(2146:JASDAQ) UTホールディングス 2014年3月期第1四半期業績レポート

2013/09/11

今回のポイント

・14/3期1Q(4-6月)は前年同期比7.8%の減収、同71.8%の経常減益。低収益案件(事業所)からの撤退で売上が減少する中、撤退関連費用や建設技術者派遣の拡大に向けた新卒採用等が負担となり営業利益が同68.3%減少した。ただ、減益決算は当初から織り込み済み。利益を圧迫した一時的な費用も1Qでピークアウトする。

・業績予想に変更はなく、通期で前期比11.3%の増収、同33.4%の経常増益予想。一時的な費用の一巡で、下期は収益性が改善する見込み。ただ、7月に子会社化したUTパベック(株)の業績寄与を見込まない等、全般に保守的な印象。13年7月1日を効力発生日として1株を200株に分割した。

・政権交代を契機とした規制緩和と顧客メーカーによる派遣ニーズ及び雇用流動化ニーズの拡大で、同社の事業環境は良好だ。長期的な目標である営業利益100億円の達成に向け、既存顧客シェア(インハウスシェア)の拡大で収益基盤の強化と収益性向上を図ると共に、既存顧客ニーズの深堀り(就職支援ニーズへの対応)と正社員派遣の横展開(建設技術者派遣等)を進めていく考え。

会社概要
高度な分野に特化した製造派遣・請負事業を中心に、設計/建設技術者派遣事業、アウトプレースメント(再就職支援)事業も展開。新規の顧客開拓力と業界No.1の従業員定着率を強みに、順調に稼動数を伸ばしている。同社自身は純粋持株会社としてグループを統括し、実際のサービス提供は連結子会社7社が担う。

13年7月1日にパナソニックバッテリーエンジニアリング(株)の発行済株式400株のうち81%にあたる324株を取得し連結子会社化し、商号をUTパベック(株)に変更した。残る76株(発行済株式総数の19%)については、14 年7月1日に取得する予定。
パナソニックバッテリーエンジニアリング(株)はパナソニック(株)の100%子会社で、電池材料分析・評価・解析事業、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業、及び派遣事業等を手がけていた。今回の買収では、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業及び派遣事業が対象となり、買収対象事業は年商約30億円(12/3期は売上高が42億06百万円、営業利益1億32百万円)。

【事業内容】

事業セグメントは、アウトソーシング事業の単一セグメント。製造派遣・請負を中心に、設計開発技術者派遣を手掛けており、建設技術者派遣及びアウトプレースメント事業を育成中。尚、製造請負では各工程の製造オペレーションから装置メンテナンスや保全業務までを一括して受託するが、同社が請負う事で、コスト削減はもちろん、構内作業全体のパフォーマンスも向上するため、取引先から高い評価を受けている。
また、10/3期は半導体向けの売上が全体の79.2%を占めていたが、幅広い分野で受注活動を強化した事で“脱半導体”が進行中。現在、半導体向けが42.5%に低下し、次いで電子部品13.4%、環境・エネルギー分野(太陽電池・2次電池等)14.7%、自動車関連15.4%、建材9.7%、その他4.2%となっている(14/3期第1四半期)。
中期的な目標として、電池を中心に環境・エネルギー30%以上、自動車関連20%程度としており、半導体向けについては、現在の売上水準を維持しつつ40%以下に引き下げたい考え。

中期経営計画 -質量共に「日本一の請負会社」を目指して-
現在、16/3期を最終とする中期経営計画(14/3期~)が進行中だ。労働者派遣法の緩和の流れ、メーカー各社における固定費削減を念頭に置いた雇用流動化と派遣活用の同時進行、更には建設公共投資の拡大等、収益機会の拡大を捉え、最終年度となる16/3期に、売上高450億円、営業利益40億円(最高益は07/3期の42億円)、稼働数11,100名の各目標を達成したい考え。

売上高の計画は過去の実績をベースにした積み上げであり、このうち製造派遣・請負事業は、稼働数を毎期1,000名増やし、40億円ずつ売上を積み増していく(14/3期:300億円、15/3期340億円、16/3期380億円)。一方、アウトプレースメントや建設技術者派遣等の新規事業の売上計画は、14/3期10億円、15/3期30億円、16/3期70億円。

【事業環境】

政権交代で労働者派遣法は規制強化から規制緩和の流れに変わり、民主党政権下での懸念が払しょくされた。また、復興需要の本格化や公共投資の拡大で建設関連の人材が不足しており、新たなビジネスチャンスも芽生えている。一方、顧客メーカーは正社員の流動化を進めつつ、派遣の利用を増やしており、派遣ニーズ、雇用流動化ニーズ共に拡大している(⇒同社の収益機会拡大)。

【基本戦略と概要】
・既存顧客シェアの拡大(既存顧客へ正社員派遣) ⇒ 製造派遣・請負事業の収益性改善と安定成長
・既存顧客ニーズの深掘り(既存顧客へ新サービス)⇒ アウトプレースメント事業の基盤構築
・正社員派遣の横展開(新規顧客へ正社員派遣)  ⇒ 製造派遣・請負以外で1/3の営業利益基盤の構築

顧客基盤が拡大・強化されリスク分散が進んだ事から、今後は、新規顧客工場数の開拓よりも、約400の既存顧客工場のインハウスシェアの引き上げに力を入れていく。ちなみに、領域拡大前の11/3期第1四半期は顧客工場数が93工場で、そのアウトソーシング活用の総計は13,738名。同社のシェアは31%だった。一方、現在の約400工場のアウトソーシング活用の総計は47,400名で、同社シェアは14%にとどまる。このため、シェア25%を当面の目標として、1工場30人規模に引き上げたい考え(以前は50人規模)。

シェアアップのターゲットとなるのは、環境・エネルギー及び自動車関連。両分野を中心に既存顧客のシェアアップを図る事で半導体の比率を引き下げ(半導体向けの売上高は趨勢的に増加)、リスク分散を図り事業の安定性を高めていく。尚、パナソニック(株)の100%子会社で、電池材料分析・評価・解析事業、電池製品加工・組立て・包装業務・製造・請負事業、及び派遣事業等を手がけるパナソニック バッテリーエンジニアリング(株)を7月1日付けで子会社化する。
尚、同社の主要顧客は電機業界と自動車業界だが、両業界共に、アウトソーシング先の選定基準は社員の定着率であり、業界No.1の定着率を誇る同社のアドバンテージは大きい。ちなみに、電機業界は既にアウトソーシング活用比率が高いが、引き続き請負ニーズが旺盛。また、自動車業界はアウトソーシング活用比率が低いが、労働者派遣法による規制緩和の流れを受けて派遣ニーズが高まっている。

②既存顧客ニーズの深掘り(再就職支援事業)

構造改革に取り組む企業の増加で、現在、再就職支援サービス市場は第2拡大期を迎えている。リクルートとパソナの寡占市場で、両社が約2/3の市場シェアを有するが、両社ともに都市部でのホワイトカラー向けのサービスが中心。これに対して、UTキャリア(株)は、地方製造工場向けに特化する事で大手2社と差別化を図っていく。また、再就職先の斡旋でUTホールディングス・グループの顧客や営業基盤を活用できる事に加え、グループ内に再就職先を持つ事が何よりの強み(グループの請負職場を再就職先に活用できる)。

③正社員派遣の横展開

建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によると、12年度は18兆円だった建設公共投資額が13年度は20.2兆円に拡大する見込み。長期間にわたって持続可能な国家機能と日本社会の構築を目的に、自民、公明両党が今国会に「国土強靱化基本法案」を提出しており、復興需要と相まって、現状、逼迫している建設業界の労働力不足が更に進むと懸念されている。しかし、労働力不足は外部労働力活用ニーズにつながるため、アウトソーシング各社にとってはビジネスチャンスである。

ただ、その一方で、正社員雇用の議論が活発化している。具体的には、自民党が、若者雇用対策として新卒者が就職する際の正社員率を現在の80%から100%に引き上げる目標を掲げている他、政府の規制改革会議(雇用作業部会)も、勤務地や職種を限定した正社員の拡大に向けた雇用ルールの策定を検討中である。求職者の正社員就業ニーズが高まりを見せる中で、今後、与党や政府が雇用の安定を図るべく新たな政策を打ち出す可能性が高く、正社員雇用ニーズの高まりが予想される。

こうした市場動向を踏まえ、同社は強みである正社員派遣について、製造業以外への横展開を進めていく考え。その第1弾となるのが、建設技術者及び設計開発者である。この一環として、新卒者採用を開始している他(14年4月に1期生が入社する予定)、製造派遣・請負で勤務する既存社員を高付加価値業務へ社内異動させるべく、建設技術者派遣業務への異動を促している。

2014年3月期第1四半期決算
新卒採用開始や低収益事業所からの撤退等で一時的な費用が発生し利益を圧迫

売上高は前年同期比7.8%減の65億63百万円。前期に新規開拓した顧客工場(事業所)のうち、10名未満の小規模な事業所で増員が見込めない等の低収益事業所から撤退した事が減収の要因。撤退の影響で第1四半期末の稼働数は6,795名と前期末比26名減少したが、増員、減員共に変動が大きかった事もこの四半期の特徴で、既存顧客内でのシェアアップが471名の増員要因となる一方、低収益事業所からの撤退が497名の減員要因となった。また、第1四半期末の取引先工場数は前期末比14工場減の381工場。新たに36工場の新規開拓に成功する一方、撤退等で50工場が減少した。
尚、業種別顧客構成比は、前期実績に比べて、電子・エネルギーや自動車関連の構成比が上昇する一方、半導体が低下した。

利益面では、2つの要因で一時的なコストが発生し利益を圧迫した。一つは、低収益事業所の撤退にかかるもので、転勤を望まず退職した従業員に対する退職金等。もう一つは、新卒採用の開始に伴う採用コスト。尚、新卒採用は設計開発分野及び建設技術分野の正社員で、この4月から採用活動を開始した。

2014年3月期業績予想
(1)第2四半期(7-9月)以降の見通し

UTパベック(株)を連結する事で稼働数が600名増加したが、この他、500名のバックオーダーも抱えており、現在、採用活動を進めている。第2四半期(7-9月)に70億円弱の売上を計上できれば上期の予想売上高を達成できるが、予想は7月に子会社化したUTパベック(株)の業績寄与を見込んでいないため、第2四半期の売上高は予想の70億円を上回る可能性が高い。引き続き採用費の計上があるものの、撤退関連費用が無くなるため営業利益率の改善も進む。会社側は、上期末までに四半期ベースで6億円程度の営業利益を創出できる体制を整えたい考えだ。

また、想定通り上期末までに7,900名(社内目標は8,000名)体制が整えば、第3四半期及び第4四半期は86~88億円の売上を確保できる。利益面では、新卒の採用費が上期で一巡し、四半期ベースの販管費が8億円程度にとどまるため、7~8億円の営業利益を確保できる計算だ。

新規事業として取り組んでいる再就職支援、建設技術者派遣、及び機械設計技術者派遣も通期業績に寄与する見込みで、再就職支援で1億50百万円、建設技術者派遣で50百万円、及び機械設計技術者派遣で1億円の利益貢献を見込んでいる(売上面での寄与は、3事業合計で10億円)。

尚、13年7月1日を効力発生日として1株を200株に分割した。

今後の注目点

3年以内に制限されている派遣期間の制限緩和等を盛り込んだ労働者派遣法改正案の取りまとめが進められている(2014年の通常国会に労働者派遣法の改正案が提出される予定)。言い換えると、「外部労働力」を活用しやすくするための法律整備が進められている。また、2014年度から労働移動支援助成金が拡充され、中小企業だけでなく、大企業にも支給対象が広がる見通し。「労働移動支援助成金」とは、事業規模の縮小等で離職を余儀なくされる労働者に対して再就職支援を行った事業主に給付される助成金の事(「再就職支援給付金」とも呼ばれている)。つまり、労働移動支援助成金の拡充とは、大企業が「再就職支援サービス」を活用しやすくなると言う事。規制緩和を受けて、同社の事業環境は更なる改善が見込まれる。

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