撤退により、1Q、2Qと尻上がりに売上総利益率も改善し、人材確保や新規事業育成等の先行投資負担を吸収した。同社は下期の収益基盤の確立を終えた。

・派遣期間制限のない26業務区分の廃止、派遣期間のあり方が業務区分から人区分へ(人を代えれば3年超の派遣利用も可能)、常用雇用者の派遣期間上限撤廃等を盛り込んだ労働者派遣法の再改正案が来年の通常国会に提出される予定。また、首相の諮問機関である規制改革会議は、日雇派遣の原則禁止、労働契約申し込みみなし制度、グループ企業派遣の8割規制等の見直しを提言しており、今後、外部労働力を活用しやすい環境づくりに向けた法整備が一段と進む見込み。

・主力の製造派遣は、規制緩和に加え、これまで外部労働力比率が低かった自動車(自動車・自動車部品)業界で派遣ニーズが高まっておりビジネスチャンスが拡大している。同社は顧客が重視する定着率(離職率の低さ)を強みに人材需要を取り込んでいく考え。また、需給が逼迫している建設技術者派遣や製造派遣とのシナジーが期待できる再就職支援等、既に成果をあげつつある新規事業の育成にも力を入れていく。

会社概要
高度な分野に特化した製造派遣・請負事業を中心に、設計/建設技術者派遣事業、アウトプレースメント(再就職支援)事業も展開。新規の顧客開拓力と業界No.1の従業員定着率を強みに、順調に稼動数を伸ばしている。同社自身は純粋持株会社としてグループを統括し、実際のサービス提供は連結子会社7社が担う。 

13年7月1日にパナソニックバッテリーエンジニアリング(株)の発行済株式400株のうち81%にあたる324株を取得し連結子会社化し、商号をUTパベック(株)に変更した。残る76株(発行済株式総数の19%)については、14 年7月1日に取得する予定。
パナソニックバッテリーエンジニアリング(株)はパナソニック(株)の100%子会社で、電池材料分析・評価・解析事業、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業、及び派遣事業等を手がけていた。今回の買収では、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業及び派遣事業が対象となり、買収対象事業は年商約30億円(12/3期は売上高が42億06百万円、営業利益1億32百万円)。

【事業内容】

事業セグメントは、アウトソーシング事業の単一セグメント。製造派遣・請負を中心に、設計開発技術者派遣を手掛けており、建設技術者派遣及びアウトプレースメント事業を育成中。尚、製造請負では各工程の製造オペレーションから装置メンテナンスや保全業務までを一括して受託するが、同社が請負う事で、コスト削減はもちろん、構内作業全体のパフォーマンスも向上するため、取引先から高い評価を受けている。
また、10/3期は半導体向けの売上が全体の79.2%を占めていたが、幅広い分野で受注活動を強化した事で”脱半導体”が進行中。現在、半導体向けが42.5%に低下し、次いで電子部品13.4%、環境・エネルギー分野(太陽電池・2次電池等)14.7%、自動車関連15.4%、建材9.7%、その他4.2%となっている(14/3期第1四半期)。

尚、中期的な目標として、電池を中心に環境・エネルギー30%以上、自動車関連20%程度としており、半導体向けについては、現在の売上水準を維持しつつ40%以下に引き下げたい考え。

【中期経営計画(14/3期~16/3期)   -質量共に「日本一の請負会社」を目指して-】

中期経営計画の基本戦略は、①既存顧客シェアの拡大、②既存顧客ニーズの深掘り、及び③正社員派遣の横展開の3点で、長期的な目標として掲げている「営業利益100億円、稼働数20,000名」の達成に向けた基盤整備に取り組む。既存顧客シェアの拡大により利益生産性の向上と安定成長を実現すると共に、アウトプレースメントや建設技術者派遣等の新規事業を中心に既存顧客ニーズの深掘りと正社員派遣の横展開を進める事で、製造派遣・請負以外で営業利益の1/3を稼ぎ出せる体制を構築する。

定数的な目標としては、主力の製造派遣は、稼働数を毎期1,000名増やし、40億円ずつ売上を積み増していく(14/3期:300億円、15/3期340億円、16/3期380億円)。また、アウトプレースメントや建設・設計技術者派遣等の新規事業では、14/3期10億円、15/3期30億円、16/3期70億円と、製造派遣を上回る高い売上の伸びを計画。これにより最終年度となる16/3期には連結ベースで、売上高450億円、営業利益40億円(最高益は07/3期の42億円)、稼働数11,100名の各目標を達成したい考え(事業環境の変化や業績動向を踏まえ、ローリング方式により適宜見直しを行う)。

顧客基盤が拡大・強化されリスク分散が進んだ事から、今後は、新規顧客工場数の開拓よりも、約400の既存顧客工場のインハウスシェアの引き上げに力を入れ、1工場当たりの稼働数を引き上げに取り組む。当面の目標シェアを25%として、1工場当たりの稼働数を30人規模に引き上げていく考え。

同社の主要顧客である電機業界は既にアウトソーシング活用比率が高いが、引き続き請負ニーズが旺盛。また、自動車業界はアウトソーシング活用比率が低いが、労働者派遣に対する規制緩和の流れを受けて派遣ニーズが高まっている。また、業界を問わず主要顧客のアウトソーシング先の選定基準は社員の定着率であり、業界No.1の定着率を誇る同社のアドバンテージは大きい。

②既存顧客ニーズの深掘り(再就職支援事業)

構造改革に取り組む企業の増加で、現在、再就職支援サービス市場は第2拡大期を迎えている。リクルートとパソナの寡占市場で、両社が約2/3の市場シェアを有するが、両社ともに都市部でのホワイトカラー向けのサービスが中心。これに対して、UTキャリア(株)は、地方製造工場向けに特化する事で大手2社との差別化に成功している。

また、独自の3つのサービスを提供しており、再就職先の斡旋でUTホールディングス・グループの顧客や営業基盤を活用できる事に加え、何よりもグループ内に再就職先を持つ事が何よりの強み(グループの請負職場を再就職先に活用できる)。

③正社員派遣の横展開

建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によると、12年度は18兆円だった建設公共投資額が13年度は20.2兆円に拡大する見込み。長期間にわたって持続可能な国家機能と日本社会の構築を目的に、与党が「国土強靱化基本法案」を国会に提出しており、復興需要と相まって、現状、逼迫している建設業界の労働力不足が更に進むと懸念されている。しかし、労働力不足は外部労働力活用ニーズにつながるため、アウトソーシング各社にとってはビジネスチャンスである。
ただ、その一方で、正社員雇用の議論が活発化している。具体的には、自民党が、若者雇用対策として新卒者が就職する際の正社員率を現在の80%から100%に引き上げる目標を掲げている他、政府の規制改革会議(雇用作業部会)も、勤務地や職種を限定した正社員の拡大に向けた雇用ルールの策定を検討中である。求職者の正社員就業ニーズが高まりを見せる中で、今後、与党や政府が雇用の安定を図るべく新たな政策を打ち出す可能性が高く、正社員雇用ニーズの高まりが予想される。

こうした市場動向を踏まえ、同社は強みである正社員派遣について、製造業以外への横展開を進めていく考え。その第1弾となるのが、建設技術者及び設計開発者である。この一環として、新卒者採用を開始している他(14年4月に1期生300名が入社する予定)、製造派遣・請負で勤務する既存社員を高付加価値業務へ社内異動させるべく、建設技術者派遣業務への異動を促している。

2014年3月期上期決算
前年同期比2.3%の増収、同23.0%の経常増益

自動車関連の旺盛な人材需要の取り込みに加え、UTパベック株式会社(旧パナソニック・バッテリーエンジニアリング)の連結もあり、稼働人数が過去最高を更新。売上高は145億53百万円と前年同期比2.3%増加し、期初予想を7.8%上回った。利益面では、契約期間満了に伴う低収益事業所からの撤退により、第1四半期(4-6月)は14.8%にとどまった売上総利益率が第2四半期(7-9月)には18.1%に改善。既存顧客の旺盛な人材需要に対応するべく中途採用を継続したため採用費・教育費を中心に販管費の伸びも大きくなったが、売上の増加と売上総利益率の改善で吸収。営業利益は6億06百万円と同16.0%増加した。四半期純利益が減少したのは、検討していた新規事業(ヘルスケア関連)の立ち上げを見送る事に伴う子会社清算損など特別損失1億90百万円を計上したため。

尚、UTパベック(株)は当初の想定以上に顧客の人材需要が強く、売上・利益の両面で連結業績に寄与。新規事業も順調で、250人の実績を残した再就職支援は、リクルート、パソナの上位2社に次ぐポジションを確立しつつあり、特に製造業からの評価が高く、足元の引き合いも強い。また、建設技術者派遣も9月に単月で黒字化。人材の確保が急務であり、来春入社の新卒社員は300名を予定している。

稼働人員は過去最高を更新

UTパベック(株)の連結に伴い既存顧客内でのシェアが拡大し、上期末の稼働人員が7,665名(6月末6,795名)と過去最高を更新。一方、顧客工場数は低収益事業所からの撤退で377工場と第1四半期末の381工場から4工場減少した。

第1四半期(4-6月)は、半導体・電子部品の構成比が55.9%だったが、UTパベック(株)の子会社化で、第2四半期(7-9月)は47.5%に低下。今後は環境・エネルギー、自動車関連の構成比が上昇していく見込み。

業容拡大と有利子負債の積み増しによる成長資金の取り込みで上期末の総資産は106億10百万円と前期末に比べて11億05百万円増加した。CFの面では、UTパベック(株)の連結もあり、第2四半期に稼働人員が急拡大した事で上期末にかけて運転資金が増加したため、営業CFがマイナスとなった。

2014年3月期業績予想
(1)事業環境と同社の取り組み
事業環境

この8月に労働政策審議会(厚生労働大臣等の諮問機関)がまとめた提言には、派遣期間制限のない26業務区分の廃止、派遣期間のあり方が業務区分から人区分へ(人を代えれば3年超の派遣利用も可能)、常用雇用者の派遣期間上限撤廃等が盛り込まれた。この提言を骨子とする労働者派遣法の再改正案が来年の通常国会に提出される予定で、法案が成立すれば早ければ4月からの施行となる見込み。

また、内閣総理大臣の諮問機関である規制改革会議が、日雇派遣の原則禁止、労働契約申し込みみなし制度、グループ企業派遣の8割規制、マージン率等の情報提供、更には1年以内に離職した労働者への規制等についての見直しを提言しており、今後、外部労働力を活用しやすい環境づくりに向けた法整備が一段と進む見込みだ。

同社の取り組み

同社は主力の製造派遣・請負事業において、稼働人員2万人体制を構築し売上高業界No.1を目指すと共に収益性の改善にも取り組んでいく考え。

稼働人員2万人体制の構築と売上高の拡大については、1工場当たりの人員増に取り組むと共に新規事業を育成しシナジーを追求していく(人員の確保では再就職支援事業との大きなシナジーが期待できる)。また、人的リソースについてはエンジニア事業も含めてグループ内で流動化を進める。

一方、収益性の改善については、10%程度の営業利益率を目標としており、新規開拓よりも先行投資負担の軽い既存顧客の深耕を優先すると共に(工場数に比例して増える管理コストを抑える事ができる)、10名未満等の小規模で今後の増員が見込めない契約は期間満了をもって契約を終了する。このため、顧客工場数が300程度にまで減る見込みだが、効率良く稼動させる事で収益性の改善につなげていく。尚、全体としての工場数が減少する中でも、他の分野に比べて相対的に単価が高く、かつ、大きな需要が長期にわたって期待できる自動車分野の工場数は増える見込み。自動車業界では契約社員から派遣社員へ労働者ソースをシフトさせており、同社は高いコストパフォーマンスと顧客が重視する離職率の低さ強みに需要を取り込んでいく。

事業環境に合わせた組織体制の変更

人的リソースの効率的な活用に向け、10月1日より新組織体制をスタートさせた。具体的には、責任の所在を明確にするべく、製造派遣部門、エンジニア部門、再就職支援部門とビジネスモデルの異なる3部門を独立させ、社内(約8,000人の社員)及び社外(約400の取引先)のリソースを有効活用して多様化・複合化する顧客ニーズに対応するべく、社内横断的な組織であるコーポレートセールス部門と経営基盤部門を設置した。

同社の再就職支援サービスは、同社が派遣・請負サービスを提供している顧客工場等を活用したグループ外出向(顧客から見た場合のグループ外)にも対応できる事が強みで、顧客からも高き評価を得ているが、コーポレートセールス部門と経営基盤部門が社内横断的に活動する事で、こうしたシナジーを出しやすい環境を作る。

下期は通期営業利益30億円体制の構築に向けた基盤固めを図る

増産が続く好調な自動車分野やシェアが上昇した半導体・電子分野を中心に、9月末722名(内訳は、自動車分野37%、半導体・電子分野26%、住宅分野19%、その他18%)のバックオーダーを抱えている。このため、派遣・請負事業で8,000名を想定していた期末稼動者数は8,300名程度になり、通期の売上高は上記予想を上回る可能性が高い。

利益面では、更なるバックオーダーが期待できる事から先行して人員の確保を進めているため販管費が期初の想定を上回る見込みだが、売上総利益率の改善も想定以上に進んでおり、この影響を吸収する(低収益事業所からの撤退が想定以上に成果をあげている)。

通期では前期比11.3%の増収、同33.4%の経常増益を見込んでおり、配当は1株当たり13.5円の期末配当を予定。尚、7月1日を効力発生日として、1株を200株に分割しているため実質0.5円の増配。

今後の注目点
営業利益の進捗率は30%強にとどまるが、第2四半期の稼働人員の伸びと売上総利益率の改善を考えると、むしろ通期業績の上振れ期待が高まっている。もっとも、下期のポイントは、来期の計画である営業利益30億円達成のための基盤構築ができるか否か。基盤構築が進めば、自ずと今期の業績も上振れしよう。そして、既存顧客の深耕、自動車関連の需要取り込み、コストも含めた人材確保、及び新規事業の進捗等が、中期経営計画の最終年度となる16/3期に営業利益40億円の達成を考える上でのキーワードとなる。足元では、いずれも順調だ。
株式会社インベストメントブリッジ
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