(3664:東証マザーズ) モブキャスト 2013年12月期第3四半期業績レポート

2013/12/04

今回のポイント

・国内外におけるゲームタイトル投入の遅れ、広告費・人件費の増加等を理由に、通期予想の下方修正を行った。

投入が遅れた主な要因は、オープンプラットフォーム化、ネイティブ化(スマホ、タブレット用のOSであるiOS、Androidへの対応)、海外向け開発といった、同社にとって未経験分野での対応が想定通りに進まなかったため。

 

・組織体制の変更による責任の明確化の他、広告媒体の大幅な見直しを行う。特に、TVスポンサー、プロ野球・パシフィックリーグスポンサーなど長期固定枠は、今2Q 4億円、今3Q 5億円だった長期固定広告費を 今4Q 3.6億円、来1Q 9千万円となり、来期への影響は大幅に減少する。これら一連の対策により固定費を24億円削減し、損益分岐点を45億円に引き下げ、来期の収益急回復に向けたコスト構造とする。

・4Qも16タイトルをリリースする計画だが、これは順調に進んでいるとのこと。未経験分野での失敗を貴重なノウハウとして今後も意欲的なチャレンジを継続していくことを期待したい。また、広告費を中心とした固定費の削減で来期以降の急回復に向けた収益構造構築が進行している。

会社概要
「エンターテインメントコンテンツを通して、世界中の人々の毎日をちょっぴり楽しくする!」をミッションに掲げ、スポーツに特化したモバイルプラットフォーム「mobcast」において「モバプロ」、「モバサカ」、「メジャプロ」など各種ソーシャルゲームを配信する「ソーシャルゲームサービス」が中心事業。開発力の高さ、プラットフォーマーであることなども強み。プラットフォームのオープン化、海外展開を積極的に推進。

2013年7月末の会員数は日韓合わせ、400万人を突破。

【沿革】

同社は、携帯電話販売大手ベルパーク(JASDAQ上場、証券コード9441)の創業者の一人であった藪 考樹社長が、モバイルというデバイスに更なる大きな将来性を確信すると同時に、「自分で作り出したものを世の中に提供したい。」との想いから、新しいビジネスに取り組むために2004年に設立した。

当初はモバイルを通じて提供するデジタルコンテンツの中で、ゲームと映像を対象とし事業をスタートしたが、ソーシャルゲームが世に出始めた2009年に、モバイルとゲームの親和性、ソーシャルゲームの成長性に着目し、映像から撤退し事業ドメインをゲームに集中させた。

2010年に勝手サイト(携帯通信会社の公式サイトではないサイト)で配信を始めた「Webサッカー」は、ワールドカップ南アフリカ大会の年であったことに加え、友達招待によるポイント付与など、まさにソーシャルゲームならではの仕組みを導入し、広告宣伝費ゼロでありながら、1年間で会員を70万人獲得した。

こうした実績をベースに、2011年には単にゲームの製作にとどまらず、自社プラットフォーム構築による更なる成長性の追求に取り組むと同時に、ゲームの対象を、世界的に巨大なマーケットが存在する「スポーツ」に特化することとした。

また、ユーザーに有料であってもゲームで遊んでもらうためにはゲーム及びプラットフォームの認知度や安心感が不可欠であるとの考えから、TVCMを含めた積極的な広告宣伝活動を展開。これにより会員数は急速に拡大した。

2012年にはプラットフォームのオープン化を決定し、自社製のみならず他社製ゲームの配信も開始した。

また、韓国市場への進出を手始めにグローバル市場の開拓に注力している。

【市場環境】

矢野経済研究所の調査「ソーシャルゲーム市場に関する調査結果 2012」によると、国内ソーシャルゲームの市場規模は2012年度 3,870億円(前年度比 +37%)、2013年度 4,256億円(同 +10%)と成長率は鈍化するものの引き続き拡大基調が予測されている。

他にも同調査は「今後の主要SNS事業者の戦略」として、以下の様なポイントに言及している。

この調査にあるように当然競争の激化は予想されるものの、市場の堅調な成長は今後も期待できるようだ。

加えて、スポーツは世界的に訴求力の極めて高いコンテンツであること、スポーツのルールは共通であり文化、言語、風習の違いが大きな障壁となり難いこと、スポーツファンを対象とした効果的な販促活動が可能なことなど、スポーツというジャンルに特化する同社においては、上記の課題をクリアすることはさして難しくないと思われる。

また、同社では、現在のスポーツゲームユーザーは約600万人。各種調査から日本国内におけるスポーツゲームの潜在ユーザー数は約3,000万人と推計しており、大きなマーケットが国内だけでも存在している。

【事業内容】

スポーツに特化したモバイルプラットフォーム「mobcast」において各種ソーシャルゲームを配信する「ソーシャルゲームサービス」と、メール、コミュニティ、ニュース、スポーツ予想、実況Liveなど、SNS機能や各種スポーツコンテンツ情報を提供し、会員間のコミュニケーションを活発化させること等を目的とした「ソーシャルメディアサービス」を提供している。

売上高の8割以上を占めるソーシャルゲームサービスにおいては、自社製ソーシャルゲームである「モバプロ(プロ野球)」、「モバサカ(サッカー)」、「モバダビ(競馬)」、「メジャプロ(MLB)」を配信するほか、2012年11月からはプラットフォームのオープン化を開始した。

2013年9月末の配信タイトル数は12タイトル。

<主要ゲームの概要>
◎モバプロ

2010年12月配信開始。2011年4月からスマートフォンにも対応。

ユーザーがプロ野球チームのオーナーとなり、選手や監督を獲得することで自分好みのチームを作り上げ、世界1を目指すソーシャルゲーム。

試合は自動で行われ、ユーザーは試合の経過や結果を見ながら、監督や選手、チームオーダーなどを自由に編成してチームを強化し、次の試合に臨む。

プロ野球 セ・パ全12球団の現役選手・現役監督のみならず、往年の名選手がすべて実名で登場するだけでなく、ソーシャルゲームでは初めて実写で登場する。選手名や写真がすべて実名・実写となっていることから、ユーザーは好きな選手のカードをコレクションして楽しむことも可能となっている。

一般社団法人日本野球機構、日本プロ野球OB会からライセンスを取得している。

韓国版のモバプロも今秋オープンした。

◎モバサカ

2012年7月配信開始。

ユーザーはサッカーチームのオーナーとなって、国内外のスター選手、監督を集め、自分だけの夢のサッカーチームを作り上げて、日本一を目指す。

選手はすべて実名・実写で登場し、日本代表選手だけでなくスペイン、イングランド、イタリアを始めとした各国のプロサッカーリーグ所属の選手や各国の代表選手も登場する。登場選手数は1,800人以上。

さらに、チームに不可欠なサポーターという要素も盛り込んでおり、サポーター数に応じてスタジアムを改築することができる。このように同ゲームはただ単にチームを編成して競い合い、勝利を目指すだけでなく、スタジアムの改築も行う等、オーナーとして実際のサッカーチーム運営を疑似体験できる本格的なサッカーシミュレーションゲームになっている。

公益財団法人日本サッカー協会(JFA)及び国際プロサッカー選手会(FIFPro)からライセンスを取得している。

「モバサカ 韓国版」も運営している。

<ビジネスモデル>

ソーシャルゲームサービス、ソーシャルメディアサービスとも利用は基本的に無料だが、ゲームをより楽しむための一部機能を有料で提供しており、これが同社の中心的な売上となっている。

例えば、サッカーや野球の世界では選手の移籍に際し、代理人の影響力が大きいことは有名だが、「モバプロ」や「モバサカ」においても、有力な選手を獲得しチームを強化したいと思えば、ユーザーは有料で代理人を使用することができる。

月間の課金者一人当たり平均課金額は、同社がユーザーに継続的にゲームを楽しんでもらうための適正ゾーンとしている4,000~6,000円で推移している。

また、会員数は、韓国会員数の増加も寄与し2013年7月時点で400万人を突破している。(2011年1月 86万人、2012年1月 214万人)

一方、支出面では、「モバプロ」においては一般社団法人日本野球機構、日本プロ野球OB会及び名球会、「モバサカ」においては公益財団法人日本サッカー協会(JFA)及び国際プロサッカー選手会(FIFPro)、「メジャプロ」においてはMLBおよびMLB選手会などに選手名や実写写真の使用に関するライセンス料を支払っている。

個別契約ごとに内容は異なるが、概ね売上高の10~25%となっている。

また、プラットフォームのオープン化に伴い、ゲームの提供元(SAP:ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)とは、売上(課金流通額)をおおよそ同社 1/3、SAP 2/3でシェアすることとなっている。

なお同社では、安心して利用できるサービス提供が事業の持続的発展に寄与すると認識しており、18歳以下ユーザーの課金制限を設けるなど、サービスの安全性と健全性強化にも積極的に取り組んでいる。

特徴と強み
①スポーツに特化

対象を「スポーツ」に絞り込むことで、TVCM、スタジアムでの広告、イベントスポンサーなど極めて効率的で効果的な広告宣伝やマーケティングを実施することが可能であり、ユーザー数の順調な拡大に繋がっている。

また、日々タイムリーな話題が登場するため、コミュニティも活性化しやすくユーザーロイヤリティが向上するというメリットもある。

加えて、スポーツはグローバルでルールが共通なため、海外展開が容易であるという面も今後の成長戦略を進めるにあたっての大きなアドバンテージとなっている。

②プラットフォーマーの強み

ソーシャルゲームメーカーは上場企業だけでも同社を含めて10社以上あるが、その多くはゲームを製作してこれを他社が運営するプラットフォームに提供する「SAP」と呼ばれる事業形態をとっている。これに対し同社は、グリー(東証1部、3632)、ディー・エヌ・エー(東証1部、2432)と同様に、「mobcast」というプラットフォームを運営している点でSAPと大きく異なる。

自社でプラットフォームを運営している同社は、メルマガなどによる告知や集客を自社の判断で自由に行えるほか、プラットフォームを通じて集積したユーザーのデータを分析して効果的な広告を打ち出すことができるといった点でSAPには持ち得ない大きな強みがある。また、オープン化による収益拡大のスピードアップも可能だ。

この他、「開発力の高さ:コンシューマーゲーム業界出身の優秀な人材が開発に携わっているためユーザーから高い評価を得ている。」、「健全性への配慮:高額課金ユーザーへの依存度の低さ。課金ユーザーの高継続率。」も特徴として挙げることができる。

2013年12月期第3四半期決算概要
国内外でのゲームタイトル投入の遅れで下方修正。

国内外におけるゲームタイトル投入の遅れ、広告費・人件費の増加等を理由に、通期予想の下方修正を行った。

投入が遅れた主な要因は、オープンプラットフォーム化、ネイティブ化(スマホ、タブレット用のOSであるiOS、Androidへの対応)、海外向け開発といった、同社にとって未経験分野での対応が想定通りに進まなかったため。

<下方修正の理由>

①新規社ゲームタイトル投入の遅れ

「ドラゴン★スピン」、「激闘!ぼくらのプロ野球」、「モバイルグランプリ」3タイトルのリリースが、3Qから4Qにずれ込んだ。ただ、来期業績に大きく寄与すると会社側は考えている。

②新規パートナーゲーム投入の遅れ

3Qに投入予定の10タイトルのうち、2タイトルしか投入できなかった。10月には4タイトルが投入された。残りの5タイトルは4Q及び来期とリリース予定で、これも来期には大きく寄与すると会社側は考えている。

③海外事業でのゲーム投入の遅れ

モバプロ韓国版の「野球の達人」が本来5月投入の予定が、10月にずれ込んだ。また、9月に予定したプラットフォームのオープン化が11月にずれ込んだ。これは、韓国での業務提携先であるNEOWIZ INTERNET社側の事情によるという事だ。

④広告費の増加

これら新タイトル投入が遅れたため、広告効果が限定的になってしまい売上増に結び付ける事が出来なかったことに加え、TV朝日における総合ニュース番組は想定したような広告効果が得られなかった。

また一方で、長期固定の条件で媒体を購入したため、契約期間中のコストコントロールが出来なかった。

ただ、広告の内容を個別ゲームではなく同社のブランディングにシフトした結果、大手サードバーパーティーとの関係が構築できたなど一定に効果はあったと判断しており来期以降に繋がるものと期待している。

⑤人件費の増加

プラットフォーム強化、ネイティブ開発、海外展開、メディア・マーケティングの体制充実などを進めた結果、人件費が増加した。

⑥ソフトウェアの減損による特別損失を計上

経営体質強化のため減損を計上した。来期の償却負担は減少する。

<対策>

上記に理由を踏まえて以下の様な対策を実施し収益回復の道を開く

①~③ 投入の遅れについて

組織体制の変更を行い責任を明確化する。

また、開発スケジュール管理に甘さがあったため、今後は社長直轄の部署がスケジュール管理を行い、これを徹底する。

④広告費の増加について

広告媒体の大幅な見直しを行う。特に、TVスポンサー、プロ野球・パシフィックリーグスポンサー、球場の看板広告など現在長期固定枠として購入している広告枠は、2014年3月末までに全て終了する。

今2Q 4億円、今3Q 5億円だった長期固定広告費を 今4Q 3.6億円、来1Q 9千万円と大幅に減少する。

⑤人件費の増加について

開発中案件の開発終了(2013年12月)に伴い業務委託費は減少する。

これら一連の対策により固定費を24億円に削減し、損益分岐点を45億円に引き下げ、来期の収益急回復に向けたコスト構造とする。

<第3四半期ハイライト>

第3四半期(7-9月)の主要タイトル売上構成比は、モバプロ 49%、モバサカ 25%、その他 15%。子会社 11%となっている。1年間で見ると、モバプロの構成比が下がり、モバサカ、韓国子会社に比率が上がってきている。
第3四半期は日本会員数32万人増加し370万人を突破し、韓国会員数も13万人増加し70万人を突破した。会員数は2013年10月で日韓合わせて450万人規模まで拡大している。
ARPPU(課金者1人当たり課金額)は2013年7月 4,173円、8月 4,238円、9月 4,248円で、同社が目標としている4~6千円の範囲内で推移した。課金者数も7月は低額課金イベントによる集客効果で大きく伸びたが、概ね8~9万人の範囲となっている。
自社ゲームの新規リリースは無く、パートナーゲーム2タイトルのみだった。パートナーゲームのタイトル数は9月末で7タイトルとなっている。
オランダ・ブースターメディア社との業務提携により、欧州25か国で「モバサカ」(ブラウザ版)の配信が順次開始される予定。

昨年12月末と比較すると、現預金は10億円減少したが、(株)モブキャストイーシー(現、(株)モブキャストグローバル)を完全子会社とする株式交換の実施などによる、のれんの増加などで資産合計が8億円増加した一方、負債は長短借入金の増加はあったが、合計では1億円の増加にとどまった。この結果、自己資本比率は64.7%と昨年末より2.8%上昇した。

第4四半期の戦略
今期の重点戦略として①ブラウザゲーム:スポーツプラットフォームNo.1のポジション確立、②ネイティブゲーム:既存ユーザーの誘導と新規ユーザーの獲得、③海外ゲーム:韓国でのプラットフォームの立上げ、を上げている。

①ブラウザゲーム

10月には自社ゲーム1タイトル(投入が遅れた「モバイルグランプリ」)、パートナーゲーム4タイトルをリリースした。

また、11~12月には7タイトルを追加予定(1タイトルは既に配信済)で、その他著名ゲームメーカーとの共同開発案件も進行中とのことだ。

②ネイティブゲーム

投入が遅れた「ドラゴン★スピン」、「激闘!ぼくらのプロ野球」のAndroid版は既に配信を開始している。iOS版も第4四半期内に配信を開始する。

また、韓国でもAndroid版2タイトルを年内に配信開始の予定。

③海外ゲーム

自社ゲームである「野球の達人(モバプロ韓国版)は10月24日に配信開始となった。韓国Google Playランキングにおいてスポーツゲーム人気(無料)カテゴリーで1位となるなど、順調な滑り出しとなっている。

パートナーゲーム第1号(NBA2K バスケットボールマスター:日本でも配信中のタイトル)が11月に配信開始の予定。

11月には来年のサッカー・ワールドカップを控え、モバサカグローバルカップ日韓大会を開催する。予選を勝ち上がった日本代表ユーザーと韓国代表ユーザーが対戦するもので、12月1日に結果が発表される。

以下のように、第4四半期には16タイトルをリリースする。うち、既に配信済が10月末時点で8タイトルとなっている。

今後の注目点
前回のレポートで触れたが、3Q以降の急回復の前提として、下期6か月間に自社、パートナー合わせた24タイトルという大量投入を同社は予定していたわけだが、残念ながらさすがに無理が生じてしまったようだ。

4Qも16タイトルをリリースする計画だが、これは順調に進んでいるとのこと。未経験分野での失敗を貴重なノウハウとして今後も意欲的なチャレンジを継続していくことを期待したい。

また、広告費を中心とした固定費の削減で来期以降の急回復に向けた収益構造構築は進行している。ただ、一方で、広告減少の影響が、特に新規タイトルの売上にどう影響してくるのか?も注目される。

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