(4718:東証1部) 早稲田アカデミー 2014年3月期上期業績レポート

2013/12/04

今回のポイント

・14/3期上期は前年同期比2.5%の増収、同28.4%の営業減益。中学部・高校部を中心に塾生が増加し売上が増加したものの、営業費用の増加が負担となった。ただ、営業費用の増加は、今期以降の出校ペース加速に備えた育成人員の増加、新校・既存校の増床による地代家賃の増加、更には校舎支援強化に向けた新部署の設置に伴う人件費増等、先行投資によるもの。

・通期予想に変更はなく、前期比4.9%の増収、同12.2%の営業増益。下期は、全国統一小・中学生テストを同社で受験した外部生に対するアプローチを継続的に行うとともに、同社主催の夢テスト等の学力診断テストを通じて問い合わせ機会を増やし、入塾へと繋げ売上の底上げを図る。利益面では、上記施策による増収効果に加え、広告宣伝部の新設により、これまで以上に費用対効果の高い宣伝活動を行うとともに、事務消耗品費や通信費等の変動経費の統制に取り組み、営業利益率を改善させたい考え。

・上期の利益圧迫要因となった先行投資は、成長戦略の一つである “合格実績戦略”の一環。下期も影響が残る可能性があるが、来期は売上・利益の両面で、その成果が確認できるものと思われる。こうした成長期待に加え、堅実な経営と安定したキャッシュ・フローも同社の特徴だ。PBR1倍、配当利回り4%と言う株価水準も含めて、14年にスタートするNISA(少額投資非課税制度)口座での長期投資に適した企業と言えるのではないだろうか。

会社概要
「本気でやる子を育てる」という教育理念の下、小学1年生から高校3年生までを対象に進学学習指導を行っており、首都圏の難関私立中高入試においてトップクラスの合格実績を誇る。また、進学学習指導業務で培ったノウハウを活かし、社会人向け教育研修や自社で開発した教育コンテンツ等の外部販売を手掛けている他、連結子会社(株)野田学園が医歯薬系大学受験指導を行う「野田クルゼ」を運営。14/3期第2四半期末現在の校舎数は140校(このうち2校は野田クルゼ)。

【事業内容】

事業は教育関連事業と不動産賃貸事業に分かれるが、教育関連事業が売上高・営業利益共に99%以上を占めている。

(1)教育関連事業

同社が小学1年生から高校3年生までを対象とした進学学習指導を行っており、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)において直営方式で校舎を展開。子会社(株)野田学園が「野田クルゼ」のブランドで、医歯薬系専門の大学受験予備校の経営を行っている。また、同社は進学学習指導業務で培ったノウハウを活用した社会人対象の教育研修や自社で開発した教育コンテンツの外部販売等も手掛けている。

(2)不動産賃貸

同社が保有する住居用・事業用不動産物件を一般顧客に賃貸すると共に、(株)野田学園に対して、校舎物件の一部を転貸している。(同社は、(株)野田学園から事業用物件(事務所)を賃借している)。

【ポジショニング】

同社は、年商が100億円を超える学習塾運営上場企業を対象とした売上ランキングで5位に位置する。難関校への圧倒的な合格実績を裏付けとするブランド力と毎期5校程度の堅実な新規出校により着実に業績を伸ばしているが、未だスケールメリットを活かすに至っておらず、収益性の改善余地が大きい。このため、今後、新規出校のペースを上げていく考えで、人材の確保・育成に力を入れている。

成長戦略  難関校の合格実績積み上げによるブランド強化と新たな顧客層の取り込み
全国的には学齢人口(6~15歳)の減少が進行しているが、同社が直営展開している首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)では緩やかな増加に転じている。こうした中、同社は、“合格実績戦略”の下での既存事業の強化に加え、グローバル人材の育成に向けた英語教育、個別指導とFC展開に強みを持つ(株)明光ネットワークジャパンとの提携による「早稲田アカデミー個別進学館」、更には教師力養成塾“e-講座”といった事業の育成に取り組み、これまでに培ってきた経営資産を活かすと共に収益の多様化を図っていく考え。

(1)合格実績戦略

「合格実績伸長 ⇒ ブランド力向上 ⇒ 集客力向上」という難関校への圧倒的合格実績が生み出す好循環により収益拡大を図る。
合格実績を伸ばすポイントは、教育システム、学習する空間づくり、競争原理、及び研修・人事制度の4つ。教育システムとは完成された教材やカリキュラムに裏打ちされたもので、学習する空間づくりとは生徒のやる気を引き出すクラス運営のノウハウ。また、生徒が競争し、切磋琢磨できる環境を提供する事で競争原理が生まれ合格実績の伸長につながるが、いずれも優秀で情熱ある講師の育成が不可欠である。
同社はこの4つのポイントを基盤に「普通の学力の子を鍛えて難関校へ導く」システムを確立しており、2013年度の高校入試では、偏差値70以上が必要とされる、開成、国立附属、早慶附属高に進学した塾生の約5割が、中学1年時には偏差値40~50台だったと言う。もちろん、有名私立校だけでなく、都県立トップ高校、国立大附属中高、難関大学等、幅広い志望校ニーズに対応し様々な学校への合格実績№1を視野に合格実績戦略を推進していく。

「合格実績」という一目でわかる差別化により、高いブランド力と他社の追随を許さない圧倒的な優位性を確立している。特に地盤である首都圏では早慶ブランドの効果が大きく、早慶附属高合格者数No.1の達成(01年入試)以降、集客力の向上が著しく、この12年間で売上高が3.4倍に拡大した。

早慶ブランドによる集客力を活かし、13/3期末137校のネットワークを10年後には250校に拡大させたい考え。

(2)英語教育への取り組み(早稲田アカデミーIBS)

産業競争力の向上を念頭に政府がグローバル人材の育成・強化に向けた取り組みを強化している他、大学も、グローバル化・多様化への対応を進めており、英語教育は大きな転機を迎えている。同社は英語教育を取り巻く環境の変化に対応するべく、「早稲田アカデミーIBS」として12年4月からサービスを開始した。

12年4月に開講した「小学校低学年向け英語講座」は、小4修了時までに高校修了レベルである英検2級合格が目標。「読む力」を中心にした英語脳の開発に主眼が置かれており、英英辞典を「インプット素材」と位置付けフル活用すると共に、”多読”により言語としての英語力を養成していく。開講初年度から成果をあげており、12年度の英語検定試験において、小学1年生で準1級合格、年長生の3級合格等、3回の試験で計103名が合格。13年度は1回目の試験で、準1級合格者1名を含む86名の合格者を出した。また、14年2月の正式開講を予定している「Dual Express ENGLISH」は、中学受験をしない小学5・6年生を対象としており、受講2年間で英検準2級取得を目指している。英語で表現・発話する力を伸ばし、英語力を総合的に向上させるカリキュラムとなっており(従来の「読む」「聞く」中心の学習から、「話す」の学習へ)、日本語訳から離れ、英語で英語を理解する力の養成が意識されている。14年2月に7校での正式開講が予定されており、バイリンガル講師と受験のプロ講師の授業を組み合わせて展開していく考え。

(3)早稲田アカデミー個別進学館

個別指導塾展開ノウハウ及び収益性の高い教室運営ノウハウを有する(株)明光ネットワークジャパンと提携し、12年6月に(株)明光ネットワークジャパンがFC本格展開を開始した。(株)早稲田アカデミーが直営展開し、(株)明光ネットワークジャパンが直営及びFC展開を進めていく。(株)早稲田アカデミーは難関校受験指導のノウハウを提供する見返りとしてロイヤルティ収入や教材・研修等の販売収入を受け取る他、新たな顧客層を取り込む事による合格実績の積み上げが期待できる。13年10月現在の校舎数は20校で、内訳は明光ネットワークジャパン直営2校、同社直営4校、及び明光ネットワークジャパンFC校14校。5年で100校体制の確立を目指している。

(4)教師力養成塾e-講座

教員志望者や現役教員を対象に実践的な授業技術を伝授する「教師力養成塾」。この研修事業を13年7月に、Webを活用し自宅や遠隔地でも受講できる教師力養成塾e-講座としてリニューアルし、グランドオープンさせた。(従来のスクール形式時の通学時間を確保できないという声に応えた)。同事業は、公教育機関からも注目されており、首都圏外の県の教育委員会から、公立小・中学校の学力向上対策に関するアドバイザーを受任した他、都内の教育委員会からは教員研修教材としての導入相談を受けている。

2014年3月期上期決算
前年同期比2.5%の増収ながら、先行投資負担で同28.4%の営業減益

中学部・高校部を中心にした塾生の増加を背景に売上高が増加したものの、先行投資に伴う営業費用増加が利益を圧迫した。具体的には、今期以降の出校ペース加速に備えた育成人員の増加とベースアップによる労務費の増加、新規出校や既存校の増床による地代家賃の増加、校舎支援強化に向けた新部署の設置に伴う人員の増加(4月に人事部、広告宣伝部を新設)、集客のための先行投資である販売促進費の増加等で、総売上原価と販管費の伸びが売上の伸びを上回った。

塾生の期中平均は29,128人と前年同期(28,572人)比1.9%増加。上期末の校舎数は野田クルゼ2校を含め140校

難関校の合格実績が評価され中学部が13,038人と同3.5%増加した他、高校部も3,044人(早稲田アカデミー2,854人、野田学園190人)と同2.0%増加。一方、小学部は、本格的に中学受験の準備を始める4年生の集客が進んだものの、その前後の小3、小5の集客が進まず13,046人と同0.5%の増加にとどまった。
9月末の校舎数は140校。早稲田アカデミーが前年同期末に比べて6校増の138校、野田クルゼが前年同期末と同数の2校。上期は、「早稲田アカデミー」ブランド校舎”八千代緑が丘校”を7月に開校した。

早稲田アカデミーは期中平均塾生数が前年同期比1.8%増加し売上が増加したものの、先行投資に伴う営業費用の増加が負担となった。一方、子会社野田学園は、売上高が2億38百万円と同25.4%増加し、前年同期は3百万円の損失だった営業損益が37百万円の利益に転換。増収要因は、既卒生の獲得と現役生の集客が順調に進んだ事による期中平均塾生数の増加(同22.6%増)。利益面では、計画通りコストコントロールが機能した事に加え、単価の高い既卒生の獲得が進んだ事も収益性の改善につながった。

(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

当第2四半期連結会計期間末の総資産は112億52百万円。前受金が前期末に比べ増加しているのは季節的要因によるものだが、塾生数の順調な増加で前年同期末の実績(12億60百万円)をも上回った。一方、安定したキャッシュ・フロー(CF)を背景に計画通り社債、借入金等の返済を行ったことで、有利子負債は減少した。自己資本比率は53.8%。
CF面では、投資活動においては新規出校や増床などの設備投資による支出を行ったものの、順調な営業活動からの収入及び定期預金から流動性預金への振替によりフリーCFは黒字となり、借入金等の返済や配当金の支払を実施した結果、現金及び現金同等物は前年同期末に比べ4.7%増加した。

2014年3月期業績予想
通期予想に変更はなく、前期比4.9%の増収、同12.2%の営業増益

下期は、全国統一小・中学生テストを同社で受験した外部生に対するアプローチを継続的に行うとともに、同社主催の夢テスト等の学力診断テストを通じて問い合わせ機会を増やし、入塾へと繋げ売上の底上げを図る。利益面では、新規出校の増加で地代家賃等が増加するものの、上記施策による増収効果に加え、広告宣伝部新設効果による広告宣伝費の効率化や事務用品費・通信費など変動費の管理強化で営業利益率を改善させたい考え。

通期予想は、売上高189億12百万円(前期比4.9%増)、営業利益10億24百万円(同12.2%増)。配当は、記念配1円を落とした期末20円を予定(上期末配当と合わせて年30円)。売上の前提となる塾生数(期中平均)は同4.3%増の30,336名。小学部(同3.1%増の13,797人)、中学部(同6.0%増の13,513人)、高校部(同3.0%増の3,026人)とそろって増加する見込み。会社別では、(株)早稲田アカデミーが同4.3%増の30,158人、(株)野田学園が同9.2%増の178人。

今後の注目点
上期の利益圧迫要因となった先行投資は、「合格実績伸長 ⇒ ブランド力向上 ⇒ 集客力向上」という難関校への圧倒的合格実績が生み出す好循環により収益拡大を目指す”合格実績戦略”の一環である。下期も影響が残る可能性があるが、来期は売上・利益の両面で、その成果が確認できるものと思われる。一方、グローバル人材の育成に向けた英語教育、個別指導とFC展開に強みを持つ(株)明光ネットワークジャパンとの提携による「早稲田アカデミー個別進学館」、更には教師力養成塾e-講座といった新たな取り組みは、本格的な収益貢献には今しばらく時間を要するだろうが、いずれの事業も、教育技術やノウハウ、教材の開発力、更にはブランド力等、これまでに培ってきた経営資産を有効活用できるという点で興味深い。
来期以降の業績拡大期待に加え、堅実な経営と安定したキャッシュ・フローも同社の特徴だ。PBR1倍、配当利回り4%と言う株価水準も含めて、14年にスタートするNISA(少額投資非課税制度)口座での長期投資に適した企業と言えるのではないだろうか。
株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

コラム&レポート Pick Up